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ウマナミの性剣士  作者: マコト ハジメ
2/3

魔女との出会いと覚醒

「この子にするわ」


 そんな彼に転機が訪れたのは翌日のことであった。

 館に訪れた白の魔女は、商人より目玉の奴隷たちを何人も紹介されるも首を縦に振らず、ついに商品価値の低い者、反抗的な者たちが集められた部屋まで案内されると、目の色を変えて一人のエルフの少年の前に立った。ルカである。


「へ、へぇ……。しかし、魔女様。実は彼は……」


 魔女の一言に商人は動揺を隠せず、少年の欠陥を耳打ちする。もちろん、万年不良在庫となってしまっている彼をここで大金で売り払えるのは大きい。しかし、彼女ほどの大物に不良品を売り払ったとなれば、商館の悪名が響き渡ってしまう。それではいけない。そう思っての一言であったが、魔女は特段気にした様子はなかった。


「あら、私を誰だと思っているのかしら。呪いの一つや二つ、なんてことないわよ。それにこんな上物の坊や……放っておけるはずもないわ」


 大したことでもないと彼女は言うと、顔をやや赤らめながらルカを舐めまわすように見つめる。

 あまりの展開についていけていない様子のルカを商人が引き連れ、うっとりとした様子の魔女とともにその場を去ると、見守っていた世話役たちは一気に集まり声を潜めながら好き勝手騒ぐのであった。


「やはり北の森の魔女は相当な美少年好きという噂は本当だったんだな」


「まぁ、変態貴族のおっさんに買われるよりいいんじゃねぇか?」


「わかんねぇぜ? 森に一人で住まう魔女様のことだ。一体どんな辱めを受けるやら……屈服させる側なら大歓迎だがな」


「でもお前、見た目はあんなでも相当な歳だろありゃあ」


「馬鹿野郎、あの顔であんな牛みたいな乳してりゃ……そりゃまぁ、細身ではねぇが……イケるね」


「うわっ、信じられねぇや」


 下品に笑いながら話す世話役たちだが、こんな会話は日常茶飯事であるため、周りの奴隷たちも特に気にした様子はない。

 彼と唯一言葉を交わす仲であったエレナを除いては。


「ルカ、行っちゃうのね……大丈夫かしら」


 彼女の呟きは誰に聞こえることもなく、そのまま世話役たちの声にかき消されていった。






 商館を出発して少し経ち、ルカは白の魔女と北の森にある小さな小屋の中にいた。あまりの出来事に、未だ頭がついていけてないのだが、言われるがまま彼女についてきて、まじまじと見つめられながら目の前に座らされているのであった。

 あのまま買い手がつかず一生あの館の中で過ごすか、酔狂な変態貴族の慰み者になるかと思われていたが、まさか英雄譚に登場する白の魔女に買われるとは夢にも思わなかった彼は、未だに心ここにあらずといったところだった。まぁ、慰み者になるのは変わりないのかもしれないが。

 だが、ぼんやりとしているのはそれだけが理由ではなかった。

 魔女の呪いをかけられて以来、自身の精力がすべて装着された魔力の塊に吸われてしまい、一切性とは切り離されていた彼だったが、彼女に触れられ、彼女の甘い香りをかぐたびに、頭がぼーっとするのである。不思議な感覚に、彼は何も考えることができなくなっていた。


「さて、そのばっちい布きれからお着替えをしなきゃだけど、まずはその呪いをお姉さんに見せてみなさい」


 魔女はそういうと、やや虚ろなルカが身にまとう布を勢いよく剥ぎ取る。それにはさすがのルカも慌てるがもう遅い。彼の股間にある禍々しい魔力の塊が露わとなってしまった。


「これは……やっぱりあの女の呪いね……」


 それを見た彼女は、今までの貴族連中とは違い萎えた様子は一切なく、一つ確信を得たようであった。


「なるほど、精力を魔力に変換しているのね。男嫌いなあの女がやりそうなことだわ。エルフなだけあって、物凄い魔力量になってしまっているわ。このままだと、破裂するのも時間の問題ね……」


 さらっと恐ろしいことを言われたルカは、顔を青くしてしまうが、それを見た魔女は柔らかい笑みを浮かべ「大丈夫よ」と優しく声をかける。


「私は大体の魔術に精通しているけれども、特に魅了や幻惑といった性魔術が得意分野なの。その呪いを解いた上で、あなたの中に入り込んだ魔力を私の性魔術で中和してあげれば……どうにかできるはずよ」


 そう言うと彼女はすぐさま術式の行使を始めた。

 ルカの局部を覆った魔力の塊に解呪の術式をかけ、優しく包み込むように両手で撫で上げる。すると、徐々にその魔力が霧散されていき、彼の本来の姿が露わになっていった。

 すかさず性魔術を行使。露わになった部分を通しルカの内側へと彼女の魔力を流し込んでいく。すると、彼の中にある魔女の魔力が拒絶をしているのか、激しい痛みに襲われる。


「大丈夫。頑張って。もうすぐよ!」


 苦悶の表情を浮かべるルカを励ましながら、彼女は性魔術の行使を続け、そして……。


「ふぅ、これであなたの中に混ざっていたあの女の魔力は消え……え?」


 ルカの局部からは、魔力と精力、そして魔女の力の残滓が混じりあい、とても歪な気が放たれていた。


「これは一体……」


 自身の解呪、魔術による中和は完璧であった。が、目の前で起こっていることに彼女は驚きを隠せない。


「あ、あの、一体どうなって……」


 そんな彼女の様子に不安を覚えたルカだったが、魔女は一瞬にして取り繕った顔で、彼を優しく抱きしめる。


「大丈夫。大丈夫よ。今日はいろいろあってもう疲れたでしょう。食事をとって、ひとまずゆっくり休みましょう」






 久々の穏やかな時間であった。

 温かい食事のあとは、水魔術によって身体を隅々まで綺麗に洗い流され、まるで生まれ変わったような気分であった。

 売られると決まった時はどうしたものかと思っていたが、これまでの温かな時間が、ルカから不安という感情を消し去っていた。あまりにも油断してしまう程には。


「ふふ、疲れて眠ってしまったのね」


 その晩のことであった。

 一気に緊張の糸がほぐれたルカは、彼女にあてがわれた寝室でぐっすりと眠っていた。そこに現れたのは、魔性の笑みを浮かべた女、まさに魔女である。


「あぁ、可愛い寝顔をしちゃって……今日一日は我慢しようと思っていたけど、やっぱりそんなの無理よ……このまま食べちゃいましょう」 


 彼女はそのままルカに覆いかぶさり、その豊満な身体を押し付けながら身体中をまさぐる。

 彼の可愛い顔、華奢な身体に似合わない巨大な一物に、彼女はより一層興奮を覚えるが、そこからわずかに感じられる気に、顔をしかめる。


「やはり、あの女の力が邪魔をしているのかしら……なんてしつこい女なの」


「ちょ、ちょっと何をしているの⁉」


 局部から感じる魔女の残滓に不快感を覚えながらも身体をまさぐっていると、下から慌てたような声が聞こえる。見ると、顔を赤くしたルカが声にならない声を漏らしながら彼女を見上げていた。


「あら、起こしちゃったわね。なに、これからいいことをするのよ」


「お、お姉さん、なんか怖いよ……うっ‼」


 魔女の煽情的な視線に耐えられず目を背けた彼だったが、次の瞬間驚くべきことが起こった。


「え、な、なに⁉」


 これにはさすがの魔女も驚きを隠せなかった。

 彼の巨大な一物が突然大きな光を放ち始めたのである。その光に目を丸くした彼女だったが、次の瞬間明後日の方向を向き、気を集中させる。


「な……これは、とてつもない魔の力を感じる。これは……奴隷商館の方からかしら。まさか、この光は商館から感じる魔の力に反応して? 一体何が起こっているの?」


 あらゆる魔術に精通した彼女は、魔の力に敏感だ。昼間は感じなかった気配が、今は商館の方からビンビンに伝わってくるのである。

 そしてそれは、ルカの局部もまた同様のようであった。次第にその光を強くしていき、ついには――


「う、な、何か、熱いものが……で、出ちゃう……‼」


 極大の光を放ちながらルカの一物はその制御下を離れる。そう、ルカの局部から一物が分離したのだ。

 光が収まるとそこにあったのは一振りの剣。あまりの出来事に魔女はついていけていない様子であったが、瞬間、ルカ自身もまた大きな光に包まれる。

 至近距離にて放たれる光に、魔女は思わず目を瞑ってしまう。光がお収まったと感じ目を開くと、そこには先ほどまでの少年ルカではなく、輝くブロンドの髪を携えた一人の女が立っていた。

 背丈は伸び、胸もよく出ている。唯一ルカだった要素は、エルフ特有の長耳だけである。


「呼んでる……行かなくては」


 困惑する魔女を尻目に、エルフの女は宙に浮いた剣を手に持つと、かけてあった毛布を身体に巻き付け、小屋を飛び出していった。

 それを見た魔女はようやく我に返り、おそらく奴隷商館へ向かったであろう彼女を追いかけるのであった。

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