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第十話 ラーガスタ大陸戦車決戦―飛行場制圧作戦―

2020年皇紀2680年8月21日

大日本帝国帝都東京都

国会議事堂



ラーガスタ大陸では戦車同士の激戦のカウントダウンが確実に迫っている中、東京の国会議事堂では臨時国会が開かれていた。

内容は現在進行形で行われているラーガスタ大陸での戦争についてだ。内容はどの辺りで相手側と交渉するのか、またいつまで続くのかなどである。だが現在げんなりしていた。それは、与党民自党と対の衆民党、旭日維新の会などといった野党の過激な発言であった。その内容に山内をはじめとする民自党に属する議員達はうんざりしていた。その内容たるや、「植民地となったアルヴェニアの開放」だの「ラーバス皇国本土占領」などカネが幾らあっても足りないし、そもそも日本帝国陸海空軍の戦力にも限度がある。現在ラーガスタ大陸に派遣している戦力は現状動かせる最大戦力なのだ。

大日本帝国は転移した影響もあり、国防予算は例年GDPの3.8%もあったのだがここ10年程は2.4%にまで落とされており(一応、2019年度国防予算はGDP換算3.2%まで上がった)、その影響で満足に動かせないと言う状況が続いている。それに日本の国力も完全復活したとは言いがたく、まだまだ気を抜けない状況である。元々旭日維新は愛国心が高い故、過激な発言が多いことは誰もが知っているが、一度政権与党を奪取した衆民党は明らかに日本の現状を理解していないド素人集団。これでうんざりするなと言うのは無理がある。


(旭日維新は野党だがどちらかと言えば右翼寄り。民衆党は素人しかいないうえに政治下手。とはいえ連中の発言を無視するのはまずい…か)


衆民党のある議員からの質問に答える鶴崎大臣を申し訳なさそうにしながらも、山内は野党の発言を無視するのは不味いと判断しつつもどうするか頭の中で思案を行っていた。


「――と言う事を総理にお聞きしたい」


「山内総理大臣」


(どこかで聞いた事があるような…ないような…)


衆民党のある議員(ブーメラン効果で自分の発言が百倍にもなって帰ってくることで有名)の質問に山内はどこかデジャブ感を感じつつも質問に答える為に座っていた椅子から立ち上がる。




2020年皇紀2680年8月21日

大日本帝国帝都東京都

国防省統合参謀本部

地下統合作戦指揮所



山内を筆頭とする山内内閣の主な面々と政権与党の民自党の議員らが臨時国会に挑んでいる頃、統合参謀本部の地下にある統合作戦指揮所では、長谷川本部長が特務諜報機関『忍』の連絡員から報告を受けていた。


「何?それは本当か?」


「はい。間違いありません」


「まさか『そんなもの』まで持っていたのか…」


「どうします?」


長谷川が忍の連絡員からの報告に幕僚はどう対処するか聞く。


「大臣に…いや。今は臨時国会に出席中だったか…BMD統合任務部隊は?」


「PAC-3保有の全高射群は国内に。イージス艦は大陸派遣艦隊に組み込まれているもの以外は全艦国内で待機中。BMD用の衛星も問題ありません」


「BMD統合任務部隊は警戒態勢へ。大臣へは事後報告となるが俺がやる」


「了解しました」


長谷川がBMD統合任務部隊を警戒態勢に移るように指示を出し、幕僚が命令を実行する。


「他には?」


「敵の残存航空部隊に動きが」


「そうか…やはり出てきたか…」


植民地に残っていた残りの航空部隊が動き出した事を連絡員が伝えると、その姿を地下統合作戦指揮所から消した。


(流石は忍者の末裔達の諜報機関…姿を気配無く消すのは得意分野か…それにしても…)

「まさかこんなものを隠し持っていたとは…」


長谷川は心の中で特務諜報機関『忍』の恐ろしさを改めて痛感した。そして連絡員が彼に手渡したもの。それは車載式弾道ミサイルについての報告書であった。

しかも核弾頭搭載の上多弾頭再突入型らしい。射程は不明だがラーバス皇国本土から態々ラーガスタ大陸まで運び込んだと言うことは射程が少なくとも1万km程度はあるようだ(因みに日本本土とラーガスタ大陸間の距離が凡そ150km。ここは現在新日本海と呼ばれている。ラーガスタ大陸は北西方向と南東方向に凡そ8000kmある)。もしラーバス皇国がこれを日本本土を目標に発射した場合、コースにもよるが迎撃させるにはイージス艦を保有する艦隊を新日本海北部か中央部付近に第一次迎撃部隊を、新日本海沿岸全域にPAC-3を有する防空高射群を第二次迎撃部隊として全面展開させて叩き落すくらいしかない。幸いにも本土に残っているイージス艦全艦は対弾道ミサイル迎撃能力を有している。それに対弾道ミサイル迎撃用のデータリンク衛星も整っている。と言ってもこれは帝都東京を目標にした場合で、これがもし前線の日満連合軍に発射されようものなら敗北決定だ。


「どこに発射するつもりだ…」


長谷川はラーバス皇国の植民地となったアルヴェニアを睨み怒りを顔に出しながらそう言った。



2020年皇紀2680年8月21日

ラーガスタ大陸アルファス半島沖

大日本帝国海兵隊第2海兵旅団戦闘団


アルファス半島の海兵隊の橋頭堡から北東に80km地点にラーバス皇国軍の飛行場が存在する。現在80%程が揚陸した第2海兵旅団戦闘団の目的はこの敵飛行場占領が作戦目標だ。

第2海兵旅団戦闘団は第2海兵連隊及び第2機甲大隊、第2砲兵中隊を始めとした旅団主力はアルファス半島の橋頭堡に揚陸。現在は残りの兵力である第2海兵大隊第2中隊を揚陸中である。先に上陸した第1海兵旅団戦闘団は二個旅団相当の敵兵力の誘引及び釘付けに成功し現在は交戦せず様子見の状況である。

この占領作戦はヘリ部隊と地上部隊による強襲作戦で、事前にアルファス半島に潜入した海兵隊武装偵察コマンド大隊からの報告では飛行場には推定中隊規模の守備隊と僅かながらも敵の軽戦車と対空戦車の存在が確認されている。また空襲で生き残った僅かな数の設置型対空機関砲の存在も確認されている。

揚陸艦隊及び橋頭堡のヘリポートから発進したヘリ部隊は第2中隊の隊員達を乗せて、目標である飛行場へと進撃を開始。それと同時に地上部隊も目標の飛行場へと前進を開始した。


ヘリ部隊は海兵隊航空隊及び空軍特殊作戦航空団第1大隊第1中隊に所属するUH-1NJやAH-1WJ、MH-60JAで構成されており、地上部隊は10式戦車、03式装輪装甲車(海兵隊仕様)、08式水陸両用装甲車で構成されている。


「すごい数のヘリだな!!」


「ああ、ここにいないのは陸さんのAH-64DJ(アパッチ)OH-1(ニンジャ)くらいだろうよ!!」


「俺たちマジで戦争してんだな…」


「ああ、イラクやアフガンなんぞより最低(クソッタレ)な戦場が待ち受けてるぜ!!」


『指揮官から全隊、まもなく目標エリアに到達する。総員気を引き締めろ!!』


「聞いたな?弾薬を確認しろ!!」


『此方オスカー。目標を視認。降下体制に移る』


低高度で目標に肉薄したヘリ部隊は結果的に奇襲となったが成功。一方のラーバス側はヘリによる攻撃を全く想定していなかったのか、慌てふためいていた。指揮系統がまともに機能していない彼らはなけなしの対空機関砲を操作したり、小銃を撃ってくるものもいたが小銃弾程度で落ちる程ヘリは柔じゃない。対空機関砲はAH-1WJがヘルファイヤミサイルで破壊し、UH-1NJとMH-60JAは降下し海兵隊員を降ろすと再び上昇した。


飛び降りた海兵隊員は素早く散会し遮蔽物に身を隠しつつ、各々が手にする89式小銃3型と00式軽機関銃2型でラーバス皇国守備隊を打ち倒していく。

一方で護衛のAH-1WJはヘルファイヤミサイルや7糎墳進弾(ハイドラ70)で軽戦車や対空戦車、対空機関砲などを破壊し脅威度を一気に引き下げる。

反撃の手段を失ってゆく飛行場守備隊に止めと言わんばかりと10式戦車を中心とした地上部隊がそこに乱入し、一気に制圧した。


「終わったな」


「ああ」


ヘリで先に降下した2人の海兵隊員は自分たちが占領した飛行場とその守備隊をみて言い合っていた。


「ほら、さっさと歩け!!」


「手を頭の上に!!跪くんだ!!」


飛行場の格納庫前では捕虜となったラーバス兵たちが一箇所にまとめられ、彼らが使っていた銃火器が無造作に山のように積まれていた。その中から幾つか状態のよさそうなものはその脇に纏められていたがそれ以外は日本の数少ない資源として再利用される予定となっている。

捕虜達はこれからヘリを使って後方の捕虜収容キャンプに送られる予定だ。捕虜の取り扱いに関しては国際法に従って手厚く取り扱うように各隊長から指示が出されている。

また現在はMH-47LJやMV-22Jを使用して空軍や陸軍の設営隊やその設備などがピストン輸送されていた。MH-47LJやMV-22Jは搭載量と航続距離の長さを買われてヘリの中で一番空中輸送に良く使われていた。予定では飛行場を整備したらC-2戦略輸送機とKC-767が飛来してこの飛行場を移動予定の航空部隊に必要な物資と人員を輸送する手はずとなっている。



ラーガスタ大陸では海兵隊による飛行場制圧作戦が成功し、日本国内では山内内閣が国会で答弁を繰り広げる。

その間にも決戦は近づきつつあった…

そしてアルファス半島沖ではこの戦争最大の大規模空戦が起きようとしていた…


次回 前哨戦

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