119話 悪ふざけは程々に
こんにちこんばんは。
そろそろメンタル面が辛くなってきたので書くのをお休みしようと思っている仁科紫です。
また書くのが楽しくなくなってきたので……次の投稿まで2ヶ月ほどあくかもしれません。ちょっと試験が……試験が……アハハ……コホン。完結させたい気持ちはあるので、戻ってきたらまた暇つぶしのお供にでもして下さいm(_ _)m
それでは、良き暇つぶしを。
なんとか完成したということで今日は神様のところにみんなで集まっていた。
あれから槍の翼を大きくしようと努力はしたのだが、糸口さえも見つからなかったのが残念で仕方がない。せっかく神様を驚かせるチャンスだったんですが……。
何はともあれ、いよいよという事で机の上は赤い布で覆われ、神様がうずうずとその端を持っていた。早く見せたいのだろう。いつになく嬉しそうな神様を見て上手くいかなかった落ち込みは綺麗さっぱり消えてしまった。
はてさて。どんな武器が出てくるのでしょう。
楽しそうな神様につられて布の下にあるものへの好奇心が高まる。
「神様、早く見たいです!」
「ふっふっふ……見たい?見たいよね?
それじゃぁ、いくよ!これが僕の最新作、【小虎器】だよ!」
バサッと外された布の下から現れたのはコンセプト通り小さな白い……四角い何か、だった。
「……え。これが武器、ですか?」
驚きから声が漏れ、何か感想を言おうにも言葉の端から消えていく。
いや、そもそも鉱石から作ったはずなのになんで真っ白なのかとか、あれがどうなってこの白い立方体になったのかとか、どんな機能があるのかとか気になることだらけなのだ。
何から聞けばいいのかと唸っているうちにガイアさんが感想を述べた。
「ふむ?武器にしてはシンプル……だけど、そこがいい。
流石、我らが父。発想が奇天烈。」
「奇天烈……。」
何やら神様がショックを受けているようだが、気にすることなく次々と感想を言い出す旧神たちを止めるものはいなかった。
奇天烈……まあ、言いたいことも分からないでもないんですよね。それに、悪口ではありませんし?……ショックを受けている神様には悪いですが、黙っていましょう。
次に口を開いたのはウラノスさんだった。
「奇天烈……というより、斬新だと思うぞ。まさかこれが武具などとは誰も思うまい。」
「そうだな。相手から警戒されにくい武器というのは数が少ないだけに珍しい。」
「うむ!昔からへんてこりんなものばかりを作っておると思っておったが、やはり我らが父は変わっておるな!」
「へ、へんてこりん……。」
あ。何気にアイテールさんがトドメを刺しましたね。珍しくウラノスさんとロノさんはフォローに回っていたんですけど。……まあ、ある意味流石アイテールさんとでも言うべきですかね。
神様は先程の様子は何処へやら。すっかり落ち込んだ神様からは犬の耳と尻尾がしょぼんと垂れている幻が見える気がする。
「ちょっと!アイテールさん、神様に何してくれてるんですか!」
「す、すまぬ……!悪気はなかったのだ!」
「知ってます!」
「そ、そうか。知って……え。知って?え?」
アイテールさんをガシッと掴んで隅の方に連行した後、こそこそと話し込む。
それはそうと、どうしたものか。武器の解説をしてもらおうにも神様の今の様子では到底無理だろう。どうにかして復活してもらわなければ……。
あ。そうです!やっぱり、元凶に責任を取ってもらうのが一番ですよね?
「ふふふ……。」
「なんであろう……。嫌な予感がするのだが。」
えいやっとアイテールさんに飛びかかる。アイテールさんは逃げようと羽を広げるが、その前にガイアさんが足を掴んだ。
「えっ。ちょっ!?姉殿!?」
「たまには罰を受けるべき。」
「わ、ワシ!何かしたか!?」
淡々と言うガイアさんに狼狽えるアイテールさん。しかし、その場にアイテールさんの味方はいない。
「自覚がないなら受けるべきだろうな。」
「うむ。我も今のは鷲兄が悪いと思うぞ。」
「味方が1人もおらんのだが!?」
カパカパと嘴を大きくあけ、舌を出しながら叫ぶ姿はなんとも滑稽だ。
やはりアイテールさんに威厳はないですねぇ。
何とも言えない気持ちを引き締め直し、アイテールさんに飛びかかった。
「そぉれ!なのです!」
「まっ……ぎゃぁあああって、うん?何をしておるのだ?」
「アイテールさんの羽をブチブチちぎってます!」
「やめんか!?」
途端に暴れ出すアイテールさんに良いではないかーとふざけつつちぎり続ける。ブチッブチッと固い繊維のちぎれる音がなんだか楽しくなってきた。
鼻歌交じりに続けていると手を掴まれた。見るとウラノスさんが青い顔をして私を見ている。
「ん?なんですか。」
「そ、そろそろ良いと思うのだが。」
「あっ……。」
ウラノスさんに言われて手を止めると周りには羽が散乱し、アイテールさんの毛が一部禿げて地肌が見えている。アイテールさんはショックからか失神していた。……って、え。
「あ、アイテールさん……!ごめんなさい!やり過ぎました……!」
慌ててアイテールさんを揺すり、出来るだけ優しく起こすように務めてみる。
流石にここで叩き起すような鬼悪魔ではないので……
「むにゃ……照り焼きチキン……」
すが、さすがにプッチンと来ました!加減も容赦もなくガタガタ言わせてやります!
「なんの夢見てんですか!?早く起きるんです!アイテールさん!!」
「……ん?ワシは……グゥエッ!?な、何故振り回しておるのかぁああっ……!?」
胸ぐらをつかみ、ブンブンと振り回すと流石のアイテールさんも目を覚ましたようだ。ぎゃぁあっと叫ぶアイテールさんを無視し、起きたのならもういいと手を止めた。
「アイテールさん。」
「グェ……んー?なんだ……?」
「鳥なのにチキンを食べるとか言語道断なんですよ……!」
「何の話だ!?あと、肉食の鳥は小さな鳥であれば食べるのだが!?」
「イメージの問題ですがっ!?」
「知らんわ!」
お互いに興奮しきり、ゼェハァと息を整えたところでウラノスさんがアイテールさんに話しかけた。
「鷲兄……そんなんだから万年最下位だったんだよ……!」
「ワシの傷口をえぐりに来るでないわ!」
しくしくとわざとらしく泣き真似をするアイテールさんに白い目を向けつつ抜いた羽根を確認する。
きっとアイテールさんの羽根ならいい素材になるだろう。神様も喜んでくれるはずだ。
この立派な尾羽とかが特に良さそうです!
まだ嘘泣きを続けるアイテールさんをウラノスさんに渡し、ルンルン気分で少し離れたところにいる神様に近づく。神様は騒ぎを気にすることもなく、小虎器を眺めながら考え込んでいるようだった。
ふむ。これはイタズラのチャンスですかね?
「かーみっさま!」
「わっ!?何!?……って、プティか。どうしたの?」
「ふっふっふ。落ち込んでいる神様にプレゼントふぉーゆーですよ!」
言いながらバサッと手に掴んでいる羽根を頭にかける。神様は目を白黒とさせながらそれを手に取った。
「え。何?これ。とってもいい素材に見えるけど。見覚えがあるような無いような……。」
「アイテールさんの羽根です!」
「いや、ほんと何やってんの!?」
その後小一時間程ガミガミと怒られてしまった私だった。
でも、神様がこっそりインベントリに収納していたのを見逃してませんからね!私!!
□■□■□■□■
そうしてなんやかんやと時間は過ぎ去り、遂に当日がやってきた。
『それではこれより!新たなる構想の開催を宣言します!』
「「わぁああああぁああっ!!」」
想像よりも盛り上がりを見せる会場に度肝を抜かれる。この場にいるのは、武器作りをするものや武器に興味があるものばかりだというのだから驚きだ。
こんなに多くの人が武器に興味があるんですねぇ。
それに心做し妖精や小柄な人が多いように見える。気の所為でなければ、神様が何か宣伝のようなものをしたのだろう。そこまでするとは神様も本気なのかもしれない。
『まずはエントリーナンバー1!キュクロプスファミリアの傑作!嵐を起こす三叉の槍!〈海神の大槍〉だぁっ!!』
「「うぉおおおおぉおおっ!!」」
まず登場したのは深い青の柄に三又の矛が目を引く槍だった。矛が金色をしているだけになんとも派手だ。
うーん。武器に派手さは要らないんですけどね。威嚇にはなるかもしれませんが、それだけです。むしろ目立って仕方がありませんし、神様の刀の方がシンプルで好きです。
とはいえ、案外武器としての性能が高い可能性も捨てきれない。実際に使用するのはヘファイストスファミリアのメンバーらしく腕相撲の対戦相手だった大柄な女性が出てきた。それと同時にカカシが用意される。
そして、女性が槍を手に取るとカカシに振り下ろした。
「はぁああっ!」
声とともに突き出された槍からは風が吹き荒れる。風はカカシへと襲いかかり、カカシを吹き飛ばした。
おおー!とんでもない威力ですね!
感心して見ていると、周辺からはなんとも辛口な意見が飛び交っていた。
「ふむ。派手なだけで威力不足。」
「使い方の問題だと思うがな。あれを加速に使うならまだマシだろ。」
「どうせなら吹き飛ばしよりも切り裂くべきだったと思うぞ。」
「うむ!ワシの方が強いな!」
「いや、アイテールさんは武器ではないですよね……?」
「使われた素材からしてまだまだ成長の余地はあるね。どう見ても職人の技術不足としか言えない出来上がりかな。」
「神様まで……。」
作った人が聞けば怒りそうなコメントから参考になると言われそうな言葉まで。その後も次々と武器へと投げかけられた。いつ周りの人達が殴りかかってくるかとハラハラしていたが、何故か周りの観客は私たちを気にする事はなかった。なんとも不思議ですねぇ。
そうして神様の作った武器が登場するまで冷や汗をかきながら待ち続け、いよいよ神様の武器が登場した。
あの白い立方体が、だ。
『エントリーナンバー15!カオスファミリアの珍作!
こんな武器は見たこともないぞぉーっ!銘は〈小虎器〉!』
「「うぉ……お、おお……?」」
まあ、そうなるよなと思うのも当然のその異様な姿。
中央に現れた白い立方体に会場の誰もが思ったことだろう。『アレは武器なのか?』と。
この世界の武器はどれもある程度武器らしい姿を持っているらしい。だからこそ、驚いているのだと後で神様から聞いたときは目立ちたくないはずなのに何をやっているんだろうと思ったものだ。
まあ、良いんですけどね。困るのは神様と運営だけなので。
『この武器は妖精向けということなので、妖精族の方をお呼びしています!では、どうぞ!』
『魔法使いの多い妖精族向けに武器を作ったなんて酔狂な話を聞いたからやって来てあげたわ。
サルーラ・サラサーティ・フルフラリーよ。』
「「うぉおおおおぉおおっ!!」」
現れたのはヘファイストスファミリアではなくヘスティアファミリアのサブマスター、サルーラさんだった。
野太い歓声に遠い目をし、この人は割と何処にでも登場するのかもしれないと思った。
『それじゃあ、早速使ってみるわね。』
そう言ってサルーラさんが小虎器を起動させる。
途端に姿を変えた小虎器は小さな手に丁度いい短刀になった。それは何処を見ても至って普通でしかない。強いて言うなら、飾りとしてついている茶色い羽根がオシャレなくらいだろうか。
サルーラさん自身も困惑からか首を傾げており、しげしげと短刀を見ていた。そして、司会に促されてカカシに向かって振り下ろすと困惑は驚愕へと変わる。
スパッ
『……ぇ?』
通常、妖精族であれば切ることすら出来ないはずのカカシ。しかし、それはあっさりと上から下へと切れていた。刃の触れていない部分でさえも、だ。
『……何コレ。』
『す、凄い切れ味です……!
説明によると、攻撃力は持ち主の魔力値が反映され、持ち主が魔法を使えば使うほどに攻撃力が上がるそうです!』
『……はぁ!?何その武器!良いの?武器として存在していいの!?なんなら私が欲しいくらいなんだけど……!』
ざわめく会場にサルーラさんの声が響き、神様のことがなんだか誇らしくてニヤけるのだった。
これはなかなかに好感触なんじゃないですかね?結果が楽しみです!
次回、結果は如何に!(書いてから休めよですよね!ごめんなさい……!)
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




