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第六話 開戦

2020年皇紀2680年8月19日

大日本帝国帝都東京都

首相官邸 地下緊急対策センター



ラーバス皇国軍が大陸中央部より東進開始ーー

衛星がラーバス皇国陸軍の大規模な進軍を捉え、直ぐ様国防省情報本部(DIH)から国防大臣経由で山内首相へと伝えられた。

それと同時に大陸中央部付近に確認できている三ヶ所の空軍基地の活動が活発化していること。そして第三国経由で本日0時をもって交渉決裂とすると言うラーバス皇国からの一方的な通告が外務省に送られ、おまけに『我が皇国の精鋭本国軍が貴国を三週間で蹂躙するだろう』と言う文章が添えられていた。この報告を山内が受け取ったのは日本時間19日の午後9:00である。



「鶴嵜大臣、報告を」


急遽開かれた緊急閣僚会議の場で山内は鶴嵜国防大臣にそう言う。


「はい。ではこちらを。先程総理にご報告した通り、ラーバス軍、特に陸軍が前進を開始。また敵空軍にも動きが」


そう言うと地下緊急対策センターの会議場に備え付けられているデジタルモニターにラーガスタ大陸中央部の地図が表示され、そこに赤色の凸印がいくつか表示される。


「また大陸に派遣されている陸空軍ですが、 全軍全て展開完了。海軍も南ラーガスタ海にて待機中です。私からは以上になります」


「諏訪大臣。満州からは?」


「はい。満州からも同じものが届いたと大使館経由で知らせが届きました」


「そうか…交渉決裂となった今、この場で考えなくてはならないのはこの戦争の終わらせ方だ。鶴嵜大臣、今の我々はラーバス皇国まで侵攻する余力はあるか?」


「正直難しいです。やろうと思えばできます。ですが兵站の負担が大きいです。ですので我々軍部はここまで敵軍が後退したら進軍をやめ、停戦するのが良いと考えます」


鶴嵜大臣が指差し棒ーー何故か鶴嵜の私物ーーで示したのは旧アルヴェニア王国国境であった。諜報機関である忍の報告ではラーバス皇国にとって資源等ーー特に鉱物資源や石油ーーが豊富なアルヴェニアは重要な植民地であることは既に把握しているのでアルヴェニアを停戦交渉の材料にするにはもってこいであった。


「つまり軍部はその方向で動く…と」


「はい。その通りです」


「分かった。外務省は国防省と調整してくれ。会議は以上とする。皆、何度も言うようだが…頼むぞ」



2020年皇歴1275年8月20日

ラーガスタ大陸 ラーバス皇国本国空軍ラ・ヴェル基地


その日、ラーバス空軍はニホン軍及びマンシュウ軍の拠点に対する爆撃のため深夜から準備で大忙しであった。灯火管制もせずに、だ。

そのため、誰も気付かなかった。




死神が投下した、『誘導爆弾』に。




異変を感じ取ったのは夜勤中のある基地警備員であった。彼はマニュアル通りに監視塔に上り、地上から近付く敵を見つけるために監視任務に移った。


「?…気のせいか…」


彼が耳にしたのは『キーン』と言う音と、『何かが』空を切る音。そう、まるで投下された爆弾が空を切るようにーー

その瞬間彼はハッとなって音がした方を見ると対空陣地が凄まじい轟音と共に吹き飛んだ。


「な、何だ!?一体何が!?」


彼はあわてて周囲を見回す。そして見た。否、見てしまった。


『死神』を。


それは胴体下部に大きな口を持つ。凶悪な翼。

F-2Bヴァイパーゼロを。


そして次に左側が光った瞬間、彼の意思は刈り取られた。


ラ・ヴェル基地を空爆したのはF-2BとF-15EJからなる混成攻撃隊でまず手始めにストライクイーグルから00式爆弾用誘導装置を装着した 800kgLJADAMを2発。更にJSOW8発を投下。次いで同様の装置を付けた500kg、250kgLJADAMで対空陣地を徹底的に破壊ーー更に此のとき、弾薬庫や航空機用燃料タンクにも直撃し辺り一面を一時的に昼間のように照らしたーー。

次にF-2部隊が駐機場で出撃準備中の爆撃機を破壊。まだ目標が残っていたのでF-2が固定武装の25mmバルカン砲による機銃掃射の嵐で破壊。

また滑走路も2週間近く使用不能のレベルで破壊。


この攻撃はラ・ヴェル基地のみならず後の二つ、ラ・ヴェルディ、ラ・ヴェネチア両空軍基地にも行われた。この攻撃によりラーバス空軍は壊滅的被害を被り以後のラーバス本国陸軍の行動を縛り付けた。また運良く哨戒などに出ていた戦闘機部隊も空軍及び海軍航空隊により全機撃墜された。因みにこのときの日本空海軍の撃墜比率は驚愕の0:18を記録。満州空軍は0:8を記録している。しかもドッグファイトで、だ。


因みにラ・ヴェル基地の損害は他と比べて非常に大きい。何せ照明をこれでもかと使っていたため、攻撃隊の指揮官は誘導方式を赤外線から光学誘導方式に変更。そのお陰でより精密に攻撃できたのだ。



同日


東の空がうっすらと白みを帯びてきた頃、満州陸軍第2機甲師団第1戦闘偵察小隊はゆっくりとラーガスタ大陸の地を歩む。あまり音を響かせないようにゆっくりとしつつも遅すぎず早すぎず、適切な速度を維持していた。この小隊を構成するのは2両のルクレールと2両の97式戦車(マンシュウチハ)だ。

そしてその後方には満州陸軍第2機甲師団と第4機動旅団戦闘団が展開している。


第1戦闘偵察小隊を率いる小隊長は機嫌が非常に良い。何故なら空軍が派手にドデカイ一撃をやつらに食らわせてやったからだ。


空軍の次は俺達陸軍だ。空軍の連中に負けねぇ戦をしてやろうじゃねぇか!!だがこの様はなんだ!?敵のての字すらいないじゃないか!!ーー


小隊長の妙な殺る気は部下にも伝わっていた。そして遂に彼等が待ち望んだ獲物が現れた。

先行しているラーバス陸軍第八大隊だ。距離にして凡そ200m。主砲の射程圏内だ。

その姿を部下の報告から知った小隊長の不機嫌がピークに達した。


「小隊長車から各車。本部に報告したら一発叩き込んでずらかるぞ!」


無線からは部下の威勢の良い『了解』と言う返事が来る。


「師団本部、此方第1小隊。聞こえるか?」


『此方本部、感度良好。どうした?』


「敵の野戦陣地らしきものを発見。敵の規模は大隊規模と思われる」


『了解した。第1小隊は一撃を加えて離脱せよ』


「第1小隊了解。交信終わり!さぁーて…殺るぞ野郎共!!」


無線からは殺る気に満ちた声で『了解!』と部下から返事が来る。


「各車、 榴弾(HE)装填。良いか?一発だけだぞ」


「装填良し」


「撃て」


44口径、52口径120mm滑腔砲が火を吹き120mm榴弾を叩き出す。発射された榴弾は一直線に塹壕に直撃。そこにこもっていたラーバス兵の体をバラバラにする。

だが小隊長はそれをめにする前に無線で撤退することを告げた。

第1戦闘偵察小隊は後退しながらその場を去る。


そしてその後方の部隊は一気に進軍速度を上げた。

これが後に第一次ラーガスタ野戦と言われる戦いの始まりでもあり、日満連合軍による、反撃の狼煙が上がった瞬間でもあった。



そして攻撃はなにも空軍と陸軍だけではない。南ラーガスタ海では既に日本海軍と日本帝国海兵隊による敵空軍基地の占領作戦が始まっていた。





そして日本が異世界に転移して初となる大規模海戦まで後僅かであったーー

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