118話 物忘れも程々に
こんにちこんばんは。
ニケの口調が迷子な仁科紫です。
ちょっと時間がなかったので今回短めです。
また、来月から暫く忙しくなるので更新が滞る可能性があります。変なところで更新を止めるのは心苦しいですが、完結させる意思はありますのでお待ち頂けたら幸いです。
それでは、良き暇つぶしを。
その後も神様に指示されてガイアさんに引率されるがままに素材を集め続け、街へと戻ってきた。
武器の製作は用意されている工房でのみ行うことが出来るらしく、予め教えられていたそこへと向かう。
「それにしても神様。どんな武器を作る予定なんですか?」
「うーん。そうだね。ウケを狙うのならちょっと変わり種の方が良いだろうし、無難に目立たない路線で行くなら無骨なだけの剣とかがいいんだろうけど……。
プティはどんな武器が良いと思う?」
そう言って尋ねてくる神様は実に悩ましげだ。どうやらまさかのノープランだったらしい。武器に関しては門外漢の私に聞くのはなんだか違う気もしたが、展示会での評価が勝敗に繋がるというのなら素人の意見も必要なのかもしれない。
なんかすごい武器……と言えば、やはり飛び道具になりますよね。人類の争いの歴史は銃や大砲が出来てからかなり様変わりしましたから。遠距離からの攻撃は必要でしょう。
とはいえ、やはり武器なのですから近距離からも攻撃出来る方が素敵な気がします。遠距離からだけの攻撃では距離を詰められれば終わりですからね。
むむむっと考え、出した答えはこれだった。
「こう、魔法でバンバン撃てて近距離攻撃も出来るなんかすごい武器が良いと思います!」
「最後投げやりだね!?」
いや、神様がそう言いたくなるのも分かる。そもそも小学生かと言いたくなるような自身の発言に自分で頭を抱えたくなったくらいだ。
とはいえ、一つ文句を言うならばこれしかあるまい。
「仕方がないじゃないですか!私、そういうのに疎いんですからね!?
ほら、ガイアさん達も何か言ってください!」
武器だとか攻撃手段だとか言われても知っているわけがないのである。ムスッと頬を膨らまし、話を放り投げた。私に聞いたのなら彼らにも聞くべきだろう。
そう思っての事だったのが、思いのほか旧神達はノリノリだった。それはもう放り投げたのを後悔しそうになるくらいには。
「ビーム出す。」
「空まで届くのがいいな!」
「うむ!必要なのはやはり翼であろう!飛ぶとなお良い!」
「む……生物だけを撃ち抜くのはどうだ。周りに被害が出るのは好ましくない。」
「え。なんでそんなに思いつくんですか……?」
ちょっと理解できないかもと口元を引き攣らせると、旧神たちは揃って首を傾げた。どうやら本当に自然と思いついたもののようだ。
もしかして、私の想像力がなさすぎるだけ、ですか……?
衝撃の事実に悔しくなり、何かないかと考える。
アレですよね。具体的でそうそうないような発想をこうポンっと思いついて神様にぶん投げればいいんですよね?
よし。無茶振りしてやるとしましょう!うーん。そうですねぇ。
「あ!神様!」
「うん?何?」
「ミニチュアの武器とかどうでしょう!?」
これしかないっと言ってみた……はいいものの、良くよく考えると微妙かもしれない。そもそも武器なのにミニチュアとか誰が使うんだという問題が発生するだろう。
この世界には以前の私のような小さな種族もいるため、絶対に使われないという事もないだろうが、使い手は決して多くないはずだ。
ちらりと自信なさげに神様を見る。神様はキラキラとした目で私を見ていた……って、何故にです!?
「プティ!ナイスアイデアだよ!」
「はへ……?」
「小さい子にも攻撃力のある武器を!うん!今回はそのコンセプトで行くね!」
そう言って走り去る神様にただただ呆然とする。まあ、神様にとって良い情報となったのなら良いのだが。
それはそうと、神様が自分からいなくなるというのは少し珍しい状況な気がする。
「……えっと、私たち、どうしたらいいんですかね?」
「うむ!適当に時間を潰すとしよう!」
「デスヨネー……。」
こうして適当に時間を潰すことにしたのだった。
武器なら明日にはできるというお話でしたからね。それまでどうやって時間を潰しましょう?
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「それではいきますよ!」
《はい。》
「ニケの翼、モード変更。〈白き翼槍〉!」
背中に展開されていた翼が形を変える。翼のあるシンプルな白いだけの槍へと。
しかし、その槍はただ本当に白かった。繋ぎ目さえ見えないほどにただただ白いその槍は穂でさえも真っ白だ。
「おー。白いですね。」
《はい。元が翼のため、私からうまれる武器は全て白い。》
しげしげと眺めていると、ふと気づく。そもそもこの槍は翼が生えている訳だが、私の背中に翼はない。
この状態でも飛べるのかそれとも槍に浮遊能力があるのか。
好奇心からその場でぴょんっとジャンプをしてみる。しかし、特に浮遊感はない……ような気がする。
(ニケ。この状態で空は飛べないんですか?)
《場合による。槍に飛行機能があるため。》
どうやら自分は飛べないが槍には飛ぶ機能があり、それを使えば上手く飛ぶこともできるようだ。
(なるほど。……使い方は?)
《……》
何故か急に黙り込むニケに少し、いや、かなり嫌な予感がする。
これ、忘れていたり……いえ、流石にニケに限ってそんな事はないでしょう。
考えても欲しい。ニケは一応神様っぽい何かの残留思念だという話だったのだ。流石にそんなニケが忘れたなんてそんな……。
(あの?ニケさん?)
《……不覚。記憶の奥深くに置き去りにしてしまったようだ。》
(それって忘れたってことですよね!?)
《いいえ。忘れてはいない。少し記録の読み込みが遅いだけ。》
(それを忘れたって人は言うんですけどね……!?)
強情な……!と認めないニケに憤りを覚えるが、今は怒っても仕方がないと気持ちを切り替える。
槍の飛行モードですよね。確かにこの槍についている翼はかなり小さいですし、飛ぶには少々力不足のような気がします。
翼をジーッと見つめ、とりあえず槍に魔力を流してみる……が、通らない。まるで何かに妨害されているかのようだ。
うーん。流石に一筋縄ではいかないですね。
次に出来ることといえば……魔力の注ぎ口がある、とかですかね?
思いつくがままに槍を魔力で包み込む。どうにか何かないかと探し続けていると、両方の翼のちょうど真ん中に窪みがあるのを見つけた。そこへ向けて魔力を注ごうとするが、やはりと言うべきか入らない。しかし、物理的に手で押してみるとカコンッと軽い音が鳴った。
翼が大きくなったわけではないが、何かのスイッチは入ったらしく黒い穴があらわれる。
(これに魔力を注いだらいいんですかね?)
《……いいような悪いような?》
(ハッキリしてくれませんかね!?)
急にポンコツになったニケにジトっとした視線を送り、もうなんでもいいかと魔力を注ぎ込む。
すると、ジュッという音と同時に矛先から光線が出た……って、うん。違う機能でしたね。これ。
翼を大きくしようとして何故光線が出たのかはよく分からないが、とりあえず他のやり方を考えるべきなのだろう。
もしかして、魔力が通らない理由を考える方が早いのでしょうか。
魔力が通らない理由として考えられるのはパスがないこと。魔力の質が違うこと。そもそも魔力はまったく関係ないから……くらいだろうか。
どれが正解かは分からないがやってみる価値はあるだろう。
(それで、ニケはどれが正解だと思いますか?)
《ふむ。……不明。努力でしか勝利は掴めない。頑張ること。》
(思い出せないからっていい感じでしめないでもらえますかね!?)
こうして一日中検討に検討を重ねることとなるのだった。
暇つぶしにはいいんですけどムカつくのでここでこの場をお借りしますね……ニケさんの、おバカーっ!
次回、武器完成
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




