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151話 泣きっ面に蜂とはこのこと

こんにちこんばんは。

自分でもなんでこうなったのか分からない展開に進みつつある仁科紫です。これだから書くのをやめられないんですけどね!


それでは、良き暇つぶしを。

 こうして私は人形を取り戻すという目的を達成したわけだが、ここで一つ問題が起きていた。



『許さぬ!許すものかっ!!

 貴様らの血という血でこの城を染めてやろう!〈赤ク黒ク染マレ〉ッ!』



 アルファさんの目が赤く光る。と、同時に玉座の間を縦横無尽に黒い刃状の靄が放たれる。

 それは地上だけでなく空中にさえも走り抜け、予測のつかない動きでプレイヤー達を翻弄したのだ。それは私も例外では無い。



(ニケ!)


〈了解。回避に専念する。〉


(頼みました!)



 すぐ近くを過ぎ去っていく靄にヒヤリとするが、ニケは上手く避けてくれていた。

 問題は、避けるのは避けれてもこの中を掻い潜って空には近づけないという事だ。下手をすれば移動中にあの靄にやられてしまう可能性は否定できない。


 そして、もう一つ問題が起きていた。



「くぅっ……わ、ワシ、そろそろキツイぞ……。」


「もう少し耐えて下さい!」


「ぐぅう……!」



 アイテールさんが獣性?を抑えきれなくなってきたのだ。アルファさんと同じ空間にいるため、らしいが確かに苦しそうである。

 入ってすぐは何ともなさそうだったのですが……静かだと思っていたら近づきすぎて限界が来ていたようです。


 アイテールさんのことを思えば、空の強制送還を諦めて早くこの空間から脱出せねばと思うが、靄に阻まれては動けない。

 先程カッコつけて前に出た妖華さんは『アーこれ、下手ニ出たラ私ガ死ぬネ?』とか言って避け切れそうにないプレイヤーの援助をしていた。いえ、まあ、良いんですけど。良いんですけどね?さっきのはなんだったのかと思わなくもない私が居ると言いますか……。


 そうして膠着状態のまま数分が過ぎた頃、靄の数が減ってきた。何事かと見ればアルファさんの姿が今にも消えてしまいそうなほどに薄くなっている。

 少し余裕が出来たこともあり、神様の横に降りて理由を尋ねることにした。



「神様!これはどういう事なんでしょう?」


「あぁ。プティか。多分、彼女に体がないから、だろうね。魔力の消費と共に存在自体があやふやなものになってる。」


「そんな!?」



 驚くと同時に納得する。追い詰められているのにあれ程の攻撃を仕掛けたのだ。それは何かを犠牲にしたものでなければおかしい。

 この状況からどう動くのか。そう考えたとき、何処からか鐘の音が聞こえた。

 ゴーンゴーンというビリビリと響く厳かな音に驚き、神様にひっつく。尚、アイテールさんは先程から神様の腕の中だ。自分で飛んでいられなくなったというのもあるが、その方が衝動が和らぐらしい。うらやm…コホン。なんでもないですよ?ええ。アイテールさん相手に張り合うなんてナンセンスなのです。とりあえず、戻ったらガイアさんに報告ですね。『アイテールさんは獣性に負けて飛んでいられなくなりました』っと。メモメモ……。



『ぐぁああああああああっ!?』



 突然聞こえた絶叫に手を止めて声の出処を見る。そこにはアルファさんの背中から手を突き刺した空がいた。

 よくよく見ると、アルファさんから黒い靄が出て空へと移動しているのが分かる。何が起きているのかは分からないが、空にとって良くない事だというのは分かった。



「空っ……!」


「やめておいた方がいい。」


「神様!?」



 止めようと動き出す前に神様の静止を受ける。それでも飛び立とうとしたが、ニケが進んでくれない。

 何故だと藻掻いている間にも空へと黒い靄は移って行く。その代わりとでもいうのだろうか。アルファさんの姿がはっきりと見えるようになっていた。

 何が起きているのか。プレイヤー達は困惑しており、手を出す者は居ない。

 やがてアルファさんが崩れ落ちる。その体は近くにいたタルタロスさんによって受け止められていた。



「おいたわしや……。

 おい!これはどういう事だ!?お主は余の同士であったはずであろう!説明せよ!」



 タルタロスさんは両腕で抱えたアルファさんを見て顔を歪ませ、空に叫んだ。

 しかし、空は僅かに間を開けて首を傾げたあと、キョトンとした顔をした。



「……ん?ああ。それ、ボクに言ってる?」


「お主以外におるまいよ!何故だ!何故お主が我らが母を害するのか!答えよ!」


「うーん。お爺さんは耄碌しちゃったみたいだね。いつボクがキミ達の仲間になったのさ。」


「なっ……!?」



 驚愕の事実を知ったとばかりに空を見るタルタロスさんに空は嘲笑う。



「あれ?もしかして勘違いさせてた?ボクはね。あくまでも目的のためにキミ達と行動していただけだよ。

 おかげで目的のものも回収できたし、もうキミ達に用はないかな。」



 掌に黒い靄を集め、空は玉座の上に浮かび上がってその赤いフードを脱ぎ捨てた。

 フードの下の姿は、私の知っている姿からはかけ離れていた。

 子どもの姿では無い。私より10cmほどは伸びたであろう背。僅かな胸の膨らみ。子どもらしい丸みのあった顔は大人らしく鋭さを帯びている。垂れていた目は鋭く他者を寄せ付けない。真っ赤な唇は艶然と弧を描き、瞳の色は綺麗な赤色からくらい澱みのある暗い赤に変化していた。

 何より今の空の姿は艶があり人目を引きつけた。

 特に目を引くのは左の額から突き出ている10cm程の黒い角だ。普通の人には無い、まるで御伽噺に出てくる鬼のようなそれは異物であるにも関わらず今の空を更に美しく魅せた。



「さて。プレイヤー諸君。ボクは欲しいものが手に入ったから、この場から去らせてもらおうかな。」


「逃すものか!〈深淵の鉤爪〉!」



 あっさりと何処かへ行こうとする空を阻もうとタルタロスさんが4本の刃を放つ。

 しかし、その攻撃は空へと届く前に空の隣にいたもう一人の赤いフードを被った人物にかき消される。背格好からしてエロスさんだろう。



「それじゃあ、またね。」



 二人は並ぶとそのまま姿を消した。その一瞬、私の方へと視線を向けて。……気のせい、でしょうか?それとも……。



「えっと……?空ったら、何の説明もせずに消えてしまいましたね……。」



 これは一体どういう状況なのだろうかと動くようになった翼で神様の隣に降り立つ。神様を見上げて話しかけたが、神様が答えるよりも早く事態は動いた。

 ずっと表示されていたスクリーンに全く違う光景が映し出されたのだ。

 私は勿論、今の今まで置いてけぼりをくらっていたプレイヤー達もついていけず面食らっている。


 そこに映し出されたのは先程まですぐそこに居た空たちだった。

 何処かの街の空の上なのだろう。少なくとも私が見た事のない街並みが映っており、その上空に空たちはいるようだ。



『やあ。こんにちは。全世界の呑気な人達へ突然だけどここで素敵なお知らせだよ。』



 楽しそうに、それでいて目には侮蔑の感情を乗せて人々を見る空は今、何を思ってあそこにいるのだろうか。

 片割れであるはずの彼女の考えが今まで以上に分からない。



『この世界は今日から滅びに向かう。』



 ざわりと空間が不快さを増す。聞こえてくるのは何を言っているのか、信じられないといった空の言葉を否定するようなものばかりで。空の言葉が否定されることの不快感と私自身も空がそんな事を言うなんてという衝撃で頭が追いつかない。

 しかし、頭の片隅の何処かでは納得している自分もいた。これは、空を追いかける私への挑戦なのだと。



『何もしなければ1ヶ月、妨害するなら……頑張り次第かな。

 実はボク、この世界が好きじゃないんだ。そこで、この世界を楽しんでいるキミ達には悪いけど、壊させてもらうね。〈召喚門(サモンズゲート):黒の眷属〉』



 言いたい事だけを言って掌の黒い靄を宙に掲げる。すると、宙にふよふよと浮かんだ靄は渦となり広がっていく。渦は直径5mほどに拡がって止まった。

 そして、中から黒い靄が溢れ出てくる。それだけかと見ていると、中から何かが飛び出た。



「あれは……?」



 見た印象は黒い影だ。沢山の影はぼとりぼとりと落ちるように地上へと零れる。まるで黒い滝のようだった。

 そして、落ちた黒い影はむくりと体を起こす。それは生物的ではなく何処か無機質な印象を受けた。起きた影達は何かをそれぞれ象っていく。人型もあれば狼や鳥のような姿のものもいた。

 突然の影達に街に住む人々は怯え、そんな人々を守るように武装した人達が影に立ち向かう。


 しかし。



『なっ……!?』



 黒い影は人をも飲み込む。人の形、狼、鳥であろうが関係ない。全てを飲み込む影は姿に囚われず全てがただ向かってくるものを飲み込んだ。



『あぁ。忘れていたね。その子たち、何もかも飲み込んじゃうから武器も魔法も効かないよ。

 まあ、せいぜい頑張って抗えばいいよ。ボクは逃げも隠れもしない。ここに居てあげるから……いつでも倒しにおいで?その覚悟があるなら、ね。』



 スクリーンは空のアップを映した後、プツリと消える。

 当然のようにその場にいたプレイヤー達は騒ぎ始めた。



「な、なんなんだよ!あれ!」


「愛情の街が……!」


「飲み込むって……じゃあ、どうやって倒せばいいのよ!どうにも出来ないじゃない!」



 絶望的な現実とも言えるだろうか。プレイヤー達は手元で何かを開いては必死に情報共有を行っているようだ。


 そんな中でも私が考えることは一つ。空のことだ。

 つまり、あれは私にここに居るから止めに来い、ということなのだ。止めなければ空はこの世界を壊して私は空に二度と会えなくなる。ゲームなのにいいのかとは一瞬思ったが、その場合はこのサーバーが初期化されるだけなのではないだろうか。

 どちらにせよ、空を止めなければ私は私の目的を達成できないのだ。やるしかない。



「神様。私は空を止めに行かなければなりません。……神様?」



 いつもならすぐにある返事がない。不審に思って神様を見る……が、そこに神様はいなかった。ついでにアイテールさんまでいない。なんなら、玉座の間にいた旧神たちすら居なくなっていた。



(えっ。に、ニケ!神様、さっきまでそこに居ましたよね!?)


〈む?神様……とは誰のことだ?我が尊敬すべき神、アテナ様のことだろうか。〉


(えっ)



「ぇええええええええええっ!?」

次回、掲示板回(久しぶり過ぎて書き方が……)


因みに、空が世界の敵側に回るのは初期からの妄想で決まっていたり。


〈召喚門:黒の眷属〉

それは何処から呼ばれたのかすら定かではない黒の侵略者達の召喚を行う門。

使うには黒のパラメータをMAXにする必要がある。


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 怒涛の展開! 怒って攻撃してたら後ろから…そうしたら世界を壊す宣言。 空さんがグレタ( ノД`)シクシク… [気になる点] 神様がいなくなちゃった…プティちゃんの役割なのにね~。 [一言]…
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