186話 ファンタジーな遊園地とは何か
こんにちこんばんは。
就活によりボロボロなメンタルでふわふわしながらも投稿する仁科紫です。
ポンコツな点が顕になる一話となっています。さあ、何処がポンコツだったでしょうか!?(ヤケクソ)
それでは、良き暇つぶしを。
Q.ファンタジーな遊園地とは何か。
A.現在の世界観とは異なる遊園地のこと
……で、いいんですかね?最早テーマパークですけど。
あれから頭を悩ませ続けている問題がある。それは勿論、遊園地作りに関してのことだ。
遊園地と検索するとほぼ間違いなく出てくる遊具の画像達。遊園地を開きたいなら、これらをなんとなくで並べるだけでも遊園地にはなる。
色々あって忘れていたが、エロスさんを探しに行った際に遊園地を私は見かけているのだ。あそこはただ遊具を並べただけだったが、その光景だけでも十分遊園地に見えた。
しかし、そんな遊園地を私は開きたいのではない。
もっと誰も彼もが楽しめる、ここに居れば楽しく過ごせる、そんな遊園地を作りたいのだ。その為には配置にも拘るべきだろう。
更にプレイヤー達にも楽しんでもらうなら、在り来りな観覧車にコーヒーカップなんて刺激にかける。もっと工夫を凝らし、ここにしかないアトラクションを作らねばならないだろう。
……ふむ。やはり鍵は魔法、ですかね。
魔法は現実にはない力だ。如何に化学が進歩したと言えど、何もないところに物を生み出すことは未だに出来ていない。
それなら、魔法で何が出来るのか。何を生み出せるのか。魔法の属性から考えるとしよう。
火、水、風、土、光、闇。
これらの6属性のうち、最も汎用性が高く派手な演出ができるのは光だ。簡単な花火にもでき、イルミネーションモドキも作り出せる。ただキラキラとさせるだけでも特別な感覚を人に与えるため、乗り物にも組み合わせやすいだろう。
次点で人々に幻影を見せることの出来る闇だろうか。幻影と言えば光のイメージもあるが、この世界では一応闇魔法の分類になる。アトラクションに幻影を組み合わせるだけでも十分楽しめることだろう。……あれ。光と闇って結構似てるんですね……?
それはともかくとして、次の火、水、風、土の中であれば風が使いやすいだろう。
風を使って物を浮かせるも良し、風車を回すように動力にしてもいい。……あれ?もしかして、これで異世界らしい観覧車とかできてしまいますか?
ピーンと来たがものがあったが、今はもっと案を考えよう。
水は急流すべり以外にも、水でできたクッションを使ってゆったりと寛ぐことも可能だ。のんびり安らぎたい人にはピッタリだろう。森の中に開けた空間を作って湖を作るのも良いですね。その景色を眺めながらのんびり……うん。休憩スポットも必要でしょうし、採用しましょう!
後は火と土……火は絶叫系のアトラクションに使えそうなので良いとして、土は……?
土と言われて思いつくものが砂のお城くらいしかない事に頭を抱え、何かないかと唸る。
土、粘土、レンガ……と、最早アトラクションではなく建築材料ばかりが思いつく中、目の前に頭が生えた。はぇ……
「生首ィっ!?」
「酷くない!?邪魔しないように屈んでから覗き込んだだけなのに!」
その声に一瞬驚いたが、よくよく見れば神様だった。
いつもと違って見下ろしているからか、うっかり見間違えてしまった。考えごとに集中していたからというのもあるだろうが。
「いや、せめて横からゆっくり来るとかあるでしょ。」
「あ。空。」
「やっほー。頑張ってるみたいだから、ティータイムのお誘いだよ。」
見れば空の持ったお盆の上にはポットとティーカップ、クッキーが乗せられたお皿があった。
クッキーは神様の手作りなのだろう。綺麗なアイスボックスクッキーに目を奪われつつ、手元で組み立てていたそれを端に寄せて机の上を片付けた。神様のクッキー、とっても美味しいんですよねぇ。
早く食べたいという意思が伝わったのだろう。無言で片付け始めた私に苦笑した2人は、椅子を持ってきて神様が正面に座り、隣に空が座って休憩を始めた。
「ところでそれ、何作ってるの?」
「何って……観覧車ですが?」
空が入れてくれた紅茶の香りに息をつくと神様が話を切り出した。
見れば頬をかき何とも言えない顔で小首を傾げる神様に、これは邪なことを考えているなと勘づく。
「さては、観覧車には見えないと言いたいんですね!?」
「違うけど!?いや、よく作るなーって思っただけだからね!?感心してたんだよ!?僕!」
被害妄想反対っ!と、言いたげだが大抵ああいう時の神様は引いていることが多いのだ。警戒も……あれ?引く……?
「もしかして、完成度の高さに良い意味で引いてました?」
「……ウン。ソンナコトナイヨ。」
「やっぱり引いてたんですね!?」
唐突のカタコトに肩を落としつつ、模型を眺める。
現実世界で調べてきた構造を元に制作したミニ観覧車は、レバーをクルクルと回せば大車輪もクルクルと回る仕組みとなっており、後は巨大化するだけ……のはずだ。
うーん。でも、やっぱり形がシンプル過ぎるんですよね。観覧車の醍醐味は密室で落ち着いて景色を見ることが出来る。この一点に限りますし。……あれ?それなら、別にこの世界で観覧車に限らずともいいのでは……?
「で?姉さんは何を悩んでいたの?」
「あっ。そうでした!」
また思考が飛んでいきかけたタイミングで空の声が耳に入った。
そういえば、土魔法の使い方を考えていたはずだったが、いつの間にか新しい観覧車について考え始めてしまっていた。別に構わないのだが、ここで土魔法に思考を戻していなければすっかり忘れてしまっていたことだろう。
「土魔法の有効的な活用法について考えていたのです。」
「土魔法の有効的な活用法について……?なんだか論文の名前みたいだね。」
「そうですか?分かりやすいと思って……いえ。なんでもないです。」
相変わらずのネーミングセンスだと言われている気がして少しばかりムッとしたが、興味深そうな目で見られればそれ以上何かを言う気にもなれなかった。……む?何故か動悸が……苛立ちで血圧でもあがりましたかね?
「あれ?プティ、なんで顔がちょっと赤k」
「土魔法の有効的な使い方なら、絶叫系に使えるんじゃないかな。」
「ほうほう!どんな感じにでしょう!?」
まさかの有力な空からの提案に食いつき、続きを求めれば、空は苦笑しながらも教えてくれた。
神様が何か言いかけていたが、私の事より空の話の方が優先度は高い。今回は後にしてもらおう。
「例えば、土魔法って地面に関することが多いから、地震を起こしたりだとか、地面から棘を生やしたり、地割れを起こしたりなんかもできるんだよ。」
「おおー!確かにそれは絶叫系に使えそうですね!」
急に地面が揺れたり、割れたりといった事象は人々の恐怖を誘えて刺激的であること間違いなしだ。
そういえば、地震ときたら火山による噴火も使えるのでは……?カタログに火山という選択肢はなかったですけど、魔法で地形を変えて作ることも不可能ではないのでは!?
「神様!島に火山は作れますか!?」
「作れはするけど……何を作るの?」
懐疑的な神様にドヤ顔で今思いついた案を答える。これは普通とは言わせませんよ!
「火山の中を回って、最終的に溶岩の川を滑る急流すべりです!」
「急に危なくなったね!?」
「え。危ないとダメですか?」
おかしな事を言うと首を傾げれば、神様はやれやれと肩を竦める。どうやらコンセプトに間違いがあったようだ。
うーん。でも、プレイヤー達向けならこれくらいでちょうどいいと思うんですけどね?
「いいかい?プティ。メインのお客さんはこの世界の住人だ。つまり、死んじゃダメなんだよ。分かるかい?」
「ですが、内側のエリアをプレイヤーメインにして、外側を住人の方が楽しめるものにしたらいいと思うんですが。」
「流石、姉さんだね。考えられてる。
その客層分けならトラブルも減りそうだし、いいんじゃないかな。」
空の評価を味方につけて神様を見上げれば、真剣な表情で考え込む姿が目に入った。
再び何故か弾む心臓に、世の恋する乙女達は大変だと他人事のように心の中で呟く。
別に鈍感系ヒロインっていう訳でもないのですが、不意に心拍数が上がると首を傾げたくなるんですよねぇ。……神様にバレそうで。
「他にはないものだし、目玉にはなるだろうね。
問題は、溶岩で溶けない船を作らないといけないこと、かな。」
「アンタなら作れるでしょ?」
「作れはするけど……流石に材料がないかな。」
そういえば、溶岩に溶けない乗り物が必要だったのかと空の言葉に感心しつつ、どんなものが必要なのかと好奇心に駆られる。
「材料集めなら私が協力する。」
「あ!イアさん!」
「プティは勤勉。私も手を貸す。」
ドヤッと効果音がつきそうな程度には胸を張るイアさんに大きくなっても可愛いなと声に出さず思う。
以前、イアさんに可愛いと言ったんですが、怒られたんですよねぇ。『この姿は可愛いではなく美しい。間違えない。』って。どうもノスさん辺りの入れ知恵な気はするんですが……まあ、良いとしましょう。2人の仲が良いのはいい事ですし。
「君がいいなら、力を借りようかな。
鉱石類は大地を司る君がいれば見つけやすいし。」
「それなら、先に鉱石を取りに行きますか?」
「うーん。でも、どれくらい必要か先に分かった方がいいんじゃないかな。
闇雲にとる方が目安が分からなくて困りそう。」
「それもそうですね。」
うっかり気持ちが急いてしまったが、空の言う通りだ。
まずは必要な個数を考えなければ。どうせ集めるなら一度で集めきった方が効率もいいだろう。イアさんの負担も少ないはずだ。
「……私は何度行ってもいいけど。」
「無理しないの。この間力尽きかけてた癖に何言ってるの。」
「むぅ……。」
まるで母親のように空がイアさんを窘める姿を見て不思議な気持ちになりつつ、思考は幾らくらい鉱石が必要かという方向に傾いていく。
「神様。仮に線路を作る場合、1mあたりどれくらい必要なんですか?」
「そうだね。大体、鋼が5個で1mの線路は作れると思うよ。2本作る場合は10個かな。」
ふむふむ。つまり、ジェットコースターを作りたい場合の線路の長さは1000mから2500mが一般的ですから、10×2500で2万5千個……ん?2万5千個……?
「……神様。遊園地を作るには一生分の鉱石が必要そうですね。」
「うん。だから、誰もやりたがらないんだよ。」
「凄く納得です。」
現実を思い知らされた私なのだった。
それでも遊園地作りを諦めませんがねぇっ!?
次回、最終的に必要な鉱石の量は?
答:エロスさんを探しに行った街の地下にて遊園地を見つけていたこと。
でした!まるでガイアさんが初めて見るようにエンプティは考えていましたが、思いっきり見てたんですよねぇ……。(ハイ、ポンコツぅ……。)
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




