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装殻甲戦アニマトゥーラ  作者: どといち
第一章 月下にて鬼と犬は猛る
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第五話 レッツバスロマン!

「ご馳走様でしたー」


 凛音ちゃんがしっかりと手を合わせながら言った。


 結局夕飯は、乾燥パスタとにんにく、ベーコン、唐辛子にコンソメを買って来て、それに元々あったキャベツを合わせて使ってぺペロンチーノを作った。


 フォークやお皿なども足りなかったのであわせて購入したが、そちらは凛音ちゃんがお金を出してくれた。

 というか材料費よりも高かったのだが、彼女は強引に払ってしまった。

 私が申し訳なさそうにしていると凛音ちゃんはこう言ったのだった。


「これから葵にはこいつらを使いまくって貰うんだから、おあいこだよ」


 私は本当に彼女の笑顔に弱い。

 それに食費は今後折半にすると決めたのに。これじゃあ全然おあいこじゃない。


 もっともっと美味しい物作ってあげなくちゃ。


 私がそんな決意を固めていると、彼女は床でごろごろと転がっていた。


「うーん。ソファーが欲しい……。寝っ転がれるソファーが欲しいよう」

「もう、凛音ちゃんたら……。テレビでも点ける?」

 私がダイニングテーブルの上のテレビのリモコンを取り、スイッチを入れる。

 しかしテレビは暗いままだ。

 不思議に思ってよく見ると、画面の右上に『HDMI 1』の表記があった。


「あー、昨日映画見てたんだった」


 そういうと凛音ちゃんはテレビ台の下の機械を指差す。

 あれは、確かゲーム機だったはず。

 私がそう伝えると


「ブルーレイとか、DVDも見れるんだよー」


 なるほど、よくわからないけど、便利だ。


「何を見ていたの?」 


 私が尋ねると、凛音ちゃんは転がってテレビの方へ近づいていった。


「中身はゲーム機に入りっぱなしなんだけどね」


 そういって、寝たまま腕だけを掲げてブルーレイケースをこちらに見せてくる。


 子供向けの特撮映画だった。確かあれは、毎年作られてる変身ヒーロー物だ。


「そういうの好きなの?」

「好き。葵のことも……」

「知ってる、好きなんでしょ」

「わたし達まだ出会ったばかりなのに、最早ツーカーの仲だね」

 凛音ちゃんがふへへ、と笑う。


「こういう特撮ってさー、今のご時勢下火なんだよね」

 今のご時勢、という言葉に思わず反応してしまう。

 私にとってそれで思い起こされるのは、未だ消えない懸念のことだ。


 変身ヒーローなんて現実にはいないはずだった。でも今や、人間や動物が異形の存在として実存している。

 架空のヒーローが注目されなくなるのは、仕方の無いことだった。


「でも、現実がこんなだからこそ、架空の物語でも憧れちゃうんだよね。超かっこいいし

 さー。特撮ヒーローはなんだかんだ言って、最後には人を幸せにしてるし」


 現実は、最後には人を幸せにしないこともある。それは、現実だから仕方が無いことだ。自分の力では、どうしようもない不幸も降りかかる。私の両親もそうだった。そして私自身も。

 私が暗い顔をしていることに気づいたのか、凛音ちゃんは起き上がってこちらを向いた。


「ごめん。なにか気に障ったなら謝る」


 謝るのはこちらのほうだった。空気を悪くしてしまった。

「ううん。なんでもない。それよりももっと凛音ちゃんの好きなものについて教えて欲し

 いな」

 

 それからはノンストップだった。

 これからは不用意な発言は控えよう。


 気がつくと、夜もすっかり深まっていた。お風呂に入らなくては。

 凛音ちゃんのノンストップ特撮論の合間に、お風呂掃除は済ませてあった。

 そろそろ、お湯が溜まる頃だろう。

 給湯器の操作盤は、お風呂以外にも、キッチンの近くに設置してある。

 お湯が溜まればそこから音声アナウンスが聞こえてくるはずだ。


 私は、夕飯の買い物をした際についでに購入した洗面道具やシャンプーを用意する。

 このシャンプーは普段から使用していたものと同じものを購入したのだが、凛音ちゃんは、そんな女子っぽいシャンプーは使ったことが無いと驚いていた。

 凛音ちゃんも女子でしょうに。


 音声アナウンスが、お湯張りが終了したことを告げる。


「葵が先に入っていいよー」

「うん、ありがとう」

 脱衣所はリビングを出て左の通路だ。途中右手にトイレのドアがあるが、今は入る必要は無い。

 脱衣所は一般的な作りだ。洗面所。その隣に洗濯機。乾燥機は置いていない。もしかしたら購入するかもしれないな、と私は思った。

 

 服を脱いでいく。

 途中、体重計も無いことに気づく。

 買うべきだろうか。

 思案してみたが、現実と戦う勇気が私には足りないようだった。

 最近、特に体に丸みが出てきたように感じる。


 用意した道具をもってお風呂場へと入る。


 凛音ちゃんも待っているし、あまり時間はかけてられないなと思い、手早く髪と体を洗い湯船へと浸かる。

 ああ、温まるなあ……。


 5分ほど過ぎただろうか。

 脱衣所に誰かが入ってくる音がした。誰か。当然凛音ちゃんだろう。


「お客さん、湯加減はどうですかー」

 一体何のキャラなのだろう。脱衣所から凛音ちゃんが声をかけてくる。

「はい、とても良いですよ」

 私がそう返すと、脱衣所から衣擦れの音が聞こえてきた。

 あれ、まさか……。


「では、わたくしも」

「凛音ちゃん!!!!」


 びっくりして大声が出た。ご近所迷惑になってしまう。

 いや、それよりも、今の状況のほうが問題ではないだろうか。


 彼女がお風呂場に突入してきたのだ。当然、服は何も着ていない。

 思わず湯船に頭まで浸かってしまう。


 息が続かなくなって顔を出すと、彼女は鼻歌を歌いながら体を洗っていた。


「これ、使っても良い?」

「い、いいけど……。」

 凛音ちゃんは私の買ってきたシャンプーを使って、髪を洗い始めた。


「一回やってみたかったんだよね。裸の付き合いってやつ」

 私も、正直興味はあった、だけどこれは予想以上に恥ずかしい。


「夜はまだまだこれからだよ」


 髪を洗い終わった凛音ちゃんが浴槽に入ってくる。

 私は思わず小さくなってそれを受け入れてしまう。


 しばらくの間、向かい合った状態で私達は笑いあったり、ふざけあったりした。

 最初は恥ずかしかったけど、でもやっぱり、楽しかった。


 さすがにのぼせそうになった私が湯船から上がると、後ろから凛音ちゃんが声をかけてきた。


「せっかく布団があるんだから、一緒の部屋で寝ようよ」


 そんな提案を受けた私がリビングに戻ると、私が持って来ていた布団と、凛音ちゃんの分の布団が並べて敷いてあった。

 この並べ方は、ちょっと恥ずかしい。

 でも、こんな風に夜中遅くにお話をするなんて初めてのことで、やっぱり結構わくわくしている自分がいた。



 それからまた、眠くなるまで二人でずっと他愛ない話をした。



「今日一日だけで、わたし達すごく色々なことを話したよね」


 凛音ちゃんが私を見つめてくる。


「わたし、葵のこと好きだよ。今日一日だけでも、もっとそう思った」

 凛音ちゃんは私の手を強く握り締めた。




「友達になりたいって、そう思ったんだ」




 初めての友達と過ごした初めての夜。

 でもきっと、今まで出会った誰よりも、私達2人は繋がっていた。

ようやく導入部の導入部が終了……。大丈夫、きっと次からパンチとかキックとか怪物が出てくるから。出てくるはずだから……。

でるよね?

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