第一話 引越しから始まるプロローグ
自分の好きなものをとりあえず書こうと思ったら、なんだかとっても百合百合しい物語になってしまったぞい。硬い導入ですが、ちゃんと百合百合していくので、ご安心を。あとこの物語は激しく流血する予定ですので、注意してください。
トラックが、山を左側に見た高速道路を、周囲の車の流れからやや遅れた速度で走っていた。
速度80キロメートル。
表示されている制限速度を超えることは、これまでの長距離運転にも関わらず、全く無かった。
周りの車はそんなトラックをら追い抜いていくが、そうでない車も勿論いた。
トラックの2つ前を走行している乗用車などは、大分前からその位置を変えていないようだった。
そんなトラックに乗っていたのは一組の男女だった。
男性は、一見して、歳が40は超えているであろうと分かる厳しい顔をした、それでいて誠実さを窺わせる目をした運転手だ。
そして、もう女性の方はというと、いかにも真面目でおとなしい性格だと思わせる雰囲気を纏った、中学生と思わしき、美しい黒髪の美少女だった。
少女は背の丈がやや低く、服装は、通っていた中学校の物らしいセーラー服を着ていた。
スカートの丈はしっかり膝の下まである。
髪型はその長さを肩程度まで伸ばしたセミロングだ。眉辺りまで伸びた前髪は、左側を簡素なヘアピンで纏めてある。
その黒髪を助手席側の窓ガラスに押し付けながら、少女はぼんやりと外を眺めていた。
運転手は時折車中の時計を見る振りをしては、車に備え付けてある灰皿を見る。
そのたびに浮かべる、やや曇った表情をから、どうやら運転手は喫煙者であることが見て取れた。
長時間の移動の合間に煙草が吸えないでいるのが、どうにも苦痛であるようだった。
しかし、灰皿を確認するたび、助手席の少女を見ては、仕方ないといった顔をしてまた前方に意識を向けて運転に集中するのだった。
目的地が近づくにつれ、少女にはたびたび、ヘリコプターの音のようなものが聞こえていた。
彼女が一度、山間を飛んでいるの姿を確認した際、それは、大人数が乗せられるような、少女が今まで見たことが無い形をしていた。
少女がヘリについて一度運転手に尋ねると
「この辺りの山は訓練に良く使われるんだよ。市街地からも遠いし、かといって整備されてな
いわけでもないしな」
といった返事をくれた。
少女は訓練という言葉になじみが無いためか、そのヘリが何をしていたのか、いまひとつ理解できないようであった。
山間の道路を進む車は、しばらくしてからトンネルに入った。トンネルはオレンジ色の光に照らされながら、ゆったりとした左カーブを描いていた。
カーブを曲がる際の慣性によって、助手席の少女の身体は少しずつ右へ傾いていった。
カーブが終わると、少女の身体の傾きも元に戻った。
少女の美しい黒髪が、その動きによって左右に揺れた。
しかしその間も少女は助手席の窓をじっと眺めているだけだった。
トラックはトンネルを抜けて、市街地のある広大な盆地が見える山の切れ目へと差し掛かった。
高架に敷設された高速道路からは、その盆地の中にある町並みが遠くからでも良く見えた。
少女はその町並みを少し細めた目で見つめていた。
その表情からは、慣れ親しんだ町を離れてしまった不安や寂しさ以外にも、不思議と、どこか安堵している様な感情が読み取れた。
しばらくすると、その町並みはまた山に隠れて見えなくなってしまった。
トラックは走り続けた。
山を抜けると、山間部では電波が入り辛いために切っていたラジオを運転手がつけた。
ラジオからは人気のアイドルグループの歌が流れてきたが、運転手はすぐにチャンネルを変えた。何度か変更した後、ジャズが流れているチャンネルでその手を止めた。
これまで途中何度かの休憩を挟みながらも、トラックは着実に目的地へと近づいていた。
出発してから六時間は経っただろうか。
ようやくトラックは目的地周辺へとたどり着いたのだった。
トラックが出発してからというもの、殆ど口を利かずに窓の外を眺めていた少女が言った。
「ビルがたくさんある……」
今まで自分の住んでいたところとは違う、といった漠然とした感想と驚きを含んだかわいらしい声だった。
それを聞いた運転手がほんの少し笑いながら言った。
「まあ、お嬢ちゃんが住んでた所と比べたら、そりゃそうだろうな」
少女が住んでいた地域は、お世辞にも都会とは到底呼べない場所だった。むしろ田舎と呼ぶことすら差し支えるほどの地域だった。
コンビニエンスストアがあるのが他の村と比べて自慢だ、という話自体が少女の住んでいた地域がどれほどの僻地であったのかを如実に表していた。
窓ガラスに映る少女の顔には、はっきりと不安が見て取れた。
横目でそれを見ていた運転手は
「まあ、すぐに慣れるさ。このあたりは十分田舎なほうだよ。電車の乗換えなんかも全然必要
無いしな」
と、少女に向かって、ややぶっきらぼうに言った。
少女はそれを聞いて
「は、はい。頑張ります。頑張って切符を買います……!」
と、少しおかしなことを言った。
それを聞いた運転手は思わず噴出すように笑ってしまった。
運転手が、また横目で少女の方を見ると、隣に座る少女は余程恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤にして、俯きながら震えていた。
「すまん、すまん」
運転手が言った。
彼女はとても恥ずかしそうに
「電車に乗ったことないんです……」
そう、震えることで囁いた。
目の前の少女、『最上 葵』の身にこれから訪れるのは、幸運か、災厄か。
どちらにしても彼女は苦しむのかもしれない。
今まで同様、孤独であるのならば。
2/2 全体的に修正。




