188話 戦闘はさっくりと
こんにちこんばんは。
UIの変更に戸惑いつつも前書きと後書きを事前に書けるこの環境に少しの有り難さを感じる仁科紫です。
だが、セッションのタイムアウトに関しては許さん……!前まではもっと緩かったよなぁ( ・∇・)
それでは、良き暇つぶしを。
火焔龍を倒すために人数が集まったのはいい。……が、ここで問題が一つ。
「あの、私、確か5人くらい連れてきて欲しいって言いませんでしたっけ。」
とりあえず、代表者はこちらへと神様の店内へと招き入れて他の人には各々好きに過ごすように伝えてもらう。
さて、問題とは人数のことだ。
私は5人連れてきて欲しいと伝えたはずなのだが、何故か80人と想定していた人数の4倍近く増えているこの現状は少しばかり困ったことになる。主にドロップする素材の量という方面で。
今回、火焔龍を討伐するにあたり、神様から受けた説明によると討伐人数が少なければ少ないほど1人あたり貰える報酬が増えるらしい。
要は分子は決まっていて、それを割る分母が大きくなればなるほど数が小さくなるということだ。
だからこそ、今回挑戦する1回あたりの人数は少ない方が良かったのである。まあ、討伐できるかという問題は神様が居ることで解決できたってだけなんですが。
本来、火焔龍の討伐難易度はレイドボスらしくかなり高いのだとか。
より具体的に言うなれば、上位ファミリアのマスターが3人居れば倒せ、4人居れば安定して倒せる。5人居れば余裕で叩きのめすことができると聞いた時はマスターの戦力が恐ろしく感じたものだ。
尚、これは最低人数の10人中の話である。もっと人数が多ければ数の力で圧倒することも無理ではない……が、今回はアイテムドロップ目当てであり、効率を重視するためにも 人数は少ない方がいいのだ。事前に伝えていたにもかかわらず、どうするつもりだったのかと眉間に皺を寄せて集まった面々を見た。
「ほら見ろ。だから言っただろ。
全部アキトが悪いからな?責めるならアキトにしろ。」
「オレか!?」
「当然だよ。調子に乗って『ついて来たい奴は全員来いっ』なんて言うから。」
「それを言ったらお前らだって人数オーバーしてんじゃねぇか!」
「いヤァ?ほラ、キミたちガ1人モ連れテ来れなかッタときノための保険ダヨ。
少なイよりハ多い方がイイッてネ。」
だから20人連れてきたのだと言い張るデュランさんと妖華さんに、アキトさんが頬を引き攣らせる。
「いや、オレ、その前にお前らに聞いたよな?
『何人連れて行けばいいと思う?』ってな!?
お前ら『多くても困らないし立候補者全員連れてけば』とか言ったじゃねぇかよ!その言い草は酷くね!?」
「まさか本当に全員連れてくるなんて思わなかったんだよ。
普通、多少は人数調整くらいするだろう?」
「そうか?」
「そうダネェ。」
うんうんと頷く3人の姿にアキトさんは益々顔を歪めて救いを求めるように私たちを見る。
しかし、流石に慰めの言葉はないと私たちは首を横に振り、アキトさんは流れるように項垂れてしまった。
「だからアタシは言ったのに……。絶対多いって。
アキトは話を聞かねぇんだから。」
「その後に『アタシは全員連れてくけど』ってたよな!?」
「たく。人のせいにするなんてアキトも往生際が悪いんだから。」
「はぁ!?お前なぁ!」
ドヤッとするルカさんに思わず疑いの目を向ける。コイツ、さてはハメましたね?
どうせ、自分が5人しか集められなかったことを根に持って、アタシは(5人)全員連れてくけどと言ったのだ。ルカ……晴風さんのよくやる手なのだ。間違いない。
とはいえ、アキトさんも相手が悪いと思って諦めた方がいいのに食いかかるあたり、案外アキトさんも状況を楽しんでいるのだろう。そろそろ話も進めたいですし、止めますか。
「あの、そろそろ良いですか?」
「はぁ?」
「良いよね?キミだけ置いていっても良いんだよ?」
「あ、ああ!どうぞ話してくれ!」
神様の黒い微笑み……カッコイイ……。
……あれ?いつの間にこのような煩悩に塗れた脳に?
以前は目の前のアキトさんたちと一緒に青ざめていたはずだが……まあ、それはともかくとして話を進めよう。
神様に目配せをすると、神様は頷いて口を開いた。
「さて、今日は火焔龍を倒すために集まったわけだけど、回数は変えたくないんだ。
10回。これは譲らないから、そっちで人数調整をしてくれるか?」
「ああ。1回あたり20人でのチャレンジだったよね?そっちは何人かな?」
「こっちは2人だ。」
「りょーかい。じゃあ、こっちは18人だね。
僕、妖華くん、アキトから5人。ルカくんから3人で丁度いいんじゃないかな。どう?」
デュランさんと神様が事前にやり取りをしていたかのようにトントン拍子で話が進む。
デュランさんの提案にポカンとしていた3人は首を縦に振り、提案はそのまま受け入れられた。
今日集まる前に既に準備は済ませたという話から、このまま討伐に行こうかという話になったが、そこに待ったがかかった。
「多くもナク、少なクモなくッテ感じノ人数だヨネェ。
ワタシはいいンだケド……後デ、最小人数チャレンジをワタシの指名者デやりたいンダガ、ダメかネ?」
「それは今回の参加のための条件かな?」
「うーン。いヤァ?ワタシは別ニこの希望が通らなくても参加ハするヨ?」
ニヤリと口元を歪めるその様は、肯定しなければどうするかは知らないけどねと言わんばかりだ。
うーん。相変わらず読めない人ですね。多分、本当のことを言ってはいるんでしょうけど。
私たち側からすれば特にデメリットもない。1回回数が増えたところで手に入る材料が増えるだけだ。後は他の3人次第だろう。
「私たちは問題ありませんよ。ね?神様。」
「ああ。僕たちはいいよ。」
「俺らもいいぜ。」
「勝手に決めるなよな。アキト。……まあ、良いけど。」
「良いんだ。」
「うっせ。」
デュランさんのツッコミに照れているのか口の悪いルカさんは了承しながらもそっぽを向いた。あ。こっちではいつも口が悪いんでした。……鼻の先がちょっと赤いですかね。今度会った時からかっておきましょう。
「まあ、皆が良いなら僕も特に断る理由もないかな。それじゃあ、早速討伐に行こうか。」
「「おー!」」
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火焔龍の討伐クエストの受注は火山の街で出来るらしい。
と、いうことでやって来ました火山の街!
相変わらずの熱気にやられつつ火山の街のギルドに入り、今回の参加者を確認する。
「えっと、まずはレトファミリアから。
アキトさん、ドリーナさん、グアンさん、織人さん、ルフさん、アリアさん、ウィンドルーシャさん、陰密さん。」
「おう。」
「アテナファミリアからは、妖華さん、カシューナツさん、究極魔人Fさん、チシさん、ネクロさん。」
「ハーイ。」
「アレスファミリアからはデュランさん、シュバリエさん、ミシェラさん、シェパードさん、わんわさん。」
「うん。よろしく。」
「そして、カオスファミリアから私、エンプティと。」
「アルベルト・テオズだ。よろしく頼む。」
辺りを見回し、誰も訂正する人は居ないのを見て受付へと向かった。
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「それでは、ご武運を。」
「ありがとうございます。」
簡単に終わった手続きにほっとしつつ目的地へと向かう。
火焔龍がいる場所は火山の街のダンジョンと同じ扉から入ることが出来るため、そう時間がかかることなくたどり着けた。移動が楽なのはいい事ですね。
「そういえば神様。」
「なんだい?」
「火焔龍討伐で気をつけないといけないことってなんですか?」
討伐に関しては何も聞いていなかったと今更ながら尋ねる。
既に周りは火山地帯と化しており、溶岩の流れる川が見えるが聞いておいて損はないだろう。
しかし、神様はなんとも言えない表情をした後、ポツリと呟いた。
「多分何もしなくても良いんだけどなぁ。」
「神様?」
「いや、えっと、そうだね。
プティは端の方に居てね。多分、今回はすぐに終わるから。」
「……?はい。分かりました!」
そして、この後、どうして神様があんな表情をしたのかすぐに知ることになる。
「グァアアアアアッ!!」
咆哮と共に赤い巨体が火山の噴火口から勢いよく姿を現す。
黒い2本の硬質な角、腹が赤く背中が黒いトカゲのような体に黒い蝙蝠のような羽が生えた姿は、正しく西洋の御伽噺に出てくるドラゴンそのものだ。
プレイヤー達は各々の武器を構え、降りてくる火焔龍に自身の力をぶつけようとする。
「〈支援:赤〉!
汝の力を解放せよ!〈グラム〉!」
「空は高く、地は低く。万物を粉砕する拳をここに。〈天空拳〉」
「描け!五芒星!邪なるモノを払い給え!〈急急如律令〉!」
「始祖の血よ。躍動せよ。宿敵は目の前にいる。我が槍となりて敵を撃て。〈血の魔槍〉!」
「あか。赤。紅。緋。全てあかく染まれ。全てが染まるまでは終わらない。〈アカの夢〉」
「ギャァァアアッ!?」
マスター達の攻撃を受け、火焔龍が地面に堕ちる。
そこへ次々と他の準備していた攻撃が迎撃する。
「〈風の宴〉!」
「〈身体強化〉!輝け聖剣!貫け幻想を!〈シザークロス〉!」
「巨大なる影よ。包み壊せ。〈シャドウエッジ〉」
「光れ。輝け。十字架よ!〈グリッター〉!」
何度も何度も降ってくる攻撃にジタバタと火焔龍も暴れるが、最初の攻撃で既に翼の皮膜が破れて飛ぶことが出来ない火焔龍は空へ逃げられない。
そして、10分過ぎた頃。
「グァ……。」
次々と放たれる技の前にドッシーンッと赤い巨体が溶岩に沈み込んでいく。
その姿を私はただ呆然と眺めるのだった。
「わー。確かに、これなら私は見てるだけでもいいですね。」
こうして無事に1回目は終わった。
あと9回、これを繰り返すんですね……。神様がなんとも言えない顔をするのも納得です。
これじゃあ、本当に何もする必要なんてないですよ……。
思わず乾いた笑みが漏れ出てもいたし方がないだろう。
次回、サクッと火焔龍戦最後へ
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




