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124話 昔話は長いもの

こんにちこんばんは。

先週更新し忘れた仁科紫です。大変申し訳ありませんでしたm(_ _)m

お詫びになるかは分かりませんが、明日も更新するつもりですので何卒ご容赦ください……。


それでは、良き暇つぶしを。

「さて、ちゃんと教えてくれるんですよね?空。」



 私たちは場所を移し、洋館の中にある客間へと案内されていた。空は移動中もそうだが、今もあまり私の方を見ない。その代わりとばかりにお爺さんが私の方を時折見てくるのが何とも言えない気持ちにさせられた。どうも空やニケが言っていた言葉が関係している気もするが、気づかなかったことにしたい。初対面の人を悪く思いたくないですからねぇ。

 そうして案内されてから数分。いつまで経っても話し出そうとしない空に痺れを切らし、私から話しかけると空はようやく私に目の焦点を当てた。



「もう少し時間が欲しいんだけど?」


「ダメです。今までで十分待ってあげましたから。」



 そうだよね、と呟く空を見てまた少し待つ。ようやく話し出した空は苦い顔をしていた。



「姉さんの聞きたいことは何?どうせ全部言わないと納得しないんだろうし、今聞きたいことは全部言ってよ。」



 流石、よく分かっているなと頷いて何が聞きたいのかを口に出してみる。頭の中ではどうも上手く整理出来そうにないからだ。



「えっと、そうですね。

 まず、どうして居なくなったのか、とか。居なくなった後は何をしていたのか、ご飯はちゃんと食べていたのか、エロスさんに変なことをされていないか、とかですかね。」


「うん。質問は一つ一つ答えていくから一気に聞かないようにね。エロスはよく働いてくれてるから気にしないで。」


「質問内容がまるで親だな。」


「アンタは黙ってて。」



 愉快げに口角を上げたお爺さんに対し、空はニコリともせず冷たく返す。やはり冷たいこの態度は何故なのだろうか。聞きたいような、聞きたくないような……。



「親じゃなくて、姉妹です!

 家族なんですからこれくらいは普通です!」


「姉妹愛……うむ。良きことだ。」


「うん。そういう意味でもないから姉さんはソレに返事しなくていいよ。」


「アンタからソレにランクが下がった!?」



 以前はもっと敬いを感じていたのに……と、遠くを見るお爺さんに空が容赦なく反論しているのを見てちょっともやもやとした気持ちになる。

 なんだか嫌ですね……。空が私の知らない人と仲良しなのは……ん?なんで嫌なんでしょう。というか、そもそも、そのお爺さんは誰なんでしょうね?さっきのニケの言葉からして、恐らく旧神の方なんでしょうけど。そもそも、旧神達については謎が多いんですよね。


 考えれば考える程に深まっていく謎にだんだん頭が疲れてきた頃、空とお爺さんのなんとも仲のいいやり取りが終わった。

 ようやくかとじと目で空を見ると、空はごめんねと両手を合わせていた。



「まったく。質問していいと言ったのは空じゃないですか。なのに2人きりの世界を作るとか拗ねますよ?私。」


「ごめんって。迷惑料にコイツについて説明するよ。」



 そう言って指さしたのはお爺さんだった。ようやくかと頷き、先を促す。空は淡々と話し始めた。



「まず、コイツの名前はタルタロス。11柱居る旧神のうち、ガイア、アイテール、ニュクス、ヘメラ、ポントス、クロノスが封印されるように仕向けた張本人だよ。」


「へぇ。そうなんですか。……え。ぇえええええええええっ!?」



 ……が、空の言葉が脳内で処理された途端に大声が出てしまったために空の話は直ぐに中断することとなった。

 いや、仕方がなくないですか?なんで、そんな張本人がここに居るんですか?ていうか、封印されてないのは何故です?ああ、でも、エロスさんも封印されてなかったですよね。そういえば。いえ、違いましたっけ。私が知らないだけで封印を空が解いたとかなら……うん!分からないですね!聞きましょう!



「……と、言うことで、全然分からないので一から教えてください!です!」


「素直なのは良い事だね。でも、ボクの話は大抵誰かからの又聞きだから本当に正しい情報なのかは姉さんが判断してね。」


「はーい!です!」


「じゃあ、なんだかもう面倒だし、ボクは隠す気もないからこの世界の成り立ちから説明していこうか。」



 さて、その後空から語られたこれまでの出来事というのは以下の通りだった。

 まず、この世界は神様によって創られた……のは否定できないが、それは正しくないらしい。より正確には、世界があった場所に神様が旧神を創り、旧神が今の世界を形成した。そして、ガイアさんが姉と呼ぶ彼女は神様と共に旧神達を生み出した存在だったと言う。

 以前、イベントで遭遇した神様がアルファと呼んだ少女が一番初めに創られた過去の神だというのは名前からして想像がつく。しかし、それは今のアルファと呼ばれる少女ではなく、別の名の神だったらしい。

 その名はルナ。名の通り、今は忘れ去られた月を象徴とする神であり、この世界が誕生したことによる一番の被害者、らしい。タルタロスさんが主張するには、だが。


 そして、タルタロスさんはどうも小さい子を愛でる紳士らしく(外れていて欲しかった)、ルナさんを放っておけなかったらしい。

 タルタロスさんは機会を見て神様にも阻止できないタイミングと手段を使ってルナさんを救おうとした。

 その方法とは、この世界にプレイヤー達がある程度集まったタイミングで旧神達を封印すること。

 いや、意味が分かりませんよね?ルナさんを救うために旧神達を封印するなんて。


 しかし、やはり必要なことだからこそ、タルタロスさんは旧神達を封印するなんていう大それたことをした。

 まず、ルナさんが受けた被害というのは自由の喪失。つまり、封印されることだった。それも旧神達の力を使っての、だ。その結果として他の旧神達も弱体化することとなったが、今よりは自由に世界に溶け込んでいたらしい。自分の領地を持っていた。丁度、今の街の分布と同じように。



「おかしいと思わなかった?綺麗に街が10等分されているのを見てさ。」


「確かに……。」



 ゲームだからそういう事もあるかと思っていたが、どうやらあれは元々旧神達の領域だったためにあれ程綺麗に分けられていたらしい。

 納得はしたが、今度は別の疑問が思い浮かぶ。



「でも、どうしてルナさんは封印される事になったんですか?何か不都合なことでもあったんですか?」


「まあ、気になるか。

 彼女はね。してはいけないことをしてしまったんだよ。」


「してはいけないことを……?」



 世界がある程度完成した後、ルナという月の象徴たる神は月にのみ存在すべきだと定められた。要は、月から出るなと言われたようなものだ。

 理不尽にも思えるかもしれないが、これには理由があった。あまりにも強大すぎるルナさんの力は存在するだけでその場を蝕む程であり、人が到底住めるような環境ではなくなってしまうからだ。その神様からの要請にはルナさんも頷き、月から出てこないようになった。

 それがどうして封印されることとなったのか。

 もちろん、ルナさんは初めこそ月から大人しく世界を眺めていた。だが、手の届かないものほど手を伸ばしたくなるのは人も神も同じらしい。

 ルナさんはある日、どうしても我慢がきかずにその禁を破り、とある少女に手を貸してしまった。

 そのたった一度で世界は二つに分断されることとなった。



「もしかして……」


「そう。姉さんが初めにいたあの世界と、この星界の下に浮かぶ島のことだよ。」



 意味深に笑う空の言葉に思考を巡らせる。確かに辻褄が合う説明だ。この世界……このゲームは元々、治療用としての側面しかなかった。それなら世界は一つでいいにも関わらず今のこの世界には、分けられているとはいえ二つ……いや、三つの世界がある。これはどういう事なのだろう。



「……では、星界が存在するということはもう一度そのルナという方が何かしてしまったのでしょうか。」


「うん。流石姉さん。そう考えるよね。

 でも、ちょっと真実は違ったみたいなんだ。」



 どういう事だろうかと首を傾げると、空はまた説明し始めた。



「この星界の島はね。元は月だったものなんだ。」


「…えっ。この島って月の欠片だったんですか!?

 でも、夜空にはいつも月が浮かんでいますよね?」


「うんうん。驚くよね。でも、そう難しい話じゃないんだよ。これは。

 何故なら、月は元々2つあったんだから。」


「あー……。」



 何故か得意げな空にそれは少し狡いと頬を膨らませてみるが、後ろのお爺さんが目力を強くするだけだった。あっ。なんだか背筋がゾワッとしますね。真顔をつとめましょう。



「と、言うわけで、今は月が一つになったわけなんだけど、元の月はルナの封印の要になっていたものだったんだ。それが少し前にプレイヤー達によって壊された。」


「ん……?封印をどうにかしたのはそこに居るタルタロスさんだったんではないんですか?」


「そこがコイツの悪賢いところだよ。」



 そう言いながら空は何処からか出したハリセンでタルタロスさんを叩いた。先程の視線が気に食わなかったらしい。

 一方のタルタロスさんはと言うと、どことなく嬉しそうに見えなくもない。全くもって懲りていない。

 仕方がないとため息をついた空は、また私の方を見て話し出した。



「コイツはね。エロスの力も借りてプレイヤー達にイベントを通知したんだよ。」


「イベントを、ですか?」


「そう。アレは大規模なイベントだった。そして、それと同時によく考えられた悪質な下克上だった。」



 苦い顔をして空は語った。

 そのイベントは月を壊すというものだったらしい。そして、その為に全部で10の獣を倒さねばならないというものだった。



「10の獣……?それって、まさか。」


「そのまさか、だよ。姉さん。」


「……そう、なんですね。旧神の方々を倒す。そういうイベントだったんですね。」


「うん。この計画の酷いところはね、コイツ自身も弱体される側になっていた事だよ。倒されるくらいでは死なないからね。だからこそ、面白がった運営が許可を出してしまった。

 こうして誰にも気付かれずにコイツは自分の目標を達成したんだよ。月に封印されたルナはその瞬間解き放たれ……そして、闇に堕ちた。」



 月に封印されていた月の女神は、自身を封印した世界を憎んで憎んで……それでも憎みきれずに以前助けた少女の手で正気に戻された。

 その間にタルタロスさんは他の旧神たちをエロスさん、そしてまだ出会ったことのないエレボスという名の神と共に封印して回ったらしい。弱りきっていた旧神達は大きな抵抗もできずに封印されていった。


 一方の少女と女神はというと、暫く共に過ごしていたらしい。しかし、その事態を看過出来なかったのは神様だ。



「流石に女神と普通のプレイヤーが一緒にいるのはパワーバランス的にも問題があったんだろうね。

 女神と少女が自然に決別するよう、ルナの権能を変えたんだ。」


「それは……?」


「断罪だよ。しかも、権能が変わったが故に名前も変化した。それが今の不安定な存在、プレイヤーを断罪するもの、アルファだよ。

 そして、それは無意識の罪であってもカウントされた。」



「例えば、無意識に言葉で傷つけ続けたプレイヤー、とかもね。」そう言った空はどこか遠くを見ていた。

 触れられない、触れてはいけないものがそこにはあった。



「でも、今はそういう話を聞きませんよね?」


「そりゃぁね。もう一度月に封印されたから。」



 月に封印されたということは、また旧神達の力を使ってのものだったのだろう。そこから連想される事にどうも嫌な予感がする。



「では……あれ?もしかして、私、やっちゃいました……?」


「うん。やっちゃってるんだよねぇ。姉さんは。だって、あの空間の鎖が封印の要だったんだから。」



 アルファの封印の解除を知らないうちにやっていた……なんでしょう。とりあえず、一つ言えるとするなら…



「先に言っておいて欲しかったんですが!?神様のおバカぁっ……!!」


「だよねぇ。」

次回、また半分くらい説明回


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うん、神様はおバカですね♪秘密とばかりに何にも言わなかったから。 謎が遂に解けた…い~え、まだ解けてないよね。続きが気になります。 [気になる点] もう一つ、疑問があります。この家でどん…
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