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第七話 アルファス半島沖海戦 前編

今年最後の投稿です。皆さん良いお年を。


それとこの小説初の海戦シーン…なんですが都合により前後二つに分けることになりました。orz

皇歴1275年8月29日

ラーバス皇国皇都ゲルリヒト

ミルヴァス宮殿



「どう言うことだこれは!?」


ミルヴァス宮殿の皇帝の間ではアルメニスの怒号が響いた。それを受けた側近や各機関の長達は縮こまってしまう。


「余の命令は絶対であるぞ‼なぜこうなる!?何故高等民族であるラーバス人が東方の蛮族どもの国を制圧できんのだ!?誰か説明せんか!!」


その反応に逆に火に油を注ぐ結果となってしまい、アルメニスのヒステリックな声は更に大きくなった。

原因は今朝入ってきたラーガスタ大陸における戦況である。

アルメニスの頭のなかでは圧倒的な陸海空の戦力を持って大陸の蛮族の生き残りとそれらを匿う蛮族を解放(植民地化)し、高等民族であるラーバス人が解放した新たな地を発展させ(搾取し)裕福(祖国発展のエサ)にする。そして解放した地にはラーバス人より劣る劣等民族の手助けを(酷使)する。

この流れがアルメニスの頭に描かれた約束された皇国の新たな歴史になる。誰も疑わなかった皇国の勝利。

だがそれは8月20日の日満連合空軍による奇襲爆撃により頓挫し派遣した空軍は壊滅。これにより陸軍は敵の空襲にさらされ、現在は敵空軍の空襲と陸軍の攻撃で前衛部隊が壊滅状態。主力部隊は今だ健在だがそれもやられるのも時間の問題であった。


「この馬鹿者共が!!誰も言うことはないのか!?」


そしてついに怒りがピークに達したアルメニスはトンでもないことを言う。


「もうよい!!貴様らのような無能共に頼った余が馬鹿だった!!これより一週間後、『神の矢』を使う!!」


その言葉に流石に大臣たちの顔色が変わる。


「へ、陛下!『神の矢』の御使用はお止めください!」


「そうですぞ!あれは未完成の兵器です!もし何かあったら…」


「うるさい!では貴様等に聞く。他に手があるとでも言うのか!?ええ!!その腐った脳味噌で考えた策があるのか!?ないだろ!?これは決定事項だ‼」


最早無茶苦茶なアルメニスの発言に大臣達は黙るしかなく、この件はアルメニスが皇帝権限で決定してしまったためもう問うことはできなくなった。

そしてこのアルメニスの決断がラーバス皇国の首を絞めるとはこの時だれも知らなかった。



2020年皇紀2680年8月20日

ラーガスタ大陸


ラーバス皇国皇帝アルメニス12世が神の矢の使用を強制決定した頃、ラーガスタ大陸ではラーバス皇国本国軍が苦戦を強いられていた。

8月20日の日満連合空軍による敵飛行場空爆は勿論、その後通信所や補給所等を徹底的に空爆しラーバス皇国本国軍の行動を徹底的に縛り付けた。

また突出していたラーバス陸軍第八大隊及び第二師団は満州陸軍及び日本陸軍第7師団第71機甲旅団戦闘団の機動攻撃によって壊滅的損害を受け敗走。

特に酷いのがラーバス陸軍第五歩兵師団で、師団主力が突出していたため日本陸軍第7師団第72旅団戦闘団第72砲兵連隊による同時着弾砲撃によりズタズタにされ、そこに日本空軍による近接航空支援が加わり敗走。

陸戦に関しては最早ラーバス皇国は逆転する術を失いつつあった。


一方で海での戦いはラーバス皇国海軍潜水艦隊と日本海軍第六艦隊第2潜水戦隊が熾烈な海中戦を繰り広げていたが、此方も伊500型攻撃型原潜を有する日本側が終始一方的に沈めていた。と言ってもラーバス皇国海軍潜水艦隊はUボートクラスのディーゼル潜水艦程度だったと言うのもあったが。


一方で、南ラーガスタ海と北ラーガスタ海を隔てるように大陸から突き出すように飛び出たアルファス半島では日本海軍ラーガスタ大陸派遣艦隊は海兵隊二個旅団戦闘団の上陸作戦を支援していた。

目的は側方からプレッシャーを与え敵の戦力を少しでもアルファス半島方面に向けることが目的である。日本陸軍や満州陸軍がいくら精強でも大軍相手だと少しばかり分が悪い。


あらかじめアルファス半島には潜入していた海軍特殊作戦群及び、武装偵察コマンド大隊第1小隊の事前偵察により守備兵力がいないことを確認したため事実上の無血上陸となった。



南ラーガスタ海 アルファス半島沖

ラーガスタ大陸派遣艦隊旗艦加賀


加賀のFICでは艦隊司令の笹井が不適に微笑んでいた。何せ空軍が初戦において航空優勢を確保すると言う大戦果をあげ、陸軍と共同で敵地上軍にじわじわと打撃を与えていた。それに対し海軍は潜水艦隊が敵潜水艦を徹底的に叩いたことと、海兵隊の上陸作戦の援護だけで今のところ大きな戦果は上げていない。

そこに敵艦隊がアルファス半島方面の海域に接近していると言う情報が衛星からもたらされたのだ。当然この情報に司令部は色めき立った。


「来たな」


「えぇ。最後に確認されたのが5日前…恐らく今日の夜中には艦隊の交戦距離に入ると思われます」


「作戦は予定通り航空攻撃。その後第二戦隊と摩耶を切り離す」


「上手く行くでしょうか?」


「上手く行くさ。そうでなかったら、摩耶を第二戦隊と一緒にすることなんてしないからな」


「はい」


日本海軍が敵艦隊を攻撃する際に最大の障害となったのが『シャルンホルスト級巡洋戦艦』に酷似した大型艦の存在であった。

当初は空軍のF-15EJに搭載したGBU-28を2,3発程使用して弾薬庫の誘爆を狙ったのだがレーザー誘導方式な上に空軍自体が陸軍の近接航空支援で手いっぱいなのであっという間に没となった。次に出てきたのはF-2に魚雷を搭載させて一式陸攻よろしく低空雷撃をさせようという案である。しかし第二次大戦ならともかくとして現在ではまずやらない戦術な上に敵が艦対空ミサイル(SAM)を搭載している可能性も捨てきれない――実際に諜報機関である忍からの報告では性能は低いが艦対空ミサイルが確認されている――ことや第二航空団司令が反対したため立ち消えとなり、最後に出たのがミサイル巡洋艦摩耶が搭載する電磁投射砲(レールガン)による砲撃であった。

結局この摩耶のレールガンによる砲撃で巡洋戦艦を攻撃することが決まったのである。護衛は第一艦隊から派遣された第二戦隊が請け負うことになった。



同日

北ラーガスタ海 アルファス半島まで80km地点

ラーバス皇国海軍植民地艦隊旗艦『ルブラシア』


植民地であるアルヴェニアの軍港から出撃した植民地艦隊は本国から派遣された『ラブラシア級大型巡洋艦』二番艦ルブラシアと数隻の駆逐艦と共に合流後北ラーガスタ海を経由し南ラーガスタ海を目指し12ノットで輪形陣を形成し南下していた。


「ふん。なぜ栄えある本国艦隊第一艦隊の皇国いや、世界最強のルブラシアが薄汚い植民地艦隊の増援に行かなければならんのだ。こういうのは我々本国艦隊ではなく他の植民地の鼠共の仕事ではないか。しかし…

いつ見てもこの艦は素晴しい(ふね)だ。そう思わないかね?大佐?」


「そうですね」


ルブラシアの艦橋では植民地艦隊新司令のテオドール中将が副官のルーカス大佐にラブラシア級大型巡洋艦の素晴しさを自慢していた。それに対してルーカスは貴族出身の司令官に機嫌をとりつつそう答える。

ラブラシア級大型巡洋艦は全長230m。排水量3万トン強。30.5cm三連装砲を三基搭載し、両側には連装短射程艦対空ミサイルを四基搭載する大型巡洋艦だ。ラーバス皇国海軍は一番艦ラブラシア、二番艦ルブラシア、三番艦レブラシアの3隻を保有しており現在四番艦ロブラシアが最終艤装段階に入っている。


「植民地のポンコツ共と一緒にしなければならないのが癪に障るが、アレはなかなかいい(モノ)ではないか」


「ええ、ああ見えて元本国艦隊第二艦隊旗艦です。それに、アルヴェニア植民地艦隊の一部は本国艦隊に所属していた主力艦がいますから多少はマシかと」


二人の言うアレとはアルヴェニア植民地艦隊の旗艦を務めていたレオドール級巡洋艦のネームシップ、レオドールの事だ。この巡洋艦は二人が言うように本国艦隊第二艦隊の旗艦を務めた(ふね)で、アルヴェニア王国との間に勃発したラーバス海峡海戦では本国艦隊第一艦隊旗艦として果敢に戦った巡洋艦だ。レオドールはこの海戦で後部艦橋を吹っ飛ばされ、左舷の対空機関砲を二つ破壊されるなどの損害を受けたが、ラーバス皇国が海戦で勝利し新たな植民地を得る要因のひとつが巡洋艦レオドールの奮闘だった。戦後は第二艦隊旗艦となりミサイルシステムの搭載母艦になった後、新設のアルヴェニア植民地艦隊旗艦となった。

またアルヴェニア植民地艦隊の一部はルーカス大佐が言うように元々は本国艦隊で主力を務めた巡洋艦や駆逐艦で構成されているのが特徴だ。


テオドールは自慢の艦隊が再び圧倒的な勝利を飾ると信じていたその時、レーダー員が叫んだ。


「…!司令!!対空レーダーに反応!!12時方向!!距離50km!!」


「何!?」



それは後にアルファス半島沖海戦と呼ばれる、海戦の始まりでもあった。

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