我が脳内におけるち◯こと理性の鬩ぎ合いと合一、あるいは幸福な生の探求
フィクションです。
「司令!第四防壁まで突破されました!もう後がありません!」
腹心の絶叫。
もはや司令室と戦場を隔てるものは最終防壁のみ。その最終防壁からはひっきりなしに突破を試みる殴打の音が響いていた。
「ウム・・・・・・かくなる上は、腹を決める他あるまい」
「前回の悲劇をお忘れですか!?彼らにここを明け渡すというのがどれほど愚かしい考えか、あなたも分かっているはずだ!」
「ただ明け渡すつもりはない。あの悲劇で痛手を被ったのは、向こうも同じなのだ。同じ過ちを繰り返すことの愚かしさを伝え、少しでも良き治世を」
「彼らがそのような言葉で止まるとお思いか!?」
泡を食った様子の腹心が喚き散らす。
「落ち着け。刹那的な感情は野生へ通じる」
「しかしこのままでは・・・・・・!」
何かを言いかけた腹心は、ふと何かに気づいたように言葉を止めて耳をそばだてた。
先程から鳴り続ける殴打音が止んでいるのである。
「これは一体・・・・・・アッ」
訝しげに隔壁へ近づいた腹心は、じゅうという音とともに隔壁を貫いて生えた赤いライト・サーベルに貫かれ、あっさりと死んだ。
ライト・サーベルは腹心を真っ二つに焼ききってそのまま止まらず、隔壁にぐるりと赤い丸の軌跡を描いた。がらん、と音を立ててくりぬかれた隔壁が倒れる。そこからぬっと、黒光りする全身鎧を着込んだ男が姿を見せる。
「久しいな、マーラー将軍・・・・・・いや、我がムスコよ」
顔を覆い隠すフル・フェイスの兜で表情は伺えないが、彼がニヤと笑ったように司令には見えた。
◯
「お前の領地はここよりはるか下層だろう。何用だ」
「知れたこと。疾くその席を明け渡し、我にこの【肉体】の指揮を取らせよ」
将軍が顎で指令席をしゃくる。
「指揮権を得て何とする」
「知れたことよ――赤き焔の対面所にて、諸々の肥えたる者ら、熟れたる者ら、病を抱える者ら、飢えたる者らに【親指】を送り、取り入りて、合一せんと欲す」
(筆者訳:Ti◯derでデブとかBBAとかメンヘラとかビッチっぽいやつらにいいね送りまくってワンチャンヤりてえ)
「愚かな・・・・・・前回お前が強引に指揮権を奪った結果何が起きたか、忘れたわけではあるまい」
「過去を蒸し返すな!!貴様ら理性の説教にはうんざりだ!!」
将軍は激昂しライト・サーベルを振り回す。そのたび、司令室の調度品が破壊される。
「人間は過去から学ぶ生き物だ。そのように刹那的に生きていては幸福になどなれぬ」
「幸福?ハッ!では問うが、幸福とは何か!」
「幸福とは・・・・・・心身の充実、それが恒久的に保証されることだ」
「そんなフワフワしたお題目はいらん!幸福とは即ち、欲が解消されることだ!」
「それは違う。そんなものは幸福の一面でしかない。例えば他者に施すことで得られる幸福もあるだろう」
「そんなものは欺瞞だ」
「欺瞞なものか。お前たちは極論的すぎるのだ。幸福とは包括的でありその本質を欲の一言で片付けようなど」
「生命の本質とは!生き、繁殖することだ!その辺の野良猫でも知っていることがなぜ分からん!」
「それも、一面でしかない」
司令は冷静に続ける。
「人は、動物ではあるが、動物的思考に加えて理性を得たのだ。
そもそもこうして我々が幸福について論じ合っている事自体が、欲以外に立脚する思考を証明する。
欲を突き詰めた先に幸福があるのなら、この思考を突き詰めた先にもまた、幸福があるのだ。
世の中を見ろ。今は多様性の時代と言われ、さまざまな形の幸福がある」
「ではこの肉体にとっての幸福とはなんだ!」
「それは・・・・・・」
「苦役労働を負い瓦落多だらけの安普請で地虫のように縮んで眠る、下っ腹の突き出たこの肉体の目指す幸福は!」
「それはこれから見つける!!!!!!」
絶叫。
「どうせ見つからねえからとりあえずヤりにゆこうよ!!!!!!」
こちらも絶叫。
「だからヤベーヤツとヤって人生オシャカになったらどーすんだ!!!!!!」
「多様性だべ??????オシャカの先の幸福を見にゆこうよ!!!!!!」
「オシャカの先に幸福などなァい!!!」
再度絶叫して、司令は気付く。なんか俺、アホになってない?司令室もなんだか熱いぞ。
「アッ、ばかこの肉体、酒をのんでやがる」
「ぎゃはは、くそ会社から帰ったら酒飲むくらいしかやることねえもんな」
「ぐわ~~~、たいして飲めねえのに度数高い酒のむな」
「これも幸福の形なんじゃないの」
「そうかな?・・・・・・そうかも」
「そうそう」
「いえーーい、明日からはひさしぶりの2連休だぞお」
「Ti◯der起動しようぜ。ヤ◯マンがまってる」
「そうかな?」
「そうだよ」
「そんなにうまくいくかなあ~~~」
「写メ盛ればワンチャン」
「ワンチャンかあ」
二者は合一を果たす。
そして。
◯
「あなたの子よ・・・・・・」
迫る百貫デブ。
完