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23話 嘲笑うものには罰を

こんにちこんばんは。

自分で書いておきながら違和感が多くてうへぇとなった仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 火祭鶏をうっかり細切れにしたあと、私たちは広場から先へと続く道を見つけ、その緩やかな坂を進み始めていた。



「さて。次は禿鷹ですかね?それとも、また火祭鶏でしょうか?」


「それは運次第って所かな。確か、頂上に進むまでに5つ広場があって、そこにはランダムで敵が現れるはずだから。」


「へぇ。そうなん……そーいう事は、もっと早めに行ってください。」


「ごめん。忘れてた。」



 ともすれば、テヘッと効果音のつきそうな言い様ではあったが、申し訳なさそうに眉を下げる神様は本当に反省しているようだった。思わずジト目になってしまった私が恥ずかしい……。

 うー。だって、ですよ?神様は私のガイドさんな筈なんですよ?それなのに、この中途半端なガイドで会社から怒られないか心配になりません?お仕事、全うできてないんですよ?


 ジーッと神様を見つめ、段々哀れな子犬に見えてきてしまった私はフォローをする事にした。犬の垂れた耳としっぽが見えてしまった私はきっと重症にちがいないですね。



「…次からは、気を付けてくださいね?」


「うん!本当に気をつけるよ。部屋に入る前に説明する予定だったんだけど、良いタイミングがなかなか無くてさ。」


「……もう、いつ説明しようかと考えたタイミングで言ってください。それで私は問題ないので。後で言われる方が困りますから。」


「でも、それだと面白みが無いだろう?」


「……ソーデスネ。神様のお言葉が全てですから!きっとそうに違いありませんっ!」



 もはややけっぱちでそう言うと、神様はあっと何か気づいたかのように口を開いた。しかし、それ以上言葉を続ける事なく黙り込んでしまう。

 んー?もしや、何やら気まずく思っていらっしゃったりするんでしょうか?それなら、見当違いにも程があるというものなのです。



「えいっ!」



 なんとなく面白くない私は神様の顔の横からぷにっと右頬を人差し指……で押そうにも突き指しそうということで、手で押す。

 驚いた神様が困惑した顔で私を見ていた。



「えっと、何してるのかな?」

 

「いえ、大人は面倒臭いなと思いまして。少しは慰められないかなーなんて……まあ、冗談です。

 それより!先へ進みましょう?これ以上は時間の無駄というものですから!」



 明るい調子でニコニコと神様にそう言うと、何かを察したのかそれ以上何も言うことなく頷き、先へと進んだ。


 道中ではひび割れた岩を見つけたり、湧き水を見つけたりした。岩の隙間からは何やらキラキラとした物が見えたため、神様に尋ねるとそこは採掘場らしい。街で買えるピッケルを打ち付けると鉱石が手に入るのだとか。

 人形がピッケルを持ってる姿……どこからどう見てもシュールですね!


 それ以降は特にこれといって何も無く順調に進み、次の広場が見えてきた。



「よし。次はなんでしょうね?」


「あれは……どっちだろうね。」



 どっちという言葉に首を傾げ、見えてきた広場にいる赤い鳥を観察する。

 赤い鶏冠があるようですね。ふむ。それなら先程の鶏……あれ?それならおかしいですね。火を囲んでグルグル回ってませんから。あれだけ全力で火を守っておきながら、ここでは守らないというのは考えられにくい話ですよね。


 不審に思い、よくよく観察すると鶏冠の周りは赤いが、なんだか違和感がある気がする。少し薄い色のような気がするのだ。

 更に近づけば近づく程、火祭鶏との違いが目に見えて分かるようになった。



「小さい、ですね。」


「そうだね。それに、あれは……」


「……禿げてますね。全体的に。」



 そう。本来はフサフサだったであろう赤い胸毛は所々禿げ、何処かみすぼらしく見えた。何よりも鶏冠が違和感の塊としか言いようの無いものだった。



「あの鶏冠、後付けですか?」


「だね。カツ……コホン。帽子みたいに頭に被せているみたいだ。」


「……今、カツラって言いかけてませんでした?」


「い、言ってないよ?」



 ジトっとした目線を送ると、気まずげに目を逸らす神様。

 そこは別に気にしなくていいと思うんですが。相手は鳥ですし。

 何はともあれ、ここまで来ると話も見えてくるというものですね。恐らく、あの鳥が禿鷹なのでしょう。……鷹なのに鶏に偽装してるってどうなのかというツッコミはさておき、ですが。



「あれが禿鷹ですか?神様。」


「ああ。そうだよ。」


「へぇ。……鷹、なんですよね?」



 どこからどう見ても鷹には見えない禿鷹に首を傾げていると、神様はクスクスと可笑しそうに笑った。



「疑問に思うのも分かるけど禿鷹は鷹だよ。理由はそのうち分かるから今は割愛。」


「えー。いいじゃないですか。ちょっとくらい。」


「ダーメ。楽しみは後に取っておかないと。」



 神様の言葉にムスッとしながらも、仕方がないと切り替える。

 まあ、神様が楽しそうですからね。良いとしましょう。


 ここで話していても埒が明かないと広場の中へと入る。火祭鶏がいた広場とは違い、半分ほどが湖になっていた。先程よりも周りの石壁が低いためか、水面に光が差し込み、キラキラと輝いている。

 ふむ。なかなかに綺麗なスポットですね。水遊びに丁度よさそうです。


 周りの様子を観察すると遠目から見ていたとおり、5羽の禿鷹が水辺に集まっていた。水遊びするものや水を飲んでいるもの、追いかけっこをしているものもいる。

 先程の火祭鶏は15羽も居ましたからね。サイズ感といい、なんとなく物寂しい気持ちになりますね。



「とりあえず、倒しちゃいますか。

 あ。そういえば、あの鳥も何か面白い生体とかあります?」


「えっ。うーん……。……まあ、いっか。鶏冠を取ってみたらいいんじゃないかな。人によっては面白いかもしれないよ。」



 神様の言葉に首を傾げつつ、鶏冠を狙うことにする。

 ……というか、鶏冠を糸で巻き付けて引っ張ってしまえば良いんですよね?多分。


 そう判断した私はすぐさま魔力糸を伸ばし、鶏冠に巻き付けて引っ張る。



「ギョエッ!?ギョッ!ギョォッ……!」



 禿鷹の僅かな抵抗も虚しく、スポンっと間抜けな音と共にとれる鶏冠……付きのカツラ。



「「……。」」



 何とも言えない空気が流れ、禿鷹達は宙に浮かぶそれを凝視する。

 目がとび出そうなほどに鶏冠を見つめる禿鷹達の異様な空気にのまれ、動けずにいると禿鷹達が一斉にキィキィと鳴き始めた。



「キィ!キキキキッ!キキキッキキキキッ!」


「ギョェ……ギョッキョッ!ギョォッ……!」


「キィーキッ!キィーキッ!」


「ギョォ……。」



 鶏冠を取られた禿鷹を囲み、鶏冠を取られていない禿鷹は何やら馬鹿にするようにケラケラとツルツルの頭を指さして笑い始める。

 うわぁ。自分のことを棚に上げて笑うとかアホですか。流石に仲間内でする事じゃないですよ。……うん?ああ。それなら、他の子達も一緒になっちゃえばいいんですね?ふふふ。明日は我が身なのですよ。悔い改めよ!ですっ!


 ニヤリと口元を歪め、ケラケラと笑う禿鷹達へ4本の魔力糸を伸ばして結ぶ。そして、禿鷹達に気付かれないうちにグイッと上へ引っ張った。



「ギョッ!?」


「ギェーッ!?」


「ゲッゲェッ!?」


「……キィ……。」



 スポーンという音ともに離れていく4つの鶏冠。

 驚きからかぼんやりとそれを見つめた4羽は次の瞬間にはそれぞれの反応に分かれていた。

 2羽は自分から離れていく鶏冠を見て目を見開き、もう1羽は返せと言わんばかりに宙を浮く鶏冠に飛びかかる。そして、最後の1羽はあまりにものショックのせいかその場でパタンッと倒れてしまった。

 ……なんだか、悪いことをしてしまった気分になりますね。いえ、悪いことをするつもりでしたので当然と言えば当然なんですが。


 神様の反応が気になり、横を見ると神様は頬を引き攣らせていた。



「うわぁ……。惨いことするね。」


「えっ。……いえ、ほら、同類のくせして虐めるなんて個人的に腹が立ちまして。それなら全員同じめにあわせた方が被害鳥?の気持ちも分かるというものじゃないですか。」



 口を尖らせて不満を漏らすと、神様は苦笑した。



「気持ちは分かるけど、それが彼らの生態だからね。」


「なるほど……。まあ、それならサクッと倒してしまった方がいいですね。なんだか涙目になってしまっていますし。」



 本当に鷹であれば飛んで取ることが出来そうな高さにある鶏冠を、必死に翼をばたつかせて取れないでいる禿鷹達はもはや目に涙を浮かべていた。

 うーん。やっぱり、何度見てもただの禿げた鶏ですよね。鷹には見えないです。


 内心首を傾げつつ糸を禿鷹達の首に巻き付けて切ると、禿鷹達は特に抵抗することなく倒れた。



「これで終わりですね。」


「それじゃあ、進もうか。」


「はいです。」



 神様に声をかけられ、湖の横を通り過ぎようとした時だった。



「「クェーッ!」」



 複数の鳥の鳴き声が聞こえたかと思うと、頭上には大量の鳥が飛び交い始めていた。

 体は赤く、頭はツルリとしている。それはどこからどう見てもあの禿鷹の成体とも言うべき姿だった。

 あー……なるほど?あれは幼体だったんですね。そして、幼体を倒したことで成体がやって来たと。……それも、神様が言うには1羽見かければ10羽居ると思った方がいいんでしたよね。5×10で50羽……多いですね。仕方がありません。ここは空中にトラップを仕掛けるとしましょう。


 空を飛び、壁から壁へと手で触れながら石壁の縦に横にと高さを変えて魔力糸を張り巡らせる。

 時間がかかっても構いません。相手も今はまだ空中で様子見をするつもりのようですからね。


 そうして準備を終え、神様の元へと戻る頃には鳥たちが上から飛びかかり始めていた。……が、次々と見えない糸に引っかかり身動きが取れなくなる。



「今回は粘着糸なんだね。」


「はいです。切断は……もう、さっきの惨劇で十分お腹いっぱいですから。」



 あーと納得したように頷く神様に何とも言えない気持ちになりながらも先へと進むことにした。

 広場の敵は倒しても倒さなくても良いらしいんですよね。……あれ。それなら、余計なことをしなければここまで戦闘無しで来れたのでは……気づかなかったことにしましょう。うん。それが一番平和的ですね!

次回、頂上へ


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] プティちゃん、エグい♪そして禿鷹さん達には提案者としてご冥福をお祈りいたします。「ゴメンね♪」 しかし、ここまでショックを受けるとは(三羽ほど行動不能になっていたよね(笑)) [気になる点…
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