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167話 指名手配は想定外に

こんにちこんばんは。

ハロウィンをすっかり忘れているポンコツ作者の仁科紫です。

本日は前話に掲示板回を挟んでおります。一応、内容としては影との戦いの間の話題になってますが短いです。

こういう話も知りたい!というのがあれば教えてください。ポンコツ作者はこれが思いつく限りだったのです。


それでは、良き暇つぶしを。

 あれから数日が経ち、私は普段使っている人形を別の人形に乗り換えていた。

 というのも、以下の張り紙を街中で見かけたからだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 協力者を探してます!


 この2人を見掛けたら、ゼウスファミリアの支部、または本部まで!


 名:エンプティ

 ・人形族

 ・銀髪に青い目をした10歳くらいの少女型

 ・見た目が天使っぽい

 ・口調はですます敬語っぽい


 名:不明

 ・人形族

 ・黒髪に赤い目をした女性型

 ・見た目は鬼っぽい

 ・和風美人


 捜索スレをたてますので、詳細はそちらにて!



 ーーーーーーーーーーーーーーー



 盗撮らしい写真と説明文のついたポスターを見かけた時は驚いたものだ。まさか指名手配される日がくるとは、世の中分からないものだと思う今日この頃である。何故空は和風美人で私はですます口調なのかは置いておきますが!

 少し胃の腑がムカついたがまあそれは良しとする。


 今は神様に人形が壊れたときのためにと渡されていた、プラチナブロンドに蜂蜜色の瞳が特徴的な人形を使っている。神様と同じプラチナブロンドがお気に入りの理由なのは秘密だ。

 神様がこの子を作ってる時に思わず欲しくなってしまったんですよね。あまりにも素敵だったので。

 いいよと苦笑いを浮かべる神様を思い浮かべて懐古に浸っていると、声をかけられた。



「おーい。ブラン。ぼんやりしてるけど何かいい事でもあった?」



 声の掛けられた方向を見ると、そこには桃色の髪が特徴的な妙に胡散臭い青年がおり、こちらに向けて手を振ってきていた。衝動的に拳を作ってしまったが、すぐに気づいて手を振る。



「今殴ろうとしてなかった!?」


「そんな事ありませんよー?

 思わずぶんなg……コホン。イラッとしてしまっただけなので。」


「ほぼ言ってるようなものだよ!?」



 君、居候みたいなものなのに……と態とらしく嘆く胡散臭い青年、エロスさんに再び手をグーにしかけたが、右手を左手で抑えることで我慢した。


 そう。私は今、エロスさんに匿ってもらっているのだ。



「空君もなかなかだったけど、君もアレだねぇ。」


「わぁ!空も同じだったんですね!嬉しいです!」


「あっ、うん……流石、空君の片割れ……。」



 どこか呆れたように呟かれたが、それはそれ。空と似ていると言われれば、それだけで嬉しいのだ。例えそれがいい意味でなくても嬉しいという気持ちに変わりはない。



「それはそうと、ただじゃれ合うためだけに来た訳ではないですよね?」



 暗に本題は何かと項垂れるエロスさんに問いかける。

 エロスさんは先程まで項垂れていたのは何だったのかと思うほどにニッコリと満足気に笑うと、嬉々としてからかい始めた。楽しげにニンマリと三日月を描く瞳に更に苛立ちが募る。



「うんうん。流石、姉妹だね。聞き方なんて特にそっくり!ね?ブ・ラ・ン♪」


「あら。賑やかね?私はブランだけれど、いちいち確認しなくてもいいのよ?エロスさん?」



 威圧を込めてにっこりと笑ってやる。こちとら海の頃に沢山笑みを作ってきたのだ。人が怖いと思う笑顔なら簡単である。

 因みに、ブランとは少しの間の偽名だったりするのだがそれはさておき。



「ブフッ!」


「ちょっと!笑わないでくれるかしら!」


「だって、お嬢様キャラ似合ってないってっ、あははははっ!」


「あーもうっ!!やっぱりムカつきますうっ!!」



 今はこの無駄に笑い続ける目の前の胡散臭い奴を料理する方が先だ。

 これでも10数年お嬢様キャラをやってたんですからね!?私っ!



「ニケ!」


〈うむ?この程度の争いごとに巻き込まないで欲しいのだが……。〉


「今こそにっくき敵を倒す時よ!」


〈ふむ。本当に似合ってないな。〉


「ニケまで!?」


「いや、そもそも僕、家主なんだけど?」



 ニケの裏切りに愕然としていると、何やらエロスさんがボヤいているが私の知ったことではない。

 とりあえず、エロスさんは一発殴らせろ!です!



「あーもう、落ち着いて。伝えたいことがあるって言ったでしょ。」


「〈ニケ:形態変化:貫け〉!」


「もー!」



 何故か空を戻すと使えるようになったニケの形態変化を使用してエロスさんに斬り掛かる。

 ニケの形態変化は槍と弓、杖の形状があり、槍は貫け、弓は穿て、杖は墜ちろと唱えれば変化する。何故か一番オーソドックスな剣にはならないが、どうせ私が使えないのだから問題はないだろう。空なら使えそうですけどね。


 構えて足を前に踏み込み、体重をのせて槍を突き出す。私自身はそこまで運動が出来る人間では無いが、ニケがサポートしてくれているのだろう。まるで元々体が覚えていたかのようにスムーズに動く。

 しかし、何だかんだ言いながらもエロスさんはひょいひょいと軽く槍を避けきる。更には5畳程度の室内を倍近くまで広くしているのだから、間違いなく余裕なのだろう。腹立たしいことだが。



「余裕そうね!?腹が立つわ!!」


「ハイハイ。それより話聞いてねー。

 えっと、とりあえず向こうさんと話が着きました。」



 向こうさん、その言葉でピタリと槍が止まる。それはあの日から会っていないイアさん達のことを指していた。

 勿論、話は聞きたい。ただ、これが嘘だった可能性を考慮してまだ戦闘態勢は解かない。



「それで?」


「いや、あのさ?まずはそれを退けてからだと思うんだけど?」


「つ・づ・き・は?」


「……はぁ。分かったよ。話すよ。話す。」



 だから、それを収めてくれと言いたげだが、まだ収めない。エロスさんはこのくらい厳しく対応しなければ調子に乗るということを私はこのたった数日で学んだのだ。

 にっこりと笑みを浮かべながら続きを大人しく聞く。



「彼女たちは、そもそも君を探していたみたいでね。話をつけに行ったら逆に拘束されてあれもこれも話させられちゃった笑」


「笑、じゃないんですが!?

 はぁ……仕方がありませんね。矛を収めます。」



 今回ばかりは槍を収めるしかないかとニケの槍形態を解く。

 ニケはあれから少し融通がきくようになったのか、今はヘアピンくらいの大きさに縮んで私の髪に止まることでアクセサリーに擬態している。

 ニケが戻ったのを確認したあと、エロスさんを見上げる。エロスさんはニヤニヤと笑いながら話し始めた。



「求められた情報はね。君が無事か、どうしているのかとか、とにかく君の事ばかりだったよ。

 まったく。神に愛されるなんて、君も災難だね。」


「そうですか。イアさん達が……。」



 ふっと口元をゆるめる。愛されるというのとは少し違う気もするが、気にしてくれているという事実がそれだけで嬉しい。

 それにしてもその言い様は如何なものか。思わずジト目になってエロスさんを見ると、エロスさんは何を考えているのか分かりづらい顔をしていた。ちょっと怖い。



「えっと。どうしたのかしら?エロスさん?」


「いーや?なんでもないよ。

 まさか、そんなに嬉しそうな顔をするとは思っていなかったから。」



 皮肉げに笑うエロスさんに戸惑うが、彼は神に対して何かしらの思うところがあるのかもしれない。

 まあ、今はエロスさんの感傷なんて気にしていられないんですが。



「それで、話はどうなったのかしら?」


「あーそれなら……」


「まだ?」



 ひょこっとエロスさんの後ろから顔を出した女性の姿に固まる。そこには見覚えのない少女がいた。

 月の光を集めたような銀髪の長い髪は艶やかに流れ、頭上でひょこりと大きな三角の耳が揺れる。

 特徴的なのは手足にシャラリと揺れる鎖のついた枷だろうか。決して美しいものではなく、武骨な分厚い鉄の輪は少女に似合っているとは到底言えなかった。

 整っているのだろう小さな顔は両目を隠す布によってハッキリとは見えない。

 服装はガイアさんが来ていたものに近いだろうか。ただ、ローブの中に何か着ているのだろう。白い合わせ目が見えている。

 つまり……属性過多ですね!?



「えっと、どなたでしょう……?」


「この方は……」


「わたし、ルナ。あなたは?」



 戸惑いから首を傾げると、目の前の少女も首を傾げる。小さくも鈴のような軽やかで可愛らしい声が少女の名を告げた。

 ルナ。それは、いつか聞いた月に幽閉された今はいないはずの神の名だ。

 一体どういう事なのかとエロスさんを見ると、エロスさんは肩をすくめるだけでそれ以上詳しい説明をしようとしない。仕方がなくエロスさんは後でシメるとして、今はルナと名乗った少女に自己紹介するべきだろう。



「私は……そうね。今はブランでいいわ。」


「いま、は……?」


「本当の名前は別にあるの。知りたいかしら?」



 知りたいかと尋ねるのは意地悪だろう。訳ありだと伝えて聞きづらくするようなものだから。それでも、あえてそう尋ねるのは彼女が神の一人だろうからだ。神である彼女たちは、呼び名に拘りがあるようだった。それを考慮すればこの対応も致し方のないもの。

 慎重に尋ねてみると、彼女はまたこてりと首を傾げて答えた。



「……いえ。よびなが、わかる。じゅうぶん。

 よろしく。ブラン。」


「ええ。よろしくお願いするわ。ルナさん。」



 出された手を握り、ニコりと笑う。まったくどういう状況なのかは分からなかったが、今はこれが間違いのない正解のようだった。



 ・

 ・

 ・



「で?どういう事なんです?エロスさん。」



 にっこりと笑みを向けると、エロスさんは心外だとばかりに両手を上げて振る。どうやらエロスさんにも予想外だったらしい。

 でも、説明はしてもらいますよ?



「あー……姉さん方に押し付けられたんだよ。」


「おしつけ……?」


「あっ。いや、違うよ?ちょっとこの子に世界を見せるために僕に任せるって言われただけだから。」



 何やら言い訳をしているが、イアさんたちに任されたのは間違いないだろう。

 イアさんが意味もなくエロスさんに任せるわけがない。世界を見せるという理由がしっくりくるのもまた事実であるため、前者よりも後者の言い訳が正しそうだ。

 それはそうとして……



「神様探しはどうなったのかしら?」



 そう。私の目的である神様探しをちょうど始めようかと話していた頃だったのだ。

 イアさん達と会いたかったのも、神様探しにまだ協力して貰えるか確認したいためだった。

 私が尋ねると、エロスさんは微妙そうな顔で頷いた。



「多分探してくれるよ。」


「多分?」


「うん。多分。」



 ……これは、任せる人材を間違えたかもしれない。

 エロスさんに任せたことを少しばかり後悔する私だった。

次回、合流?それとも神様探し?


因みに、プティの口調がブレブレなのは慣れていないためですが、驚いたりムカついたりと感情が高ぶるとですます口調に戻ります。

ブランという名前は空白→ブランクからとっていたり。


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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[良い点] 逃亡者プティ。これからの暗躍にこうご期待♪ 予備の人形に乗り換えていたなんて……「こんなこともあろうかと」という言葉が似合いますね。 ニケさんが遂にパワーアップ!しかもアクセサリーになっ…
[一言] 両手両足に鎖付きの枷と目隠し眼帯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・? 黒の首枷と首枷…
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