わちゃわちゃハロウィン4
こんにちこんばんは。
とんでもなく遅刻して申し訳ない仁科紫です。
遅れました……
それでは、良き暇つぶしを。
「神様!迎えに来てくださったんですね!」
パッと神様に近寄り、抱きつくと神様は苦笑いしながらも頭を撫でてくれた。
もう。そこはハグを返してくれたっていいと思うんですが。
ひとまず、頭を撫でられることに満足していると、そこへ空が来た。どことなく呆れた顔を浮かべた空は頭を撫でられたままの私に何かを言うこともなく、神様に話しかけた。どうやら、聞きたいことがあったらしい。
「ねえ。貴方がここに居るって事は、原因がわかったということだと思うんだけど。」
ハッとして神様を見る。すると、神様は苦笑いをしつつも肯定した。早速神様に話を聞こうとすると、パンパンッと二度手を叩いた音がした。
何事かとそちらを見ると、ソウさんが笑みを浮かべてチェシャさん達や私達の方を見ていた。
あれ。チェシャさん達の方、かなり大人数……というか、メルヘンな光景になってますね?
小鳥が2羽に小さな龍、可愛らしい女の子に綺麗なお姉さんに、チェシャさんによく似た猫さん……あれがチェシャさんの仲間なのだろう。
思わず目を奪われていると、ソウさんが再び手を叩いた。
「ここにたくさんの人が来てくれるのは初めてだわ。折角だし、皆でハロウィンパーティーを……たのしんで。」
途端に周りの景色が変わり、ただ不気味な植物が生えていたその地は、カボチャのランタンやコウモリの人形といったハロウィンらしい飾りつけがされた場所へと早変わりする。
更には中央に大きな机が置かれ、その周りには立食もできるようにか、お菓子や料理が置かれたテーブルが複数置かれていた。
わぁ。巨大カボチャの肉詰めやパンプキンパイ、チョコレートフォンデュ……とにかく、とんでもなく美味しそうなものでいっぱいですね!
何から食べようかと視線を向けていると、後ろからギュッと抱きしめられる感覚がした。
振り向くと、柔和な笑みを浮かべたイアさんがいた。隣りにはやはりと言うべきか、ノスさんがいる。この2人も来ていたんですね。
「無事で良かった。」
「ギアに心配させるなど許し難い……が、今回は不可抗力だったようだからな。許してやる。」
「心配してくださってたんですね!ありがとうございます。」
ノスさんの態度がツンツンとしたものではあるが、不器用なのは分かりきったことだ。照れ隠しなのはすぐに気がついた。
素直じゃないですねぇ。
思わずクスリと笑うと、未だに頭を撫でている神様がため息をついた。ほ、本当に珍しいですね?それほど心配させたということなのでしょうけど。
「全くだよ。肝が冷えた……。」
「それは申し訳ないです。……あ。でも、お友達が増えたんですよ?ね?空。」
「え。あーうん。そうだね。姉さん。」
空を見ると、気まずそうに目をそらされた。何故だか不思議に思ったが、もしかしたら空にとってチェシャさんもホロさん、ソウさんもお友達とは言えないのかもしれない。空は警戒心が強い子ですから。
あ。そうです!神様にチェシャさんを紹介しませんと!
思い立ったが吉日と神様にチェシャさんのことを話すと、挨拶がしたいということだった。
すぐにチェシャさんを探すと、チェシャさんは小鳥さんと龍さんに手を振っているところだった。丁度いいタイミングみたいですね。
すぐに近づくと、チェシャさんも私たちに気づいたようだった。
「チェシャさん!こちら、神様です!」
「こら。プティ。いきなり神様なんて言われても分からないだろう?」
「あっ。すみません。神様。」
「にゃぁあ。」
首を振るチェシャさんに、言葉は分からないものの気にしていないことは分かった。
そう言えば、神様と言い慣れてはいますけど、急に神様だと紹介されても困ってしまいますよね。
はははと、乾いた笑みを浮かべると、神様がかしこまった様子で話し始めた。
「プティがお世話になりました。僕はアルベルトです。」
「にゃぁ。にゃにゃにゃにゃぁにゃ。」
「チェシャさん、ですよね。プティ達があなたを警戒しすぎたみたいで、少し迷惑をかけたとか。
僕が保護者みたいなものなので、お礼と謝罪をと……」
「にゃぁあ。」
な、何故それを……!?話していないはずにも関わらず、迷惑をかけたことを知っている神様に戦慄しつつ、バツが悪くなって頭を軽く下げた。
うぅ。もう少し気をつけないといけませんね。神様に謝らせるなんて……信者として失格ですし。
「にゃぁにゃにゃ。にゃにゃにゃんにゃぁにゃにゃ、にゃぁにゃにゃ。」
「そうですか……うん。分かったよ。」
神様に何かを言ったチェシャさんに神様が苦笑いをうかべる。どうやら神様はチェシャさんの言葉が分かるようだ。
う、羨ましいです……!
そうして話していると、空間の一部が歪んだかと思えば白いうさぎさんがひょっこりと顔を出した。片眼鏡に懐中時計、フリルが沢山入ったドレスシャツ。まるで不思議の国のアリスに出てくるようなうさぎに首を傾げる。
あれはなんだろうかと神様を見ると、神様の真剣な顔が目に入った。あの白うさぎには何かあるのでしょうか?
「神様?」
「あ、ああ。ごめんね。ちょっと込み合った話になりそうだから、あっちでお菓子でも食べておいで。ほら、空くんも呼んでるよ。」
神様が指さす方を見ると、確かに空が私のことを手招きしている。その机の前には巨体なプリンがドンッと置いてあった。
た、確かにあれは気になります……!
「分かりました!それでは、また後で。」
「ああ。楽しんでね。」
ルンルン気分で空の元に戻ると、空は何を話していたのかと尋ねてきた。
チェシャさんに神様のことを紹介してきたと言うと、ふーんと言って無言でプリンを取り分けて押し付けてきた。
私も無言で受け取り、口に運ぶ。
口の中でとろりと溶けて広がる甘みに頬を抑えた。こ、これはさいこーすぎません!?
昔ながらの固めではなく、とろりと溶けるクリーミーなタイプのプリンに舌鼓をうっていると、少し離れたところで騒ぎになっていることに気づいた。と言っても、視線が妙に集まっているというぐらいだが。
「あれは……?」
「ほら。姉さん。こっちも美味しいよ。」
はいっと差し出されたものを反射で食べると、今度は優しい甘みが口の中いっぱいに広がる。ふわっと広がる香りからしてカボチャのケーキだろう。
「ほんほうれす!」
「ふふふ。口の中の物がなくなってから話してね。」
「ふぁい!」
「あぁ。もう。言ったそばから……まあ、いいか。あっちには関わらせたくないし。」
ん?何か言いましたかね?
それはそうと、このクッキーも美味しいですね!
もっしゃもっしゃと食べていると、ポツンと立っているソウさんが目に入った。
あー。顔見知りだけではしゃいでしまいましたね。
流石に周りが見えていなさすぎたと、これから食べようとしていたプリンタルトを片手にソウさんのところまで歩いていった。
「ソーウさんっ!」
「な、何……?」
「これ、美味しいですよ?食べませんか。」
にこにこと差す出すと、ソウさんは困った顔をした。もしかして、ただのお節介でしたかね?
少し不安になって見ていると、ソウさんは横に首を振った。
「これは、あなた達へのお返し。気にしないで。
今の私にTreatをすると、私は返さないといけないから。」
「そうですか……。」
だから、受け取れないのだろうと少しばかり悲しくなっていると、そこへ白うさぎさんが近づいてきた。あれ、先程まではチェシャさんと話していましたよね?
「ちょっと失礼するね。」
そう言って割って入ってきた白うさぎさんにあまり話を聞いて欲しくないという意思を感じたため、その場を離れる。
仕方がなく手に持ったプリンタルトに齧り付くと、甘くも香ばしい風味が良いアクセントになっていた。
こんなに美味しいのに、食べられないなんて悲しいですね。
早くソウさんが何も気にせず食べられるようになればいいのにと思いつつ、空の所へと向かった。
「そーらー!」
「あ。姉さん。どうしたの?」
戻ってくると、空はチェシャさんの仲間たちと楽しそうに話していた。
むむむ。良いですね?
「神様たちが難しそうなお話をするようだったので、何か料理でも食べようかと思いまして。」
「それなら……」
『オススメはこのローストビーフサンドである!』
『いや、このチキンも美味いぜ?』
そう言って差し出してきた2人は、龍と小鳥だった。えっ。小鳥がチキンを……?即ち、共食い……?い、良いのでしょうか?いえ、でも、確か鷹は小鳥を襲う訳ですし……ん?それはそれで、この小鳥さんがとっても強いことになりませんか……?
思わず生態系について考えていると、何を考えているのか悟ったのか空が2人の紹介をしてくれた。
「こちら、トラヴァナス。龍なんだって。」
『うむ!我は邪龍トラヴァナス!今は主殿に従っている身だ!』
「じゃ、邪龍……?えっと、エンプティです。空のお姉さんみたいな感じ……ですかね。」
えっ。邪龍に主殿と呼ばれるなんて、一体何をしてそうなったんだと、口元を引き攣らせると、今度は隣の小鳥が自己紹介を始めた。
『オレはメルだ!フェニックス様の従者みたいなもんなんだけどな。今は主の元で暮らしてるぜ!』
「は、はい。よろしくお願いします。」
えっ。フェニックスって、あの不死鳥のフェニックス、ですかね……?それは生態系の上の方だろうと思わず遠い目をしていると、サンドイッチを差し出される。
差し出された食べ物を食べないのも失礼になるだろうと受け取って口に入れると、旨みの詰まったローストビーフが噛めば噛むほどに美味しい。
うまうまと食べつつ、空が2人と話しているのを聞いていると、どうやら空は情報収集をしているのだと気がついた。
2人は物珍しさから聞かれていると思っているんだろうが、空は意味のない行動はしない。
内容が、どんな世界なのか、どういったことをしたのか、しているのかといった内容なのだ。まず間違いない。
うーん。ちょっと気まずいですね。
それよりも……あ。神様が頭を抱えていますね。
「あれ?神様、どうしたんですか?」
「あ、ああ。プティ。ここに、エロスは来てる?」
「え。いえ。来てないと思いますよ?どうしたんですか?」
「あー……うん。なんでもないよ。」
首を振る神様を不思議に思いながらもチェシャさんと別れた。
折角ですし、神様ともパーティを楽しみたいですからね!
「神様!これも美味しかったですよ!」
「そうなんだ。ありがとう。」
むふふ。先に食べていて正解でした。神様にオススメできますからね!
そうしてハロウィンパーティーは和やかに過ぎていった。
「あ。そうです!空、歌ってくれませんか?」
「なんでボクが。」
思い立つと同時に空に声をかける。空は少し迷惑そうに呆れた目を向けてきた。
でも、折角なんですし空の歌を聞きたいんですよね。
「……私、海の歌をもっと多くの人に覚えていて欲しいんです。私は、もう歌えませんから。」
「姉さん……。分かったよ。」
「ありがとうございます!空!」
「なんだか姉さんに載せられた気がするなぁ。」
苦笑しながらも空が会場の真ん中へ歩いていく。
真ん中に立つと、歌い出した空の声にうっとりと聴き惚れる。
どうして、私はあんな風に歌えないのか。そう思うことすら出来ないほどの綺麗な歌声。
そうして聞いていると、そこへハモる声があった。見ると、空の周りを3人の小人が舞いながら歌っている。確か、チェシャさんの友達の妖精達だったはずだ。
妖精さんと歌う空……素敵ですねぇ。
別の意味で羨ましく思っていると、隣に立っていた神様から手を差し出された。
「あの、さ。折角だし、踊らないかい?」
「えっ。……いいんですか?」
普段はない神様の誘いに思わず問いかけてしまう。それでも神様は苦笑いしながらも頷いてくれた。
「こういうときは聞くんだね。」
「驚いたんです!……エスコート、ちゃんとしてくださいね?」
「勿論。お嬢様。」
「そこはお姫様にしてくださいよ!」
もーと言いながら、手を取って踊り出す。踊り方は知らないが、神様とクルクルとまわる。それだけで楽しいのだから不思議だ。
私と神様が踊っていると、イアさんとノスさんが隣で踊り始めた。2人が増えると、また2人とどんどん増えていく。
最後には全員がいつの間にか踊っていたのだからおかしな話だ。
こうしてハロウィンパーティーは過ぎていった。
「そろそろお別れね。」
「うぅ。寂しいです……。」
「……。」
時刻は夕時。夜になる前に帰らないと元の世界に帰れなくなるとホロさんに言われたが故の言葉。
初めて今日出会ったにも関わらず、離れ難いチェシャさんに思わず俯く。
「またいつか。」
チェシャさんが、またと言った。
……そう。そう、ですよね。私たちは、また会える……いえ。会いに来たらいいんですね。
「そう、ですね。またいつか。いつか、会いましょう。」
互いに手を取り合い、チェシャさんと微笑みあう。
また会えるかは確証はない。それでも、私たちが会いたいと願えば。諦めさえしなければ、いつかは叶うと思うから。
名残惜しくも手を離すと、今まで黙ったままだったホロさんが何度か迷いながらも口を開いた。
「……わたしたちも、会える?」
不安そうな声に、嘘をつきたくなくてどう反応したものかと戸惑う。
しかし、私よりも先にチェシャさんが頷くのを見て私も頷いた。
「当然よ!どうやってでもまた来るわ!」
「そうです!頑張って、またお二人に会いに来ますからね!」
「あ、ありがとう……。」
待ってるから。そう言って手を振るホロさんにほんの少し寂しくなりつつも私たちはそれぞれの世界に帰った。
その日、帰った後に行ったハロウィンパーティーは、もしものために残っていたロノさんやテルさんとも楽しんだが、やはりどこか寂しさが残った。
そうして浮かない顔をしていたからだろうか。神様がログアウト前に話しかけてきた。
「プティ。……もし、彼女たちとまた会いたいのなら。少し、頑張ってみるから……それまで、待ってくれる?」
「勿論です……!」
3人が再開する日はそう遠くないのかもしれない。
思ったこと
エンプティ=主人公にしては警戒心強すぎる上にどうしよう……となって動けない時間が多いせいでエンプティにいろいろと見せ場とられそうで焦った……。
なんなら、空の方が主人公っぽいんですよねぇ。
結論:コラボって難しいですね!
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




