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私、神様推しです!〜信者(自称)の恋模様〜  作者: 仁科紫
序章 記憶喪失な私と神様
10/212

10話 誤魔化しは時間切れ

こんにちこんばんは。

誤字なんて大っ嫌いだー…!な仁科紫です。


こちらが本日2話目の投稿となります。ご注意くださいませ。


それでは、良き暇つぶしを。

 神様が店の看板をCLOSEからOPENへと変更し、お客が来るのを待つ。神様が言うには、1日に1人2人来たらいい方らしい。よくそれで商売が成り立つなと思えば、本人曰く、『趣味でやっている事だから金儲けはどうでもいい』とのことだ。なんとも気楽な商売もあったものである。



「お客さん、来ないですねぇ。」


「そんなものだよ。別に無理して付き合わなくてもいいんだよ?」



 言外に街に行けと言う神様に気持ちは沈む。

 あー。進化しちゃったせいで自由度は上がっちゃいましたからねぇ。…これなら、進化しない方が良かったかもしれません。

 まだ。まだ、1人では生きていけないのです。だから、どうかもう少しだけ傍にいさせて欲しいのです。…私の記憶が戻るまでは。



「ふふふ。決して無理はしていないですよ?

 それとも、神様は私のようなか弱い少女を追い出そうとしてるんですか?」



 よよよっと泣き真似…は前にしたので芸がないですね。目を伏せて肩を落とし、落ち込んだ素振りでもしておきましょうか。

 更に言葉を付け足してっと。



「どうせ、私は突然現れたぽっと出の居候でしかありませんし…。私なんて…邪魔、ですよね…。』



 明らかに落ち込んでいるように見えるだろう私に慌てた様子で神様は言い繕う。



「そ、そんな事ないからな!?だいたい、そういう意味で言ったんじゃない!邪魔なんて1度も思ったことはないし!」


『じゃあ!ここに居ても良いですよね!邪魔じゃないんですもんね!』



 言質はとったとばかりにすぐさまニッコリといい笑顔を作って言い返す。すると、神様はなんとも言えない顔をしたものの、『まあ、そうだけど…』と、納得してくれたようだった。

 ふふふ。やっぱり、うろたえた様子の神様は素敵ですね?


 そうして時折私が神様をからかったり、街について教えて貰ったりと穏やかな時間が過ぎていった。


 ・

 ・

 ・


 その次の日、事件は起きた。



「おはようございます。神様。」


「ああ。おはよう。」



 昨日と同じく、目覚めた神様に朝の挨拶をする。すると、神様は苦笑混じりにこう言った。



「君は今日も僕より早くに起きたんだね。夜も遅いし、ちゃんと寝ているかい?」



 何気ない言葉ではあるものの、内心、びくりとする。私は早起きなのではなく、寝ていないだけなのだから。そもそも、人形であるはずの私が寝るわけが無いのだが。

 おっと。今はグラスリング…つまり、草かんむりなのでした。ですが、ここでは夜に寝るのが常識なようです。つまり、ここは寝ていますと言うのが妥当ですね。



「寝てますよ?神様を驚かせたくて早起きしているのです!」



 エッヘン!と胸を張りながらそう言うと、神様は困った顔をしていた。



「うーん。あんまり向こうのことを言うのもマナー違反なんだけど…ちゃんと向こうで寝ないとダメだよ?」



 そう言われてハッとする。向こう…マナー違反…それらの言葉が意味することをこれまでの出来事から察したのだ。

 ベッドから立ち上がり、クローゼットを開けた神様を横目に思考の海に沈む。


 わぁ。まさかとは思っていましたが、本当にゲームの世界に入ってたんですね。私。

 という事は、こちらには2日間いた事になるので、向こうの体を2日間も放置していたことに…え。私、そんな状況で大丈夫なんですか?と言いますか、そもそも、記憶喪失な時点でアウトですね…。これ。向こうに戻っても家族が…カゾク……?


 途端に頭の中に流れてくる写真のようなモノクロののイメージの数々に頭がズキリと痛む。



「……っ。」



 思わず零れた息を飲む音に神様が振り向く。



「どうしたの?」


「…いえ、なんでもありません。」



 あくまでも平静を装うものの、心の中では大パニックだ。息をひとつ吐いて思考を再開する。

 ……まずは、この静止画を整理する必要がありますね。


 思い浮かんだうちの1つを確認する。

 そこには、眉間にシワがあるスーツを着た男性と笑みを浮かべた和服姿の綺麗な女性が一人の少女を間に挟んで立っていた。少女の服装は白いワイシャツに紺色のサスペンダー付スカート、紺色の帽子と何処かの幼稚園の制服のようであり、恐らく幼稚園の入学式の記念写真だろうということが分かる。

 ……少女の顔は黒く塗り潰され、見えない。


 もう1つを見てみる。

 男性と女性は少しばかり歳をとったようだ。少女の服装は紺から灰色のものへと変わり、茶色いランドセルを背負っていた。小学生になったであろう少女は背が幾分か伸びたようだ。しかし…やはり、顔は分からなかった。


 もう1つ、もう1つ…どの写真を見ても、少女が成長し父と母であろう男女が歳をとっているという差異はあれ…少女の顔はどれも黒く塗りつぶされていたのだ。まるで、思い出したくないとでも言わんばかりに。


 ……私は、私が嫌いだったんですかね…?

 思い出したくない理由がそれ以外に思い浮かばず、八方塞がりとなってしまった。


 そこで思考の海から浮上する。前を向くと、いつから居たのか神様が心配そうに私を見ていた。



「何かあった?」


「…なんでもないですよ。神様。」



 さあ、お店の方に行きましょう。そう言って神様を誘導し、私は話を有耶無耶にした。…別に、神様に聞いたところで解決する話ではありませんからね。


 しかしながら、自分一人でも解決しそうにない問題に私はただ現実逃避するしかないのだった。


 ・

 ・

 ・



「いつまでここに居るんだ?」



 そう声をかけられたのは昼になった頃。ちょうど神様が二階にあるキッチンに向かい、店には私一人になった時だった。

 チリンチリンとドアベルの鳴る音にお客さんかと顔を向けた。

 そこに居たのは、初日に街で出会ったクロと呼ばれた人だった。しばらく店を物色した後、かけられた声がこれである。


 唐突に尋ねられた問いに対して私は静かに黙った。

 …といいますか、そもそも話す義理なんてありませんし?出会ってそうそうの態度もそうですが、何よりこの人は私にとって敵であるとそう直感が告げているのですよ!

 故に!私は沈黙を保つのです!


 いくら待っても黙ったままの私を見て、ため息をつく男。



「はぁ…こんな奴に付きまとわれてあの人も大変だな。現実の付き合いでとか言ってたけど、あの人もいい迷惑だろ。」



 その言葉にピクリとする。現実の、付き合い…?……私は、私は知らない…記憶喪失だから?もしかして、神様は知っていた?知っていて私に付き合ってくれていた…?誤魔化していた事も全て知っていて…?


 その瞬間、大凡のことに納得がいった。初日に迎えに来てくれたのも、私が宿る人形を作ってくれたのも、この店に泊まらせてくれたのも…全部、その現実での付き合いのお陰だったのだ、と。


 ……は、はは、なーんだ。私、結局神様からはただのお荷物としか…面倒なやつとしか見られていなかったんですね。

 私は空っぽで何もない人形のエンプティ。元からなんの価値もなかったんですよ。

 なんの価値も…その言葉にふと引っかかった。価値。価値がなかった。なくなった…そうだ。私は、価値のなくなったもぬけの殻の───



「おい。空っぽの人形。いいこと教えてやるよ。人形族の特徴はな───」



 続く言葉を耳にして店を飛び出す。慌てた様子の男を振り向く気も起きず、そのまままっすぐ自分でもどこへ向かっているのかも分からずがむしゃらに飛んでいく。


 あぁ。嫌だ。どうして思い出してしまったんだろう。そうだ。私は、今の私はもぬけの殻。空っぽの人形。糸の切れた操り人形でしかないのに、どうして彼の元にいつまでも居られると勘違いを起こしてしまったのだろう。


 何処ともしれず飛んでいく私は、街ゆく人々に驚いた表情で見られながら、遂には門の外へと出てしまった。

 その先がどのような場所であるかを理解しもせず。


 ・

 ・

 ・


 飛んで飛んで、ふと周りを見る。そこは既に森の中だった。

 ……あ。こんなところまで来てしまったんですね。丁度いいかと適当な枝の上に座り、考えに耽ける。


 ふふふ。空っぽのエンプティ。まさに私の事ですね。

 ……ん?口調は…まあ、これでいいですか。


 戻った記憶を振り返る。どうやら、私は少し裕福な家に生まれた子どもだったようだ。名前は空野海。歳は16。高校1年生になったばかりだった。

 子どもの頃から英才教育とばかりに毎日習い事尽くしの日々を送り、親の期待にこたえようと必死だった。成長するにつれてそれはおかしいと思い始めたものの、幼い頃に決められた固定観念はそう簡単には覆らない。親に逆らう気も起きず、諦めながら日々を過ごしていた。


 しかし、その日は突然やって来たのだ。私立のエスカレーター式の学校だったため、特に目新しさを感じることなく高校に進学し、学校で授業を受けていた。……そんな当たり前の出来事さえ、足元から崩れるような日が。



『空野!ちょっと来い!』



 突然呼び出された職員室。その場で言い渡されたのは───



『落ち着いて聞いてくれ。……ご両親が交通事故で亡くなったと連絡があった。』


『……っ!?』



 両親の突然死。それを知った瞬間に感じた、今まで確かに築いてきたはずのものが突如としてなくなるような喪失感。その場で意識を失ったのか、それ以降の記憶がなかった。


 そして、気がつけばここへ来ていたと。……うん。意味分からんですね。

 それにしても、向こうの苗字が空野(そらの)でこっちでも空のエンプティと名付けるとは、私もバカですよねぇ。

 とはいえ、道理でソラという単語が気になるわけです。私の苗字だったのですから。


 何にせよバカバカしい話です。あんな親、いなくなった所で何も倒れることはないでしょうに。


 でも…自分たちの利益のために育てられた私。ただ彼らの思う通りに生きてきた私。そんな私に自分で幻滅して、最近では生きる理由を彼らに押し付けてきた私、ですか…。

 ……倒れた理由、分からなくはないんですよね。私は私ですから。どうせ、生きる理由がなくなったと、そう思ったからなんでしょう。

 彼らのために生きてきた。ならば、彼らがいなくなった私に価値はあるのか?所詮、彼らの操り人形でしかなかった自分に誰かと関わってもらえるだけの価値はあるのか?……いや、ない。

 そう結論付けたからこそ、私は動くことを辞めたのだろう。動くことをやめて、殻に閉じこもった。


 ……とまあ、ここまで自己分析してきた訳ですが、そろそろ前向きに考えるとしましょうか。面倒臭い過去よりも今を見るべきですからね!


 え?今のノリで前向きとかどんな神経してんだよって?いえいえ。これが私らしさなのですよ。

 そもそも、後ろ向きに考えたところで意味はないんですよねぇ。……なーんて、本当はかなり大ダメージのはずなのです。海のままなら。

 実の所、海である私とエンプティである私が居るからか、海のときにあったことはどうも他人事のように思えているんですよね。

 ……これ、どうも(エンプティ)()を食っちゃった臭いですね。うわぁ。人格乗っ取っちゃいましたよ?多分。

 まあ、()はかなり弱ってましたからねぇ。そういう意味では仕方がないのかもしれません。もし、残っていたら二重人格のようになっていたかもしれませんね。これ。


 さて、気を失った私がゲームの中にいる理由。それは間違いなく、これが治療行為だから。それ以外にはないでしょう。

 以前、聞いたことがあるのです。精神に病を持つ人向けに開発されたVRMMOが存在すると。おそらく、ここはその中なのでしょう。ようやく、自分の状況が判明してスッキリですね!


 そこまで考えて、結構長い間、木の上にいた事に気付く。森となっているそこは夕方の今でも暗く、視界が悪い。

 あ。そろそろ帰らないと…って、どうやって帰るんです?私。方向とか分からないんですが。

次回、迷子の人形は無事に帰れるのか…?


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 判ってしまった…知りたい事なのに、知りたくない事が…  …エンプティちゃん、吹っ切れすぎ?! [気になる点] 迷子の迷子の人形さん♪    アナタのお家は何処ですか? [一言] ペル〇ナ…
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