14話 空腹は最高のスパイス
こんにちこんばんは。
11月ももう下旬になりそうな今日この頃に焦りを覚える仁科紫です。
小説、書いている暇じゃないんだよなぁ...( ==)トオイメ
近いうちに小説の投稿を2ヶ月ほどお休みさせて頂こうと考えておりますので、ご理解頂けますと幸いです。
それでは、良き暇つぶしを。
あの後、実験用にと兎をさらに5匹ほど狩ってお肉を手に入れておいた。
ふふふ。追加で何匹か相手をしてみましたが、もう兎さん相手なら余裕ですね!
新しいことが出来るようになった私は鼻歌交じりに神様の周囲をクルクルと飛ぶ。
「なんだか機嫌がいいね?」
「はい!私にも出来ることが更に増えそうな予感に、気分は絶好調なのです!」
「ああ。お肉を食べる、だったっけ。
…でも、種族スキル以外では聞いたことがないんだよね。人形族が食事できるなんて。」
ポツリと呟いた神様の言葉に首を傾げる。
確かに、神様はゲームを運営している側の方のようですし、神様がないと言えばないのかもしれません。
しかし、試行錯誤しない内から諦めるのは私としては許容できるものではないのです!
「ふふふ。やってみなきゃ分からないこともあるのですよ?神様。」
「……まあ、そうだね。僕も全てを把握している訳では無いから…そういう事もあるかもしれない。」
柔らかく笑った神様に笑い返した辺りで、丁度神様のお店へと辿り着く。早速私たちは2階のキッチンへ向かった。
このお店、不思議なことにキッチンが1階にも2階にもあるんですよね。
どうやら住居スペースが1階の半分と2階部分という構成らしく、1階には水周りとキッチン、ダイニング、客室。2階にはキッチンにリビング、神様の私室があります。割と広いんですよね。ここ。
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「それでは、レッツクッキング!なのですっ!」
「おー…?」
神様に作ってもらったエプロンを着け、右腕を大きく振り上げた私。それに合わせて神様も軽く腕を上げてはいるものの、なんとも言い難い表情をしていた。
くっ…。その困った感じに下がった眉尻が普段とは違う色気を醸し出し…っていう流れは置いておきましょう。神様がカッコイイのは通常運転ですからね!
心の中で悶えながらも、それらをなかった事にして神様に向き直る。引かれたくありませんしね。逃げられると困るので当然ですが隠します。
……何やら困り顔だった神様の目に、若干の呆れのようなものが混じっている気もしないではないが。
それはそうと、と話を切り出す。
「さて、神様。」
「何?」
「料理って、この世界ではどうやるんですか?」
「いや、知らなかったのにやる気満々だったの!?」
「えっ。いやー。ほら、神様なら知ってるかなーなんて思いまして。……すみません。そこまで考えてませんてした。」
いつになく殊勝な様子の私に戸惑っている神様。普段と違うからか、神様も何を返せばいいのか分からないらしく、言葉に詰まっていた。
むぅ。なんだか、腹立たしいですね。私がいつも考えて行動していると思うなら大間違いないのです!大体、海も料理は家庭科でしかやった事がありませんからね!?なお、その結果は黙秘します。ええ。一言述べるなら…海にも苦手なことがあったんだなぁとだけ。
……それにしても、なんだかムカつきますね!?
よく分からないイライラが募りに募り、何かがプチンっと切れる音ともに気づけば神様に逆ギレをしていた。
「……そもそも、知ってるわけないじゃないですか!私!この世界、来たばっか!知ってるわけなし!ですっ!」
ムキーッと怒りのままに言葉にしてからはたと我に返る。目の前の神様は驚いたように目を丸くして私を見ていた。
あっ…やってしまったのです。らしくもなく子供っぽい行動をしてしまいました…。これでは神様から呆れられてしまいますね。
心中でそう呟き、どうしたらこのなんとも言い難い空気を変えれるかと考える。
…とはいえ、ここで謝るのも何か違う気がするんですよねぇ。でも、このままになって気まずい空気が流れるのも嫌ですし…。
少し考えて勇気がいるものの、神様の顔を見てから考えようと覗いてみる。そこには何かを考え込んでいる神様が居た。
…これなら、なんとかなりそうですかね?
「えっと、神様。その…だから、料理、教えて頂けますか…?」
辛うじて言葉に出せたそれを伝えると、神様はハッとした表情をした後、すぐさま私の提案に頷く。
「あっ…うん。勿論いいよ。
それじゃあ、早速取り掛かろうか。」
「はいです!」
ホッとしつつ早速神様の言う手順通りに調理を進めて行った。
でも、何を考えていたのでしょう?少し気になりますが…まあ、今はいいですね。
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「でーきまーしたーっ!」
ただ兎肉を食べやすいように切り、塩コショウを振りかけ、ペタペタと香草を付けて焼いただけであるが、私はニッコニコの笑顔で神様に向かってそう言った。
見ると神様も微笑ましげに私を見ており、それはそれでなんだか嬉しくなってくる。
ふふふ。先程は強めに当たってしまいましたが、特に気にされてはいないようです。少し安心しました。
「では、早速食べるのです!」
「そう言えば、事の発端はそれだったね。どうやって食べるつもりなんだい?」
今更の質問に、そう言えば説明していなかったことを思い出す。
言わない方が驚かせれるかなぁと思ってしまったんですよねぇ。私ったらうっかりしていました。
「ふっふっふ。それはですねぇ。こうするのですよ!」
得意げに胸を張りながら魔力糸を一本取り出すと、お皿に乗せた肉の塊を器用に掴んで、人形の頭上にある本体のリングへと近づけた。
そして、気合いでリングの一部を口のようにパックリと広げ、その中へと肉の塊を放り込む。
「……えっ?そこ、口だったの…!?」
神様、驚いてますねぇ。
そんな馬鹿なと言うなかれ。何せ、こちらが私の本体な訳ですし?手足があって口がないわけないじゃないですか。
それに、このリングは魔力の塊ですから、ワンチャンあると思ったのですよ!…まあ、思いつきだったので、本当に上手くいくかは一か八かでしたが。
ムシャムシャと咀嚼するようにリングを動かし、魔力へと変換していく。
ふむふむ。味だけでなく食感も分かるとは…いいですね!
…まあ、食感は実際のところ、曖昧なのがなんとも言い難いところではありますが。硬い、軟らかいまでは分かってもどれくらい硬いのかは分からない。みたいな感じでしょうか?
久しぶりの食事をじっくりと味わっていると、突然頭の中にピロリンッという電子音がした。それと共に機械的な女性の声が頭の中に響く。
《プレイヤー名:エンプティ は
〈魔味蕾〉
〈魔力変換〉
を 習得しました。》
「ふぇっ!?」
「……どうしたの?」
突然声を出した私に様子を見守っていた神様が、どうしてか疑いの目を向けて私を見ていた。
えっ。私、驚いただけで何もしていないんですが。流石に酷くないですか!?……って、あれ?これ、もしかして、からかい過ぎた弊害…?
なんと!それならば、早く誤解を解かなければですね!
「いえ、突然頭の中に電子音がなったので驚いてしまって。これ、なんだか分かります?神様。」
「あー。それか。」
私の質問に納得したらしい神様は警戒心を薄め、説明を始めた。
「それは世界の声だね。
君、多分何かしらの能力を手に入れたり、レベルアップでもしたんじゃないかな?」
「なるほど。そういえば、女性の声が〈魔味蕾〉〈魔力変換〉を習得したと言っていたのです。」
どうやら、これはゲームでお馴染みの成長のお知らせだったようだ。
……ゲームはした事ありませんし、知識だけの話ですが。
まあ、何はともあれ、これでご飯は美味しくいただけますね。
機嫌よく鼻歌を歌っていた私は、神様が何やら呟いていることに気付くことはなかった。
「〈魔味蕾〉なんてスキル、あったか…?」
「かーみっさまー!ぼーっとしてたら全部食べちゃいますよー?」
「あっ…待って!僕も食べるから!」
その後、作った兎の香草焼きを2人で食べきり、初めての料理は無事に終了するのでした。
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それから時が過ぎ、4月も下旬になった頃。唐突に神様がこんなことを言ってきた。
「そういえば、そろそろ桜の季節か。」
「えっ。神様、大丈夫ですか?桜はもう終わってますよ?」
意味がわからないとばかりに首を傾げ、ついでに熱でも図るように神様の顔に近づき、手を額にあてる。
「ふむ。平熱ですね。……多分。」
「いや、その人形に熱を感じる機能はないはずなんだけど?」
「そこは気分ですよ。神様。」
呆れたように私を見る神様にニヤリと笑うと、やがて諦めたのかため息をついた。
確かに、基本的に暑さや寒さを感じないようになっている人形では神様の体温など分かるはずもなかったんですよね。とはいえ、気分的にそうしたくなったのです。仕方がありませんね。
あ。因みに触覚はあります。どういった原理かは知りませんが。
「まあ、いいよ。
それで、僕が言った桜の季節というのは今度の日曜日にあるイベントのことを言っていたんだ。」
「イベントですか…?」
よく分からず、首を傾げていると神様はざっくりとした説明をしてくれた。
なんでも、このゲームには月初めと月終わりにイベントかバトルロイヤルがあるらしい。
そして、今回はイベントの方で毎年恒例となっているものが行われるそうだ。その名も、『皆でお花見大会!』というなんともそのまんまなタイトルだった。概要はというと…
「えっ。お花見をするだけなんですか?本当に?」
イベントと言うから身構えていると、ただ桜を見て宴会を開くだけなのだとか。
あまりにも意外な事実に驚いて神様を見ていると、神様はいつもの穏やかな顔で頷く。どうやら、本当にお花見だけのようだ。
「ああ。会場に行って、のんびりと桜を見ながら歌や踊りを楽しむようなイベントだよ。今度行ってみようか。」
その言葉に嬉しくなり、神様に飛びついて頷いた。
「はいです!お弁当も持っていきましょうね!」
「わっ…!?…もう。いきなりは危ないからやめてくれないか。
でも…まあ、そうだね。お弁当も準備していこうか。」
飛びつかれて困った顔をしている神様にニコニコとしつつ、再び頷いた。内心で嬉しさのあまり、ぐふふという淑女らしからぬ声で笑いながら。
これ、デートと言っても過言でもないのでは?いえ、きっとデートです!楽しみにしていましょう♪
次回、早速イベントへ!
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




