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プロローグ~Unknown submarine~

2020年皇紀2680年7月16日

大日本帝国帝都東京

皇居前広場


大日本帝国が転移してから10年。

この日は日本が転移した日でも有り、太平洋戦争において日本側が有利な状況での講和をしたことからこの日は終戦記念日として認定されている。

戦勝記念パレードで陸海空軍中央軍楽隊が演奏する陸軍分列行進曲と共に行進するのは東部方面軍・陸軍総軍第一師団(別名:近衛師団)、第四師団、第一、第二旅団、第一空挺団、中央即応連隊、第一航空群(1個航空群に付き3個ヘリコプター飛行隊編成)が参加し、この他海軍特別陸戦隊から独立した組織へと改編された海兵隊3個海兵旅団。過去に例を見ないほどの大部隊…東部方面軍、陸軍総軍すべての部隊である。またこの中には近年採用された12式機動自走砲、12式機動ロケット自走砲(HIMARS)、2005年に設立された機動師団及び機動旅団の中核でもある近接戦闘車とその派生型。またお馴染みの10式戦車改、89式歩兵戦闘車Ⅲ型、高機動車Ⅱ型、軽装甲機動車(装甲強化パック搭載)等の正面装備。また後方部隊用の装備等でその数も記念パレード最大の数となっていた。

マスコミが注目する中、陸軍正装のカーキ色の軍服(夏服仕様)を着た将校達がパレードを見守っていた。


「しかし転移から10年しか立っていないのにここまで強化できるとはな」


「全くだ。10年で4個師団を機動師団に改変するんだからなぁ…」


「確かに。それに10式戦車。採用から10年が経つが未だに調達が続いているらしい…」


「まるで何か起きそうな勢いだな」


「戦争か?」


「さぁな、だがお上(内閣総理大臣)はそれを見越してるんじゃないかってウチ(陸軍)ではもっぱらの噂だ」


パレードを見守りつつ会話する陸軍将校の階級は何れも佐官クラス、更には参謀装飾をつけていた。彼等はなんと統合参謀本部勤務の参謀達であった。


新聞記者(文屋)共が嗅ぎつけなきゃ良いんだが…」


「ハハッ、アイツ等は犬みたいに鼻がいいからな嗅ぎつけてるかもしれん。最も裏が取れるまでは記事にはせんだろうし、仮に記事にしたとしても検閲で書き直しだ」


参謀達はマスコミ、特に新聞記者に注意を払いながら会話をしていた。彼らの耳に入ったりしたら目も当てられない。検閲で書き直しをさせる可能性があるが、彼らの上司である陸軍参謀総長にどやされるか、下手をすれば左遷される可能性があったが彼らからすれば肩書きには興味がなかった。


戦勝記念パレードが皇居前広場で行われていた頃…



神奈川県横須賀市横須賀軍港

大日本帝国海軍連合艦隊総司令部ビル


戦後長砲身に換装された46cm砲を9門搭載し世界最強と名高い『大和型超弩級戦艦』の『大和』『武蔵』。2隻の『大怪獣(リヴァイアサン)』が編入されている第一艦隊の根拠地でもある。

さらにここには東日本最大の企業(西日本最大の企業は『扶桑重工』)、『大和財閥』グループ『大和中央重工業』横須賀造船所が存在する。

嘗て艦上に存在した連合艦隊司令部は今や横須賀の地にその根を生やしていた。そしてこの大日本帝国海軍連合艦隊司令長官である『古賀勘介(こがかんすけ)大将』は自身の仕事場である司令長官室で一人の軍人と話をしていた。肩金こと階級章は少将である。


「済まないな。態々呼んだりして」


「いえ、久しぶりの帰国ですから嬉しい限りです。それに塩の匂いに鼻がヤられそうでした」


「ハハッ、そうか。で、聞くが間違いないのか?」


古賀が話している相手。それは潜水艦隊こと日本海軍第六艦隊第一潜水戦隊。別名『戦略ミサイル原子力潜水戦隊』司令官である朝長泰司(ともながやすじ)少将である。因みに朝長と古賀は同郷でもあり先輩後輩の中でもある。

朝長が率いる戦略原潜部隊は日本が転移した当時は『おいてけぼり状態』であったが日本が転移してから2日後、奇跡的に通信が回復。今では5隻全てが揃いその全てが朝長少将の元、国家安全保障のため日本の経済水域200海里地点まで進出しそこで昼夜問わず警戒していた。命令さえ来れば1隻につき12発もの潜水艦発射大陸間弾道弾が発射されることになっている。


「はい。昨日の午後10:06に伊42潜が潜水艦らしき音源を小笠原諸島南方で捕捉。ですがその後消失しました」


戦略原潜部隊所属の伊42潜は小笠原諸島方面の経済水域で警戒任務についている原潜部隊の属する潜水艦の一隻である。

転移から数年しか立っていないためかまだ日本はこの『新世界』の全貌を把握しきれていなかった。現在は高軌道周回偵察人工衛星や諜報機関の活躍でこの世界の陸地を全て調べ上げたが、この世界の国家はまだ全体の僅か2割しか分っていない。


「その潜水艦らしき音源は?」


「録音し、国防省の潜水艦音源データベースに保存されています。私が受けた報告では原潜ではなくディーゼル推進の潜水艦らしいとだけで詳しいことはまだ何も」


「そうか…分かった。君の戦略原潜部隊が我々の管轄であれば命令を出したい所だが君らは生憎国防大臣直轄の指揮下に入っているからな…」


「コレばかりは仕方ありませんな。ですが長官のところの潜水艦隊なら動かせるのでは?」


「ああ、既に命令を出した、と言いたいところだが残念だが伊42潜付近に潜水艦がいなくてな…一番近いのがこの横須賀の伊511潜と伊512潜の2隻と言う有様だ」


苦笑いしながらそういう古賀だが実情はかなりきつかった。日本はアメリカほどではないが攻撃型原潜を保有していたが就役したのは全て2005年以降でどちらかといえば大和の生まれ故郷である呉方面や武蔵の生まれ故郷である佐世保方面に重点配備であった。これは日本の国防戦略が対ソ連から対中国へとシフトしたためである。

だがこの新世界に転移したことにより逆にそれが仇となり潜水艦戦力…特に伊400型通常動力潜水艦、伊500型攻撃型原子力潜水艦等の静粛性に秀でた高性能潜水艦の配備が遅れていた。これまでは大湊基地、舞鶴基地、呉基地、佐世保基地に配備され横須賀はどちらかといえば整備点検修理用の基地として機能していた。古賀がさっき出した伊511潜と伊512潜も元は呉と佐世保に配備されていたもので定期検査のため入港していたに過ぎない。あるとすれば旧型の伊300型練習潜水艦であるがこちらは練習用でしかも旧型のため航続距離がそれ程長くなく、居住性もお世辞にも決して良いとは言えなかった。


「その2隻は確か…佐世保と呉では?」


「ああ、俺からの命令という形で派遣した。と言っても短期間だがな」


「しないよりは遥かにマシ。といっところですか…」


「ああ、俺にもう少し力があれば良かったんだが…まぁないものねだりをしても仕方があるまい」


「と仰っていますが、本当はあるんでしょう?松山中将の艦隊が」


「バレたか。そうだ、潜水艦の他にマツの空母部隊を回した。最も、衛星電話で怒鳴られたがな」


松山中将とは古賀の一期上の先輩で現在は原子力空母赤城を旗艦とする第一空母戦闘群の司令官で、横須賀海軍士官学校では互いにあだ名――松山の場合はマツ、古賀の場合はスケ――で呼び合う仲である。現在はまだ実戦配備期間中のため派遣できると判断したのだ。


「ハハハ…松山中将には迷惑をかけますね…後ほど自分から松山中将に合うことにします」


「済まないな…本来なら私が行くべきなんだがこの身分でな。動こうにも動けん」


「分かりました、では私はこれで」


「ああ、少し待ってくれ。松山先輩によろしく、と」


「分かりました。松山中将にそう伝えておきます」


朝長は微笑みながら敬礼をし連合艦隊司令長官室を退出した。

後に異世界に日本が転移して初となる戦争に巻き込まれるとは知らずに…

次回、謎の潜水艦が明らかに…!

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