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192話 好奇心は程々に

こんにちこんばんは。

やはり登場人物は4人くらいが書きやすいと再認識する仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 さて、順当に晴雲羊の毛を集め切り、ついでとばかりに出てきた晴雲羊たちのボス、曇天羊を狩ることで曇天羊の毛も集めることができた私達は、いよいよ肉体労働の舞台となる大地の街の郊外にやって来ていた。

 大地の街の外には上質な鉱山が存在しており、今回やってきたのも数多く存在する鉱山のうちの一つだ。

 集めたい素材はガラス3800個、ミスリル5200個、鋼77320個、鉄7200個、セメント1000個、砂4000個だ。

 途方もないほどの量ではあるが、やってやれないこともないだろう。

 それに、きっとゲームの採掘ですからね。通常よりは簡単な……



「あの、これはなんでしょう?」


「ツルハシだよ?これで採掘ポイントを掘るんだ。」


「えっと、それは分かるんですけど……大きすぎませんか!?」



 なんとそのツルハシ。2mはゆうに超えており、人が振れば振り回されること間違いなしの存在感を漂わせているのだ。勿論、私が使えばどうなるかは想像がつくことだろう。

 まさか、この大きさが通常サイズなのかと今回は着いてきた空とイアさんに目を向ける。

 当然とばかりに頷いたイアさんは置いておくとして、全力で首を横に振る空には激しく同意したいところだ。ですよね。これ、普通じゃないですよね!?



「私、多分いや絶対持てませんよ!?こんなの!」


「大丈夫。これは空くんと僕用だから。」


「あ。そうなんですね。」



 ほっと胸をなでおろし、確かに2人であればいとも簡単に使えるだろうと納得する。

 空は私と違って物理特化型ですからね。アレを余裕で振り回してくれるんでしょう……悲しくないですからね!?



「そもそも姉さんはいろいろと能力値的に足りてなさそうだよね。」


「うっ……あれ?もしや私、役たたず……?」



 あれ?え?と、空の追撃に思った以上のダメージを不意打ちでくらい戸惑っていると、神様が不敵な笑みを浮かべた。



「そうだと思って、準備してきたんだよ。」



 ドンッと重量を感じさせる音をたてて置かれた謎の物体を見上げる。それは最早装置とも呼ぶべき代物だった。

 キャタピラのついた土台にツルハシを固定したような機械とでも言うべきだろうか。簡単に言いすぎて最早この表し方でいいのか怪しいが、とにかく自動で採掘してくれそうな機械ではある。

 隣に並ぶツルハシの倍はありそうな刃の大きさに思わず頬が引き攣ったが、もしやこれで私も簡単に採掘出来るのだろうかと目を輝かせた。



「か、神様!もしや、これで私にも簡単に……!?」


「ほら、プティってVITが1から変わってないだろう?どんなツルハシもVITが10は要るからさ。

 プティにも使えそうなのを作ってみたんだ。」


「ありがとうございます……!」



 私のことを考えてくれていた事に嬉しくなって神様に飛びつけば、困ったようにしながらもしっかりと受け止めてくれた。

 わぁい。神様の匂い……って、じゃなく。これじゃあ、私が変態さんになってしまいます……!

 見る限り、神様にとっては親戚の子どもを可愛がるような気持ちでいるみたいですし……うーん。そろそろ進化の件、考えねばかもしれません。


 なんやかんやあり、結局進化をしていない私。

 あの時は空がいないからかとも思ったのだが、揃った今でも条件が整っていないらしくまだ進化できずに居たのだ。

 いったい何がダメなんでしょう?

 進化には特殊な条件が揃わなくてはダメな事例もあると聞きますし……。

 神様の話によれば、時間、場所、状況など実に様々な条件があるらしい。

 先送りにしていましたが、やはり……



「おーい。プティー。使い方を説明するよー?」


「はっ!お願いします!」



 思考が明後日の方向にとんでいくのも慣れたもので、神様は呆れた顔をしつつも簡単に説明をしはじめた。



「この道具は魔力を使って動かすんだよ。

 これがリモコンね。」



 神様の手元を見れば確かに四角く黒いオモチャの車のリモコンのようなものがある。

 ON/OFFボタンで本体を起動させ、移動は十字キー。モード選択は移動、採掘の2つあり、掘る速度はダイヤルで10段階の調整が可能。動力にはリモコンを持っている人の魔力が勝手に吸われて使用されるのだとか。

 つまり、動かしている間は自動的に魔力が消費されるため、MPの確認が必須ということですね。



「採掘速度を速くすればするほど消費魔力量は増えるから、そこだけ気をつけてね。はい。」


「ラジャー!です!」



 渡されたリモコンを受け取り、早速とイアさんにオススメの採掘ポイントを探してもらう。

 イアさんが静かに指をさした方向へと動かすべくリモコンのスイッチを押して掘りますくん(命名:私)を稼働させる。すると、土台についたキャタピラがウィーンと動き始めたかと思えば、カタカタと動き凸凹とした山道もなんのそのと移動し始めた。



「おおー。」


「我らが父はまた面妖なものを作った。」


「でも、楽しいですよ?これ。」



 イアさんの言う地点に到着し、ダイヤルをまずは1に合わせる。ゆっくりとではあるが、カコンッといい音が鳴り、岩が軽く砕けた。これなら、もう少し早くても良さそうですね。

 とはいえ、最大まであげるのは流石に怒られそうだと次に5まで上げると残像が見えるほどの速さでガコンッ、ガキャンッと酷い音を立てて岩をみるみるうちに砕いていく。

 その光景に思わずポカーンとしていると、肩に重みを感じた。見ればイアさんが神妙な顔で装置をジッと見つめている。



「……後で貸して。」


「あ。はいです。」



 どうやら面白そうな玩具として認識されたらしい。

 程々のところで交代しませんと、この辺一帯が穴だらけになりそうですね……。

 思わず遠い目をしつつ岩が砕けていく様を眺めるのだった。



「さて。僕らもやろうか。」


「りょーかい。」



 その隣で巨大なツルハシを背負った2人がそれぞれ場所を移動し、振り下ろし始める。130cmくらいの空が2m以上の大きさのツルハシを振っていると迫力が凄いですね……。



「えっと、今でどれくらいでしょう?」


「まだまだかな。今で50くらい?」


「1箇所で100個までしか採取できないから、各々確認しつつ場所は変えてね。」


「はーい!なのです!」



 つまり、10万個近く採取する必要がある以上、1000箇所は変えて採取する必要があるということだ。……なるほど。本当にまだまだですね。

 と、そんな会話をしているうちに装置が止まる。どうやら採掘が終わったようだ。



「自動的に止まるんですね。」


「掘れなくなるから止まっているだけだよ。

 とりあえず、ダイヤルは0にしておいてね。」


「分かりました!」



 それでは違う場所へとイアさんを見れば、目がキランキランに輝かせている事が分かる。あ。これは、リモコンちょーだいって顔ですね。



「えっと、動かします?」


「ええ。」



 落ち着いた声とは裏腹により輝きが強くなる瞳によっぽど嬉しいのだと分かる。

 イアさんってこういう所可愛いですよね。



「使い方は?」


「分かる。問題ない。」



 リモコンを難なく操作し、イアさんが感知したのだろう採掘ポイントへと移動させていく。

 カタカタと動いていく装置にイアさんが首を傾げる。あれ?と、思っている間にもイアさんが動いた。



「〈能力上昇(ステータスアップ)〉」



 唱えると同時にギュルルルっと唸る音が鳴る。

 装置から響いたその音は明らかに異音だ。当たり前のごとく猛発進する装置。

 そして、ここは鉱山。採掘していた場所も当然トンネルの中であり。行き着く結論は……


 ドガーンッ!!


「掘りますくーんっ!!!」



 思わず装置に向けて手を伸ばすが、壁にぶつかったがために舞い上がった土埃のせいでどうなっているのか全く見えない。

 掘りますくんは無事でしょうか……。



「あーあ。派手にやったね。」


「空……。」



 騒ぎを聞いて近寄ってきた空の顔にはこうなると思ったと書かれていた。ま、まあ?私も、イアさんが好奇心旺盛に動けばこうなるとは思ってましたけど!でもですね?流石に、流石に壊しちゃうとは思ってなかったんですよ!


 ずーんと暗雲を背負って落ち込んでいると、肩にポンッと手を置かれた。



「えっと?神様?」


「これくらいで壊れるようなやわな道具は作らないよ。」


「え……?」



 もわもわと立ち込めていた土埃が晴れ、向こう側が見えるようになる。

 その先には壁に向けて走り続けた後と、ツルハシの部分が取れて地面に落ちた掘りますくんの姿があった。

 ツルハシの部分は取れているが、見る限り他に傷はなさそうだ。



「掘りますくーんっ!」


「さっきから思ってたんだけど、その掘りますくんって何?」


「掘りますくんは掘りますくんですが?お名前がないのも寂しいじゃないですか。」



 神様の物言いたげな視線に、どうせネーミングセンスがどうとかの話だろうとは思ったが、無視してツルハシを付け直そうとする。

 えーっと、ここで固定をしていたから、ここをこうして通してはめて……



「僕がやるよ。プティ。」


「私がするので大丈夫ですー。」



 ちらりと神様を見てそっぽを向く。

 多分、これで……あれ。ここがはまってないみたいですね。



「……。」


「……僕が製作者だからね。僕が責任をもって修理するよ。

 その方が掘りますくんも綺麗に直せるし喜んでくれると思うな。ツルハシを付ける位置を間違えると危ないし、ね?」


「……分かりました。」



 渋々とツルハシを神様に渡して修理する神様の姿を眺める。何処からか取り出した工具を持ってツルハシを取り付ける姿は様になっている。

 あ。そうだ。これだけは言っておきませんと。



「神様。」


「なんだい?」


「私、別に小さな子ではないので、道具の気持ちを考えて慰める必要はありませんよ?」


「……っ!し、知ってるよ!」


「本当ですかねぇ?」



 ニヤニヤと緩む口元に気づいた神様が口を尖らせる仕草を見ておや?と思ったが、珍しい神様を見ることができて満足した私が何かを言うことはなかった。



「照れてる照れてる笑」


「プティは子ども。対応に間違いはない。」


「ちょっと黙ってて貰えるかな!?」



 ……あくまでも私は、ですけどね。

次回、多分材料集め最後…?


イアさん、自然と謝るタイミングを逃す。

「……我らが父の道具は頑丈。問題ないと思ってしまったが……。」


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白そうなオモチャ?を手に入れた。 からかわれてますね~、神様♪ [気になる点] パワードスーツみたいなのは作ってないのですか?(間違いなく暴走して振り回されるから用意してないのかな~。…
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