134話 状況は急速に変化する
こんにちこんばんは。
小説を読む楽しさを再確認し、睡眠時間を削ったがために眠たい仁科紫です。(読書は容量用法を守ってしましょう。)
それでは、良き暇つぶしを。
「うぅ……。酷い目にあったのです……。」
遠く離れた場所に辛うじて見える浮島を眺める。さっきまであそこに居たのかと考え、次にはよく落下で死ななかったなと苦笑する。
他の人達はどうなったのかと周りを見ると、丁度神様が近づいてきているところだった。仰向けのまま神様の方を見る。
「プティ、無事?」
「はいです。アイテールさんとガイアさんのお陰でなんとか、ですが。」
「あの2人が旧神の中でも一番冷静だからね。
他の子達も無事だよ。今は周囲の様子を見に行ってくれてる。」
「そうでしたか。」
確かに普段はバ……コホン。間抜けっぽいアイテールさんだが、今回は一番冷静に対処してみせていた。ああいう所がウラノスさんに慕われているところなのだろう。
え?ウラノスさんがアイテールさんを慕っているのを初めて聞いた、です?意外とあの2人、仲良いのですよ。口調も似ているくらいですからね。
うんうんと頷き、よっこらしょと起き上がる。もう少し地面で寝転がっていたかったが、私一人が何もしないというのも決まりが悪い。
これからどうするか神様と話しながら先程の出来事を思い出していた。
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「次は神様ランキング8位のアルテミスファミリアが治める島ですね!ようやく3分の1クリアですよ!」
それは騎士の島から5つ目の島である月光の島へと向けて飛行船に乗っていた時のことだった。わくわくと次の島に思いを馳せていると、そこへ影がかかった。
ここは上空であり、雲の上。つまり、影が生まれようのない場所だ。即ち、何を意味するかというと……
「空に巨大な船が!?神様!あれも次の島へ行くのでしょうか?」
そう。今まで見たことがないような巨大な人工物が飛んでいるという事になる。
それは正しく空飛ぶ船と呼ぶべきものだった。先の尖った船首に反りのある特徴的な形の船底。巨大な帆を張り風をうけて進む様は、動力は分からないが大航海時代の船と大差ない。
空飛ぶ船は飛行船意外に初めて見たと目が輝く。あんなものがあるなら乗ってみたいものだ。そして、神様とエンダァアアッてしてみたいですね!ん?あってましたっけ?……違う気がしてきましたね?
あの曲ってなんだっけって思いながら船を見ていると、神様から返事が来ないことに気づく。
珍しいこともあるものだと振り向くと、そこにはなんと船を凝視している珍しい神様が目に入った。あの神様が!?なんでも知っていそうな、あの神様が!?
「神様、どうしました?」
「いや、あれは……」
神様の言葉はそれ以上続くことなく途切れる。代わりとばかりに割って入ったのは可愛らしい少女の声だ。
空には大型のスクリーンが展開されており、あの巨大な船の上であろう景色が映し出されている。…見覚えのある少女の姿と共に。
『アー。テステス。聞こえてる?オーケー。んじゃ、始めますよっと。
さて、この声を聞いているであろう紳士淑女の皆様方!
はじめまして。我々は暁の使者というものだ!
我々は古を生きし神々の信者であり、この世界への反逆者である!現在の神を名乗るファミリアなど我々は認めない。かつての神々を弑し、その座に立っただけの神未満でしかない略奪者など認められるものではないのだ!
故に!我々は全ファミリアに宣戦布告する!!
今日から一週間後、場所は月にて!我々は待っているぞ!我らが信ずる神々が全てを取り戻す日々を!!』
スクリーンがプツリと消える。一瞬の出来事に思考が止まらない。何故に支配される中、すぐさま状況に変化が訪れた。
ドォンッという重い何かが破裂する音。グラグラと揺れる船内に音の元はここであると我に返り、慌てて手すりを掴む。
判断がおいつかず、咄嗟に神様を見ると近くにいた神様は怖い顔をして飛行船の上部を睨んでいた。そして、その場にいる全員に声をかける。
「急いで脱出するぞ!特にプティ!遅れるなよ!」
「あっ、は、はいっ!ですっ!!」
どこに向かうかも分からないが、とにかく走り出す。3人並んで走るのが精一杯という広さの通路を神様の後ろについていっているだけだが、少しづつ開く距離に慌ててニケを召喚する。初めて見る神様の形振り構っていられないという姿には流石の私も焦燥感に駆られる。
ニケにより遅れを取り戻した頃、隣からガイアさん達の声が聞こえてきた。先程まで別行動だったのだが、どうやってか無事に合流できたようだ。
「落ちてる。急ぐ。」
「うむ!最悪はワシに任せよ!」
「……急ぐか。」
「わ、我もいるぞ!この人数くらい余裕だ!」
「怪我する前に急ぎますよーっ!!」
「何故だ!?」
見た目子どもと鷲だけで空を飛べないであろうガイアさんとクロノスさんの安全を確保出来ると思うなら、さすがに自然の摂理を舐めてると思う。重力は人間が逆らってはいけない物理法則ですからね。え?神様?神様は神様なのでノープロブレムです。ええ。
巨大な船から攻撃されているのだろう。窓からは船から飛んでくる砲弾が時折見えた。
どういった構造をこの船がしているのかは分からない。しかし、時折大きく揺れる船内や崩れて使えない通路、乗組員が右往左往している様子からして長くは持たないということは言うまでもない事実だった。
「よし。ここからなら降りられる。」
「ここって……?」
移動を初めて数分。神様の走る速度に合わせただけに随分と早くたどり着いたそこは、入り組んだ通路を通ったばかりに詳しくは分からないが、飛行船でもかなり底の方であるように感じた。何処か飛行機の脱出口を連想させる取手のある四角い切れ込みにどうも嫌な予感がする。ん?つまり、この状況って……。
「ああ。臨時の脱出口さ。プティは飛べるからいいとして、ロノ、ガイアはおいで。」
「我らが父なら安心。」
「ああ。頼んだ。」
「まさかの飛行船からの脱出、ですか?」
「うん。そうだよ?」
あたかも当然のように頷く神様に戸惑いながらも下を見る。開かれた扉からは空気が入り込み、風がバタバタと音を立てている。
下を見るのも恐ろしいが、やるしかないのだろう。
「それじゃあ、プティから。準備はいい?」
「ちょっと、まだ」
《問答無用。飛べ!主!》
「え。今、落ちろって……わぁあああああっ!?」
落下していく体が強ばる。もちろん、何度も飛んだ経験はある。とはいえ、ここまで高く飛んだことはないのだ。空気の抵抗から風に流される。
(ど、どうし、どうしたら!?)
《情けない。私を使えば……》
「ぎゃぁああああっ!?にげのぉおおっ!おばぁああかっっ!!れぅっ!!」
バサリとニケの翼が開く……と、同時に体勢は安定せず、クルクルと回る。目が回りそうだ。
どうやら、ニケの翼は空気の抵抗に負けてしまったらしい。残念なことに翼は広がりきらずにただ落下の速度を僅かに緩めるだけだ。これならまだ翼を広げなかった方がマシだったのでは!?などと頭の中で考えていると、上から黒い影が落ちてきた。よく見るとアイテールさんのようだ。
「どべぅどはぁあああ!ぎぃでなぁあああああっ!!」
上手く聞き取れないが、なんとなくは分かる。さすがに私もまさか飛べないとは思っていなかった。
(ニケ、これはどういう状況なんでしょう?)
《簡単だ。法則により地上から500メートル上空までのみが生物のもつ飛行する権利となる。》
(つまり……500メートル付近からどうにかして飛ばなければならないということですね?)
なるほどなるほど……それまでに私の落下速度はどうなっているんでしょう。
遠く下に見えるアイテールさんらしき影を見、どうにか無理矢理上を見あげて比較的ゆっくり落ちてくる3人と1人を見る。……よし。最終的に止まれそうになかったら神様に助けてもらうとしましょう。
それはさておき、と近づいてくる懐かしい地上を見ていると、遠くで爆発音が聞こえた気がした。
嫌な予感から目を逸らしかけたが、強制的に体が上を向く。当然のごとく空には落ちてくる飛行船だった残骸と遠くに見える船の姿があった。
そして、比較的軽い私と重くて私より小さな金属ならどちらの方が早く落ちるのか。その答えは目の前にある。
(ぶ、ぶつかる!?)
《しっかりしろ!主!》
ニケに激励され、ハッとする。慌てて自分に出来ることをし、これでどうにかならないかと頭上に注意する。
(ニケ!下は頼みましたからね!?)
《大丈夫だ。主。あと5秒で飛行可能領域に入る。主がミスをしなければな。》
どうにもニケの言葉が煽っているようにしか聞こえないが、間違ったことは言っていないために目の前の障害に集中する。かつて作った偽りの翼を参考に自身を球状に包み込むようにして魔力糸を操る。最近していなかっただけに少しばかり精度が悪いが、これでぶつかって神様のお人形を破損するような事はないだろう。
そう。どうせ私があの残骸にぶつかったところで私は生きているだろう。私はあくまでも本体が頭上の輪っかなのだから。……まあ、たまに忘れがちですが。
落ちてくる残骸のうち、小さなものがパラパラとぶつかっては弾かれるのを感じる。5、4、3、2、1と数えたところで落ちていた体が重力に逆らう感覚がした。いつもの飛ぶ感触にホッとする。
(ありがとうございます!ニケ!)
《気を抜くのはまだ早い。頭上を見なさい。》
(え。)
上を向く。明らかに巨大な残骸。どう見ても魔力糸でどうにかなるものではないために衝突は避けなければならない。
(に、ニケっ!全速前進ですっ!!)
《承知。ただし、間に合うかは半々だ。》
(え。)
「ぇえええええええっ!?」
重力から逃れようと所詮は子供サイズのお人形。ニケの言う通りギリギリのところで残骸に衝突して墜落した私は、重力のままに落下するしかないのだった。
こうして冒頭に戻る。
下で待っていたアイテールさんの風魔法とガイアさんがしたらしいフカフカの土がなければ、危なかったかもしれません。これは空を問い詰めるしかないですね!まったく!
次回、特訓(予定)
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




