103話 人探しは一旦中止
こんにちこんばんは。
時間ギリギリ(少し遅れてすみません)なので文字数少なめで多分、誤字もあります……な仁科紫です。
申し訳ありませんm(_ _)m
それでは、良き暇つぶしを。
「さて。キリキリと吐いてもらおうか。」
罰という名の掃除が終わった頃。一息ついたという事で今度はニュクスさんとへメラさんへの尋問タイムへと移行していた。
その内容というのは勿論、どうして姿を消していたのかという事に他ならない。
片眉を上げて問いかける神様のお姿はなんとも様になっており、私ならばうっかり口も滑ろうというものだったが、ニュクスさん達は違ったようだ。
ガイアさんによって再び小さくされたニュクスさんと変わらない姿のへメラさんは2人揃って仲良く正座しながらそっぽを向いた。
「嫌ですわ。お父様。そもそも私たち、秘密なんてありませんもの。」
「そうだよ!嘘なんてないもん!」
「でも、流石にこの説明はない。」
「だな。気づけば俺の封印場に居たなんておかしい。」
ジトっとした視線をガイアさんとロノさんに向けられたニュクスさん達は、それでも頑として認めようとはしなかった。むしろ、それ以外に事実などないのだと言いたげに口を尖らせるばかりだ。
うーん。この3人からの圧に屈しないとは本当に知らないか知っていても隠さねばならない事情があるかの2通り……さて、どちらでしょう?
興味深く見つめ続けること数分。しかしながら、話すつもりはさらさらないらしい。こちらに目を向けようともしない2人に溜息をつき、私は神様に提案することにした。
「埒が明かないので、次の旧神の元へ行きません?恐らくですけど、ロノさんがいた街の隣にいると思うんですよ。」
「えっ。」
「だ、ダメだよ!?先に行くの禁止ーっ!」
「そうよ。ここはやはり旧神を揃えてから行くべきだと思わなくて?」
何やら焦る声が聞こえるがそれは気にしないことにする。ニコニコと笑っていても何処か焦った雰囲気を感じさせるのだ。どう見ても聞く耳を貸さない方が良いに決まっている。
2人の行動からして足止めを目的としていた事が感じ取れますからねぇ。ここは時間をかけないのが正解でしょうね。
神様の反応を待つと、神様は少し考え込んだ素振りをした後、私の目を見て真剣な顔をする。そんな顔も絵になるなとぼんやりと思った。
「それもそうだとは思うけど、良いのかい?」
神様の声にはっとし、気づくと神様は思いのほか近くにいたようだ。いつもより分かりやすい神様の表情は曇っている。心配するような響きからも神様が何を言いたいのかを察し、僅かに逡巡した後、苦笑いを浮かべる。それは自分が思っているよりもぎこちなさが勝るものだった。
「あー……。空のことですか。良いんですよ。自分から姿を消したということは何か理由があると思うのです。
ならば、姉としてその考えを尊重するべきだと」
「……本当に良い?」
思うと続く言葉はガイアさんによって遮られた。どうやら姉としてという言葉に触発されたようだ。
長年旧神達の姉をしているからこそ、余計に親身に感じさせたのかもしれない。しかし、そこは私としては引き下がれない事なのだ。故に、首を縦に振り、当然だと口にする。
「良いんですよ。ガイアさん。心配して頂けるのは嬉しいですが、ガイアさんも知っていますよね?
なんでも姉が手を貸していいものでは無いということくらいは。」
「ええ。知ってる。なら、大丈夫。」
朗らかに笑うガイアさんは聞きたいことが聞けて満足だとばかりに神様と頷きあっている。以心伝心のような2人のやり取りに僅かに妬けたが、それよりも話を戻すことの方が重要だ。
「では、神様。早速。」
「うん。そうだね。今から行こうか。」
話はついたと扉に向かって歩き出そうとする。しかし、やはりと言うべきか、そこへ待ったがかかった。
「ちょ、ちょっと!」
「待ってよ!」
勿論、聞かなかったことにしたが。
どうやらニュクスさんとへメラさんは正座した状態から動けないようだ。妙にプルプルしていた事からも足が痺れたのだろうと察する。
お仕置きにしては生ぬるいかとも思いましたが……これくらいがちょうど良かったのかもしれませんね。
こうしてニュクスさんとへメラさんを放置し、恐らく次の旧神が居るであろう大地の街へと急ぐのだった。
「お、置いてかないでくれーっ!」
「シャァアッ!」
……あ。アイテールさんとカンタを忘れていました。
□■□■□■□■
そうして辿り着いた大地の街。
辺りを見渡せば延々と畑が続き、長閑な農村といった光景……かと思えば、案外そうでもない。
「こちら、 いちご狩り体験をしておりますー!いかがですかー!」
「採れたてきゅうりの生齧り!特製タレを付けて食べるの最高だよ〜!」
「これは……観光地ですね。」
所々に簡易テントが立ち並び、色とりどりの旗がのぼっている。そして、人々は辺りの景色を楽しみながら気になった旗に惹かれてテントへと吸い込まれていくのだ。まさに観光地と言って良いだろう。
遠くには海も見え、そちらにも人が集まっているように見える。
まあ、リアルではまだまだ涼しいとはいえ、ここはかなり温暖ですからね。海水浴の需要はあるんでしょう。
遠目に見えるボートやパラソルに畑の塩害とかってどうなっているんだろうかと遠い目をしつつ冒険者ギルドを探す。しかし、どこにもそれらしき建物は見あたらない。
「ここの冒険者ギルドって何処にあるんですか?」
「ああ。ここのは海の中にあるんだ。」
「え。うみ?……海の中ですか!?」
あまりにも想定外な場所に困惑している私を見て神様は笑った。どうやら神様にとってこの反応は期待通りだったらしい。
その事に少し悔しく思ったものの、神様だしと考え直す。
ご期待に添えたなら私としては満足な反応と言えるでしょう。
だから悔しく思う必要はないのだと考えるが、やはり悔しいものは悔しい。……次は驚きも提供しましょう。
「シャァアッ!」
「よしよし。早く行く。」
私がこっそりと決心している横では二本足を上げて喜ぶカンタが居た。よほど海に行くと言われたのが嬉しかったらしい。クルクルと独楽のように回るカンタはなかなか止まりそうになかった。
そんなカンタにガイアさんは慈愛の篭った視線を向けていた。子供らしくはしゃぐカンタは十分ガイアさんの庇護対象に当たるらしい。その姿は確かに母と呼べるものであり、ロノさんに母様と呼ばれるのも仕方がないと言えた。
「やっぱり母様は母様だ。」
「うむ!相変わらず姉殿は小さきものに寛容に見える!」
「……何?」
「「な、なんでもないデス……。」」
ポツリとこぼすロノさんに敏感に反応したガイアさんは目を三角に吊りあげて見つめる。ロノさんはアイテールさんと揃って目をそらすのだった。
これはロノさんの失言なんですかね?それともアイテールさんの失言なんでしょうか……?
分からないままに歩みだけは進み、海の中にあるというギルドへの入口へと辿り着いたのだった。
目的の場所は切り立った崖の上にポツンと立つ一軒家だった。簡素なそれは現実にある地下へと降りて海峡を渡れるような施設の地上部によく似ている気がする。
建築物の前には人の列が出来ており、十数分も待てば利用できそうだ。
「そんなに並んでませんね。」
「まあ、一度使えば次からはここを使わなくていいからね。」
なるほどと頷き、自分たちの番が回ってきたところで扉を開け、中の魔法陣へと入る。魔法陣が輝いたかと思えば、次の瞬間にはある程度見慣れたギルドの中だった。
違うところと言えば窓の外を見ると魚が泳いでいるように見えることだろう。
さて。ここではどんな旧神に出会えるんでしょう。空達を見つける手がかりになるといいのですが……。
次回、次の旧神は?
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




