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198話 なれない行動は空回りのもと

こんにちこんばんは。

迫り来る試練に頭を抱える仁科紫です。

諸事情で遊園地編が終われば完結にしたいと思います。今年度が山なのです……。


それでは、良き暇つぶしを。

「皆さんようこそ!空の楽園、シエロパークへ!」



 返事のあった全員の到着を確認し、声をかける。ニコニコと笑っている人もいれば、興味津々で待ちきれないといった人、ただ静かに頷く人などそれぞれの反応が返ってきた。

 各々を見れば遊園地の招待と銘打っていたため、それに見合った服装をして来ている。普段は見ないカジュアルな服装が目に新しい。

 特に目を引くのはやはり女性陣だ。気合を入れてきたのだろう。


 ルカさんは、和装は和装でも普段の陰陽師のような服装ではなく、月に隼の絵が入った黒い小袖の着物に白い袴を合わせている。ショートブーツを履き、長めの髪は赤い簪でとめてハーフアップという和モダンな服装は、色合いこそ少し派手だがルカさんなりに気合を入れた結果なのだろう。

 うーん。見事にから回ってますねぇ。流石にデートに隼は……これからカチコミにでもいけそうな服装ですよ……?


 トアさんはというと、いつものハレン……こほん。少々際どい服装から一転、淑女らしい服装になっていた。

 ひっつめにして纏めている髪はおろされ、黒の丈の長いカーディガンに花柄の刺繍が特徴的な品のあるブラウス、青色のタイトスカートを合わせ、白銀のシンプルなヘアピンが癖のない黒髪によく映えている。如何にもお淑やかな美女といった服装に二度見したほどだ。

 いつもかけている眼鏡がないだけに一瞬誰だか分からなかった姿に思わず感心する。人は変われば変わるものですねぇ。


 そして、トアさんと逆の方向に大変身している人がもう一人。なんと、メルフィーナさんである。

 いつもはローブ姿で如何にも淑女然としているが、今日はカジュアルな透け感のある白い半袖にダメージの入ったデニム生地の紺色の短パン、クリーム色のキャップ、ハイカットのスニーカーと、露出多めの服装だ。半袖の中にストライプのキャミソールを着ているため、見苦しくはない。

 むしろ、普段は見えないスタイルの良さがこれでもかと強調されており、隣にいるサブマスターのアル・マキナさんは顔を真っ赤にしてたじたじになっている。それをメルフィーナさんは悪戯っぽく見ているのだから、狙ってやっているのだろう。なんとも策士である。


 他を見渡した中である意味一番浮いているはヘルメスファミリアの2人組だ。2人ともファミリアの正装だとばかりにお揃いの白衣を着て目を輝かせている。この世界の技術屋とも言うべき彼らのことだ。見知らぬものに好奇心を刺激されているのだろう。


 気合いを入れているものと、気楽なもの。それぞれの服装の気合いの入れ方が異なる理由は単純。そもそもの目的が違うからだ。

 神様に聞くまで知らなかったのだが、なんと今回参加のマスターとサブマスターは半分が付き合っている、または意識しあっている関係であるらしい。

 つまり、今回の招待の成功は彼らがいい雰囲気になれる、または付き合う段階まで辿りつけるかが鍵となるのだ。

 因みに、アレスファミリア、アテネファミリア、ヘルメスファミリアは別であり、デュランさんは神様の様子を見に、妖華さんは好奇心に駆られて、カルマさんは探究心から来たらしい。

 なんだか頭がこんがらがってきましたね……。

 要は、今回のカップルはゼウス、ヘラ、レトの3つのファミリアのマスターとサブマスだ。他は単なる物見遊山となる。どちらにしてもしっかりと楽しんでもらうつもりですが。



「案内のいる方は入場後私の方へ!個別に好きに回りたいという方はお好きにどうぞ!

 尚、当パーク内での飛行は制限しているため、移動は徒歩、又はパーク内の乗り物にてお願いします!

 それでは、良き時間をお過ごしください!開園です!」



 パパラーッと空がラッパを吹くと共にエントランスが開く。恐らく、今後二度と閉まることはないエントランスには、2名の受付係がいた。

 入場の手続きは省略するが、パークの行動を把握するために手首に魔法陣のスタンプを押してもらう。

 この魔法陣には一定の高さ以上の飛行禁止、各アトラクションでの搭乗時のマナー違反防止、他者への暴力禁止など、行動に制限をかける効果と居場所を把握する効果がある。

 勿論、押す際に確認と了承を得ることを忘れない。


 全員の入場が終わるのを場内の広場で待つ。

 入場した12人は半分以上が各々の思う所へと歩き出していく。てっきりルカさんとアキトさんもそうなのかと思えば、何故か目の前にアキトさんがおり、声をかけられた。



「よう。エンプティ。来たぜ。」


「アキトさん!」


「招待してくれてありがとう。それにしても凄いものを作ったね。」


「デュランさんも!」



 あれ。それなら、ルカさんは……



「どうしたの?ルカ。もしかして、あまりにもの鈍感さに負けた?」


「うっさい!そんなんじゃねぇし!アタシは負けてない!ただ、不自然じゃないように……」



 何故か空と話していた。ごにょごにょと言葉にならないものを吐き出すルカさんに空は苦笑をうかべる。どうやら誘ったはいいものの、なら皆で遊ぼうぜ!となったようだ。さすが厨二病をこじらせた陽キャ。ルカさんの思惑を超えていく。

 まあ、想像はつきますねぇ。それならどこかのタイミングで2人きりにしてあげませんと!


 パークの案内ツアーの参加者は結局、アキトさん、ルカさん、デュランさん、アレスファミリアのサブマスターであるシュべリエさんの4人らしい。初めての案内には丁度いい人数だろう。

 気合を入れていきますよー!


  4人とも絶叫系は余裕とのことだったため、早速ヘルサイドへと向かう。まずはロープウェイに乗るのだが、実はこのロープウェイ、定員を4名にしてある。案内役は私と神様の2人で行うため、全員で6人になるのだ。ふむ。これは……



「アキトさんとルカさんは先に行って貰ってもいいですか?」


「ん?いや、オレは人数が多い方が……」


「んん!ほら!せっかくこう言って貰えてんだし、好意に甘えて行こうぜ!」


「あっ!ちょっ、そんな引っ張んなくてもいくっての!どうしたんだよ……ったく。仕方ねぇなぁ。」



 怪訝な表情をしながらも仕方がなさそうにルカさんについていくアキトさん。いつもなら逆の立場なだけに、ルカさんの様子がおかしいことはバレているのだろう。ルカさん、意識しまくってますからね。どうなるのやら……。



「あー。もしかして、これってそういう感じ?」


「本当はあの2人だけの予定だったんですけどねー。」


「あ、あの、私たちがここに居ても良かったのでしょうか……?」



 不安だという顔で尋ねてくるのは、アレスファミリアのサブマスター、シュベリエさんだ。

 筋肉のついた大男の外見からは想像できない程に所作は丁寧で言葉遣いも声も中性的で優しい。周りに花が舞っていそうな雰囲気をもつため、何故か小動物的な愛らしさを感じる不思議な方だ。私よりよっぽどお嬢様っぽいんですよね。この方。



「気にしないでください。

 プレオープン的な感覚で招待しただけなので、むしろ感想を言って貰える方がありがたいです!」


「そう、ですか?」


「はいです!あと、敬語じゃなくてもいいんですよ?私はこういうキャラというだけですから。」


「えっと、うん。分かり……分かったよ。エンプティさん。」



 エヘヘと笑うシュベリエさんは近くにいるだけで浄化されそうに感じるほど無垢だ。このほわほわとした雰囲気を醸し出せる人物はきっとそうお目にかかれないだろう。ちょっと拝んでおきますか。私にもその恩恵を下さい〜。



「えっ、あ、あのぅ……?」


「こら。遊んでないで行くよ。プティ。」



 ペシッと頭に軽い衝撃が走り、神様の手が頭上にある事に気づく。優しくチョップされたようだ。ふ、普段はない神様との珍しいやり取り……!これが恩恵ですか……!?



「なんだかおかしな事を考えてそうだね。先に行ってる2人が気になるし、置いていこうか。」


「ま、待ってくださーいっ!?」



 尚、この間ずっとデュランさんは笑い転げていた。私達は見世物じゃないんですけどね!?


 ・

 ・

 ・


 騒々しいやり取りもロープウェイに乗れば景色に意識がいき、落ち着いた雰囲気が流れた。やはりシュベリエさんは可愛らしく、あれこと指をさしては見つけたものを教えてくれたのだが……うーん。やっぱり見た目と中身が違うと一瞬目の前の光景に首を傾げたくなりますね。


 脳内の処理を適切にしつつ辿り着いたロープウェイの駅には、手を引っ張るルカさんと宥めるアキトさんがいた。これまた珍しい光景ですね。



「だぁかぁら!早く乗り物に乗ろーぜ!待ってる間で1回くらいは乗れるだろ!」


「いや、待たないと行けねぇだろ?そこは。」


「そんなのアイツらだって分かって……はぁ。タイムオーバーかよ。」



 舌打ちをする勢いのルカさんにあちゃーと頭を抱える。やはりルカさんは気負いすぎて空回りしているようだ。

 このままでは寧ろ逆効果になりかねない状況に少しお節介をやくことにした。



「あれ?お2人ともまだ居たんですか?」


「あ?待つのが普通だろ。」


「それもそうなんですが、ルカさんの反応の方が製作者としては嬉しい限りなのですよ。

 アトラクションの一つ一つはだいたい数分で終わりますし、むしろ待ち時間のない今だからこそ好きなだけアトラクションを楽しめるんですからね。」



 むしろ待つなと圧をかけるように言えば、訝しげな顔をしつつもアキトさんは首を傾げる。



「……そういうもんか?」


「はいです!なので、待ってる暇があればすぐゴーです!なんなら、今すぐでもいいんですよ?」



 これでどうだと神様を見る。神様は仕方がなさそうに苦笑いし、私の頭をポンポンと撫でる。

 ちょっ、急はやめてくださいー!何故か心臓がうるさくなるので!



「ふーん……。分かった。ルカ。どれ乗るんだ?」


「えっと、ジェットコースター。」



 ルカさんが指さす先には試運転中のジェットコースターがある。今回はあまりグルグルと回転するタイプではなく、上下にアップダウンが激しいタイプのジェットコースターにしてみた。

 好みの問題ではあるが、回転よりは速度を楽しむ方が楽しそうだったのだ。いつかはグルグルするタイプも作ってみたいところだ。



「あー……あれな。りょーかい。そっちはどうする?」


「僕らは火山の方に行ってみるよ。火山の中の探検ツアーがあるみたいだからね。」


「火山の中……!気になります!」


「えっ。それ、オレも行き「ほら、行くぞ!」……また後でなー!!」



 何故か遠い目をした気がするアキトさんはデュランさん達の予定を確認すると、ルカさんに引っ張られて去っていった。

 さて、これで距離が縮まればいいのですが。

次回、それぞれのデート


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 十人十色の光景ですね。 ハレンチで無いなんて……中身は別人ですかね~(笑) [気になる点] 問題点を洗い出す為のモルモットが来ました。  ……かな♪ [一言] 楽しめれば良いのですから…
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