表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
装殻甲戦アニマトゥーラ  作者: どといち
第一章 月下にて鬼と犬は猛る
4/45

第三話 2LDKと初めての友達

 私、最上葵は、同居人となる少女に今まで味わったことの無い歓迎を受けていた。

 困惑もあったが、素直に嬉しいと感じる。


 思い返せば、こんな風に手を握ってもらったことが今まであっただろうか。


 すごくすべすべで、やわらかくて、私の手よりも体温が高いためかほんのり温かい。

 その温もりもやがて、長時間の握手の中で薄れていった。


 それでも彼女は私の手を放そうとしない。

 それどころか、今度は残った左手を私の右手にかぶせてきた。


 また温かさを感じる。


 その状態で今度は手を左右に振られる。


 思わず私の体も左右に揺れてしまう。


「おっと、ごめんごめん」


 そういって彼女はゆっくりと手を離す。

 正直言って名残惜しさを感じてしまった。


「早速お部屋へご案内しましょう」


 彼女は私の後ろをちらっと見ながら話した。

 振り向くと、運転手さんが所在無さげにたたずんでいる。

 手には、一抱えもある荷物を抱えたままだ。


「す、すみません!」


 向き直ると、彼女は部屋のドアを開いた状態にして待っていた。

 どうぞと言わんばかりに手は玄関を指し示している。


「あ、ありがとう」


 私は先に玄関に上がると、衣類などが入ったキャリングケースをそこに置いて、後から入ってきた運転手さんから荷物を受け取る。

 お、重い……。


 荷物をどこに置こうか迷っていると


「脇のほうの通路に一先ず置いといて良いよ。そっちはお風呂とトイレだから」

 彼女が助け舟を出してくれた。

 一先ず荷物を置き、運転手さんにお礼を告げると、彼は軽く頭を下げて、お疲れ様でしたと告げるとそのまま去って行った。

 

「ほいほい、取りあえず正面の部屋に入っちゃって」

 彼女も続けて部屋に上がってくる。ドアが閉まると、外気が遮断され、体感温度がわずかに上がった。

 彼女は玄関に置いていたキャリングケースも一緒に運んでくれていた。


 お礼を言った所で彼女に促され、私は正面のドアを開けた。


 そこはリビングとなっていた。入ってすぐの右側に冷蔵庫と、対面式のキッチンが見える。

 奥はベランダになっていて、大きな窓から光が差し込んでいた。

 リビングは十分な広さがあり、事前に確認した間取りだと13畳以上はあった。

 既にカーペット、ダイニングテーブルと椅子が4脚、そしてテレビが設置されていた。

 入り口から見てリビング右側にはドアが二つ並んでいる。

 

「どっこいせー」


 彼女が私の荷物をリビング内に2つとも運び入れてくれていた。


「我らが城、三寮の504号室にようこそ。トゥーエルディーケー!」


 2LDKと言ったのだろう。要するにこの部屋はそういう間取りだった。三寮というのは、天導学園第三女子寮の略だろう。


「自己紹介まだだったよね。わたしの名前は前田凛音。凛音って文字は、凛々しいに音

 楽の音って書くよ。今年から花の女子高生の乙女でございます」


 やや芝居ががった口調で彼女はそういった。


「わ、私は最上葵って言います。葵は、徳川さんの双葉葵と同じ文字です。これからよろ

 しくお願いします。前田さん」


 自己紹介を返すと、前田さんは頭を振っていた。何か変なことを言ってしまったのだろうか。


「わたし達、同い年でこれから一緒に住むんだから、苗字はあかんよ苗字は」

 私が困っていると前田さんはそんなことを言ってきた。


「凛音でいいよ。わたしも葵って呼ぶからさ」


 彼女は初めに会った時と同じ、屈託の無い笑みをこちらに向けてくる。

 なんだか恥ずかしくなって、私は思わず顔を逸らしてしまう。


 段々と顔が熱くなってくる。


「ご、ごめん。嫌かな?」

 私はすぐに訂正する。


「そんなことないよ。改めてこれからよろしくお願いします。凛音ちゃん」


 私も笑顔でそう返す。まだ顔はほんの少し熱いけど。でもそれは恥ずかしさよりも嬉しさが勝っているように感じた。


「呼び捨てで良いのに……。わたしは葵って呼ぶからね! そっちも何時か呼び捨てに進

 化させてね!」

 凛音ちゃんはそんなことを言って、また笑いかけてくる。

 

 こうして私達は友達になった。


 最初は不安ばかりだったけど、引越しをして良かった。


 私は心からそう思った。


 後の懸念は一つだけ。でもそれが最大の懸念だった。


 もし、凛音ちゃんに危害が及ぶようなことがあれば、私は一生後悔するだろう。

 でもそれよりもこの時は、初めての友達が出来た喜びで何もかも一杯だった。

 

 私はただ、私を追う怪物に、決して近づいてこないよう祈るしかなかった。

ゆーりゆーり。部屋でのいちゃこらはもうちょい続くよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ