183話 理想は高く
こんにちこんばんは。
何故か恋愛が書けない仁科紫です。
感情を理性が上回る主人公……おかしい。そんなつもりじゃなかったのに……。
それでは、良き暇つぶしを。
「はぁ……。」
「あれ、どうした?」
「姉さんのことは放っておいたらいいよ。
年頃の乙女の悩みって奴だから。」
「……?」
遠くからコソコソとした声が聞こえたが、それに返事をする気力もなくまたため息をついた。
あれから私たちはいくつかの島を回った後、神様のお店に帰ってきていた。目的を果たしたからというのもあるが、既に夜遅いからというのもある。学校が始まればこうなるのかと思えばため息も出る。
まあ、私の予感は外れていましたし、今の所急いでする事もないので別に良いんですけど。強いて言うなら、神様との時間が減るだけで……。
そう。もしかしたら、他の場所も……?と、いう私の直感はハズレだったらしい。
というのも、イアさんの所は相性が悪すぎただけであり、他は上手く付き合えていたからだ。
その筆頭とも言えるルナさんは旧アルテミスファミリアの島におり、元々顔見知りのルカさんも居ることからそれはもう楽しく過ごせているようだった。
因みに、神様達がどの地を治めているかというと、次の通りだ。それぞれの希望と相性により選ばれているため、神様達の不満もない様子だった。
偶像の地=ヘメラ
鉱山の地=エレボス
楽園の地=エロス
騎士の地=アイテール
月光の地=ルナ
太陽の地=神様
豊穣の地=ガイア
美貌の地=ニュクス
海洋の地(ポセイドン)=ポントス
知識の地=タルタロス
契約の地=クロノス
天空の地=ウラノス
これを聞いた時は、ヘルメスファミリアとエロスさんの組み合わせが恐ろしすぎたが、監視がついているから大丈夫なのだとか。……いえ、あのエロスさんですしねぇ。監視の目を掻い潜っておかしなものを作らせてそうな予感が……今後要注意、ですね。
余計なことを考えたせいで背筋が冷えたが、それはそうと、今の問題は神様との時間が少ないことだ。出来るだけ一緒にいたい気持ちはあるんですが……勉強をしないと神様との思い描いた未来を望むことさえできませんし。
思い描いた未来。端的に言えば神様と同じ企業に就職して一緒に働くというものだが、勿論、所属によっては神様との時間なんてあってないようなものになる可能性は十分に考えられる。しかし、それでも今のゲームでしか会えない状況よりは良いように思えた。
神様と出来るだけ一緒にいたい。
この気持ちは、正直なところ、どこから来ているのか私は正確に理解していない。
ただの依存かもしれないし、執着しているのかもしれない。
少なくとも、恋なんていう綺麗なものではないのは間違いないと私は考えている。
何より、恋をしたことがないからこそ、恋とは恋愛小説のような甘酸っぱくてきらきらとした綺麗なものなのだと思いたい。少なくとも、ドロドロとした私のような感情であって欲しくない。
こんな感情を知られてしまえば神様は離れて……いや、神様は引いても何処かに行くことはないだろうが、ずっとは傍に居てくれないかもしれない。
神様は一緒に居ると言ってくれた。
しかし、私よりも大切なものが出来れば。私の事が面倒に思えば。私から離れていつか忘れ去ってしまうかもしれない。本人は否定していたが、何時どうなるかなんて先のことは誰にも分からないのだ。
ともかく、神様を私に縛り付けるようなことだけは避けなければいけない。しかし、私から神様の傍を離れることだけは出来ないだろう。
ならば、私は神様の傍に居られるように努力しなければならないのだ。一緒にいてもおかしくない立場に。ゲームだけでなく、現実でも隣に立っておかしくないように。
いつか、神様がもう私は大丈夫なのだと、去っていってしまう前に。私は行動しなければならないのだ。
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「それじゃあ、早速色々案を出してみようか。」
「はーい!です!」
次の日。今日は統治に関して案を出し、それを元に島をどんな風にするのかについて考えることになった。
私は知らなかったのだが、それぞれの島に特性がある理由はプレイヤーを呼ぶことで収入が得られるだけでなく、島を栄えさせればその島に因んだ限定アイテム等の報酬が出るからなのだとか。
例えば、地下の空間に研究所があるヘルメスファミリアだが、あれもその報酬により得たアイテムで広大な地下迷宮を作り出している。これは真剣に考えねばですね!
「プティは何がいいと思う?」
神様に尋ねられ、先ほど説明された評価部門について考慮する。
評価部門には、繁栄度部門、統治部門、経済部門、景観部門、観光部門の5部門がある。
繁栄度部門は全てを統括して評価する部門であるため、割愛して統治部門をまず考える。
統治部門は1位がゼウスファミリア、2位がアレスファミリア、3位がヘラファミリアだ。
島には混沌度というものがあり、その度数が低ければ統治がしっかりされているという評価に繋がるのだとか。
因みに、最下位はヘルメスファミリア……ではなく、何故かアテナファミリアである。……あの人は何してるんでしょうね。妖華さん……。
経済部門はヘファイストスファミリアとヘルメスファミリア、ヘスティアファミリアの3つのファミリアが競い合っており、三つ巴の状態だと聞いた。
確かに、武器を作って売るヘファイストスファミリアと怪し……便利な物を作って売るヘルメスファミリア、アイドル活動で経済を回すヘスティアファミリアは経済的に潤っていそうだ。経済部門でこの3つのファミリアとやり合うのは得策ではないかもしれない。
次の景観部門だが、こちらは街並みが綺麗だったり、景色の美しさが評価される部門だ。
1位はアフロディーテファミリアであり、雪景色に映える西洋の美しい城が見るものを魅了するらしい。
2位はゼウスファミリア、3位はレトファミリアだ。
ゼウスファミリアの治める天空の地は、空を飛べる人だけが所属するだけあり、点々とした複数の島の集まりらしい。美しい四季の森に島々を繋ぐ虹の橋が美しいと評判なのだとか。
レトファミリアは平安京のような道が綺麗に整頓された和風の島だった。一度、ルカさんに会いに行ってみたのだが、ルカさんが好きそうな街並みで妙に納得した記憶がある。
この部門で上位を目指すかはともかく、景観は綺麗な方が良いだろう。
最後の観光部門だが、これはプレイヤーだけでなく、この世界に住む住人が各島を訪れる頻度を合わせて評価される。
1位はヘラファミリア。契約を司るためか、結婚を考える恋人や仲のいい夫婦達にとって永遠を誓う場として人気らしい。いつか神様とも……はっ。メルフィーナさんの策略に引っかかるところでした!
でも、憧れるのは確かに分からないでもないですねぇ……もうこれはこっそり教会っぽいものを……。
2位はポセイドンファミリア。輝く海とキャンプ等をするのに丁度いい穏やかな山が特徴的で旅行に丁度いいと人気だ。
そして、3位はヘスティアファミリアとレトファミリアの2ファミリアが競い合っているらしい。ヘスティアファミリアは分からなくはないが、何故レトファミリア……?と、初めは首を傾げたがなんてことはない。人々を夢中にしてやまないものがあるから人が集まるのだ。
レトファミリアが統治する月光の地にあるもの。それは、地下巨大賭博場。所謂カジノがあるらしい。真面目なルカさんがマスターをしていた時ならばともかく、アキトさんが過去のマスターだったなら納得だ。アキトさん、賭け事が大好きみたいでしたし。
ともかく、3位が確定していない観光部門は私たちが参入しても十分上位に入ることが出来そうだ。
それなら……
「遊園地はどうでしょう!夢のような世界を作ってみたいのです!」
「なるほど。遊園地か……。」
考え込んだ神様の様子に、流石に無理があっただろうかと心配になる。
でも、いいと思うんですよね。遊園地。家族、友人、恋人でも楽しめて、観光地としてはピッタリですし。とはいえ、出来れば1人でも来て楽しめるものもあればいいんですけどね。1人だと来れないなんて寂しいですから。
暫く考え込んだ神様は、ややして顔を上げた。
「プティはどうして島を統治するマスター達が森林を残していると思う?」
唐突な質問に驚くが、神様の質問なのだ。何か理由があるのだろう。
島に森林を残している理由なんて知っているわけがない。聞いたことがないから。
しかし、推測なら出来る。残っているではなく、残していると言うのなら、それはつまり残さなければならない理由があるから。
「もしかして、一定以上の森林を残さなければならないというルールでもあるんですか?」
「少し違うかな。正確には、ある一定の範囲内の森は消えないように設定されているんだ。
だから、あまり大きなものの設置は結構難しいんだよ。遊園地はそういう事情もあって今までなかったんだ。」
「なるほど……。」
つまり、開発可能な土地が決まっており、そこにしか建築物を作ることが出来ないようになっているようだ。
他の島は上手くそういった場所を活用して公園等にしているようだが。
まあ、入れない場所なのではなく、ただの森ですもんね。上手く活用すれば人を楽しませることも出来そうです。
「あと、遊具を作るのは個人では難しいからっていう理由もあるかな。」
「ですが、どのファミリアも建築物は沢山ありましたよ?」
「あれはお金をかけて建築が得意なファミリアに頼んだり、元々島を統治するために用意されているアイテムを使用しているんだよ。
だから、本来なら財産のあるファミリアか、生産職の多いファミリアであれば多少は楽なんだけど……。」
ほんの少ししゅんとした神様に、確かに実質2人だけのファミリアが立派な遊園地を作るというのは無理があるかもしれない。
「もしかして、神としての権能は使えない感じ?」
今まで黙っていた空が神様に尋ねる。
神様の力は恐らく、モノ作りに特化しているのだから、その疑問も尤もだった。
「まあ、ね。色々あったし、暫くは自力で培った力だけが使えるよ。
とはいえ、本業は人形作りだからなぁ。家具とかならともかく、建築はちょっと荷が重いよ。」
「そうなんですか……。」
それだと、用意されているアイテムを使うことになりそうだと頭を悩ませるのだった。
次回、遊園地をつくるには?
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




