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第一話 接触~正体~

2020年皇紀2680年7月17日

大日本帝国 小笠原諸島南方50km

大日本帝国海軍 第一空母戦闘群旗艦原子力空母赤城


アメリカ海軍のニミッツ級に似た外観を持つ日本最大の航空母艦である赤城は、ミサイル巡洋艦金剛と駆逐艦不知火、秋月と共に小笠原諸島付近で実戦配備についていた。


「全く…いくら後輩とは言え、連合艦隊司令長官からの命令とあっては仕方がないが…こっちの都合も考えろ」


「仕方ありませんよ…横須賀へ帰還途中である我々が近かったんですから…」


赤城の艦橋の司令官席で自身の後輩でもあり自分の上司である連合艦隊司令長官である古賀に対し不満を漏らすのは第一空母戦闘群司令官松山忠中将と三期後輩の参謀長笹埜啓二大佐である。


「まぁ分からなくは無いが…」


件の不明潜水艦は硫黄島基地の第四航空群第71航空隊硫黄島分遣隊のP-1対潜哨戒機も捕捉しており、硫黄島基地からはP-1が一機づつ飛んできては潜水艦に関する情報を集め現在もデータリンクを通じて情報は逐一更新されている。


「念の為、戦闘機(F/A-14EJ)を何機か上げて哨戒に当たらせろ」


「了解」


「件の潜水艦から何かあったか?」


「今のところ何も」


「こちらの潜水艦からは?」


昨日横須賀を発った伊511潜、伊512潜は日の出前に第一空母戦闘群と合流。新装備の曳航式ソナー等の高性能センサーを使用して所属不明潜水艦の捜索に当たっていた。不明艦の機関音とスクリュー音はデータベースに保存されていたためすぐに判別できるようになっている。


「いえ、今のところは何も…」


「そうか…」



同日

第一空母戦闘群より南方10km深度250m速力5ノット

攻撃型原子力潜水艦伊511潜発令所


日本海軍最新鋭潜水艦である伊500型は日本初の攻撃型原潜で静粛性に優れ、なおかつ半永久的に燃料を必要としないことから長期の海域哨戒任務に持って来いである。

その中の姉妹艦である伊511潜、伊512潜の2隻は連合艦隊司令長官からの命令で急きょ第一空母戦闘群へと水中速力40ノットという驚愕の速度で合流。これは原潜だからこそ可能な芸当である。そして現在は速力を6ノットにまで落とし、曳航式ソナーを使い周辺に『目』を光らせていた。もともと中国原潜監視用に作られただけあってその精度はアメリカ製の物より遥かに上回っていた。


「聴音、例の潜水艦は?」


伊511潜艦長篠原中佐はついこの間までは潜水艦伊405潜の先任士官であったが第六艦隊司令にその能力を見込まれ最新鋭攻撃型原潜の艦長に抜擢されたのである。この若い艦長は年齢はまだ30代半ばでこの地位を手に入れたのである。


「いえ、反応有りません」


「…無音潜行か…はたまた…」


聴音手の報告に篠原は腕を組み一つの可能性を導き出したがもう一つの可能性もあった。それは既に日本海軍の手に届かない範囲に脱出してしまったのではないか?というものであった。確率は五分五分。何時しか彼は自分たち(日本海軍)の手に届く範囲にいてくれと願っていた。


「?」


ヘッドホンに意識を集中していた聴音手はほんの僅かだが、否、一瞬違う音を聞き取った。その瞬間ソナーの感度を調整し音がした方位を割り出す。


「聴音より発令所。本艦左舷後方にスクリューらしき音源捕捉」


「距離は?」


「そこまでは…」


「艦長」


「取り舵180。機関停止。無音潜行」


「取り舵180。機関停止。無音潜行ヨーソロッ」


操舵手がジョイスティック型の舵を左に傾け、艦を180度反転させる。そしてそれを確認した篠原は機関を停止させる。原子炉から動力を得ていたタービンからの音が小さくなり、速力が0になる。


「聴音」


「進路…本艦前方。距離…3300…速力…3ノット…進路は…本艦上方…約200…音紋合致。間違いありません」


「艦長。どうします?下手に動けば気づかれる可能性が…」


「通信ブイ用意。通信可能深度まで無音浮上。それと戦闘配備」


「了解。総員戦闘配備。魚雷装填しますか?」


「…気づかれるかもしれんが1番~4番に98式装填。5、6番にデコイ装填。静かにやれ」


「わかりました」


「魚雷室より発令所。魚雷装填よし。いつでも行けます。」


ゆっくり艦が浮上する中、蛍光灯の明かりが赤い光に切り替わり通信ブイの射出準備に取り掛かり魚雷を装填させるように指示を出す。装填音で気づかれるかもしれないが今のうちに装填するのが一番だ。


「通信士、大鳳に通信。我、所属不明潜水艦と接触せり。指示をこう。以上」


「了解」


「現在深度150…140…130…120…110…」


操舵席についている深度計を操舵手が10m単位で読み上げる。そして篠原も気づいていないうち発令所の空気が緊張で張りつめていることに気づいていなかった。


「100…90…80…70…60…50…40、通信可能深度に到達」


「通信士。さっき言った内容を発信。赤城からの命令を確認次第、潜行だ」


「はっ」


「聴音、目標は?」


「気づいてますね。進路転換。浮上しつつ増速中であり、離脱…いえ、友軍のヘリが探知したようです。先に回り込んでいます」


海上()の連中は手際が良いな。いや、偶然探知したか?」


「いえ、どうやら違うようです」


通信の内容が書かれた紙を見ながら通信士が答えた。そして内容を読み上げる。


発、第一空母戦闘群旗艦赤城。

宛、伊511潜。

貴艦はこのまま監視を続行せよ。

以上です」


「そうか、どうやら例の潜水艦はヘリに任せてよさそうだな。下げ舵(ダウントリム)15度で深度200mまで潜行。通信ブイ収容!」


「了解。通信ブイ収容、下げ舵(ダウントリム)15度で深度200mまで潜行!」


下げ舵(ダウントリム)15、深度200。ヨーソロッ」


「さて、後は上に任せますか…」


篠原はだれにも聞こえないようにぼやいた。



同刻

原子力空母赤城 会議室


伊511潜が所属不明潜水艦と接触したころ第一空母戦闘群ではちょっとした問題が発生していた。哨戒も兼ねて飛ばしたF/A-2Dが約12隻ほどの艦隊を捕捉。位置は第一空母戦闘群から見て西に200kmと言ったところである。だが問題なのは進路が明らかにこちらに接近していたことでる。


「さて、これが敵か味方か…十中八九味方な訳ないが、敵であるとも言い切れん…」


「見方を誤れば痛い目にあいますね…航空隊全機には武装させるように整備連中には命じてありますが…」


旗艦赤城の会議室では所属不明艦隊の対処で話し合っていた。赤城の飛行甲板と格納甲板には空対艦誘導弾や空対空誘導弾を装備したF/A-14EJ、F/A-2C/Dが待機している。だが相手の正体も分からないのにいきなり攻撃するのは気が引ける。だからと言って無視するわけにもいかない。

そこで出た結論が武装した航空部隊を8機(護衛4機、攻撃4機)編成で飛ばしいつでも攻撃できるよう待機させるというものであった。

対応策が決定したところで第一次警戒攻撃隊8機が発艦し、甲板では第二次、第三次警戒攻撃隊の編成及び発進準備が行われていた。


「これで少しは安心だな…さて、どちらに転ぶやら…」


松山は誰もいなくなった会議室でポツリとつぶやく。なるべくいい方に転びますようにと。そして会議室の作戦会議用大型モニターに日本海軍のロゴが表示されていただけであった。


その後国防省では伊42潜が接触した所属不明潜水艦はその音源を解析したところ第二次世界大戦のUボートⅨ型潜水艦であることが判明。早速その解析データは第一空母戦闘群に国防省からデータリンクという形で届き、そのデータを基に松山中将は例の潜水艦を捕獲する作戦を立案決行。その潜水艦は2時間にも及ぶ追跡により包囲網へと誘いこみ、強制的に浮上させ臨検隊を艦に乗り込ませ確保。その後乗員の調査も兼ね特5型駆逐艦(陽炎型駆逐艦)に曳航させ、第一空母戦闘群と共に横須賀へ向かうことになった。

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