20話 神様ランキングは遠く
こんにちこんばんは。
随分とお久しぶりですが、ようやく自由を手にした仁科紫です。
あけましておめでとうございます。
本年も良き暇つぶしのお供にしていただけましたら幸いです。
それでは、良き暇つぶしを。
そんなこんなで神様ランキングの参加を目指すことになった私だったが、一つ問題が生じた。
神様ランキングに参加するにはなんと参加条件とかいうものがあり、今の私では条件を満たせていないらしい。
…まあ、ある意味当然なんですが。初心者過ぎてマトモに戦えるわけないですし。そういったものはあってしかるべきでしょう。
思い至らなかった私はちょっと残念…ぐぬぬ。いえ、悲しくなんてありませんからね!?
という訳で、ここ一週間程はひたすら敵を倒し続ける日々を送っていたのでした。
「キャウッ…!?」
「ふぅ。これで何頭目でしょうか?」
「うーん。1時間に10頭は倒しているから、15×10×6くらいで900は倒してるんじゃないかな。」
神様のあまい見積もりに苦笑いを浮かべてそちらを見る。いくら神様のお言葉と言えども、純然たる事実がある以上は否定しない訳にいかなかった。
「いえ、さっき【狼の天敵】とかいう称号を貰ったぐらいなので、恐らく2500は倒していますね。」
「あれ。もうそんなに倒してたんだ。
まあ、狼は群れで向かってくるからね。1時間に10頭はさすがに少なく見積もりすぎたかな。」
頬を掻きながら少し残念そうに呟く神様にニヤリと笑い、からかうチャンスだと声をかけようとした。
「ガゥッ!」
しかし、運悪くもそのタイミングで次の狼がやって来た。近づいてきているのは辺りに張り巡らせている糸から伝わってきてはいたが、このタイミングでなくても良いだろうと心の中でため息をつく。
まったく。もうちょっとくらい待ってくれたっていいじゃないですか。邪魔をするのは馬に蹴られても仕方が無いことなんですよ?
ちょうど狼が踏みつけた糸を粘着性のものに変化させ、狼を転かす。
更に、細く鋭利な糸を上から忍ばせ、首に括りつけてギュッと引っ張るとそれだけで簡単に狼は倒れた。
当然だがそこで襲撃が終わるわけがなく、次々と襲いかかっては罠にかかる狼に慌てることなく処理していく。
これ、意外と簡単なんですよ?
右側から伸ばした糸を蜘蛛の巣状に分岐させて、左側から伸ばした糸を捕まえた狼に伸ばしてはキュッとするだけなので、そこまで処理能力は要らないんですよね。
ふふふんっと鼻歌交じりに倒していると、呆れた顔の神様が目に入った。
「なんです?」
「い、いや、なんでもないよ?」
問いかけた瞬間、目を逸らした神様に首を傾げながらも最後の狼を倒し終えた。
さて。からかいますか!
「かぁみっさま♪」
「うん?なんだい?」
ウキウキとした気分で話しかける。
そうですねぇ。…そろそろ進化とか出来ないんですかね?っていうのを聞いてみるとしましょう。
ただ聞くだけでは面白くありませんから…。
「私たち。そろそろ次のステップに進んでもいいと思うんです…。まだ、ダメですか…?」
頬を上気させるイメージで表情をつくり、神様から見て上目遣いになるように位置取りしながら言ってみる。
ふふふ。ちょっぴり恋する乙女風ですよ!
どういう反応をするでしょうね?
内心でニヤニヤとしつつ反応を待つ。
1秒、2秒と数え、しかしながらなかなか返ってこない返事に痺れを来たしてそちらを見ると、神様は困った顔をして私を見ていた。
あー。これはやらかしましたね。
たまに加減を忘れてしまい、今回のように神様を困らせてしまうことがあった。
神様曰く、露骨すぎてどう反応すれば良いのかが分からないとの事だったが、今回もそれに当たるのだろう。
仕方がありませんねぇ。ここはお姉さんらしく私が折れるとしましょう。…実年齢は間違いなく私の方が下ですがね!
「えへへ。冗談ですよ。じょーだん。
それより、進化ってどれくらいで出来るようになるんですか?もうそろそろだと思うんですけど。」
「冗談…。冗談で人形に上目遣いされる僕って……。」
あれ。これは質問が聞こえていないようですね?
何やら冗談という言葉にダメージを受けている様子の神様に仕方がなく付き合うことにする。
うーん。そうですね。モテてる…は、何か違いますし、滑稽だとは思いますがそれはそれで……よし。きっとこれが正解ですね!
「傍から見て変人?」
「ダヨネッ!……って、変人!?そこはせめて、人形に絡まれる可哀想な人ぐらいで…」
「え。本当に可哀想な人でいいんですか?」
思わず本当に可哀想なものを見る目を神様に向けると、神様は両手で顔を覆って項垂れてしまった。
「ヨクナイデス……。」
「何自爆してるんですか神様。ほら、冗談ですから。ね?立ち直ってくださいよ。」
神様の頭上に陣取り、よしよしと頭を撫でるようにぽふぽふ叩きながら神様の様子を伺う。
神様って割りとこういう所があるんですよね。ヘタレというかなんと言うか……。そこも可愛いんで良いんですけどね?
神様に相応しく触り心地のいい艶髪をこっそりと堪能すること1分弱。ようやく立ち直ったのか、覆っていた両手を取り繕うように腰に当てて私を見た。
「……。まったく。からかうのも程々にしてくれないか?」
「あ。神様、今話そらしましたね?今のやり取り無かったことにしましたね!?」
「なんの事だろうね?」
いつもの様にニコリと笑う神様に少しホッとしつつもこれ以上はダメかと神様からパッと離れ、苦笑いを零した。
「まあ、いいですけど……うーん。しかしながら、それに関しては承諾致しかねるといいますか……。
ほら、これもコミュニケーションの一環ですし?ね?」
「ね?じゃないよ。程々にしなさい。」
「むぅ。仕方がありませんね……。
我が君のためでございますから?ここは私が身を引くと致しましょう。」
「我が君って……まあ、いいか。それで、進化だっけ?」
ようやく本題に戻った神様に、話聞いてたんですねと呟きながらも頷く。
「はいです。」
「うーん。進化はステータスを見れば分かるはずだけど…見てないの?」
そう言われてハッとする。
「そういえばステータスなんてものがありましたね!」
「いや、忘れないで!?重要だから!」
いくら神様にツッコミされようが、忘れてしまうものは忘れてしまうのである。そこに例外はないと思うのですけどねぇ。と、内心不貞腐れながらも素直にステータスを開いた。
「ステータスオープンっです。」
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名前:エンプティ
分類:人形族 種族:グラスリング Lv34
属性:無
HP 10
MP 7000
STR 0
VIT 1
INT 88
MND 88
DEX 56
AGI 14
LUK 10
AP 33
種族スキル
〈透明化〉〈魔力回復(小)〉〈浮遊〉〈魔力視〉〈毒類無効化(中)〉〈立体視〉
〈人形憑依:対象【大空の姫君】〉
スキル
〈魔力糸〉〈魔力操作(中)〉〈暗視〉
〈魔力結界(糸)〉〈魔味蕾〉〈魔力変換〉
固有スキル
〈■■■■〉
称号
【ソウゾウを超える者】【神様(?)を崇める者】
【水霊の友達】【糸の操者】
【兎の天敵】【兎の宿敵】【狼の天敵】
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詳細情報
〈暗視〉
効果:暗闇の中でも周りに何があるか分かる。
〈魔力結界(糸)〉
効果:糸を張り巡らし、結界を生成できる。中に入ってきたものを感知する。
【兎の天敵】
効果:兎類を避ける。
【兎の宿敵】
効果:全兎類から敵認定され、兎が積極的に襲いかかってくる。
【狼の天敵】
効果:狼類を避ける。
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ふむ。Lv34ですか。まだ進化には遠いようですね。
「今はLv34でしたよ。」
そう言うと、神様は何かを考え込んだ後、私を見た。
「34……なるほどね。うん。そろそろこの狩場ではレベルをあげにくいし、次の狩場に移動しようか。
ここの適正レベルは30までだからさ。」
「へぇ。そうなんですね。」
なるほど。狩りに適正とかあったりするんですね。知りませんでした。
確かにちょっと物足りなく感じ始めていましたし、頃合かもしれません。
「では、次は何を狩るんです?」
「えっと…この森の奥にいる猪か、草原にいる蜥蜴だね。」
好奇心から神様に尋ねると、この当たりのことは熟知しているのか、すぐに答えてくれた。
猪か蜥蜴…猪は魔力糸で切る事は出来ても、動きについていけるか分かりませんね。蜥蜴なら…そうですね。なんとかなるかもしれません。
「草原に行きましょう。
その蜥蜴さんって私でもどうにか出来ますか?」
「うーん。…実際に見た方が早いかな。」
そう言われて連れていかれた先。そこは以前、森に迷い込んだ時に見た覚えのある草原だった。あの時は分からなかったが、かなり広い。見渡す限り草原が広がる…が、それよりも目を引くものがあった。
「……神様。蜥蜴って言ってませんでした?」
「うん。言ったよ?蜥蜴って。」
「ですよね。…おかしくありませんか?大きさとか。」
私の見間違いかと隣に佇む神様に尋ねると、神様は首を傾げた。
「そうかな?爬虫類なんだし、あれぐらい普通だと思うよ?」
「……はぁ。神様。何と比べているのかは知りませんが、世界最大の爬虫類であるオオアナコンダやアミメニシキヘビでも10mが限度ですよ。蜥蜴なら尚更、3m程が最大だと聞くのです。」
確認しながらも口に出し、やはり私は間違っていないと結論を述べる。
「あの超巨大すぎる蜥蜴はふ・つ・う・は!おかしいんですよっ!」
普通の常識に基づいた精一杯の主張。しかし、私の思いは届かず、神様は尚も首を傾げるだけだった。
いえ、あれは流石におかしいですよね!?そう訴えたくもなった原因に目を向ける。
そこには巨大な蜥蜴がいた。…電車一両ほどの。
遠目では確かに小さなただの蜥蜴に見えなくもなかった。しかし、そこで違和感に気づいた。気づいてしまった。この距離で普通の蜥蜴の大きさに見えるなら、実際の大きさは如何程のものであるのか?と。
近づく程に大きくなっていく蜥蜴の姿に思わず目を逸らす。
やはり何かがおかしい…。そう思っているうちに攻撃可能範囲に近づいてしまい、その頃には見上げる程の大きさになっていたのだった。
「神様の常識が心配になって来ましたよ…。」
「えっ。酷くないっ!?ちゃんと蜥蜴じゃないか!」
思わずこぼれたため息とともに呟くと、いかにも傷つきましたとばかりに私を見る神様。しかし、そこは私も引く気がない。
「酷くありません。蜥蜴はもう少し小さくてカッコ可愛いのです。ただゴツゴツとしてカッコイイだけの爬虫類を蜥蜴とは呼ばないのです。」
「それはオオトカゲを見てないからじゃないかな!?」
「?オオトカゲはトカゲじゃないですよ?」
「…え。どういう理屈?」
まさかの返しにポカーンとしている神様であるが、これは断じて謎理論では無いのである。……多分。
いえ、ほら、海ったら友達と仲良くなるより動物と仲良くする方がよっぽど楽だったみたいで結構、動物に詳しかったんですよね。
その過程でトカゲの滑らかでそれでいて鱗感があり、ボテっとしすぎないお腹のあのフォルムをよっぽど気に入っていたらしいです。一方でオオトカゲは海的に微妙だったらしく……。
尚、理想のトカゲはニホンカナヘビらしいです。……もはやトカゲ科じゃないじゃん!というツッコミは却下です。ええ。……なんだか、悲しくなってきましたね。どうしてトカゲについて語っているんでしょう。あ。因みに、ボッチじゃないですよ?ええ。ちゃんと友達はいました。……一人だけ。……自分で墓穴掘ってどうするんですかね!?
何はともあれ、と神様に笑いかける。これを機に常識を身につけるといいのです。……あ。でも、そういえばここはゲームの中……まあ、それはそれ。これはこれですね!
「ふふふ。一度トカゲ科で調べてみると良いのです。あ。カナヘビ科でもいいですよ?皆スベスベしていて可愛らしいですから。」
「…ごめん。分からないから、今度調べてみるよ。」
「是非、そうしてくださいな。」
神様のそれはどういう違いだと言いたげな顔から目を逸らし、蜥蜴に視線を戻す。素早くはなさそうだが、油断大敵だ。
うーん。やっぱり可愛くないですね。
一先ず、魔力糸を不可視化。蜥蜴に近づけさせ、首にシュルリと巻く。
「キュルッ?」
そこで何やら違和感を覚えたらしい蜥蜴に首をフルフルと動かしたが、もう遅い。すぐさま糸の属性を切断へと変化し、キュッと引っ張った。
「キュ!?キュゥッ……。」
「おー。案外簡単ですね。近づいても攻撃してきませんし、これなら余裕そうです。」
「まあ、今のプティならそうなるだろうね。……本当は、硬い鱗に苦戦したりするんだけど…プティだから仕方がないか。」
何やら呆れた視線を神様から感じる。
これは……からかえってことですかね?ふむ。そういうことなら、私とてやぶさかでは無いのですよ?
「かーみっさま♪」
「……何だか、嫌な予感がするのはどうしてなんだろう…?」
「全ては神様への信仰の前にひれ伏すのです!」
「うん!言ってる意味がよく分からないね!?」
こうして再度始まったレベリングの結果、その日のうちにレベル40へと到達することが出来た。……あと、10レベルとか遠すぎません!?
次回、2回目の進化へ
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




