表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 光紗

こんにちは、初めまして。装置がうまく作動していたら、これを読んでいるのは数十年後?いや数百年であってほしい。今の世なんて想像もつかないくらい過去の人へ読んでいただきたい。


 僕が小さい頃、あるニュースが話題となった。ある少年が魔法を使ったと…といっても初めは空を飛んだだけ。今、嘘だと思ったでしょ。これ、本当の話。けれど、真相を追うごとにそれが魔法でも手品でもないことが判明した。しかし、真相に辿り着いても関心は薄れず、むしろ世界中の研究者を沸かせた。


 僕は、難しいことなんてわからない。わからないなりに理解してるのは、少年は魔法使いではなく、ある言葉を口にしただけ。昔の人はよく魔法使いは呪文を唱えて魔法を使うけどそうではない。自分の発した言葉が、自分の耳に入り、脳に刺激を与え、普段は到底できやしない超人的な能力を引き出すということ。そして、それは自分の発したものでないと発動しないということ。

 そんな言葉を少年は発見し、世界中に広げてしまった。ある一部の人は、彼の恐ろしいまでの美しさと能力から神と拝め、その言葉を「(キー)」と呼ぶようになった。


 それから僕が大人に成るまでに様々な鍵が発見された。怪力になる鍵。身体が鋼のように固くなる鍵。自分の負った怪我がある程度治る鍵。しかし、鍵を習得するのは難しく、一部の人間に限られ、しかも効果は長くは続かなかった。自分の鍵を過信し過ぎたものは死んでいった。しかし、研究者たちは犠牲も厭わず、貪欲であった。色々な鍵を見つけるべく日々研究に勤しんだ。

 世界中が新たな鍵を求める中、僕は鍵を恐れていた。エジプトのピラミッドやマヤ文明は鍵によって作られたのだとされても、僕自身、鍵を使う気にならなかったし、研究は終わってしまえとも思った。何故か胸騒ぎがしてならなかった。あるべきでない能力を引き出すのが恐ろしかった。それを死に物狂いで発明しようとする研究者たちが恐ろしかった。

 それを思うのは僕だけではなかった。各地で鍵の反対デモが起こった。しかし、世界は彼らの言葉に耳を貸さないまま、ある国でデモ活動を行っていた団体が殺された。

 鍵はそれほどまで大切なのか。僕は世界を恐れた。


 ある日、鍵を見つけた神がテレビに登場した。初めて見たときは、美しい少年だったのに、今や只の老いぼれだった。そして、彼は新たな鍵を発した。その瞬間、神は画面から消え二度と姿を現さなかった。

 最後に彼が発したのは、姿を消す鍵。いや姿だけではない。存在そのものがなくなったようになってしまった。

 神の発した鍵は思いの外簡単で誰でも発することができた。しかし、問題なのは元には決して戻らなかった。

 神は結局どこまで知っていたのだろう。一体何者なのだろう。しかし、今となっては誰もわかる訳がなく、人は次々に消えていった。軽い気持ちで発した者も居ただろう。本当に消えてしまいたいと思った者も居ただろう。そして、あれほど反対していた者も消えていった。愛する人が消え、自分も消えてしまえば、また愛する人と会えるだろうと信じたもの。絶望に耐えかねて自殺のように消えた者。

 どれほど月日が経ったであろう。僕は人とすれ違わなくなった。


とうとう僕は一人だ。


 この世界は恐ろしく、そして寂しい。人間は一人では生きていけないなんて言葉があるけど、ごもっともだ。食べ物がなくなるだけではない。人と会話をしない生活がここまで苦痛だとは。

 僕は装置を作った。過去へ手紙を送るためのものだ。そう難しくはないが、何年後かの設定は難しい。けれど遠い過去へ届いてほしい。僕の思いを、願いをどうか届いてくれ。


 この手紙を読んでいるあなたへ。

数十年後、もしくは数百年後、鍵が世界を支配する。

人はなんて貪欲なんだ。自分に備わっている能力。それだけで十分だったのに…

それ以上を求めると大きな代償を支払うことになる。

鍵は人の欲そのものだ。満たした後の代償ももれなくセットで。

この世界を作ってはいけない。

だからどうか止めてくれ。

そして僕はこの世界へ別れを告げよう。

さようなら、欲と罪に汚れた世界。

そして、初めまして、無欲な世界。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 初めて物語を書いたので拙い作品ですが、これを読んで何かを感じて頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ