〜番外幕〜 召喚
珍しく長く書きました。疲れた...(´Д`)ハァ…
つまらない、そうフェリアは感じていた。
尊大なる五神精霊の一人なのだが、その中にも差はあった。
ついこの間、五神精霊の中から2人目の、肉体憑依者が現れたのだ。
肉体憑依者とは、そのままの意味で肉体(人間、動物など)に憑依した妖精・悪魔系統の者を指す。
つまり、もう2人には肉体があるのだ。
因みに余談だが、コレで植物に憑依したものが精霊樹の派生になるのだ。
おっと、話がそれた。
肉体があるといったが、その肉体の持ち主はどうなるのか。大体の場合、憑依したときに相手の意識を破壊し、そこに自分の「自我」を送り込む事によってその肉体を自分のものにできる。例えるなら、古いメモリーカードを壊し、新しく別のメモリーカードを差し込んでいるのだ。
では、その作業をしなかった場合はどうなるのか。
それに対する答えと言うのは、術者(この場合、精霊・妖精系統や悪魔・怨霊系統のものを指す)の意識は残るが、行動を取れなくなる というものである。その肉体の持ち主の意識にかぶさり、術者の意識も存在する。
しかし、行動の全権は肉体の持ち主にある。なぜなら、「憑依」という行動は「脳に入り込む」とほぼ同義であり、決して「脳を操る」ではないのだ。
あくまでも、相手の意識を破壊することによって、肉体を意識のない空っぽの状態にして、その空っぽの空間の中に自分の「自我」を流し込んでいるだけなので、脳を操っていることにはならない。
妖精が永き年月(個人差はあるが、大体100年程度だろう)を生き延びた物が進化し、精霊となる。
その数少ない精霊の中でも別格と言えるのが五神精霊である。
コレはとある昔話にすぎないのだが、フェリアの場合、元から研究熱心な性格であった。故に、15歳の頃にはもう知識量で彼女に勝てる妖精は年上も含めて付近にはいなくなっていたのだ。妖精の自由奔放な性格では、もう此処で満足して辞めるのが普通なのだが、彼女は逆だった。
効率よく魔力を回復させる研究や2種の魔物を統合させる研究等々ー
彼女は更に勉強に励み、30になる頃にはもう「精霊が妖精の彼女に負けた」という話も珍しく無くなっていた。
その内、他の肉体に取り憑いたときのために、肉体についての研究を始めた。
その中でも特に有名なのは、『肉体の記憶について』である。
彼女は肉体の記憶を壊さずに自分に取り込む方法を編み出し、それを纏めて世間に発表したのである。
それは大きな波乱を呼び、精霊に妖精、怨霊から悪魔までその方法は広まった。
普通ならありえないことも起こったのだ。
「精霊種への進化をさせてやるから、精霊の国・アリテムの王宮大図書館の館長にならないか?」と声をかけられたのだ。普通の精霊なら、100% なる と答えるであろう。精霊種へ進化ができる上に《王宮大図書館の館長》という誉れ高い職を貰えるのだ。
しかし、フェリアは断った。何故なら、進化したくなかったからだ。
フェリア自身、精霊になりたくない訳ではない。
しかし、今は自分の体を使ってとある実験をしているのだ。その実験の内容とは、
《最大限まで魔力をためた上で精霊種に進化するとどうなるのか》
である。実は、フェリアはもうとっくに精霊に進化できるのだ。
しかし、魔力量の限界までは後60%もある。コレを溜めきってから進化するとどうなるのか。
その実験である。
それから20年後、ついに魔力量がMAXになった。進化の時が来たのだ。
研究しておいた進化の秘術を使い、進化を開始する。
それと同時に、体に大気中の魔力が吸収され、溢れんばかりの魔力が集中する。
此処までは、普通なのである。しかし、変化したのはこの後。
体に溜めていた魔力が、一気に爆発を起こしたのだ。
その爆発の粉塵から出てきた精霊は、他の精霊とは別格だった。
背中に生えているはずの野生的な翼は無く、薄青の半透明な、直線的な形の翼がついている。
その翼の中心には小さな紺の魔法陣。何か神秘的なものを感じさせる。
しかし、もっと驚くべき物はその魔力量にある。
なんと、一般的な精霊種の5倍以上もあるのだ。しかも、進化して間もない状態で。
そして内面的な進化といえばもう一つ。
思考速度が早くなったのだ。例えば、進化前に暗算で10秒かかる計算が、進化して0,5秒もかからないのだ。実に、20倍の速さで物を考えれるのである。
スキルもゲットすることができた。
ワンオフスキル「博識なる知恵者の大図書館」。
その名の通り、とてつもなく頭が良くなるスキルである。
詳しい効果としては、
自身の記憶が薄れることがなくなり、記憶の検索及び知識の検索が可能。
対象に触れると同時にその対象の情報を取得できる。
この2つである。
2番目の方は、本などの非生命組織に限定されるようだ。
しかし、本を触った瞬間に本にかかれている内容を全て記憶したり、家に触った瞬間に家の設計図を作れたり、応用を利かせればなんでもできるわけで。
その能力を得てからは簡単だった。
魔力量を底上げするトレーニングや、魔法の習得。コレ以外は、研究など好きに過ごす。
いつしかその知識や魔力の多さが認められて、五神精霊となっていた。
やはり「知恵の」の二つ名を持つだけあって、力は弱い。
勉学に特化した肉体故、筋力は通常の精霊の半分程度しかない。
しかし、彼女は強い。魔力量から見れば、全世界から見ても数えるほどしかいない実力者なのだから。
そんな彼女が強力な肉体を手に入れたらどうなるのか。
言うまでもなく、破格の強さになってしまうだろう。
しかし、彼女には強さなどどうでも良かった。
"自分の好きな研究がいつまでもやりたいだけやれる"立ち位置に就きたいためだけに五神精霊になり、その立ち位置を維持するためだけに軍隊を持ち、弟子を取った。そして、今に至るわけだ。
魔力に関するとある実験で。
「そういえば師匠。」
「どうしたの?」
「最近、私の知り合いが肉体憑依したときいたので祝に会いに行ったのですが、びっくりするぐらい魔力量が増えてましたよ。」
「ふーん。実験に関係性を持たせれば面白い結果に成りそうね。試してみようかしら。」
「でも、自我を破壊した後から乖離できるのですか?」
「自我は残すから大丈夫よ。それに、五神精霊からももう肉体表意者が出始めている頃だからいいタイミングかもね。」
「えっ?」
「じゃあ、行ってくるわね。しばらく留守にするけど、よろしく頼むわね。」
「え、あ、ちょ......分かりました。これは何を言ってもだめなやつですね。留守はこちらが守りますので、やるからには、ご存分に。」
と、言う風に彼女は一人、旅に出たのだった。
旅の途中、彼女は色々な事を考えた。
どんな人に憑依するか。憑依した後はどうするのか。
そこでふと思い出したのは、異世界から来た人々のことだ。
彼らはこの世界のことを知らないため、この世界のことを教えれば、乖離ぐらいならさせてくれるだろう、と考えたのだ。
それともう一つ。彼らは、この世界にないような素晴らしい技術を提供してくれるのだ。
知りたい。その技術の根源を。
そう考え、彼女は異世界から人を召喚することに決めたのだ。
そこから話は早かった。人気のない森へ転移し、召喚の儀式を始める。
使う魔力を間違えたのかごっそり魔力が減ったが、召喚には成功した。
召喚と同時に彼女はその人に憑依したのだが、何か違和感を感じる。
そう、居心地が良すぎるのだ。
憑依も1時間程度で終わってしまう。
フェリアの直感が、全力で「此奴について行け!」と叫んでいる。
こういう時の感はよく当たる。
そして、彼女自身も。記憶を見たが、こんなに異端とも呼べる人生を送ってきている人間だ。ついていって面白くないわけがない、と。そう感じていた。
こうして、小鳥遊結城とフェリアの冒険が始まったのだ。
ひまちゅぶしげー↓
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