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141話 一方、城の中では

こんにちこんばんは。

今回はほぼそれぞれのファミリアの説明回ですが、文字数が少し多くなった事に実力不足を感じる仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 時間は少し遡る。中と外を繋ぐ唯一の扉がパタンと閉まる。その事に一番初めに気づいたのは当然、直前に潜り抜けたアルテミスファミリアだった。

 アルテミスファミリアのマスター、月光院ルカは内心でため息をつく。


(あぁ。やだ。裏切りは嫌い。……でも、彼女を裏切る方がもっと……)


 足を止める。ファミリアの仲間たちには悪いが、事前に話しあった結果だった。皆、ある程度の納得をしてこの場にいるものたちばかりだ。

 だからこそ、合図をする。



「頼んだぞ。皆!」


「「了解!」」



 それぞれが得意の隠行術を駆使し、先に進んだものたちの進みを阻まんと行動する。行動を気づく者も、阻むものもいなかった。


 開始から15分。始まりは一つの銃声からだった。



「……む?」


「なっ!?誰ですか!マスターを襲ったのは!?」



 凶弾がゼウスファミリアのマスター、ディボルトを襲う。しかし、ディボルトは危なげなくその銃弾を躱すどころか受け止めていた。ゼウスファミリアのサブマス、トアから事前に送られていた通信機により各ファミリアに伝達が行く。しかし、それぞれのファミリアはゼウスファミリアのマスターが襲われただけであると判断した。

 こちらはフェイク。ルカの本当の目的は他にあった。



「ぎゃぁっ!?」


「ちょっ、押さないで!こっちは罠が……っう!?」


「襲撃者がいるぞ!皆!気をつけるんだ!」



 場を混沌に陥れること。1階で始まる戦闘により早速目的が達成されたことを知ったルカは、油断しきった背中に一本の矢を放つ。こちらが、ルカの本命だ。



「なっ!?」



 しかし、その矢は本命によって直々に叩きおられることとなった。本命ことアポロンファミリアのマスター、アキトは折った矢を見て舌打ちをする。



「この矢……あぁ。そういう事かよっ!聞けっ!

 襲撃者はアルテミスファミリアだ!アルテミスファミリアが敵に回ったぞ!気を付けろよ!」


「はっ!?なんで!?」


「き、気でもとち狂いましたかぁ……?マスター。」


「ちげーよっ!よく考えてみろ!このイベント、どうにもうさんくせぇじゃねぇか!ルール説明も何もなし!死んだらどうなるのか明確な通告もなし、だ!

 ならよ、ここでファミリア同士をつぶし合わせるなんて事が起きてもおかしくねぇだろうよ!」



 全員に聞かせるようなアキトの声に全員が気を引き締める。


 城の中は1階が広大なエントランスになっており、上へと続く階段が左右にある。2階は階段の左右に長い廊下がのび、その先に階段が続く。3階は鏡の迷路。4階は兵隊が守る廊下が続き、最後に20段の階段を登りきると最上階、玉座の間に辿り着く。

 開始から15分経った現在、最も進んでいるゼウスファミリアであっても3階に行き着いたところだった。走るだけなら5分で3階にたどり着けるにも関わらず、時間がかかった理由は簡単。城があまりに広大すぎる上に2階が難所だったのだ。


 その2階には現在、右にポセイドン、デメテルファミリア。左にアテナ、アフロディーテファミリアが進んでいた。戦闘向きとは言えないヘラファミリアとルカに襲われているアポロンファミリアは1階で足踏みしている。

 さて、難所とは言うが一体何がプレイヤー達を苦しめたのか。簡単な話、設置されている罠の数と罠の質が酷いとしか言えないものだったのだ。

 ある者は定番、落とし穴にはまり、ある者は狭い廊下を襲うほぼ隙間のない転がる大岩に襲われ、ある者は上から降ってくるタライに目を回した。



「ハッハッハ!愉快だネェ?」



 そんな中でもこの状況が愉快だと笑う者がいる。アテナファミリアのマスター、妖華だ。

 アテナファミリアは知恵と戦闘を司るため、魔法使い達が多く所属するファミリアだ。

 故にこういったトラップハウスには滅法弱いのだが、ファミリアのマスターである妖華は楽しげに笑いながら転がってくる大岩を蹴りで粉々にする。

 相変わらずこの人の力はどうなっているんだろうと思いながらも、胡散臭い男という表現が似合うサブマスのカシューナツは苦情を呈す。この性悪マスターは仲間たちが散々大岩に追いかけ回されているのをニヤニヤと眺めた後、ようやく動いたのだ。サブマスとしては抗議せねばならないだろう。



「ちっとも愉快じゃないですから!真面目にやって下さいよ!」


「ウーン。ナッツ君ハ真面目すぎるヨネェ?禿げるヨ?」


「ナッツじゃなくてカシューナツです!

 マスターが真面目にやらないから私が真面目にやらないといけないんじゃないですかぁっ……!」


「あ。タライ。」


「ぎゃぁっ!?……私、頭脳労働要員なんですけど!?マスター!!」


「ハッハッハ。……愉快だネェ!」



 ちっとも愉快じゃない。妖華に付き合えば楽しいことの方が多いが、付き合わされる場合はとんでもない目に合うのだとその場にいる全員が遠い目をするのだった。


 所変わってアテナファミリア後方にいるアフロディーテファミリアはゆっくりと進んでいた。



「ふぅ……。」


「あぁ。キャラメリア様がお疲れよ。皆さん、休憩しましょう。」


「「はい!」」



 テキパキと机や椅子が設置され、お茶が準備される。数分もしないうちにそこはお茶会会場となっていた。

 罠は進まなければ発動しないため、休憩は出来るのだが、ここまで堂々と休憩するものもそうはいないだろう。

 カップを片手に一息ついた所でキャラメリアにサブマスのアナリスが声をかけ、2人で話すからと安全だと判断された部屋に入っていく。

 その後ろではファミリアの面々がため息をついていた。



「キャラメリア様は今日も美しいわね!」


「ホントだよ!」


「それに比べて……」


「アナリスってホント何なの?何で私たちのサブマスなんてしてるんだろ。」


「あの方の隣に相応しくないのよ!腹立たしいわ!」



 アフロディーテファミリアのマスター、キャラメリアは美を司るアフロディーテファミリアに相応しい美貌が特徴的な人物だ。輝くストレートのストロベリーブロンドに薄氷のような美しい水色の瞳。少しキツい印象を与える顔立ちだが、鼻が高く整った美貌を持ち合わせている。正に絶世の美女であると評判だ。少々無口だが寧ろ、そこがいいとファンも多い。

 一方のアナリスは、何故美を象徴とするアフロディーテファミリアに居るのかと言われるほどに地味だ。

 老婆のような白の混じった灰色の髪に濁った池のような濃い緑の瞳。あえて選んでいるのか襤褸のような薄汚く見えるローブに黒縁メガネをかけた姿は、美を愛するファミリアのメンバーからは嫌われ侮られていた。

 何故、あんなのがサブマスなのか、と。

 しかし、事実は違っているのだ。



「キャラメリア様。もう少し頑張って頂かないと困ります。」


「だって、このお城罠だらけなんだもの!キャルは戦うの好きじゃないわ!」


「そう言わないでください。キャラメリア様。

 キャラメリア様が頑張れば皆の人気者になれますよ。」


「ホント!?なら、頑張っちゃおう!」


「はい。頑張るキャラメリア様は素敵ですね。」



 頷くアナリスは笑顔で頷く。キャラメリアは外見と違い、内面はお子様だ。

 キャラメリアというキャラクターを守っているのはアナリスの方なのだが、キャラメリアはあまり理解していない。キャラメリアは自分が人気者な状況を気に入っているため、アナリスに指摘されれば協力するだけなのだ。



「ああ。そうそう。これからもあまり話さないように。」


「ええ!みすてりあすな美女って奴でしょ!分かってるわ!」



 意気揚々と満足気に部屋を出たキャラメリアにアナリスは口角をあげる。この素直さはアナリスにとってキャラメリアを都合のいい駒にするのにかかせなかった。


(今日も素敵に踊ってくれてありがとう。

 私のカワイイお人形さん。)


 これで暫くは休み無しで今まで以上に進めるだろう。キャラメリアの進歩に合わせていたが、そのキャラメリアが走るとなれば進行も早くなるのだから。

 こうしてアフロディーテファミリアは先を行くアテナファミリアに追いつくべく速度を上げたのだった。


 一方の右側の廊下ではデメテルファミリアとポセイドンファミリアが協力して進んでいた。



「あんた達!この程度の罠でへばったりすんじゃないよ!」


「「へーい!」」


「お前らもだぞ!分かってんだよなぁ!?」


「「おうよ!」」



 それぞれのファミリアがマスターに従い、進んでいく。デメテルファミリアは豊穣を司るファミリアであるため、普段は農業をしている者が多い。そのため、こういったイベントには不向きである事が多いが、そんな者たちの中でも活躍する人物がいた。



「おーい。そこ、罠だから右に一歩分避けてくれ。」


「おう!分かった!」


「そこ!左に二歩な!危険な予感がするぜ!」


「ほーい!いやぁ、こういう時猟師の奴らが居ると助かるな。」



 あちこちでかかる声。それはデメテルファミリアに所属する猟師や罠師といった普段罠を仕掛ける側の者達だった。罠を仕掛ける者は罠を察知することが出来るのである。

 そうしてデメテルファミリアが罠を察知して避ける中、ポセイドンファミリアは護衛をしていた。

 ポセイドンファミリアは海と馬を象徴するファミリアである。……が、その実態は海好きと動物好きの集団となっている。最も、イベントに参加するようなメンツは海好きの者達が多く、ポセイドンファミリアと言えば海の漢たちだと思っている者の方が多いのが現状だった。

 今もポセイドンファミリアは海の漢らしくデメテルファミリアの危険を排除しているところだった。



「よいしょっと。全く。ユウナギさんも人使いが酷いよね。」



 やになるなぁと呟いたのはポセイドンファミリアのサブマス、春風だ。小柄な少年はその名の通り春らしい桜色の髪と黄緑色の目を細める。

 この廊下は罠しかないようにも見えるが、部屋から魔物が現れることがある。魔物を駆除するのがポセイドンファミリアの役割となっているのだ。

 小柄な見た目からは想像がつかない素早さで出てきた魔物の後ろにまわりこみ、ナイフで切り裂く。その姿は常人の目では捉えられず、風が吹いたと思えば魔物が消えるという不思議な状況を作り出していた。

 マスターである大男のユウナギはその姿を見て満足そうに頷くと、隣から声がかかった。デメテルファミリアのマスター、ヨッダだ。恰幅のいいおばちゃんと表現すべきその人は人好きのする笑顔をうかべた。



「今回は頼りになるね!うちは罠を解くしか脳がないやつばっかしだから。」


「いやいや。こっちこそ助かるぜ?敵を倒せても罠が避けれるんならそっちのが助かるしよ。」



 傍から見れば穏やかな2人。しかし、裏では全く穏やかじゃない。罠を解いてやってるんだから感謝してね。こっちは邪魔者を倒しているんだから罠に集中出来てるんだろう?と、互いに損得が偏らないように牽制しあっているのだ。

 2つのファミリアはこうして影でやり取りしつつ先へと進むのだった。


 そして、時刻は開始後20分に達する。城の中に突然、少女の声が響いた。

次回、多分続き。(中か外かはともかく。)


ゼウス、アルテミス、アポロンファミリアは説明を放棄することとします。

尚、デメテルファミリアのサブマスですが、あまりにも普通の人過ぎて(なんならNPCと間違えられるレベル)なんでサブマスをやっているのか議題にあがりがちな人物だったりします。(あえて説明しなかった。)


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 説明の放棄は認めないものとします。
[良い点] 人狼にはなれませんでした。まあ、獅子身中の虫は直ぐにばれますから。 個性あふれるメンバーが色々と頑張ってます。この調子で行けるのでしょうか?(たぶんムリだよね。だってね、イタズラ好きのエ…
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