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29話 エンプティは気づく

こんにちこんばんは。

荒野をあまり知らなくて悩んだ仁科紫です。


それでは、これ以降も良き暇つぶしを。

 神様に止められ、結局呪いを覚えるのはやめて影を操ったり、誰かを回復したりする魔法を覚える方向性で妥協した。神様のお役に立てると思ったのですがねぇ。残念です。

 神様が言うには、影を操るために光と闇のどちらもの属性がいるらしい。そして、この2つを持ち合わせることはなかなかない事らしい。理由としては、互いに反発し合う属性だからだそうだ。

 要は、2つ同時には存在しにくいからこそ珍しいって事ですね。


 そうしてその日は魔法の練習をして終わり、翌日である今日は荒野の街の先を探索することとなっていた。



「荒れてますねぇ。」


「ここは荒野だからね。草木も乾燥に強いものしか育たない場所さ。」



 神様の解説を聞きながら辺りを見渡し、目に入ったものに思わずその場に留まる。

 私が立ち止まるのには気付かず、前へと進む神様に声をかけた。



「か、神様。あれはなんですか?」


「あれ?」



 聞き返した所で私を置いてけぼりにしている事に気づいた神様は私のところまで戻ってきた。

 神様は首を傾げるも、私が見ている方向で何を指しているのか把握し、答えてくれる。



「ああ。あれを見るのは初めてだったね。

 あれはこの世界ともう一つの世界とを繋ぐ門なんだよ。」


「え。でも、確か、条件は一定の進化数と既に行き来できる人物からの試験の達成、なんですよね?門があるなら勝手に出入りできてしまうのでは?」



 荒野の奥、山の頂きに存在する宙に浮かんだ両開きの扉を見る。あそこが目指すべき場所なのだと理解すると、早く辿り着きたくて仕方が無くなる。しかし、それよりも条件の話だ。

 確かにあの時、進化の話をしていたはずなのですけど…違ったのでしょうか?



「ああ。ちゃんと説明していなかったっけ。進化数は条件にはならないよ。」


「あれ?違いましたっけ?」


「プティみたいな例があるからね。あくまでも基準でしかないんだよ。」



 首を傾げるも、続く神様の言葉に納得する。

 通常、人形族というのは下級人形、中級人形、上級人形と進化してから特殊な進化先へと進むのが普通の進化なのだと教えて貰っていた。尚、下級は25cm程のお人形。中級は50cm程、上級は1m程のお人形らしい。その後の普通の進化先である特級人形は1.5m程の大きさで、パッと見は人と大差ない姿になるのだとか。

 確か、アキトさん達が来た時に私がその過程を辿っていないことに驚かれたんですよね。……とはいえ、その頃に今の進化を終えていたら邪魔なことこの上なさそうです。翼も要らなさそうですねぇ。



「まあ、私の進化に関しては特殊なことを理解していますよ?だから、その条件の枠に入るのか気になっていたんですが……まさか、基準でしかないとは思っていませんでした。」


「そうだね。プティは特殊だから様子見をしていたんだけど……とりあえず、ある程度までレベルを上げたらもう向こうに行っても大丈夫だと考えているよ。」



 なるほどと頷き、今のレベルを確認する。


 ーーーーーーーーーー


 名前:エンプティ

 分類:人形族 種族:デュアルリング Lv33

 属性:光・闇

 HP 20

 MP 46500

 STR 0

 VIT 1

 INT 2130

 MND 2130

 DEX 1065

 AGI 538

 LUK 270


 AP 181


 種族スキル

 〈透明化〉〈魔力回復(中)〉〈浮遊〉

 〈魔力視〉〈毒類無効化(中)〉〈立体視〉

 〈光の糸〉〈闇の糸〉

 〈人形憑依:対象【大空の姫君あおのきみ】〉


 スキル

 〈魔力糸〉〈魔力操作(中)〉〈暗視〉

 〈魔力結界(糸)〉〈魔味蕾〉〈魔力変換〉

 〈手芸〉〈魔力放出〉〈二極合成〉


 固有スキル

 〈■■■■〉


 称号

【ソウゾウを超える者】【神様(?)を崇める者】

【水霊の友達】【糸の操者】【兎の天敵】

【兎の宿敵】【狼の天敵】【大蜥蜴の天敵】

【可能性の欠片】【魔法初心者】


 ーーーーーーーーーー


 詳細情報

 〈手芸〉

 効果:手先が器用になる。


 〈魔力放出〉

 効果:魔力を使った攻撃にプラス補正。


 〈二極合成〉

 効果:2つの異なる属性を使った行動にプラス補正。


【魔法初心者】

 説明:魔法を使えるようになったヒヨっ子に贈られる称号。

 効果:基礎的な魔法の威力が上がる。


 ーーーーーーーーーー



 手芸の効果が手先が器用になるってそのまま過ぎてどういう反応をしたらいいのか分からなくなりますね。


 一先ず神様に共有しておく。



「今は33レベルのようですね。」


「33レベルでこれか……。プティのイレギュラーさが分かるというものだね。うーん。やっぱり、一度目の進化が原因かな。」



 何やら考え込む神様にこのステータスのどの辺がおかしいのかと気になる。具体的な基準も知らないのだから、分からなくても当然なのだが。



「神様。2回目の進化後の基準はどれくらいなんですか?」


「ああ。気になるか。ちょっと待ってね。サンプルを見せるよ。」


「サンプルなんてあるんですか?」


「うん。ちょっと待ってね。確かここに……」



 そう言って空中に現れた画面を操作したかと思うと、はいと言って見せられたのが以下のものだった。


 ーーーーーーーーーー


 中級人形LvMAX

 HP 25000

 MP 25000

 STR 675

 VIT 2550

 INT 2550

 MND 2550

 DEX 675

 AGI 675

 LUK 337


 ーーーーーーーーーー



 あー。なるほど。人形は元々STRとDEX、AGIが低めなんですね。……だからって0と1はやり過ぎですけどね!?



「偏りが無いですね。」


「うん。これが普通だよ?自分のステータスのおかしさに気づいてくれたかな?」


「……わぁ。私って普通より魔力があるんですネー。」


「現実から目をそらすのはやめようか!?」



 神様からツッコミを入れられ、渋々と現実を受け入れることとする。

 うー。分かってはいるんですよ。分かっては。……ただ、おかしくても仕方が無いですよね。気づいたら進化していましたし。



「……あれ?それよりも気になるところがあるんですが。」


「大体……って、話をそらされた!?…はぁ。なんだい?」



 ため息をついた神様にステータス欄を見て気になるところを指さす。そこには中級人形と書いてあった。



「これ、2段階進化したものなんですよね?上級人形では無いんですか?」


「ああ。そういう事か。これは進化を2段階したものであってるよ。」



 神様が言うには、人形を選んだプレイヤーは皆、初めはただの人形から始めるのだとか。そこから下級、中級を経て上級になるらしい。所謂見習い期間というものだと神様は言った。そこで合わなければ種族を変えて試すらしい。中には各種族の見習いを転々と渡り遊ぶプレイヤーも居るのだとか。

 確かに、面白そうではありますよね。全ての種族を試してみてピンと来た種族で遊ぶのならどんな成長をしても納得が行きますし。



「それなら、これは間違いなく2段階進化したものなんですね。……えっ。最大レベルってどれくらいなんですか?」


「75だよ。」


「……半分以下でこれ、ですか……?」



 ようやく理解できた神様の驚きようにさもありなんと納得する。

 いえ、寧ろ私の態度の方が悪かったのではないでしょうか…!幾ら基準を知らなかったとはいえ、酷いものは酷いのです。謝っておきましょう。



「ようやく僕の大変さも理解出来たみたいだね?」


「はいです……。申し訳ありません。神様。

 次からは理由がなくとも神様の言う事には耳を貸す事にします…。」


「い、いや、そこはちゃんと考えて行動してね!?僕の言葉が正しいとは限らないんだから!」



 殊勝な私の態度に慌てる神様にこんなにチョロくて大丈夫かと心配になる。先程も思ったことではあるが、神様は悪い女の人に引っかかりやすそうだと心中で言ちる。

 まあ、私の事なんですが。どうも神様は素直過ぎるんですよねぇ。


 しげしげと眺めすぎたのか、不思議そうにどうしたのかと問いかける神様に首を振り、先へと進んだ。



 ・

 ・

 ・



 荒野を進んで坂道をのぼり、ゴツゴツとした岩壁を飛んで越え、人工的に地面を削って出来た階段を登った先にその扉はあった。何度か戦闘はあったものの、遭遇数自体は少なかった。また、どれも神様が足止めをしている間にチマチマと魔法で攻撃して倒せたため、そこまで苦労することは無かった。



「ようやく到着ですね。」


「そうだね。」



 先程も目に入った扉を視界に収め、その前に並ぶ10人程の列に目を向ける。順番待ちをしているらしい人々は皆2人以上で並んでおり、待っている退屈さよりも話に夢中といった様子で実に楽しそうだった。



「なんというか、楽しそうですね。」


「ああ。彼らはこの世界での知り合いか、リアルでも面識があってパーティを組んでいる人達だろうね。

 あちらに行くにも渡れるプレイヤーが居ないといけないわけだから、リアルでの知り合いがいた方が何かと楽なんだよ。」



 神様の説明に頷くと同時に首を傾げる。



「それなら、知り合いがいない場合はどうなるんでしょう?」


「その時はそもそももう一つの世界を知ることも無いだろうね。調べて知ったとしてもネットを使える人なら募集をかけれるわけだし。」


「あー。そういえば、知っているからここを目指すんでしたね。」


「そもそも、治療が終わった人とフレンドだったプレイヤーが、その人とも遊べるようにっていう理由で作られたシステムだからね。そういう人には予め、こちらへ来れるように通行証を発行しているんだ。

 そして、必要が無い人にはここを目指さないような作りになっているんだよ。」



 ふむふむと頷き、頭の中で整理する。

 このゲームは治療用に開発され、その後に一般に発売されたものである。その為、治療を終えた人は一般用でログインする事になり、治療をしていた頃に遊んでいた人とは遊べなくなった。それを防ぐために行き来が出来るように設定を追加した。

 後は…恐らく、そちらの世界に興味を持った人でも行く事ができるように扉を作った。そういう事なのでしょう。



「分かりやすい説明、ありがとうございます。」


「ふふふ。良かった。練習した甲斐があったよ。」



 ニコリと笑いかけてくる神様に、練習したんだ…と残念なものを見る目で見ておく。

 言わなければいいものを言ってしまうのも、神様の特徴ですね。それが良いか悪いかはともかくですが。え?私ですか?もちろん、美点だと思いますよ?私が色々とやりやすいという点で。



「ところで、ここを目指さない方は何処へ向かうんでしょう?」



 話を聞いて気になったことを尋ねると、返ってきた答えは『何処へでも』というハッキリとしない答えだった。神様が言うには初めは大抵王都へと向かい、自分のしたい事を探すんだとか。

 なんだか職探しみたいで微妙な気持ちになりますね。妙にリアルなところがちょっと……。

次回、荒野あるある?(まだ扉の向こう側には行きません)


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あちら側に向かう為の門に到着しました。 プティちゃんの異常性も確認できました。  オカシさテンコ盛りですね♪例えるなら「ガラスの杖」ですね(そんなに繊細で無いか~) [気になる点] 門番さ…
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