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『短編』 雨と少女と

作者: シーラ・スメラギ

 俺は今、雨の中呆然とし立ち尽くしていた。

「なんで・・・」と呟くが雨の音にその呟きもかき消されていた。


 ほんの数時間前まで楽しい気持ちで最愛の彼女とデートをしていたのに

 映画を観て服を見たり小物を見たりしてカフェで談笑して・・・


 注文したアイスコーヒーも飲み終わり、そろそろ出るかと考えていた時「あのね?」と彼女が言う。

「ん?どした?」

「大事な話があるの」

 と彼女が真剣な表情で話始めた。

「ごめんなさい。私好きな人が出来たの・・・」

「・・・・・・え?」

「私と別れてください。」と彼女は今にも泣きそうな顔で言葉を発した。


 雨に打たれながら、先程彼女とした会話を思い出す。

 正直「別れてください」と言われてからの記憶が曖昧というか、殆ど覚えていない。気がついたら此処に立っていた。

「とりあえず家に帰ろう・・・」


 帰宅して直ぐに風呂場へ行く。着ていた物を全て洗濯機に放り込み、風呂場に入りシャワーを浴びた。

 風呂から出てリビングに行きソファに座る。そして今日の出来事をもう一度思い出す。

 今日のデートで変わった事も無かった・・・はずだ、それ以前でも彼女に変化があった気はしなかった。俺が気がつかなかっただけで、実は彼女に変化があったのかもしれないが・・・

 いくら考えても解らない。が、確かなのは彼女との関係が終わってしまったという事だった。「今日はもう寝よう」とベッドへ潜り込み眠りについた。


 翌日、目を覚ましたら既に午後になっていた。

「今日も雨か」と呟きベッドを降り洗面所へ向かい、歯を磨き顔を洗い鏡を見る。

「酷い顔だな・・・」と苦笑いする。

 台所に向かい冷蔵庫を開ける。「あー・・・買い物してなかったな、外で食べるか」

 着替えを済まし外へ出る。今日も大雨だ。


 近くのコンビニで適当に買い物をして、お気に入りの場所へ歩き出した。

 自宅から十数分歩くと、そこに彼のお気に入りの場所が見えてくる。

 とても大きな敷地を持つ『森林公園』だ。彼はよく此処を訪れる、疲れた時や嫌な事があった時は必ずと言っていい程此処に来る。

 公園の中心部には大きな池があり、池の真ん中は島のようになっていて屋根付きのベンチが設置されており、彼のお気に入りの場所である。

 今日もそこへ行き、いつもの様に座り買ってきたパンを食べ始めた。

 しばらくは周りの景色を眺めながらパンを食べ、雨の降る池をぼーっと見ていた。


 食べ終わり、これからどうしようかと考えていると、パシャパシャと此方に向かってくる足音に気がつき、そちらに視線を向けると女子高生だろうか?制服をきた女の子が歩いてくる。

 こんな雨の中『何故?』と思いながらも視線を池に戻す、どうやら女の子は隣のベンチに座ったみたいだ。

 すると隣の女の子が「凄い雨ですね~」と話しかけてきた。

 そちらに視線を向けて「あぁ。今週はずっと雨らしいからね」と返す、女の子は何故か笑顔で「そうらしいですね~!」と言う。何で笑顔?と思っていると、「私、雨の日って好きなんですよ~」とニコニコしなが元気よく言ってくる。

 俺も雨の日が好きなので少しだけ嬉しい気持ちになった。

「お兄さんはこんな雨の中此処で何をしてるんですか?」

「俺は、此処が好きなんだよ。学校がなくて雨が降ってる時はここに来るのが習慣になってるかな?」

「なるほど!私と同じですね!まぁ私は最近ここをみつけたんですど」と笑いながら言う。

「雨の日なら人もいないし、落ち着くには良い場所だな」と笑顔で返す。

「はい!ところで、お兄さんは大学生ですか?」

「あぁ、ここからも見えるだろ?ほらあそこの大学だよ」

「お~~~!!私もあの大学を受けるんですよ~!従姉妹があの大学で~色々お話聞いてて、私も行きたくなって受けることにしました~」

 この子元気だな~と思わず笑顔になっている事に気がついた。この子はきっと自分の周りも元気にするのだろう、俺も気がつけば昨日よりも気持ちが軽くなっているのに少し驚いていた。

「受かると、いいな」

「ありがとうございます~!・・・でも、今の学力じゃちょっと厳しいんですよねぇ」あはは、と苦笑いをしている。

「そうか。だが諦めなければ可能性はあるんだ、諦めずに頑張れ」

「はい!がんばります!」と言ったとき電子音が鳴る。彼女の携帯みたいだ。

「今日はもう帰りますね!」と言い彼女は元気よく手を降る。

「おう、気を付けて帰れよ~」と手をあげ彼女を見送る、彼女は最後まで笑顔まま雨の中帰っていった。


 俺も帰るか・・・と自宅へ向け歩き始める。

 帰宅しソファへ座り、また昨日の事を思いだし考える。まぁ考えたからって結果が変わるわけじゃないが、自分が前に進むのに必要な事だと思い考える。 

 昨日の事はショックだったし、今でもその気持ちは変わらない。だけど今日の事を思い出す。

「諦めなければ可能性はある・・・か」自分が彼女に向けて言った言葉だ。よし!もう一度彼女と話をしよう。

 話をしてちゃんと自分の答えを出さないと、結果がどうあれ今のままでは前に進めないからな。

 携帯を取り出し彼女へ、もう一度会って話がしたいとメールを送る。

 意外にも返事は直ぐに返ってきた。明後日ならOKと。


 次の日も昨日と同じく『森林公園』へ足を運ぶ。

 雨の音が心地よい。持ってきた文庫本を読みながらこの時間を満喫していると、昨日と同じくパシャパシャと足音が響く。

 顔をあげて足音の方へ視線を向けると、昨日の女の子が立っていた。

 「こんにちは~!やっぱり今日も居ましたね!」

 「やぁ、こんにちは」挨拶を返すと、何故か俺の隣に座ってきた。

 「なんか昨日よりスッキリした表情をしてますね!」そう言われて少し驚いた。他人の少しの変化にも気がつく程よく見ているんだな・・・と。

 「君は凄いな。少し悩んでいたんだけど自分なりの解決方法を見つけれたからね。まだ解決はしてないけど、昨日よりは気持ちは楽にはなったかな」そう、まだ何も解決はしていない。全ては明日だ、ちゃんと話を聞いて自分の中での答えを出すまでは。

 昨日よりも心に余裕が出来たおかげで、色々と落ち着いて考える事が出来そうだ。

 目を瞑り雨音を聞きながら思考の海へ潜る・・・

 


 どれくらい時間が経ったのだろうか、不意に肩を叩かれ目を開ける。

 「もう暗くなってきてますよー?」

 「ありがとう」と返し、立ち上がる。すると女の子も立ち上がり「帰りましょう!」と言う。

 気がつけば雨は上がり、雲の切れ間から星が見えていた。

 公園を出て別れの挨拶をして帰路につく。


 家に戻ってきて、ベッドに座りまた考える。たぶん今までは見えていなかった事があるのだろう。

 あの女の子を見ていて思った、自分は自分の周りだけを見て彼女の事を本当の意味で見ていなかったのだろうと、見ていなかったのなら気がつかない事もあるだろう、人を完全に理解なんてできやしない。だが理解しようとは出来る、俺はその努力をしようと決意した。

 明日彼女と話、少しでも彼女の事を理解出来るように理解してもらえるようにと。


 翌朝、天気は青空が広がっていた。自分の心もこの天気の様になるようにと思いながら、彼女との約束の場所へ歩き始める。雨の中出会った女の子に感謝をしながら。


以上で終わりです。

初作品で練習の為の作品です。

忌憚のない意見を書いてもらえると助かります!

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