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私、神様推しです!〜信者(自称)の恋模様〜  作者: 仁科紫
序章 記憶喪失な私と神様
12/212

12話 終わりは全ての始まり

こんにちこんばんは。

主人公、ひねくれ過ぎじゃない?案件になんとも言えない気持ちになった仁科紫です。

書いている私が書いている時に読んでも、後から読んでもなんか色々としんどかったので、ご注意ください。あと、いつもの倍くらいの長さになってます。…この回で収めようと長くしすぎた…。


それでは、良き暇つぶしを。

 その後、神様からログアウトの方法を聞き出し、どうにか現実の海の体へと戻ってきた。

 海の状態については、神様に尋ねても直接確認するようにという言葉しか聞けなかったため、戦々恐々としているのが本音だ。


 まあ、こうして戻ってきたようですし、まずは目を…おっもっ…!

 目を開くのすら億劫Part2なんて要らないんですが!?


 なんとか奮闘し、目を開く…が、何も見えなかった。そういえば、今は夜だったのだと思い出し、遠い目になったが分かる範囲で情報収集をしようと思い直す。

 個室なのか辺りから自身以外の呼吸音は聞こえず、ただ聞こえてくる規則正しいピッピッという機械音から病院の一室であろうと当たりをつける。


 ふむ。なるほど。ゲームの中でも思いましたがどういった手続きからか、かなりの高待遇を受けているようです。

 さて、これからどうしましょうか。


 ぼーっと天井を眺め、人を待つことにしたが中々誰も訪れない。それもそうだろう。今は夜であるのだから。

 やがて巡回の看護師だろうか。コンコンっというノック音の後、女性が入ってきた。

 目を開いている私を見て目を見開いたもののそれは一瞬のことで、直ぐに私に話しかけてくる。



「目覚められたんですね。

 すぐに先生を呼んできます。」



 声を出そうとするものの、やはり出なかった声に内心やれやれと思いつつ首を僅かに縦に振る。

 ……軋みますが、5ミリ位なら動いたんじゃないでしょうか。

 まあ、完全に動かないよりかはマシですね。と言っても、体は鉛のように重く、動きそうにありませんか。



 ・

 ・

 ・



 それから主治医だという50代くらいの男性がやってきて現状の説明をされた。


 なんと私が倒れてから既に5日経っているらしい。そして、眠り続けた理由として脳の異常が原因だと考えられるのだとか。

 私がゲームの中で目覚めたのは、2日前、急激に脳波が弱まったことから命の危険があると判断され、脳に直接刺激を与える異世界療法が緊急措置として用いられた結果との事だった。


 あれが異世界療法ですか…。今どきはVRゲームを利用して治療するとはいえ、異世界療法とは随分と大袈裟な名前ですね。

 脳に関することはよく分からないですが、確かにあのままなら(エンプティ)という意思が宿らずにこの体が死に向かったことは言うまでもないですし、その処置は正しかったと言えるでしょう。


 納得しつつどこか懐かしいような気がするその医師を見つめる。


 それにしても、このお医者さん、なーんか見覚えがある気がするんですよねぇ。

 ……あ。そうです。雰囲気が若干、神様に似ているんですね。笑い方も何処か重なるものがありますし。

 まあ、本人ではなさそうですが。こう、話していて心の満たされるあの感覚がないんですよね。


 コテりと内心で首を傾げていると、安土先生は次に私が置かれている現状について話し始めた。

 尤も、それらは本来、医師が話す事ではないらしいが。


「流石に患者を刺激させるわけにはいかないですから。彼らにはお帰り願いました。」とは、主治医となった安土先生の言葉だ。苦笑しながら言われたその言葉に理解する。


 そういえば、まともな親族が居ませんでしたね。基本的にお金が全て…とまでは言いませんが、愛情はお金で買えると勘違いしているおバカさんたちの集まりなので、その対応も然るべきものだったのでしょう。


 その説明を聞くに、簡潔にまとめると以下の通りだった。


 両親の遺産は全て私に相続されたこと。

 入院などの手続きは親戚の人がそのお金を使ってしたこと。

 葬儀などは母の兄が喪主となって既に済ませていること。

 入院中の学業は可能な範囲で構わないこと。


 これらのことがオブラートに包まれて話された。


 患者を必要以上に興奮させないという配慮の面では適切なのかもしれませんが、私としてははっきり言わんかいっ!この野r...おっと。お口が悪かったですね。まあ、とにかく、まどろっこしいのは面倒臭いので、もっと簡潔に言って欲しいなと思ったのでした。


 でも、遺産が私に全て相続されるとは…あの意地汚い連中がそんなにすんなり許したのでしょうか?そこに疑問が残るところではありますが、安土先生が知っているわけありませんからね。

 それに、話せませんし。そこは諦めて理解したと瞬きを一つすることにしました。

 理解していない訳ではありませんからね。ええ。…納得はしていないだけで。


 そうして一通りの事後連絡を済ませると、安土先生は今後のことについて話し始めた。



「空野さんには今後も異世界療法で治療を続けてもらおうと思っています。

 こうして意識が戻ったことからも有効性はあるようですから。」



『確かに』と納得を示すために瞬きを一つすると、安土先生は「それでは、目覚めたばかりですしもう休んでください」と言って去っていった。

 その後、看護師さんもここでの生活の説明を簡単にすると忙しそうに出ていった。何かあれば、ナースコールをしたら良いそうだ。更にゲームに関しては、夜中は控えるようにとの事だったが、いつでもログインしていいらしい。


 割と至れり尽くせりですよね。

 まあ、とりあえず、これで神様と二度と会えないなんてことにはならなかったので一安心です。

 ……あれ。でも、目覚めてしまいましたし、これ以上神様に頼りきりになってしまうのはよろしくないですよね…?とはいえ…


 神様は私を助けてくれました。

 心配してくれました。

 笑いかけてくれました。


 最早、私にとって神様がこの世の全てと言っても過言ではありません。それこそ、以前の海が両親に抱いていたものと同じかそれ以上に依存しきっています。


 そんな私は一体これからどのように生きていけばいいのでしょうか?



 □■□■□■□■



 クルクルクルクルと、魔力の糸をあやとりでもするかのように何かの形を象らせては戻しを繰り返す私。

 憂いを帯びた表情で行われるそれはどこからどう見ても傷心中の乙女のように見えたことだろう。


「はぁ…」とため息をつく私は、振り出しに戻った考え事に頭を悩ませていた。

 これ以上、神様に頼りきるのはよくない。そんなのは分かっているんです。神様も私とは線引きをしていましたからね。

 それに、いつまでもこの世界には居られません。この世界は治療が完了するまでという刻限付きなのですから。でも……


 そこまで考えた私はちらりと神様の方を見た。今日もログインしていた神様は、今は人形の顔を彫っているところだった。


 あんなふうに私のこの体は生まれたんですよね。


 不思議な気分に陥りながらも自由に動く手を開いたり閉じたりと動かしてみる。少し前までは動かなかったと言うのに、随分と調子のいい体だと、そう思った。



「どうしたんだい?」



 そんな事をしていたとき、神様に話しかけられたのはある意味当然の事だったのかもしれない。ログアウトする前とは明らかに違う様子の私に首を傾げつつ、台の上に座る私の目線を合わせるようにしゃがんだ神様に何とも言えない気持ちになる。



「いえ、私が飛ぶのでお気になさらずですよ?神様。」


「いいんだよ。なにか悩んでるんだろう?このままの体勢でいいから、相談に乗るよ。」



 魔力ももったいないしね?と、イタズラっぽく笑う神様は初めから私がそういう事を予見していたようだった。


 ……むぅ。神様に気を使って頂くとは…。仕方がないですね。話してあげましょうか。



「いやー。なんと言いますか、神様っていつログインしていて、いつログアウトしてるのかなー…なんて。

 ……ちょっと、気になっただけです。忘れてください。」



 そう言って笑顔を意識した私の顔は確かに微笑んでいるはずだ。決して、違和感を悟られないように、綺麗すぎる笑顔を浮かべないように、ちょっと不格好な笑顔をイメージして作る。


 ニコニコと引きつった笑みを浮かべる私は、きっとこの話に悩んでいるように見えるはずです。…まあ、それに、別に嘘じゃないですし。そう思うのは本当ですから。

 私の今の存在意義は全て神様に委ねられています。神様が居なくなれば、私はきっとこの世界を生きることも、元の世界で目覚めることもなく眠り続けることでしょう。


 その事を知る由もない神様は何処か納得のいったという表情で頷き、ニコリと笑って私を見た。



「なんだ。そんな事で悩んでいたのかい?

 僕は君がログインするときは常にログインするようにしているから、気にしなくていいよ。」



 何気なく放たれたその言葉に一瞬、ポカンと口を開いて呆けるものの、すぐさまどういう事かと尋ねた。それに対する神様の返事はなんとも私に都合のいい言葉だった。



「実は僕、君専属のサポート係になったんだよ。」


「サポート係…?って、なんですか?」



 言葉の意味は知っているものの、どうしてそうなったのかが理解出来ず、首を傾げる。



「えっとね。もう君の現状についての説明は受けたと思うんだけど、僕はこのゲームの運営側の人間でね。時々君みたいな新規のプレイヤーを案内しているんだ。

 今回もそうだったんだけど、君みたいに体を動かせなかったり、記憶を失っていたりという子はそういなくてね。原因を追究するためにも暫くは一緒にいることになったんだ。

 昨日にでも言おうと思っていたんだけど、今になってしまってごめんね。」



 本当に申し訳なさそうに眉を下げる神様に、ますますポカンとしてしまう。


 えっと…ちょっと気にかかるところもありましたが、それはともかくとして。つまり、これからは嫌でも神様と一緒…?


 顔の表示に自信がなく、俯いてしまった私をどう思ったのか神様は慌てたように言葉を継ぎ足した。



「き、期間もそんなに長くない…いや、原因が分からなかったら長くなる…で、出来るだけ早く調査が終わるようにするから!ね?落ち込まな…」


「イーヤッホーッ!」



 嬉しさのあまり思わず叫んだ私を見た神様は思いもよらない出来事にか、ポカンと口を開けていた。

 しかし、それを気にすることなくついには翼を広げてグルグルと飛び出してしまった私は神様に言い募った。



「……えっ?」


「神様といつまでも一緒ですかそうですか!それなんてボーナスステージです!?神様!ありがとうございます!末永くよろしくお願いしますねっ!」


「あ。はい…って、え?これ、どういう状況…?」



 思いの丈をぶちまけると、勢いに押されてか頷いた神様にニヤリと笑う。


 ふっふっふー。頷いちゃいましたね?しかも、今さら困惑しているみたいですけど、聞いちゃいましたし。お仕事のためであれ、なんであれ、神様と一緒に居られるならノープロブレムなのです!



「今さら後悔なんてしませんよね?神様。

 なんのためだろうと関係ありません。私は神様と一緒に居れるならそれだけで幸せですから!」


「えっ…ちょ、ちょっと待て。

 なんでそんなに依存してるんだ!?俺は何もしてないよな!?」


「おー。猫が剥がれてますね。

 そういう神様もカッコイイのでいいですけど。」


「……あっ。…コホン。それで、どういう事か説明してもらえるかな?」



 神様も気づいたらしく、わざとらしい咳払いの後、説明を要求してきました。あれ。口調…まあ、いいですけど。

 うーん。そうですねぇ。私としても完全に理解している訳ではないんですけど…。



「言うなれば、刷り込みって奴でしょうか?」


「なんでそこで疑問形…?」


「私もよく理解していないので。

 恐らくですが、私は元々自分の意思で何かをする事が良しとされていない家庭で育ちましたので、誰かを行動の指標にしなければ生きることもままならない様です。

 今はその対象が神様。貴方になってしまったのですよ。大変、申し訳ないことではありますけどね。」



 その言葉に神様は理解が出来なかったのか、首を傾げた。


 まあ、当然ですよね。誰かに頼らないと生きていけないのは仕方がないにしても、私のように誰かに依存しなければ生きていけない人間というのは、人として失敗作としか言いようがありませんし。

 あ。別にそれが悪いという話ではありませんよ?ただ…そうですね。私が私を許せないのでしょう。だから、私は私を罵る言葉を紡ぐのです。

 本来なら、私はあの人たちにとっての優秀な子供(最高傑作)とも言うべき存在でしたから、そうあれなかった()を私は心の何処かで許せないでいる…っぽいんですよねぇ。

 ……子育ての方法を間違えたあの人たちが悪いのに、なんで私がこんな事を考えているんでしょうとは思いますが。うーん。二律相反してますねぇ。(エンプティ)が生まれた弊害でしょうか?



「おーい。大丈夫?」



 そんな事を取り留めもなく考えていると、私がぼーっとしているように見えたのだろう。

 神様は心配そうに私を見ていた。



「あっはい。大丈夫です。どうかしましたか?」


「良かった。話しかけても反応しないから、また話せなくなったのかと思ったよ。」



 どこかホッとした様子の神様はそう言って首をすくめた。



「それは申し訳ないです。で、何の話でしたっけ?」


「まったく…。その指標っていうのに僕が選ばれた理由が刷り込みってことで良いの?」


「はい。自分でも理解が及んでいませんが、それであっていると思います。」



 そう言うと、神様は手で顔をおおって暫く動かなくなってしまった。


 ……後悔、してますかね?これ。

 でも、今さらどうしようもないんです。私は神様がいないだけで生きる気力も意味も何もかもがなくなってしまいます。それこそ、海の生きる理由であったあの人たちが居なくなったのと同じように。



「別に、良いんですよ?私に付き合わなくても。」



 咄嗟に私はそう口に出していた。この結果も、ある意味では当然だろう。

 依存して生きる人間が依存対象が居なくなったがために、生きることが出来なくなる。それだけの事。


 既に、海は一度消えかけていたんです。それを私がとって食ってしまったのですから、私がそうなってもなんら問題はないんですよね。

 それに、私の生のために神様が犠牲になるのも酷い話です。頷いてくれませんかねぇ。人はいつか死ぬものですから、今死んでもそれが私の寿命だったのだと受け入れますよ?私。


 そう、思って口にした言葉。私にとっては何気ない言葉であったそれは神様にとってはそうではなかったらしい。



「そんなことする訳ないだろう!」


「はい…?」


「エンプティ。」


「はい。」



 初めて、神様は私の名を呼んだ。神様は怒りに歪んだ顔を冷静に沈め、私を見る。

 その真剣な表情に困惑すると共に、思わず見惚れてしまった。


 あー…神様、カッコイイですね。今更ですけど。


 そうして無言で神様を見る私に何を思ったのか、神様は顔を顰めた。



「僕は、君を見捨てない。絶対に。」


「……は?」



 その言葉に思わず、呆ける。いや、呆けずにいられようか。私には無理です。



「えっ。ちょっ!?か、神様、聞いていましたか?私の話!変な正義感や同情とかで言っているなら、後悔するだけです!

 だから、見捨てるなら今しかないんですよ?この話を聞いた、今しか!」


「もちろん聞いていたよ。でも、これは正義感や同情で言っている訳じゃないんだ。

 見捨てない。今度こそ、絶対に…。」



 私の切実とした叫びを聞いても神様は前言撤回しようとしない。寧ろ、より決意を固めたように私から目をそらさず、堂々としている。


 でも、今度こそって、何ですか…?

 どうして、私を見捨てないと言うんですか…?


 分からないだらけの頭の中に泣きそうになりながらも、信じられなくて言葉を、覚悟を問う言葉を何度も何度もつぎ足す。



「私、今後、神様を信頼しきっちゃいますよ?分かってるんですか?その意味。

 私、もう離れられなくなります。嫌ってほど、神様に依存しきります。その意味が!分かっているんですか!?」


「……そう、だろうね。君は出会ったときから僕から離れようとしないし、街に興味もなさそうだったからね。分かるよ。

 そして、僕が受け入れればもう引き返すことは出来ない。そう思っているんだろう?」


「そうですよっ!その通りです!なんで、分かってて…!」


「……でも。」



 そこで、神様は言葉を切った。

 何を言われるのかと身構えながら待つ私に、神様は言った。



「……僕は、君を助けたいんだ。…いや、違うな。これは僕のエゴだ。分かってる。

 でも、君を救えなかった僕を、君を見捨ててしまった僕を。僕は許せないし、絶対に後悔する。

 だから、僕に依存して?エンプティ。」



 その瞳に宿る強い光に息を飲む。覚悟を決めたその表情に泣きたくなった。


 …これまで散々、神様を罪作りだなんだと言ってきましたが、これでは私の方が罪作りな人間ですね。こんなに人のいい神様を私ごときのために縛り付けてしまうなんて…。

 でも、それを神様は望んでいるのですね。そうすることで、安心感を得たいのですね。私が、生きている姿を見て、自分の為に生きている私を見て、良かったと安心するために。


 心の中で、何かポッカリと空いていた穴が埋まるような充足感を得る。きっと、心の中で私は醜く笑っている事だろう。

 その事に嫌悪感を覚えつつも言葉を綴る。



「……はいっ!神様!私は神様のために生きます!」


「うん。僕はそれを受け止めよう。」



 何処か満足そうに笑った神様は、私から見てとても綺麗だった。


 その後、いくつか言葉をかわすと、神様がそういえばと何かを思い出したかのように話を切り出した。



「ねぇ。エンプティ。」


「はい。なんでしょう?神様。」


「名前のことなんだけど。」


「え?変えませんよ?今更ですし。」



 もう終わった話だと油断していた頃に出されたその話題にすぐさま口を挟むと、神様は違う違うと手を振った。



「そうじゃなくて。…いや、まあ、今でもその名前に関しては不服なんだけど、そうじゃなく、君の名前。

 さすがに、空っぽなんて呼びたくなくてさ。あだ名で呼びたいんだ。いいかな?」



 思いもよらない提案にピクリと魔力の糸が揺れた。


 ふむ。動揺はそこに現れるんですね…って、そうではなく、神様からあだ名を呼んでもらえるとは…!もちろん、オッケーなのです!



「いいですよ?」


「良かった。それじゃぁ…プティ。プティで、どうかな?」



 確かめるように二度紡がれたその言葉に自然と力が緩み、糸の制御が追いつかなくなる。ダランと下がる手足に気にかけることなく、神様の紡いだ言葉で頭は一杯になった。



 えへ…えへへぇー。プティ…プティですか。

 フランス語で小さいという意味を持つプティ。ですが、それ以外にも意味があることを、私は知っているのです。


 ぐふふと心の中でだらしなく笑う私に気づかず、神様は焦ったように声をかけてきた。



「だ、ダメだったかな?なんか、力抜けてるみたいだし、やっぱり違うのが…?」


「だ、ダメですっ!絶対にプティって呼んでください!」



 慌てて神様にそう言うと、あまりの私の勢いに神様は咄嗟に頷き、それから安心したようにほわっと笑った。



「あっはい。…うん。良かった。気に入ってくれたみたいだね。」


「はいです!

 だって、プティは愛しいという意味を含めて使われますからね!」



 そう言ってニッコリといい笑顔を神様に向ける。


 ふふふ。そう。私が気に入った理由。それは、プティが小さい以外にも愛しい我が子や恋人を呼ぶときに使われる言葉であると知っていたからなのです!


 その言葉を聞いた神様は言葉の意味を理解するのに時間がかかったのか、じわじわと顔を赤く染めて言った。



「なっ…そ、そんなつもりはなかったからな!?」


「いいじゃありませんか。ふふふ。」



 にこにこと機嫌よくその姿を見つめていると、神様はやがて諦めたのか、一つため息をついた。



「……はぁ。仕方がないね。これからもよろしく。プティ。」


「はい。よろしくお願いしますね。神様。」



 こうして、神様と神様に依存する私の構図は出来上がりました。

 しかしながら、所詮オープニングでしかありません。

 これにてようやく物語の幕が上がったのです。

次回、クロの処遇


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 現実世界でも目が覚めて、漸くスタートしました。 ここから二人の壮大な恋と冒険?が始まるのですね♪ [気になる点] 神様のこの言葉って場合にと言うか、受け取り方に依ってはプロポーズでは? […
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