148話 正直になる勇気はいつも近くに
こんにちこんばんは。
どうやって終わらそうか考える今日この頃な仁科紫です。
(いつぶりかもはや覚えていないステータス開示回です。)
それでは、良き暇つぶしを。
(あの、神様。ここに居ても何もすることがありませんし、お城の中に入ることは出来ないのでしょうか?)
戦闘を見ているだけという状況に焦燥を覚え、神様に問いかけると、神様は少し考えたあと頷いた。
(うん。出来なくはない、かな。
でも、本当に今あそこへ向かうの?)
試すような問いかけにその意味を考える。
神様はこれ以上に何かが起きると知っている……?だから、今向かうのを止めようとしているのでしょうか……?
辺りを見渡す。周りの人々は回復している途中の人や、回復を終えて城へと向かう人を集めている人が居る。しかし、乗り気ではないものも多いようですっかり観戦気分のもの達が片手にポップコーン、もう片手にジュースを持って騒いでいる。まだ城へ向かった人は居ないようだ。
それもそうですよね。私たちはあの黒い霧の事も知っていますし、あれを狭い屋内で対処しようとするなんて自殺行為でしかない。そう考えてもおかしくないんですね。
観戦気分の彼らに混じりたい気持ちにもなったが、画面の向こう側のことが気になるのも事実であった。
(……神様。もう少し様子を見ようと思います。)
(うん。それがいいかな。)
仕方がないと自分に言い聞かせ、スクリーンに集中しようとしたところで声をかけられた。……私に、ではなく神様に、だが。
「やあ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかい?」
片手を上げ、にこやかに笑うのはアレスファミリアのデュランさんだ。なんとも嫌な予感がするが、一体何の用だろうか。
「……なんだ。」
「そう睨まないでよ。あのさ、あそこの玉座に座ってる子、君のところの子だよね?行かなくていいのかい。」
訝しげに神様を見るデュランさんは何処か探っているように見えた。恐らく、私と一緒に居なくても良いのかということだとは思うのだが、そこでようやく思い至る。
あれ?このままだと、私が敵になったと思っている方、多そうだな、と。
……もしや、そのせいで城に向かう方が少なかったりします?
困惑しつつデュランさんの前にフワッと浮かび上がる。これで分からなければ私は神様に伝えてもらうしかなくなるのだが。
「ん?何?輪っか?」
「わざわざ教えてやらなくてもいいのに。
これがプティだよ。」
「へぇ。これがエンプティ……え。ぇえっ!?」
デュランさんはスクリーンと私を何度も見比べ、人形に輪っかがあった事を思い出したのだろう。
目をまん丸にして驚いていた。少し愉快ですね。
クスクスっと笑っているのを表すように震えてみせる。
神様はそんな私を不満そうな顔で見ていた。
(どうしたんですか?神様。)
(別に?なんでもないから気にしないで。)
不貞腐れているようにしか聞こえない神様の声に首を傾げるが、神様は話は終わりとばかりにデュランさんに声をかけていた。
「納得したかな?」
「まあ……少しは?まさか、本体がこっちなんて誰が思うんだよ……。」
何故か少し疲れた顔のデュランさんにほんの少しの申し訳なさと悪戯心が芽生える。
そういえば、早々に体を手に入れていたのでこの姿で何が出来るのかまだ試していませんね?
思い至り、早速輪っかの横に手を伸ばすイメージで本体の魔力を動かす。にゅにゅにゅっと生えた手は、思いの外自由が聞きそうだ。
「うわっ!?なんか生えた!?」
お。想像以上の反応ですね。これは面白そうですし、是非とも腕をムキムキのゴツイ仕様に「プティ、アウト。」……ちぇっ。はーい。
神様に止められ、致し方がなく渋々と腕の変更をやめる。え?腕は消さないのかって?いやぁ。それがですね?消さない方が明らかに便利そうなので、消すに消せないんですよね。
とりあえず、やれやれ分かってないなという風に見えるよう腕を振り、体を横に揺らしてみせる。
意図は通じたようで、神様からのお怒りの視線が強くなった。
今度はひぇっと言わんばかりに体を反り、腕も逃げるように神様と反対の方向に移動させる。
「っふ…あはははっ!君たちはいつも通りなんだね。少し安心したよ。」
何故か勝手に笑いだし、勝手に安心したらしいデュランさんの笑いはしばらく止まりそうにないのだった。
そんなに笑われるようなこと、しましたっけ?
頭上でぐにゃぐにゃっと糸をねじまげ、クエスチョンマークを作るとデュランさんの笑いは更に深くなったのだった。非常に不服なのですけど!?
少し時間が経ち、ようやく落ち着いたデュランさんはヒィヒィ言いながらもこれからについて尋ねてきた。それに対する神様の答えは実に単純なものだった。
「僕はプティの望む通りに動くだけだよ。他は勝手にやってればいい。」
(神様……。)
なんとも私ファーストな発言に嬉しくなるが、その場合、私が何をしたいかが重要だ。今のところは……
(では、神様。サクッと城内に入ってあの糸を切ってしまいましょう。)
「いや、でも、それってかなり危険だよ?特に彼女の前でもしもの事があれば、君の今までが消えることになる。良いのかい?」
(えっと、それに関してはよく分かりませんが……はい。もし消えてなくなっても神様が助けてくれるって信じてますから!)
ドヤっと胸を張る。私は神様に守られているだけの存在にはなりたくない。あの糸は私には切る術はないが、神様になら切れる。
思いとやりたい事が矛盾しているのは知ってる。それでも私はあそこに行って神様からの初めてのプレゼントを取り返さないといけない。
結局神様頼りになるしかないのが心苦しいものの……うん。まあ、私、戦力的に役たたずのままですしね。
今の今まで散々役たたずと言ってきた理由がこちら。
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名前:エンプティ
分類:人形族 種族:エンジェルリング LvMAX
【現在、並列存在が近くに存在しない為、進化はできません】
属性:光(・闇)
HP 139(69)
MP 263900(131950)
STR 0
VIT 1
INT 40550(20275)
MND 40550(20275)
DEX 20526(10263)
AGI 9761(4880)
LUK 1000(750)
(ステータス半減中)
AP 1800
種族スキル
〈魔力化〉〈魔力回復(上)〉〈浮遊〉
〈魔力視〉〈状態異常無効(中)〉
〈立体視〉〈光の糸〉〈闇の糸〉
〈分裂〉〈堕天〉〈魔力保管庫〉
〈人形憑依:対象【現在、対象がありません】〉
スキル
〈魔力糸〉〈魔力操作(上)〉〈暗視〉
〈魔力結界(糸)〉〈魔味蕾〉〈魔力変換〉
〈手芸〉〈魔力放出〉〈二極合成〉〈調和〉
〈鍵開け〉〈罠(糸)〉
固有スキル
〈並列存在〉【現在使用中】
(※一部の機能が使用できません)
称号
【ソウゾウを超える者】【神様を崇める者】
【水霊の友達】【糸の操者】【兎の天敵】
【兎の宿敵】【狼の天敵】【大蜥蜴の天敵】
【可能性の欠片】【魔法初心者】【空島への鍵】
【ファミリアのマスター】【下克上】
【伝承実現者】【翼を得しもの】
【神様の信奉者】【神聖生物の友人】
【道を分かちしもの】【真実の探求者】
【神聖を宿しもの】
ファミリア
〔カオスファミリア〕
役職:マスター
シンボル:太極図 人形
シンボルカラー:白黒
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情報量は多いが、それはともかくとして今、私はこれ以上の成長が望めない状況だった。どうやら空が近くに居なければ進化が出来ないらしい。
……まあ、私が強化されると空も強化されるのは当然ですしね。……とはいえ、とはいえ!私だって成長したかったんですけど!?
神様曰く、私のステータスは最終進化をしてすぐくらいの能力値らしいんですよね。つまり、まだまだ伸び代はあるはずなのに空が居ない以上、これ以上は見込めないんですよ!これが自業自得ですか!?
と、それはともかくとして、こんな状況だというのに神様から頂いたお人形まで奪われてしまうポンコツ具合。これが落ち込まずに居られますか!?居られませんよねぇっ!?(ヤケクソ)
(と、言うことでご迷惑をお掛けしますが、レッツゴーです!神様!)
「あー。一時荒れてるなぁって思ってたけどそれが原因か。結構早い段階からレベルは上限に達してたもんね。」
仕方がないなぁと言わんばかりに頷いた神様はお城の方へと歩いていく。置いていかれないようにと神様の肩の上辺りに陣取った。
「えーっと、さっきからどうしたの?その子と話してる?あと、もしかしてあそこに行く気なの?」
「そうだよ。だから、邪魔しないでね。」
「あー……ハイハイ。相変わらずおっかないな。君。」
この後、城壁にたどり着くまでに作戦会議を行った私と神様は、静かに城に侵入したのだった。
「ワシを置いていくでない!」
(居たんですね。アイテールさん。)
「初めから居たんだが!?」
あ。アイテールさんにも聞こえるんですね。
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外にいるもの達が動き出した一方で中の玉座の間に居ないものたちも動き始めていた。
その中にはアキトとルカも含まれている。
「なぁ。本当に行かなくて良かったのか?」
「んー?まぁな。ほら、何があるか分かんねぇだろ?ここの扉、開けれなくなったら困るしな。」
「ふーん?」
納得のいかないルカはただアキトの隣で佇む。アキトの隣にいられることに少しだけ喜びを感じる自分がいることに、ルカは気づいていた。
(……そっか。私は、この人の事が嫌いなんじゃない。向き合い方が分からなかっただけなんだ。)
「どうした?なんかあったか?」
「べ、別に。……アタシ、アンタのこと別に嫌いじゃねぇから。」
一瞬、虚をつかれたアキトは目を丸くし、やがて口元を緩めた。いつものニヤリとした笑みではない。自然と零れたような笑みにルカは目を奪われた。
「そうか。……ありがとよ。」
「れ、礼を言われるような事でもねぇよ!
それより、見ろよ。そろそろヤバそうじゃね?」
「んー……まあ、確かに?うちの連中も辛そうだしな。外からは……へぇ?」
アキトは各地点に設置した自身の使い魔からの情報に目を細める。
それはアキトにとって朗報ではあったものの、間違いなく読めないものだったのだから。
「どうかしたか?」
「いーや?これはちょっと、いや、かなり面白くなりそうだなってな。突撃すんのはもうちょい後になりそうだ。」
「ふーん。……ま、アンタが言うならそうなんだろうな。もうちょい待ってやるよ。」
唐突なアキトの言葉にも関わらず、ルカは何も尋ねない。その様子にアキトは苦笑する。
もしかしなくても使い魔の事も知ってるんだろうなぁ、と。
(本当に、オレはとんでもねぇ事を忘れてんだな。)
もはや確信に至ったその事実だけがアキトにはただもどかしかった。
次回、侵入
以下、長い称号解説
称号説明
【神様の信奉者】
説明:誰かを心の底から思い、信仰心ゲージがMAXになった信心深き者へ贈られる称号。
効果:心から思う対象を思って行う行動にプラス補正。
【神聖生物の友人】
説明:古き神々は神聖なる生き物を作り出した。神聖なる生き物は愛し子を愛し子ではなく、友人として率先して手助けしてくれるだろう。
効果:名を呼べばやって来る。
【道を分かちしもの】
説明:半身は既に異なる決意を抱くもの。なれば、半身は半身たり得ず、単独行動を得る。
効果:並列存在が完全に独立して存在するようになる。
【真実の探求者】
説明:島の歴史について知ろうとし、断片を手に入れた貴方は正しく探求者と言えるだろう。
効果:なし。
【神聖を宿しもの】
説明:神聖なる翼は貴方を主と認めた。そして、今も貴方の中に宿り、世界を見ているのだ。
効果:どんな姿でも神聖なる翼を纏える(今は使用不可)
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




