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178話 イベントは着々と

あけましておめでとうございます。

キャラの感情表現の難しさに無になりかける仁科紫です(今更)

目から感情を読み取ったり、顔色が変わるのが分かったりするのって凄い才能ですよね。羨ましい……。


それでは、良き暇つぶしを。

 その日、プレイヤー達は前回の騒動の比ではない程に沸き立った。

 今までにない程の世界に関わる物語の存在。

 かつてあったイベントは数年前のファミリア創立イベントが最後といっても良いほどにその後のイベントは世界に関連していなかったのだ。少し前のイベントも結局よく分からないうちに終わってしまったこともあり、今回の神の出現はプレイヤー達をやる気にさせるのに十分だった。

 尤も、神の出現は何かのアップデートの為であると都合よく解釈する者も多数いたが。


 しかし、その一方で今回の神の登場により、イベントとは別の思惑を持って動き始めた者たちもいた。

 当然、その者達は彼の神の言うこと全てを信じたわけではない。それでもその者達は自身の知っている事実に近い言葉を神の言葉の節々に感じていた。

 故に、動き始めるのも当然プレイヤーの中では彼らが早かった。


 ───月光の地。

 アルテミスファミリアの本拠地では月光院ルカがファミリアの面々を前に立っていた。

 全てはあの日からずっと待ち焦がれていた人のために。

 アルテミスファミリアはその為にあったのだから。



「神様は世界をまわれと言っていた……なら、やるっきゃねぇよなぁっ!?

 やるぞ!お前らっ!全てはあの人のために!」


「「おうっ!」」



 ───契約の地。

 ヘラファミリアの本拠地のとある一室でファミリアのマスター、メルフィーナとサブマスターのアル・マキナは向き合っていた。

 浮かない顔をするメルフィーナは、それでいて瞳には強い光を宿している。

 アル・マキナはメルフィーナのパートナーともいえる人物だ。そして、かつて忘れ去られた人物だった。



「客人の忘却……やっぱり、そうなのね。」

「フィーナ……。」

「私は、世界の真実を知りたい。だから私は……」

「僕も行きます。」

「アル……。」

「僕のためなんですよね。それなら、僕も行きます。

 フィーナが居るなら安全です。そうでしょう?」

「……分かったわ。私と貴方は比翼連理。ずっと一緒だもの。」



 困ったように笑うメルフィーナに、アル・マキナは笑顔で頷いた。


 各地でこうして次々と動き始めるプレイヤー達が導かれる先は果たして。



 □■□■□■□■



 こうして着々とプレイヤー達が動き始める中、一方の私たちは大仕事を終えて帰ってきたルナさんを迎えていた。

 先程のルナさんの活躍は私達も目にしており、私は一人興奮しぱなしだった。



「ルナさん!おかえりなさいなのです!」


「もどった……。」


「いい仕事した。あとは任せる。」


「ああ。流石は我らが母。見事だ。

 上で休んだ方がいいだろう。」



 疲れきった様子でふらふらとなりながらも2階へと向かおうとするルナさんの肩を支え、空が一緒に階段を上っていった。

 その姿を見送り、次の作戦を担う4人を見る。



「次、私が天空の街、鳥頭弟が不浄の街、末弟は空間の街、ユーラは大地の街で待ち構える。

 台詞は頭に叩き込んだ?」


「うむ!我らが母のことを伝えるだけならば余裕である!」


「……それだけではないが。世界の成り立ちについても説明するのだぞ。」


「……そ、そうであったな!」


「不安だな……。」



 ジトッとした視線がテルさんに集まる。

 思いのほか動き出す人が多いという話だったため、人員を増やすことになったのだ。そのため、元はイアさんとロノさんだけだった所を4人にしたのだが……やはり不安が残る人員であることは否定できない。

 いえ、テルさんがやるときはやる人だというのは承知しているんですが……やはり少し不安ですね。

 なんとも言えない空気が漂い始めた頃、店の扉が開かれた。カランカランとドアベルが響き、そちらへと視線が向けられる。



「すみません。今、お店やっていなく……ニュクスさん、ヘメラさん!?」


「私達なら、そこのダメ兄より使えると思うのだけど。」


「案内役でしょ?あたし達に任せてよ!」



 何処で話を聞いていたのか、ニュクスさんはにやりと、ヘメラさんはお日様のように笑った。



 ・

 ・

 ・



 次の日からそれは現れた。

 天空、昼光、空間、大地。各街のギルドの一角。いかにも怪しげなローブ姿の人物が立つようになったのだ。

 通常であれば怪しすぎるが故に近づかなかったプレイヤー達も、世界の秘密を知るためにと情報を探していたからこそ話しかける。



「あの、大地の君ですか。」



 前日に街の人々に話を聞いていたのであれば、出てくる言葉。ローブに施された刺繍と宝石、かつて存在したという神の話。それらから導き出される答えを正しく伝えられるものがいるのならば。

 答えるのは当然、問いかけられた神でしかない。



「……ええ。私がかつてこの地を統べていた大地を司りしもの。既に力は衰え、亡者のような存在。

 貴方たちは何が聞きたい。」



 答えられた者たちは息を呑む。ローブの中から半透明な指先が見えたからだ。

 信じられない。まさか、本当に存在していたなんてと思いつつも、信憑性を帯びた話にプレイヤー達は真剣な表情で自身の知りたい全てについて問うことだろう。



「この、世界の成り立ちについて。

 そして、貴方の知る世界の真実、忘却の全てについて。」


「欲深い……しかし、嫌いではない。

 貴方の満足が行くまで語る。……ここでは騒がしい。場所を変える。」



 そして、認められれば彼らの神殿へと導かれるだろう。全てが記録され、伝えることを目的とした神殿へと。



「と、言うのが第二段階。名付けて、『創造神話の巡礼作戦』です。」


「そ、そうなんだ。」



 何故だろう。空から微妙な視線を頂いている気がする。

 完璧な作戦だと思うんですけどね?

 因みに、イアさん達への質問はその周りにいるもの達には聞こえないように魔法を使っているため、ズルは出来ないようになっている。しかも、1人につき話すのは15分までであるため、1日で話せる人数は限られてくる。そのための猶予期間なのだ。

 また、エロスさんとテルさんには下の階層の担当になって貰っている。ルナさんの演説は下の階層にも届いており、動き出している者達がやはり居たからだ。

 ニュクスさんとヘメラさんは交互に説明しているらしいですけどね。


 私の疑問を感じただろう空は苦笑しながらも言葉を綴った。



「まあ、世界についての知識をつけさせる、運営にヘイトを向けさせる。この点についてはいいと思うよ。

 知識がないからこそ今の歪は存在するから。」


「なら……」


「でも、だよ。

 歪は見つかる。その先にあるのは、混乱でしかないんだよ。ハッピーエンドには程遠い。」



 そう言って空は私を見る。空の目は私を試しているようにも見えたが、微かな安堵もあるように思えた。

 空は、私の作戦を所詮その程度でしかないのだと感じて安堵しているのだろう。

 もしかしたら、空は少し不安だったのかもしれない。空もこの世界をより良くしようと動いていた部分はあったのだろうから。

 だから、今回の作戦の穴を見つけられて安心している。安堵している。完璧な方法なんてないのだと。なかったからこそ、自分の行動は間違いではなかったと。

 ですが、それだけではないんですよ。空。私だって分かってるんですから。



「ええ。空。大丈夫ですよ。」


「何が。」


「だからこその、忘却なんです。」


「でも、忘却は、歪みしかうまないよ。そんなものを利用するなんて……」



 空の反応で間違って受け取られていることを悟る。

 私が言いたかったのは、あくまでも忘却という過去の事象に対してだったのだが、空は忘却を行うという勘違いをしたようだ。

 訂正すべきか悩みますが……いえ。ここは、話を続けましょう。空なら気づくはずです。



「はい。その通りです。だからこそ、正す必要があります。

 今回の件は運営にとっても醜聞でしかありませんが、ここで隠すのはもっと悪手です。

 プレイヤー達からの不信感を無視することになり、傷が深くなるだけですから。運営は今度こそ包み隠さず全てを明かすでしょう。

 その時、この世界を維持させなければなりません。閉じるなんて逃げは許してはいけないんです。」


「……そういうこと。

 だから、この世界の住人は生きているのだと、実在しているのだと印象付けるんだね。

 人々は情が湧いた対象を消して欲しいなんて思わない。望まない。この世界は存続し続ける、と。甘いよ。姉さん。」



 甘いのは重々承知している。結局は運営の良心頼みのような作戦だ。

 それでも、運営には神様がいる。デュランさんがいる。更に言えば、この世界は医療用として使用されるほぼ唯一のVRMMOだ。そんな世界を新しく直ぐに用意出来るとは思えない。治療効果が出ており、いままで起きている問題もあまり聞かないとなれば優秀な治療法であることは間違いないわけであり、運営も閉鎖すればどのようなバッシングがあるか想像はつくはずだ。

 ……まあ、記憶を消していたなんてバレればバッシングどころじゃなくなるんですけど。

 それでも、原因不明の意識不明者に施す手としてこのゲームが最も有力であるとされてしまっている今、このゲームがなくなることはないだろう。

 そういう打算が私にはあった。

 ただ、空には私がまだ甘い子だと思っていて欲しい。……弱々しく笑っておきましょうか。



「そうですね。私は甘いです。

 でも、記憶を戻させて今後忘却を行わない。たったそれだけでこの世界はもっとより良いものになると思うんです。」


「……忘却は代償だよ。それぞれが選んだ。そう簡単に運営が頷くとは思えない。」


「頷かせるんです。そのために今、動いているんですから。」



 話が平行線を辿りそうな予感に眉をひそめる。空は何が言いたいのだろう。

 世界の厳しさくらい理解をしているつもりだ。……つもりでしかないかもしれませんが。

 うーん。とにかく、空には見ていてもらうしかないんですよね。



「空が何と言おうと、ちゃんと皆がハッピーに終わるように頑張りますからね!」


「うーん。こういうのをフラグって言うと思うんだけど……そこまで言うならボクは見てるよ。

 上手くいくといいね。姉さん。」



 何処か諦めたように空はそう言って笑ったのだった。


 空は作戦が失敗すると思っているみたいですけど、必ず成功させてみせますからね!?見ていてください!空!


 作戦開始後3日目は、こうして大きな動きもなく過ぎていった。

次回、ちょっとした騒動


因みにポントスさんとルナさんは控えとして神様のお店で待機です。

疲れたり、何かが起きたりした時の応援要請により行動します。


グダグダ続けてしまっていますし、今年こそ終わらせたいところですね……。


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大仕事を終えてお家に帰還。お疲れさまでした。 頼りになるお二方の登場。ナイスタイミング(機会をうかがってました?) [気になる点] ここからどう転がるか?走り出したのなら駆け抜けるべきで…
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