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24話 口は災いの元

こんにちこんばんは。

イケメンを書けないことに気づきつつも書こうと足掻いて、やっぱり書けないなと諦めつつある仁科紫です。

なんでイケメン枠をネタ枠にしてしまうんだ。私…。


それでは、良き暇つぶしを。

 その後、火祭鶏が居る広場が2度続き、最後の広場にたどり着いた。



「ここが最後なんですよね?」


「広場はね。まだ、頂上があるからさ。」



 それもそうかと頷いて辺りを見渡す。

 どうやらここには今までのように敵が居たりはしないようだ。所謂セーフスペースというものなのだろう。

 ここで休憩を挟み、最後の敵へと挑むという事なら……次は強敵になりそうですね。……居るなら、ですけど。これで居なかったら私が恥ずかしいやつ……いえ、心の中でしか呟いてませんからね!ええ。なんら問題は無いのです!


 ぼんやりとそんな事を考えていると、ふと神様が挙げていた闇鴉の事を思い出した。



「結局、闇鴉には出会いませんでしたね。」


「そうだね。闇鴉は暗い所を好むから、洞窟にさえ行かなければ日中に出会うことは稀なんだ。

 あの時は洞窟に進むかこっちを通るか分からなかったから、どちらも紹介しておいたんだよ。」


「そういえば……あ。結局、洞窟の方を通っていたらどうなっていたんですか?」



 言いながらあの薄暗い洞窟を思い浮かべる。

 これといった光源もなさそうでしたし、あそこを進むのは苦労したでしょうね。……あっ。でも、私には〈暗視〉があるんでした。神様もその辺は対策済みな予感がするので、案外余裕だったかもしれませんね。


 むむむと、考えている私を横に神様は話し出す。



「まあ、今なら言ってもいいか。

 洞窟のルートは15分も歩けば最後の広場に辿り着くようになっていたんだよ。」



 ほら、そこに出口があるだろう?という言葉に振り向くと、私たちが出てきた道の横の石壁に確かに横穴があいている。

 納得して頷くも、何かが引っかかり素直に感心できない。

 うーん?何が気になるんでしょう。……洞窟のルートは15分も歩けばここに辿り着ける……?

 ……あっ。ここまで来るのにかかった時間は40分強……あっれれー。おっかしーなー?倍以上かかってますよー?ふ、ふふふふ……聞いてない。一言も聞いてませんよ!?私……!



「洞窟のルートって近道の事だったんですね。」



 内心は冬の雪山のごとく吹雪が荒ぶっているが、そこはそれ、全力でにこやかに微笑む。

 ふふふふふ……ここは言い逃れさせませんからねぇ!


 ニコニコと笑って神様を見つめる。その笑顔に何かを感じたのか、フルリと震えた神様は首を傾げたものの頷いた。



「うん。言わない方が楽しんでくれるかと思って。」


「へー。そーですか。へー。」


「…あれ?もしかして、怒ってたり……?」



 冷や汗をかき始めた神様にニコニコと笑顔を浮べる。

 ふふふ。今更焦っても遅いのですよ…!



「ガイドとしてはもっと早くに言うべき案件でしたよね?」


「え、えっとね?ガイドとは言っても、情報提供は各ガイドの判断に任されているんだ。」


「だから、神様は悪くないと?」


「そこまでは言わないけど……。」



 言い淀んでこちらを上目遣いで見てくる神様に、ここまでにしておくかと考え直す。

 まあ、神様としては良かれと思ってした事ですからね。神様セカンドな私からしたらこの辺りで妥協すべきでしょう。(※ファーストは海。)



「分かりました。神様も良かれと思ってのことでしたし、ここは大人な私が妥協します。」


「大人な……?」



 胡乱な視線を向けてくる神様にニコリと笑いかける。



「ええ!私は大人ですからね!神様のお楽しみってやつに付き合ってあげるのです!」


「うっ……。そう言われると……。」



 ふっふっふ。いい感じにダメージを受けてますね。神様のお楽しみに付き合っているのは事実ですから?ええ。このダメージは確定ダメージなのです!


 思惑通りに精神的ダメージを受けた神様にはフォローという名の飴をプレゼントしておく。もちろん、飴と鞭は上手に使ってこそですからね♪



「いえ。神様が負い目に感じることは無いですよ?私は妥協する事によって神様に献身できるのですから!神様の信者たる者、神様への献身はご褒美なのです!」


「け、献身がご褒美?それで嬉しいんなら……うん、まあ…………いや、やっぱりそれでいいの!?」


「いいんですって。それとも、神様のあの誓いは嘘だったんですか……?」



 不安げな表情をつくり、神様を見上げる。

 まったく。1日に1回はこのやり取りをしないと神様としての自覚が無くなるのは神様の欠点なんですよねぇ。……ハッ!この言葉、なんだか神様を洗脳してるみたいですね!?うわぁ。全然そんな気は無かったんですが。自分で自分に引いちゃいます。うわぁ。


 とはいえ、眉を下げた私を見て慌てる神様を見て思う。


 イケメンを誘惑する悪女ってこういう気分なんですね、と。


 何やら訂正しようとしている神様にもうそろそろいいかと声をかけることにした。新しい発見をさせて頂きましたからね。これ以上は要らないのです。



「本っ当に、嘘じゃないからね!?ちゃ「あ。はい。じゃあ、大丈夫です。」んぇっ!?」


「信じていますから。神様のこと。」



 ニコリと個人的に一番綺麗だと思う笑顔を作り、神様に向ける。

 信じているのは本当ですから。……とはいえ、時々試したくなるのは人間の性って所でしょうかねぇ。



「いや、でもさっき……。」


「私の神様ならクヨクヨするななのです!」


「あっ。はい。クヨクヨしません!」


「よろしい。では、行きましょうか!神様!」


「え。あれ……?なんで上から目線なんだろう……?」



 首を傾げる神様に「ボーッとしているなら置いていきますよー?」と声をかけて放置し、頂上へと飛んでいくことにした。

 行き方は分かっているので私が先に言ったところで支障はないんですよね。



 ・

 ・

 ・



「本当に置いていくなんて酷いよ!?プティ!」


「いえ、あれは本当に置いてかれた方がどうかと思うんですが。」



 あれから5分ほど歩いた所で呼び止められた私は、神様からの愚痴を聞いていた。

 まさか置いていきますよ?と声をかけてもそのままボーッとして本当に置いていかれるなんて誰が思います?私なら確実に急いで追いかけるのですが。神様って以外にぼんやり屋さんなんですねぇ。


 そんなやり取りをしつつ歩みを進めること10分弱。ようやくたどり着いた頂上は広場ほどでは無いものの、それなりに開けた場所だった。



「ここが頂上ですか。」


「ああ。一応、気をつけてね?何がいるかわからないから。」



 はーいと、返事をしようとしてピタリと止める。

 あれ?今、何がいるかわからないって言いました?何かいるかもしれないから、ではなく……?


 不審に思い、神様をジトっと見つめる。

 視線の先では、神様があっと言いたげに口を手で塞いでいた。

 ふふふ。また、ですか。神様。また後出しをするんですね?これがじゃいけんならそろそろキレられても仕方が無いですよ?……まあ、いいんですけどね?ええ。ただ、私の機嫌が悪くなるだけですから。



「ふふふふふふ……。」


「え、えっと、プティ、さん?」


「あら。何でしょうか?神様。」



 神様の何か言いたげな顔にニコリと笑いかけ、先を促す。

 よっぽど怖いのか、少しばかり震えている気もするが、おそらく気のせいだろう。

 ニコニコと笑い続けていると、その邪魔をするように大きな影が地面を覆い尽くした。



「キュルルルルゥッ!」



 流麗な鳴き声が辺りに響き渡る。その声がした方…上を向くと、そこには1体の翼を持つ獣がいた。

 鋭い嘴にこちらを睨みつけるような眼差し。駆けるように空を飛ぶ姿は正に空の王者と言うべき雄々しさだった。


 スタッと着地するその身軽さに驚きつつも神様に話しかける。



「なんですか!あれ!?今までの敵が嘘みたいに強そうなんですが!!」


「あれはグリフォン……なんだけど、どうして今日に限って出てくるのかなぁっ……!」



 慌てる神様にどういう事なのかと尋ねると、返ってきた答えは神様の様子も納得のものだった。

 曰く、ここの敵は本当にランダムで居ないことが多く、居るとしても火祭鶏ぐらいな事。グリフォンは滅多に出てこない敵であり、流石に出てこないと思っていた……らしい。

 まあ、確かにそれなら仕方がありませんね。……いや、さっきのやり取りでフラグっぽいのが立ってしまったのだというなら神様のせいですが。



「キュルルゥ。」



 身構える私たちの一方で、グリフォンはキュルキュルと鳴き、首を傾げながらこちらへとのしのしとやってくる。

 そこで疑問が湧く。

 あれ?普通、敵対しているなら突進して来ても良いぐらいですよね?


 攻撃してこないグリフォンに一体どうしたのかと神様をチラリと見る。そこには頭を抱える神様が居た。

 あっ。これ、何かありましたね?


 ジトーッとした目を神様に向けると、それに気づいた神様はスっと視線を逸らす。

 そうしている間にもグリフォンは神様に近づいていき、頭をグリグリと擦り付けていた。思わず半眼になる。



「……。」


「い、いや、そんな目を向けないで!?」


「キュルゥ♡」


「あっちょっ……!コラ!やめなさいっ!」



 ……よし。あれは暫くかかりそうですから、ここから見える光景でも眺めることにしましょう。



「ぷ、プティ……!?ちょっ、やめっ……ちょっと待って……!?」



 後ろで繰り広げられる猛獣とのじゃれあいに見ていられないと崖のスレスレに座り、景色を眺める。

 そこには視界いっぱいに砂の海が広がっていた。何処まで続いているのか、波うつようにも見える広大な砂砂漠に後ろで起きている出来事もどうでも良くなる。

 はぁ。私の悩みなんてちっぽけなものだったんですねぇ。神様に懐く猛獣も、神様は神様なんですから仕方がありませんよね。ええ。


 最早悟りを開いているのでは無いかと言うほどに穏やかな気持ちになった私は後ろをチラリと見てニコリと笑う。



「ふふふ。神様が動物さんに好かれているようで何よりです。」


「ぷ、プティさん!?ちょっとくらい助けてく「嫌です。」そんなぁ……!」



 砂に反射する光も思いの外綺麗ですねぇ。と、情けない神様の声をBGMに砂漠を眺め続けるのだった。

次回、エンプティも迷うことがあるようです。


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 神様は、やっぱりオマヌケ♪プティちゃんが置いて行くのも仕方ないのです。 [気になる点] 山頂に到着。グリフォンさんと再会しました。どうやって仲良くなったのかな?やっぱり餌付け?(トンビ…
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