表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/212

15話 イベントは酒臭さと共に

こんにちこんばんは。

あと5話ほど投稿したらお休み予定の仁科紫です。

ふふふ。誰か記憶力を分けていただけないですかね…。


それでは、良き暇つぶしを。

 そして、お花見イベント当日。




「グビッグビッ…ぷはぁ〜っ!

 オラァっ!おめェらっーやってっか〜っ!」


「「イェーッ!」」




「ほらほら、飲んだ飲んだァ!」


「ちょっ。飲み過ぎですよ!」




「あの…お酒はちょっと…。」


「あぁん?私の酒が飲めねぇってか!?」


「未成年に何言ってんだこの人!?」



 到着したイベント会場では既に想像を絶する混沌と化していた。


 ……って。



「酔っ払いだらけじゃないですか!?」


「あー…うん。実は、このイベントでは花見酒が購入出来てね。普段酔えない人も酩酊の状態異常でガッツリ酔っちゃえるんだ。」



 もちろん、未成年にはジュースが配られるけどね。と続く言葉に納得する。どうやら、このイベントはお酒を飲んでガッツリ酔ってはっちゃけてしまおうの会らしい。


 なるほどなるほど…って、なんて所に連れてきてくれてんですか!?神様!


 あまりのことにビックリして神様の方にガバッと向くと、神様の笑顔がいつもより少し輝いているように見える。


 くっ…尊い…。……じゃなくっ!



「なるほど!つまり、神様はただイベントがあったから連れてきてくれたと!そういう事ですね!」


「う、うん。そうだけど?」



 私の妙に強い押しに戸惑いつつも答えた神様は少し首を傾げていた。多方、何かしたかな?とでも考えているのだろう。


 ふむ。なるほどなるほど…よし。ここは、神様放置で楽しんできてやりましょう!

 折角、デート(ただの思い込み)だと思って来たのにこれですし!お友達なんか出来る気がしません(作る気はありません)が、適当なところで混ざって楽しんできてやるのですっ!



「それでは神様!私は適当にその辺の方たちとお話してきますね!」


「あっ。おいっ!?」



 呼び止められても止まらないのです!


 こうして神様とは別行動を取り、私はいろんな輪の中へと顔を出しては、ウェーイっ!とはしゃぎ回った。



 ・

 ・

 ・



 その数十分後。



「やっと見つけた…って、プティ?何してるの?」


「あれぇ?神しゃまだ!ふふふ…。楽しんれますかっ!?」


「なんで微妙に呂律が回ってないの!?お酒は飲めないはずなんだけど!?」


「むぅ…?おしゃけ…お魚れすか?」


「違うよ!?」



 私の冗談に対して飲み物のことだと主張を続けた神様が可笑しく、内心でニヤニヤっと笑う。


 本気で魚だと思ってるわけないじゃないですかぁ。相変わらず面白いですね?ふふふ。それに、これは場の空気に酔っているだけなので、お酒が元凶という訳ではありません。

 ……まあ、素直に答えてやるわけないんですけどね!ちょっとは反省しろ!なのですっ!


 内心で笑っているのが神様に伝わってしまったのか、神様は怪訝な顔で私を見た。



「……プティ?」


「はい。にゃにです?」



 首を傾げて神様を見る。神様は私を見て何を思ったのか数回逡巡した後、口を開いた。



「やっぱり、僕は君に何かしてしまったんだよね?

 流石にこんな所にいきなり連れてきたのはまずかったかな。ごめん。プティに驚いて欲しかったんだ。」



 眉を下げ、申し訳なさで一杯のその表情を見ると、私は胸が苦しくなりそれ以上は怒りを抱けなくなる。


 うっ…。神様を悲しませるのは不本意なのですが、私の行動がそうさせたという事実に少し満たされるものがありますね。……あれ。私、独占欲つよ…気のせいですネ!

 さて、これ以上、神様をお待たせするわけにもいきません。お返事をしなければ。


 少し考えて、首を振る。



「いいえ。その心が私は嬉しいです。

 こちらこそ、勝手に拗ねてしまい申し訳ありませんでした。」


「いや、気にしないで。僕の言い方が悪かったんだろうから。

 さあ、気を取り直してお弁当でも食べよう?せっかく作ってきたんだしさ。」



 あと、デザートにプリンも作ってきたんだよねと言う神様に嬉しくなって神様の胸に飛び込む。神様は一瞬狼狽えたものの、直ぐに腕で抱えるように支えてくれた。



「おっと。危ないよ?」



 苦笑する神様に私は満面の笑みを浮かべた。



「神様、ありがとうございます!これ以上ないってくらいにとーっても嬉しいです!」



 その言葉に神様は目を丸くし、微笑んでくれた。

 大袈裟だなぁと、照れ隠しのように頬をかきながら言う神様は耳の先が赤くなっている事に気づいているだろうか。


 ふふふ。なんだか、私まで恥ずかしくなっちゃいますねぇ。


 ニヨニヨと緩まる口元に慌てて取り繕う。

 その後、二人で食べたお弁当は今までの中で一番美味しかった。

 プリンもほろ苦いカラメルソースと硬めのカスタードが良くあって最っ高でしたよ!



 ・

 ・

 ・



 二人でお弁当を食べ終え、一息ついた頃。神様が辺りを見渡し出した。



「どうしましたか?」


「ん?あぁ。そろそろかなって。」



 その言葉に首を傾げていると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。

 声の種類が徐々に増えていることから、人が大勢集まって何かをしているらしい。


 神様もそろそろと言っていましたし、何かが現れたのでしょうか?


 気になってソワソワと立ち上がろうか、立ち上がらまいか悩んでいると、態度に出ていたのか神様がクスクスっと笑い出した。



「プティ。気になるなら一緒に見に行こうか。」



 手を出して、どうする?と、言いたげな神様にどこか子ども扱いをされているような気持ちになる。


 子ども…まあ、子どもですけどね?ええ。どーせ、高校生なんて子どもなんですよっ!


 ムシャクシャとする自分にどうしてそう思ったのか分からなくなりながらも頷き、その手の上に乗った。……もちろん、軽く浮きながら。


 いや、レディが男性の手の上に乗るなんて、そんなはしたない…いや、乗るべきでしたか!?今!神様をからかうチャンスがぁっ…!


 なんとなく落ち込んでいると、神様が何やらジトーッとした目で私を見ていた。



「ど、どうしましたか?神様。」


「いや、何かまた変なことを考えているんだろうなーって。」



 ぐっ…す、鋭いっ…。

 いえ、きっと、出会ったばかりの頃の神様ならば心配そうに私を見てくれるはずなのです。

 つまり、これは身から出た錆…むぅ。今の神様も私をよく理解してくれているのでとっても大好きなのですが…。



「可愛い神様に戻ってくれたりしないですかねぇ。」


「残念だね。人は戻れない生き物なんだよ。」


「そんなぁ…。」



 よよよっと泣き真似をしても、神様は呆れた目を向けてくるだけだった。


 うぅ…殺生なぁ…。


 ・

 ・

 ・



「そっち行ったったぞぉ…!」


「うみゃぁ…こっちぃ…?」


「ちげーよっ!ちっ!どいつもこいつも酔っぱらいやがって!……ヒック。」


「おめぇもなっ!」



 向かった先では多くの人々がフラフラとあっちに行ったりこっちに行ったりと何ともまとまりなく動き回っていた。

 そして、何よりも目を引くのは桜の花をゆるキャラにした様な巨大な生物が暴れ回っている姿だ。


 流石にあれは可愛いとは言えないような…言えるような…?ですね。


 花びらからニョキっと生えた手足に、怒っているのかのように三角に尖った瞳。手には酒瓶を持ち、ヨタヨタと歩いてはプレイヤーに向けて『飲めやっ!』と叫んで液体をかけている。

 その姿はまさに酔っぱらいでしかなく、こんなゆるキャラが居たら小さい子達は泣き叫んで逃げ帰ること間違いなしだろう。


 うん。可愛くないですね。


 そう結論づけた私は、神様の方を見た。すると、何故か神様も私の方を見ていた。

 なんとなく嬉しくなって頬を両手で覆い、上目遣いで神様を見る。



「そんなに見つめないでください。神様のえっち…!」


「えっ。……えっ!?いや、今のどこにそんな要素があったのか教えて貰えるかな!?

 ただ、怖がっていないか確認してただけだから!」


「うふふ。冗談です♡」


「…なんか、心配して損した気分だよ…。」



 項垂れる神様を見て満たされる感覚にニヤリと笑う。


 ふふふ。私を心配しようなどと10年ほど早いのです!

 …まあ、冗談ですが。10年ってなんですか。中途半端過ぎません?せめて、そこは100年と言うべきですよね。

 ……っと、いうのは置いておくとして。そろそろ本題に入りませんとね。


 今度は純粋な笑みを浮かべつつ、神様の顔をのぞき込み、問いかける。



「それで、神様。あれは何ですか?」


「……うん。まあ、君はそういう子だよね。プティ。」



 しげしげと私を見たあと、神様はやがてため息をついた。

 そして、次に私を見たときには気持ちを切り替えたのか、いつも通りの様子で説明しだした。



「あれが今回のイベントの目玉さ。その名もサクララバイ。お酒を飲めば最後は眠ってしまうことから名付けられたらしいよ。安直だよね。」


「サクララバイ…あっ。もしかして、あちらの山はもしや人ですか?」


「うん。そうだよ。あれはリタイア組だね。

 サクララバイによって眠らされてしまうとリタイア扱いになって、あそこに転移させられるんだ。

 そして、起きるまで放置される。もちろん、どんどん積み上がっていくから、初めの方にリタイアした人にとっては地獄だろうね。」



 複雑そうにそちらを見て言った神様は、もしかしたら以前、経験したことがあるのかもしれなかった。


 それは…ちょっと…というか、かなり嫌ですね。いえ、神様の下敷きになら喜んでなるのですが。

 ……ん?そういえば、あれが目玉ということですし、あれを倒すということでいいんでしょうか?


 よくよく考えれば、説明がまだ途中だったと思い至った私は神様に説明を促すことにした。



「神様。あれは倒すんですか?」


「うん。そうだよ。いわゆる、レイドボスって奴なんだけど…。毎年この惨状なんだよね。」


「あー…。」



 思わず納得してしまうほどの惨状だった。遠くには山のごとく積み上げられた人々。行動範囲は決まっているのか、そちらにはサクララバイは近づかず、よろよろと歩いては酒瓶を傾けて泥酔者を増やしていく。

 当然ながら、集まった酔っ払いたちはまともな戦力になっておらず、一部のプレイヤーのみが戦闘に参加している状況だった。


 ん…?そういえば、酔っていない人達は私と同じお人形さんか身体が透けている人達ばかりですね…?



「神様。もしかして、人形と幽霊さんは酔わないんですか?」


「うん。そうだよ。人形族と幽霊族は一部の状態異常にはならないんだ。」



 種族特性だと聞き、納得のいった私は神様の様子を伺い見る。


 さて、神様は参加するのでしょうか?私としては神様と参加出来るのならばそれはそれで嬉しいですし、神様が参加しないなら参加する気はないんですよね。


 ジーッと見つめると、神様は首を傾げた。



「参加しないの?」


「神様はするんですか?」



 質問を質問で返すと、神様は不思議そうに目を瞬かせる。



「えっ。……まあ、プティがするなら、かな。」


「じゃあ、私もそうです。」



 お互いにジーッと見つめ合うと、やがて諦めたようにため息をつき、口を開いた。



「じゃあ、参加しようか。プティにとってもいい思い出になると思うだろうから。」


「はいです。頑張りますね!」



 そう言ってニコリと笑うと神様も微笑み返す。そのやり取りに嬉しくなり、やるならば速攻とばかりにサクララバイへと向かって飛んでいくことにした。



「では、行ってきます!」


「うん。行ってらっしゃい。」

次回、レイドボスを倒そう!


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。


〜2022/04/05 11:29 寝む→眠に訂正する誤字報告を適用しました。〜

ご報告ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 手乗り文鳥ならぬ、手乗りプティちゃん♪デート出来たかは、疑問ですけど…楽しめたのならいい事ですよね。 お花見とは、酒飲んでくだ巻いて寝るだけさ(笑) [気になる点] 倒された酔っ払いさん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ