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172話 空回りは誰かを思って

こんにちこんばんは。

睡眠不足によるやる気の低下が著しかった仁科紫です。やっとぐっすり眠れました……。


それでは、良き暇つぶしを。

「じゃーんっ!これでどうでしょう!?」


「ふむ。」


「意外とマシ……?」


「まあ、思っていたよりは酷くはない。私たちには分かるが。」


「しゃ、シャァ!」


「うむ!人の子には分からないと思うぞ!ワシらには分かるが!」



 どうだっと胸を張り、四人と一匹を見る。

 ロノさんは頷き、イアさんは首をかしげ、ノスさんからは辛辣な言葉を貰った。カンタとテルさんは……フォロー、してくれてるんでしょうか……?


 いや、きっとフォローしてくれているのだろうと前向きに受け取るが、それよりもさっきから無言の空が気になる。



「あの、空?どうしましたか?」


「どうって……なんで、ボクは姉さんに抱かれてるの?」


「なんでって……これならバレませんよ?

 名付けて、『本当にお人形さんですよ?作戦』です!」


「そ、そっか……。」



 空を私の方向へと顔を向けるように移動させ、お人形さんに話しかけるように目線を合わせて言う。すると、空は何処か虚ろな表情で頷いた。


 そう。今、空は私が抱えられるサイズのくまのぬいぐるみを操っているのだ。

 そもそも、よく考えるまでもなく私と空が使っているお人形は変えようと思えば何にでも変えれるんですよね。つまり、これでバレずにお外に出れ……



「しかし、プティ。これでも外には出れないと思う。」


「……へ?」



 そんなバカなとイアさんを凝視する。凝視されたイアさんは居心地悪そうに身動ぎし、庇うようにノスさんが後ろから出てきた。……尚、身長差から庇えていないが、これは言ってはいけないやつなのだろう。シーっですよ。シー……だから、空!肩を震わせないでください!言いたくなるじゃないですか!


 手に抱えられているからバレないだろうと素直に反応する空を羨ましく思っていると、バトンタッチしたのか、ノスさんが続きの話をし始めた。



「そもそも、外に出るなと言われたのは探されてるから、ではなく、上の連中に見つからないように、ではないのか。」


「はっ!?確かに!」



 なるほどと頷き、その考えはなかったと改めて考えて少し悲しくなる。

 見れば、空はコクコクと頷いているし、この事は空も承知の上だったようだ。

 あれ?割と本気で思うんですが、空と分裂してる時の私、ポンコツすぎません?


 己の不甲斐なさに思考が飛んでいると、ちょんちょんっと足元に触れる感触がある。見るとカンタが何か物言いたげに見上げてきていた。

 抱っこですかね?

 ヨイショっと右手に空、左手にカンタを抱いて満足し、むふりと笑う。



「姉さん、浸ってるところ悪いんだけど話の途中だよ。」


「そ、そういえばそうでした!」



 苦笑する空に指摘され、思考を戻す。となると、やはり空と一緒にお出かけするのは厳しいのだろうか。

 どうしても越えられない壁に打ちひしがれる。



「やっぱり、空とのお出かけは神様が帰ってくるまでのお預けなんですね……。」


「そこまで思ってくれるのは嬉しいけど、ボク、姉さんとのお出かけは二人っきりで行きたいな。」


「空……。分かりました。神様が戻ってきたら、いの一番に二人で行きましょう!」


「約束だよ!姉さん!」



 互いに笑って二人で指切りげんまんをする。その様子を微笑ましげな視線や呆れた目で見られていることも気にならなかった。



 □■□■□■□■



「おはよう。」


「あ!おはようございます!ルナさん!」



 ルナさんが目覚めたのは店に戻ってきてから更に一週間ほど経った日のことだった。ずっと目が覚めなければどうしたものかとも思っていたが、起きてくれたことにホッとする。内心ヒヤヒヤしていたのだ。

 目が覚めないことにではない。イアさんから理由は聞かされていただけに目覚めるとは思っていた。しかし、私にはタイムリミットが迫っていたのだ。


 なんだかんだと時間は過ぎていき、リアルでは暑い日が続き、夏休みも終盤に入った頃だ。

 声が出るようになり、随分と前から歩くことも問題はなくなっていた。経過観察による入院もそろそろ終わる。そのため、私は二学期から登校するようにとは言われているのだ。

 つまり、今のように毎日この世界に入り浸ることは出来なくなる。そうなる前にエロスさんとの問題を解消したいのだ。


 すぐさま起きたことを四人と一匹に伝え、外に行く準備をする。勿論、ルナさんに情報共有することも忘れない。

 途中、ぐーっとお腹を鳴らしたルナさんに催促され、狐と言えばで出した油揚げは気に入らなかったらしく、首を振られた。代わりにお稲荷さんを渡すとしっぽを揺らしながら機嫌よく食べ始めたのを見るに、好物はお稲荷さんのようだ。



「これでやっとエロスさんのところに行けますね!」



 あらかた準備を終えた頃、わくわくと空に話しかけると、空がなんとも言い難い表情をした。



「どうしたんですか?空。」


「うーん……。」



 話しかけられた空は、暫く迷うように視線を彷徨わせた後、私と目を合わせた。



「あの、さ。アイツの事なんだけど、放っておいた方がいいと思うんだ。」


「空……?」



 基本的に私の行動に反対をしない空の珍しい助言に首を傾げる。

 今も迷っている様子からして、本人もあまりどうしてこんな事を言っているのか分かっていないのかもしれない。



「……ごめん。急に言われても困るよね。」



 今のは忘れてと言う空に慌てて首を振る。

 そもそも、まだ何も言われていないに等しいのだ。すぐに諦めるのは空の良くない癖だと内心で苦笑した。



「空。どうしてそう思ったのか教えて貰えませんか?私が思うに、エロスさんは空のこと、結構気に入っていたと思うんですよね。……最近は私以上に一緒に居たくらいですし?」



 思い出して不貞腐れる。そうなのだ。エロスさんは空のことを特別思っている……気がする。きっと、あの時言っていた彼女なら、というのは空のことだと思うのだ。

 やっぱりムカつくんですけどね。



「ね、姉さん。別にボクはアイツのこと、何とも思ってないよ。ただ、ちょっと考え方が似てるだけで。

 まあ、だから今回のも分からなくはないんだよね。」


「そうなんですか?」


「そうなんだよ。……多分、今、アイツはどうにかして自分の納得のいくハッピーエンドにする方法を探しているんだ。」


「ハッピーエンド……?」



 納得のいく、ハッピーエンド……斜に構えたエロスさんからは想像がつかない言葉に首を傾げる。

 あれ?つまり、エロスさんはこんな終わりは認めるかぁっという物語に難癖つける読者みたいな感覚であんなことを言っていたんでしょうか?

 それはそれで少しイタイ……と、思うがそれはさておき。空はもしかして、だから大事にはならない、酷いことにはならないと主張したいのだろうか。



「まあ、アイツからは想像できないだろうけどね。

 あれで結構なロマンチストなんだよ。アイツは。」


「ふむ?えっと、例えばヒロインのピンチにはヒーローが必ず助けに来てくれて、最後はみんな集合で大団円的なアレですか?」


「うーん……どうだろう。そこまでありきたりなことを考えているかは分からないけど、少なくとも誰も欠けないお綺麗なハッピーエンドを描いているはずだよ。

 そこにアイツが居るかは分からないけどね。」



 何処か虚空を眺めて言う空に、本当にエロスさんのことを理解しているんだなと嫉妬心が再燃する。

 あはは。やはり、エロスさんには一度会ってお話しないといけないようですね?私の半身たる空を誑かすなんて……!



「空、任せてください!とりあえず言うことが出来たので絶対にエロスさんを確保してきます!」


「え。急にどうしたの?」


「これだけ掻き回しておいて、一人だけ最後いないとかそれこそ私が許せないですから!」



 握りこぶしを作り、メラメラとやる気に燃えていると、空が戸惑うように私を見る。顔にはそういう話はしてないんだけど?という困惑が透けて見えた。

 何故でしょう?おかしいですね?



「と、とにかく、まずはエロスさんとハッピーエンドの内容について話を詰めてきます。

 一人の考えで決まったハッピーエンドなんてろくなものじゃなさそうですし!」


「そう……そうだね。しっかり話し合い、して来てね。姉さん。」


「はいです!」



 キリッと敬礼し、用意の終わった四人と一匹で外に出る。今回はほぼ全壊状態から立て直しつつある愛情の街に出たようだ。



「ここにエロスさんが居るんですか?」


「間違いない。」


「奴ののホームみたいなものだからな。」



 おかしくはないというロノさんに、そういうものなのかと呟く。

 つまり、ここのダンジョンに潜れば良いのかと意気込むが、そう言えばギルドは機能しているのだろうかと首を傾げる。



「入口って何処にあるんでしょう?」


「そこは姉に任せる。」


「……?……こっち……?」



 合っているのか不安になる程度には首を何度か傾げるルナさんの後ろをついてズラズラと歩く。大人数なだけに目線をいつもより多く感じるが、気にせず進むとその先には瓦礫が集まっている場所に着いた。

 立ち止まるルナさんに首を傾げると、イアさんが手をかざす。ほぼ同時に瓦礫が動き黒いものが見えた。

 興味本位で近づくと、それはかなり深くまであいている穴だということが分かる。



「えっと、この下に……?」


「ダンジョンはある。……ただ、アイツが居るかという話であれば、少し違う気もする。」


「まあ、なんであれこちらには我らが母も居るのだ。何があろうとたどり着ける。」


「そうだな!」


「あまり頼りにしすぎるのもどうかとは思うが……まあ、これだけのメンツがいるんだ。何があっても対応はできるだろうな。」


「シャァッ!」


「……がんばる。」



 互いの顔を見合わせて頷くと、まずはテルさんから穴へと入り、続いてルナさん、ロノさん、私、イアさん、ノスさんの順で降りていった。


 エロスさん、首を洗って待っててくださいね!今行きますから!

次回、エロスさんを探して。


因みに、暇をしていた一週間の間に空とエンプティの着せ替えショーならぬ人形替えショーが行われていたり。

尚、季節の話ですが、わりと時間経過の把握が出来てない作者なので、大体これくらいかなぁというノリで書いてたりします。

(メモしてろよって話なんですけどね……。やる気g……な、なんでもないですヨ。ハハハ。)


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まったり過ごせました。(もしくは空ちゃんの受難♪) 次はもう一人のコマッタちゃんの回収です(笑) [気になる点] 「お腹が痛い」と言って早退しようとしてません? ネコやウサギのぬいぐる…
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