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189話 お金は大切

こんにちこんばんは。

あれ。この世界のお金の単位、そういえば出てきてなかったっけ……あれ。出してないな……!?っということに気がついた仁科紫です。おかしいなぁ……。


それでは、良き暇つぶしを。

「さて。プティ。これで、素材は足りそうかな?」



 計10回の討伐が終わった頃、神様の言葉にハッとして頷く。



「は、はい。十分集まりましたよ?」



 途中、メンバーの火力が足りないために1時間かかった回もあったが、それでも6時間かからずに終わってしまった。

 その事実に呆然としてしまっていたが、素材は太陽石が25個、火焔龍の外皮が352枚、火焔龍の内皮が162枚と目標である太陽石18個、火焔龍の内皮132枚、火焔龍の外皮44枚を十分に上回っていた。この分なら、他の用途にも使えそうだ。

 今回参加した面子も戦える場と素材欲しさだったらしく、ホクホクとした顔をしている。私自身はそこまで戦闘に参加しなかったのだ。全体的に見て不満そうな人間が居ないだけ良かったと思うべきだろう。

 まあ、終盤の回に近づけば近づくほど取り合いになってましたからね。よっぽど火焔龍の素材は良いのでしょう。



「つまリ、目的ハ達成ッテことカナ?」


「そうなりますね。」



 神様と話していると後ろから妖華さんが声をかけてきた。

 どこかワクワクとした様子にはてと首を傾げる。うーん。何かありましたっけ?



「トいうコトハ!」


「ということは?」


「モウ、とぼけルンじゃないヨ!」



 割と本気で何についてワクワクしているのか分からないが、妖華さんからすると焦らされている気持ちになっているらしく、両頬が徐々に膨らんできている気がする。

 妖華さんを怒らせるのは怖いですしね……。

 どうしたものかと困っていると、神様が間に入ってくれた。



「はいはい。少数人数でタイムアタックね。」


「モウ、分かってルじゃナイカ!」



 プンプンと表現したくなるような怒り方はちっとも怖くはないが、どうしても胡散臭さが勝つ。

 というか、対応に困ると気づいて助けてくれる神様カッコイィ……ハッ。わ、私は、今何を考えて……?

 頭が徐々にお花畑と化している気がしないでもないが、今は考えない事とする。

 妖華さんと神様が話している内容が聞こえたらしくひょこりとルカさんが顔を出した。後ろにはアキトさんやデュランさんもおり、3人とも気になって来たようだ。



「で?どのメンバーでするんだ?」


「そンなの、決まッてるダロ?

 ここニ居る6人と各ファミリアのサブマスター4人ダヨ!」


「4人ってことは、ドリーナとウィンドルーシャを呼ぶんだな。」


「そうイうコト!フフフ。ワクワクするネェッ!」



 ニヤリと笑う妖華さんに苦笑いが浮かぶ。

 それはつまり、また私も傍観者として参加することに相違ない。私は人数合わせのようなものだろうから。

 私もファミリアのマスターではあるが……って、そういえば、人数がいなくなったせいでそのファミリアもなくなってしまったんでしたっけ。

 わぁ。私って本当にお荷物にしかならないですね……。



「どうしたの?プティ。」


「えっ。あ、いえ。あまりお役に立てそうにないなぁと。」


「何言ッテるのサ!ちゃンと、プティチャンも人数ニ入ッテるンだカラ、攻撃ニ参加して貰わないト!」


「えぇ!?私、そんなに攻撃力ないですよ!?」



 割って入ってきた妖華さんに驚くが、それ以上に妖華さんの言葉に驚く。

 いや、割と本気で私、攻撃力ないんですが!?



「イヤイヤ、キミ、その魔力量で何言ってンのサ!魔法職専門よりモ多いト思うンだケド?」


「そうなんですか?」


「ソウソウ!さっき名前ガあがッタ、ウィンドルーシャクンよりも多いネ!」


「え。……そうなんですか?」



 ウィンドルーシャさんと言えば、強力な風魔法で火焔龍を切り裂いていた人物だ。そんな人物よりも自分の方が魔力量が多いとは正直思えない。

 元が多いとはいえ、空と分裂してますし。流石に言い過ぎだと思うんですけど。

 救いを求めて神様に視線を向ければ、何故か神様は私から目を逸らしていた。あからさまに言いたくないという雰囲気を感じる。



「神様?」


「あ。ウン。プティは、多い方、ダヨ。」


「イヤイヤ!多い方なンテ過小評価ガ過ぎるヨ!その魔力量ガあれバ、超強力ダケド魔力消費量ガ多すぎテ使えなかッタ、コレが使えるハズ!」



 そう言って妖華さんが取り出したのは古そうな本だった。見覚えのないものだが、妖華さんの口ぶりからして恐らく魔法について詳しく書かれたものだろう。

 つまり、私にコレを使えって言いたいんですかね?



「それは?」


「コチラ、『混沌(カオスオブ)なる夜明け(デイブレイカー)』の魔導書。お値段、なント20000イェン!」


「20000円……?」


「イェンだヨ!まさカ、お金ノ単位も知らなイなンテことハないヨネ?」


「そ、そんな事ないですよ!知ってましたよ!イェンですよね!」



 胡乱な目で私を見てくる妖華さんの視線から背を向け、冷や汗をかく。

 私、この世界で買い物した覚えがないんですよね。基本、神様か空が諸々やってくれますし、お店の店番に関しては値段を言えば皆さん買っていくので、何も問題ありませんでしたし。

 あと、この世界の単位っぽいマークはあったんですが、読めなかったんですよね……。あれ。私って箱入り娘ですか?もしや。

 おかしいなと思考をさ迷わせている間も期待の籠った視線が背中に突き刺さる。

 チラッと振り向く。


 野生の妖華さんがこちらを期待の籠った目で見ている。


 あなたはどうする?

▷にげる

 買う

 攻撃する

 交渉する


 こういうときは……!


▶困った時の神頼み……!



「神様……!」


「うーん。そうだね。

 2万イェンだったら安いしお買い得だよ?買う?」


「何でそんなに前向きなんですかね!?」



 神様はこちら側だったはず……!?と、神様をよくよく見れば目が輝いている。どうやら、神様の中の何かが刺激されたようだ。

 うーん。でも、これって本当に安い買い物なんですかね?

 妖華さんならぼったくりかねないと近くにいる3人を見れば、何故か3人とも目を輝かせている。



「えっと、あれってそんなに凄いものなんですか?」


「凄いも何も、アテナファミリアの魔導書と言えば一冊100万イェンはするんだからな!?」


「それが2万円となれば、かなりのお買い得であること間違いなし、だよ。

 買わないなんてありえないくらいだ。」


「しかも、カオスオブデイブレイカーなんてカッコよすぎだろ!オレが買いてぇくらいだ!

 なぁ。妖華。オレにも売ってくんね?」


「ハァ?アンタの魔力ジャ、全然足りないヨ!

 オトトイキナ!」


「そんなぁ。」


 素っ気ない態度で返され、アキトさんは残念そうにため息をついた。

 確かに、100万するものが2万円だと言うのならかなり得だろう。誰もが目を輝かせるわけである。



「じゃあ、その魔導書、買います!」


「ハァイ!まいどありー!」



 懐から2万イェンを取り出し、妖華さんに渡す。妖華さんは口元の笑みを深めてそのお金を受け取った。



「因みに、呪文は『この世が悪に染まり、明けない夜が訪れし時、我立ち上がりて夜明けが始まる!漆黒よ白く染まりて大義をなせ!全ては無に還り日が昇るだろう!』だから、覚えテおいてネ。」


「な、長いですね……。」


「そこがいいんじゃねぇか!オレが使いたかったぜ!」


「あ。呪文が長いバージョンかぁ。それなら安いのも分かるかな。

 それ、さては作ったはいいけど売れ残ったやつでしょ。」



 デュランさんが苦笑を浮かべて問いかけると、妖華さんはハッハッハと笑った。

 先程までの怪しげな雰囲気が何だったのかと言いたくなるほどの変わりっぷりに相変わらずだと呆れた。

 まあ、これが妖華さんなんですけどねぇ。振り回すのは勘弁して欲しいところです。



「アァ、バレたかィ?絶賛、セール中デネ!

 どうしテモ買い手ガ付かなかったヤツに限ッテ9割引デ売ってるノサ!

 良かったラ後デ本拠地ニ来てネ!」


「そっちが本命だったって訳か。アンタ、本当にいい性格してるぜ?」



 ヤレヤレとルカさんがため息をついているが、それは私も同じ気分だ。

 まあ、折角手に入りましたし、早速試しに行くとしましょうか。



「残りのメンバーにも声をかけて、さっさと火焔龍を狩りに行くとしましょー!」


「「おー!」」



 ・

 ・

 ・



「グァアォオオオオオッ!!」



 前回同様火山から出てきた火焔龍を視界に入れつつ、早速手に入った魔導書を使う。

 魔導書というのは、所謂開けば魔法を覚えることの出来る本であり、また、装備していれば手に入れた魔法を強化することが出来るアイテムの事である。

 つまり、貰った魔導書を手に取り、さっき教えてもらった魔法を唱えればとても強い攻撃が放てるという訳だ。



「この世が悪に染まり、明けない夜が訪れし時、我立ち上がりて夜明けが始まる!

 漆黒よ白く染まりて大義をなせ!全ては無に還り日が昇るだろう!

 〈混沌カオスオブなる夜明け(デイブレイカー)〉!」



 教えられた通りの呪文を唱え、手に取った魔導書を火焔龍に向ける。

 すると、火山の上空を飛翔する火焔龍の上に黒いブラックホールのようなものが現れた。

 その大きさは火焔龍の半分ほど。しかし、余程吸引力が強いのか、火焔龍はブラックホールへと引っ張られていく。勿論、火焔龍も抵抗するべくブラックホールから離れようとするが、完全には抵抗しきれず徐々にブラックホールへと近づいていく。

 まず尾がブラックホールへと吸い込まれた。そして、体の半分ほどを吸収したところでブラックホールが白く変色する。昼間の太陽のごとく輝いたそれは次の瞬間には弾けて消えてしまった。



「……はい?」

「え?」

「ん?」

「おー?」

「えーっと、火焔龍は……消えたみたい?だね。」


「ハハハッ!我ながラ凄いものヲ作り出しテしまッタネ!流石、魔力を50万消費するダケあるヨ!」


「「50万!?」」



 周りにいる面々が、何その消費量……という顔で妖華さんを見た後で、なんでそれを使えてんのという顔で私を見る。

 いや、私もステータス上は26万くらいしかないはずなんですけど……あ。もしや、ニケさんとか他の要素で補充されてたり……?……神様に確認する必要がありそうですね。



「えっと、とりあえず最速攻略達成、かな?」



 こうしてなんとも締まらない終わり方で火焔龍討伐は終わったのだった。

次回、次の素材へ


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 中二病をくすぐるモノが出てきました。通販より怪しい(笑)  ……ナニコレ?凄すぎない? [気になる点] 他にも在庫がありそうですね。プティちゃんに売りつけようとしてません? [一言] あ…
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