第4話
ようやくまともに住民と接触します。
僕らは貸してくれる家に向かった。その間僕は今でもこのことに驚嘆している。アタムもメダーも分かることを僕らはわかることができなかった。知識に対してはかなりの知識があることは自負をしているが、それを超えた何かがアタムにもメダーにもあるのだと感じられた。
メダーとアタムは貸してくれる子と楽しそうに話をしていた。本当に会話の内容がわかるのだろうかはさておきとして、アタムは僕らに随時どういう意味かを教えてくれた。
「一、これからのことなんだが。」
リバーが耳打ちをしてきた。
「どうした?」
「貸してもらえるのはいいんだが、種子はどうする。」
「どうするって、ここで育て方を学んでいくしかないだろ。」
「それじゃあ、船のやつらに負けてしまう。彼らのほうが俺たちよりもはるかに科学力を持っている。生産効率だって奴らのほうが上だ。」
「だからどうするってんだ。」
「俺はいったん戻ろうかと思うんだ。」
「ねえ、そういう話、借りてくれる人の前で失礼よ。」
ファーが口をはさむとくい気味に
「お前は黙っていろ!」
「それはないんじゃないの?」
「いいか。確かに俺はここの人に感謝はしている。でもな、それだけじゃあ、いずれまたあいつらの世の中になってしまう。もし仮にここであいつらを出し抜いてこの世界の経済活動に何等か影響を与えることができれば、あとはわかるだろ?」
「確かにそうだが…でも、俺たちじゃあ怪しまれる。」
「だから、アタムか、メダーを使う。」
「正気か!」
「俺は素面だ。」
「子供はお前のおもちゃじゃないんだぞ。」
「それでも、初めが肝心だっていうのはわかるだろ。」
僕は沈黙した。ファーも何かを押し殺しているようだった。どうしてあんなにも驚嘆する出来事を目にしたのに、こういうことができるのか僕にはわからないかった。
「同意、してくれるよな。」
「あいつらをだませと。」
「お前だったらできる。」
家につくと家主が部屋に案内してくれた。六人で一部屋が分け与えられた。大体子供部屋くらいだったが、僕らには広すぎるくらいだった。
部屋に荷物を置くと、メダーとアタムは下に行った。僕らも仕事がないからこの家主に仕事を与えてもらおうと懇願しに行った。
僕はジェスチャーでまた話を始めた。両親は僕の言葉に対して耳をちゃんと傾けてくれた。
僕らが仕事をしたいとわかったか。部屋にあった時計を使って
「ビィーア、ビィーア」
と言いながら3時あたりに指をさした。ここで3時からまた仕事を始めるらしい。僕らは早く仕事をしたいと懇願したが、手を振り、無理だとジェスチャーで伝えた。
僕とリバーとファーはその時間まで自室で待機した。僕は船から持ってきた本を読んで、リバーはノートに何かを書いていた。ファーは横になって寝ていた。僕らは疲れていたが、これからの緊張で動けなくなっていた。
僕はファーに話しかけた。
「ファー。お前起きてるか?」
「起きてるわ。どうしたの?」
「いやさ、お前、どうしてメダーとかアタムのことを賢いって思ったのかなって。」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「いやさ。」
「ふん。」
なぜかファーはへそを曲げていた。理由はリバーの発言だろう。彼女自身もその発言には腹を立てているであろう。当たり前だ。しかし、リバーはお金、政治に対する知識は人一倍だが、人道から見てしまえば邪道だろう。
「そんなに、気にするな。」
「リバーだけが不安だなんて思ってほしくないわけ。」
「僕だって不安だよ。いつあの手段が自分たちに毒牙をかけるか。」
「そうだとしても。私たち、あの環境がいやだったからここにいるのよ。なのに、ここでもそういう環境を作ろうとしてるの?」
バン!
「聞き捨てならないな。ファー。」
リバーは立ち上がってファーに説教をし始めた。
「俺はあんな連中ほどうぬぼれちゃいない。俺だって地球みたいな間違いを犯したくないが、それを犯そうとあの船の連中はしよとしてるんだぞ。だったら、俺たちはそれを止めなくてはならない。だったらそれに対抗するために相手の技術を盗むのも正当だ。」
「リバー、あんたいつから科学者になったの?」
「なに?」
「そうでしょ。あなたが種子を開発したわけでもないのにそんな偉そうに言ってね。むかつくのよ。」
「今後ここで権力を得るためにはそうするしかないだろ。」
「ここの人を馬鹿にしてるの?」
「違う!俺たちは何千年の歴史のデータがある。そこから教訓を得てそれを与えてやれば、俺たちの歴史は永遠に続く。完全な持続可能な社会だろ。」
「いつから政治家になったのかしら。」
「なんだと。」
僕は二人に何も言えなかった。どちらとも正しい。でも僕は窓の外で遊んでいるメダーとアタムを見てどちらが今後生きやすいかだけを脳裏で働かせた。
「それってさ、子供にとってどちらが正しいんだろうな?」
「「は?」」
リバーとファーは僕のほうを向いた。
「だって、それって全部自分が中心で考えていることじゃん。」
「私はそういうことを考えていないわ。」
「それでもさ、あの子たち見てみなよ。こんなことを考えないでもあの子と遊んでいるじゃん。」
「それがどうした!」
「僕らが歴史を積み重ねているんだったら、ああいう環境にしていくほうがあの子たちのためになるんじゃないのかなって。」
「おまえ、本気で言ってるのか?あんな風に人間全員がああなって…」
「そうじゃないよ。もっと柔軟であってほしいって考えているんだよ。」
「私の屈辱はダメだって言ってるの。」
「そうじゃないって言ってるだろ!そうじゃなくて僕らが目の前にいる子供を見ろって言ってるんだよ!」
「どうだか…俺は次の近い未来に希望を持っているんだ。だから、そのためにはなんだってやる。」
僕はもう何も言えなかった。自分のことしか考えられないのは人間だと思うが、もしかしたらこの考えが子供にどう作用するのかは僕は予測できなくなった。
それから始業の時間を迎えた。始業10分前になって家主の子の両親が僕らを呼んだ。僕らは下にいき、どれを使うかをメダーに聞いた。
メダーとアタムは今後の仕事も教えてくれた。本当に大雑把にだが畑を耕すらしい。鍬を使って土をおこして、それから私たちの種をまく。とても古典的な方法だったが、メダーは目を輝かせて、足踏みでリズムをとっていた。アタムはそのあたりの森を見ていた。どこか遠くを見るように。
しかし、問題はファーとリバーだ。野心と良心の反発は彼らの心を蝕んでいた。表情から相手を思いやるようなものはなかった。お互いに視線を牽制しあい、そして、刺し違えてでも相手に矢を刺そうとする目だった。今のようなことは人類史上でもなく、アメリカ大陸へ侵攻した人々もこのような経験をしていないだろう。それが彼らの心を押しつぶしてるように感じた。
「ファーもリバーもどうしたの?元気ないよ。」
「あ、うん。大丈夫よ。」
ファーはメダーに笑顔で接した。しかし、リバーはいまだにむすっとした顔でファーを見ていた。
「リバーは?大丈夫。」
「大丈夫だ。」
「本当?なんか、目が怖い。」
メダーはリバーを心配しているのがよくわかる。メダーはリバーの顔をうががいながら、リバーから何かを感じ取ろうとしていた。
「おい、リバー。」
僕は強めに言った。するとはっとするようにいつものリバーに戻った。
「…ごめんよ、メダー。大丈夫だから。」
「ほんと?ファーとけんかとかしてない?」
「大丈夫。大丈夫。」
「そう。だったらよかった!」
「…心配かけさせるんじゃないの。」
「でもさ。」
「俺たちがちゃんとしなくてどうするの。」
「そうだが…でも、種子の問題を解決しないとどうしようもないじゃん。」
「今は見つかってないだけだよ。」
それから数分して農場へ到着した。しかし、農場というにはまだ荒れていた。
「ここを耕すのか。」
家主は僕に対して仕事のやり方を教えてくれた。やり方は鍬で丁寧に土を起こして、種を植えやすくする。
家主は石を取り出して土から出たり入ったりを繰り返した。アタムによると木の枝、石などを取り除く。そうしないと種が成長するときに邪魔になるかららしい。
僕らはさっそく作業を開始した。鍬はかなり重く、土を突くたびに腕がきしむ。船でもなまらないようにと筋トレは義務付けられていたが作業をするときつい。メダーは有り余った元気をここで使うように元気よく作業した。アタムは慎重に地面の様子を見ながらやっていた。僕らはというとその作業をすることで精いっぱいだった。僕はやることに夢中になりすぎて、石を取り除き損ねるし、ファーは慎重になりすぎて遅くなっている。そして、リバーはというと作業をするときはメダーやアタムと差はないが、どこか上の空のようにやっていた。僕は今までにないほど汗をかき、そしてどの人種であれ、最初の開拓者たちは僕らとおんなじことしたことに気づき感動したいた。
かなりの時間この作業は続いた。僕は腕時計を船に忘れてしまい時間を見ることはできなかった。しかし、あっという間のようにも感じられた。太陽を見るもう西に沈み生物たちの静けさが戻っていくような気がした。家主も声をかけて僕らの作業を止めた。
帰り道、メダーは楽しそうに疲れていて、アタムは何やら考えていた様子だった。ファーは力をすべて使い切った様子だった。でもリバーだけは違っていた。森の奥を見ていた。ちょうど宇宙船がある場所だった。僕はリバーに話しかけた。
「おい、リバー。」
「なんだよ。」
「なんで宇宙船のほうなんて見てるんだ?」
「あいつらにこういうことってできるのかなって。」
「できるはずがないだろ。あいつらに。」
「そうだな。だが、あいつらは機械で同じようなことをし始めるだろうよ。」
「そうかもしれんが…だが、開拓者にはなれないだろうよ。」
「収穫者の立場になったら怖いぞ。」
「怖いって、ないが?」
「俺たちの収穫も略奪されかねないってことだよ。」
「侵略をか?」
「そこまでは断言できない。しかしな、あの中でも俺みたいなやつがいるっていうことだけはお前も覚えてくれ。」
「僕は元技術士だ。」
「歴史にこんなに赴いている技術者はいるか?」
「僕はただ、気を紛らわすために技術も歴史も学んでいたんだよ。」
「そのおかげで俺も道を誤らずに済む。」
「どういうことだ。」
「今の状況通りだよ。お前の鶴の一声がなければ俺はただ技術進歩によってでの経済しか考えられなかった。」
「そんなことか」
そんなことを話していると家の明かりがついていた。幻想的な光で遠くからふんわりと迎えてくれていた。それを見てメダーは走り、ほかの人は溜息をしつつ歩いた。
近くに行くと照明の正体はランプだった。ほんのりとした明かりは使い伏している証拠だった。ガラスが半透明になっていてそこから放たれる光は柔らかく、きれいだった。僕はそれに溜息し、なんだか優しい心にさせてくれた。
家に帰ると家主の妻、メダーの友達のお母さんが料理を用意してくれていた。主食は米のようなものだった。しかし、主食はやさいを中心にした洋風なものだった。しかも彩が豊かで彼らにもそういう美観があることがわかる。
「「「おいしそー。」」」
メダーとアタムと家主の子は料理に釘づけだった。それは微笑ましい光景で家主たちですら微笑んでいた。
僕らはさっそく席についた。僕らは作法を知らないから家主とその子供の真似をした。家主が胸のあたりに手を合わせて
「タイマール。」
と家主がいう。それからつられて子供と妻が
「「タイマール。」」というそれからメダーとアタムが
「「タイマール」」と元気よく言う。僕らも声を抑えて
「「「タイマール」」」といった。そうするとみんな食事を始めた。 やはりファーとリバーは食事に少しだけ警戒した。しかし、一口食べるや否やすごい勢いで食べ始めた。もちろん、メダーとアタムも同様にだ。僕も食べた。やはりうまい。スープは洋食のようなスープであったがご飯とマッチしていた。それほど違和感がなかった。野菜も歯ごたえはよくかかっているドレッシングもうまかった。化学調味料をなしにどうしてこんな味を作り出せたか不思議なくらいにだ。
食事がすむとみんな自室に入った。そして、僕は落ちるように眠ってしまった。その夜は静かだった。
歴史上の人物って変人が多くて驚いた