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第一話

この物語は僕なりのヒストリーフィクションです。歴史上で考えられるありそうなことを小説にしていけば、見せられるものになるのではないかと考えて書きました。

できれば、学生、社会人、老人、子供たちに見てもらいたいです。

     anothre earth hitstory


遠くまで来てしまった。何年間広い宇宙を漂ったかはみな忘れるくらいに長い。少なくとも十数年は漂っている。

 地球は人の手によった環境破壊によって少数の人以外は地球から離れ、十数光年離れた惑星に移住することにした。移住の際は地球民と宇宙民による民族紛争も行った。この際にイスラム教もキリスト教も関係なしに戦争の火花はこの二つの民族間によって争われた。十年後、宇宙民の脱出の目途(めど)と宇宙船建造の完成によって宇宙民は宇宙に上がった。

 それからここ十数年、何もなく過ごした。宇宙船団の偉い人たちは官僚化をしてしまい、連れてきた子供たちは成人し、船団のシステムを維持するために動き始めていた。その一人僕が僕若松一だ。

「65番デッキ。修理の効率が68%になっています。効率の向上を図ってください。」

 いつものように機械音の忠告が響く。その際はマニュアル通りの働きに自分の考えを+aすることによって評価がつく。その評価に応じて船団内の住居のグレードや食事のグレードが変わってゆく。

「うるさいです。」

「口答えするものは減俸15%」

「わかりましたから。たっく、どうして子供の後始末をしなくちゃいけない。」

「義務でございます」

「お願いだから一人分けてください。これじゃあ、きょう一日こうして修理することになります。お前だって俺の義務作業の効率、減らしたくないでしょ。」

「皆も同じように考えています。あなただけ特別ではないのです。」

「どうだか。官僚たちがこんな貴族制を引くから、俺みたいな小市民が不幸になっていくんだよ。」

 ぼやくたびに減俸という言葉を思い出す。しかし、これが現実であった静かに過ごそうとすればより効率の良い方法を考えてそれをすべての作業にそれを取り入れるという考えですれば済むことなのだ。一昔前の産業革命時代の体制とそれ以前の貴族体制が交わったようなものだった。

「おい、678番!機械とじゃれている暇があるのなら動け!」

「回線を使うなら直接会ったらいいんじゃない?」

「減らず口をたたくと減俸だぞ!減俸!」

「宇宙のごみにはなりたくないです。」

「酸素だって植物によってようやく賄っているんだ。お前は早くその作業を終わらせて農作業へ行け!」

 その会話が終わると静けさが戻った。こうしていると大人の無策さが身に染みる。ニューフロンティア(新天地)だの、アメリカ再発見だのと浮かれていたころの大人たちはどう思っていたのだろうか?無策は無策だと認めてくれれば僕だってどうにかできたのではないか?そう思うと無性にこの箱から出てみたくもなった。

「星は近くにあるのにな…そこに下りればいいのに。」

 考えてみるとどうしてこんなことに。多民族であるからして仮に作った宇宙民は民族として機能していない。ましては産業に関してもそれほど余裕もないのだから、お祭りを上げようにもあげることはできない。古来伝わった日本の祭りも、キリストのイースターも執り行われなくなった。

 祭りがした

祭りがした。

そう思っている祖父母の世代の人はよく口にしていた。

「よし、これで完了。おい、できたぞ。」

「お疲れ様でした。今回の報酬は五十ドルです。」

「金はいいから、住居をくれ。」

「でしたら、もっと働いてください。」

「24時間働けと!」

「規則に反します。」

「たいそうなこと。」

 そういって僕は離れていった。

農作業は機械の扱いよりもたやすい。害虫はいなからあるのは管理だけ。もっと科学力を持った人は酸素の排出量が大きい品種の開発に力を注いでいる。

 ぼくはただひたすら植物の観察をした。その実験結果によって品種改良の効率は上がる。周りに人はいるが、話すことはない。 しだいに自分のなかで嫌なものが芽生え始めた。退屈だった。ほかの人と話せない環境だって、効率が悪ければ意味がない。しかし、地球時代の科学者はこれが正しいものだと考えていた。その世襲が今のこのいびつな環境になっている。

『でもさ、少しくらい話したところで罰は当たらないんじゃなの?』

 植物は生きているのか死んでいるのかわからなかった。こうして生きている産業植物は人のために生きていて自分のためには生きてはいない。生きることですらなにやらディジタルのように思えてきた。

 農作業が終わると食堂に向かい、食事をした。僕は運がいいことにこの時間には友人がいる。リバー、ファー、メダー、アタム。きっかけはどうってことのないものだった。たまたま一緒の席に座っていてたまたま話題があってそれから連絡を取り合うようになって仲良くなった。

「よ。」

「おう、戻ったか。」

 リバーが威勢よく言った。

「遅かったじゃない。」

「もう食べているわ。」

 ファーと、メダーが言う。

「俺だって遅くなったんじゃない。作業に手間取ったんだ。」

「何してたんですか?」

 と気遣うようにいうアタム。

「観察の基準が今回は厳しかったんだよ。」

「このまま宇宙を漂うとなると酸素は大切だから。」

「でも、私お風呂になんにちも入ってないのよ。」

「仕方がないさ。水は貴重だ。使う量だって決まっている。食事ができるだけありがたいと思わないと。」

 僕は冷静に言った。しかし、そういうとファー、メダー

アタムは黙りこけてしまった。

「んぅー。わかったよ。悪かった。その代わりこんなもの持ってきた。」

僕は持ってきたバックから小さな缶を出した。

「それって…」

「そう、コーヒーの豆だ。」

 そういうとリバーは目を輝かせた。

「手に入れるのに苦労したよ。そして、お菓子もある。」

 お菓子にはさすがにファー、メダー、アタムの女の子集団も目を輝かせた。

「どうしたんですかこれ!」

「コネをちょっとね。金もかなり積んだが。」

「でも、いいんですか?」

「なに、金自体に意味なんてないよ。それよりも、こういう楽しいことに使ったほうがよっぽど生産的だよ。」

「お金って、住宅を確保するために使うものじゃないの?」

「そんなことはいいからさ。早く飲もう!食べよう!」

 さっそく食堂に行ってコーヒーメーカーで淹れてみた。そうすると珈琲の香りが鼻から入るとこれをみんなと共有できることがうれしくなってきた。食堂からお盆を借りてお菓子をきれいに飾り付けて持っていく。

こと。

「お待たせ。」

「来た来た!」

 今にもウサギのお茶会が始まりそうな空気が漂ってきた。女の子たちは目を一層輝かせていた。お菓子が作ってくれてこの雰囲気は感謝をしなくてはならない。こういうことは生活の中で今はめったにいない。

「それじゃあ一緒に」


「いただきます。」

「頂きます。」

「いっただきます。」

「いだき。」

「もう待てない。」


 コーヒーで乾杯をして、お茶会が始まる。話の内容はどうでもいいようなバカ話ばかりだ。みんなやった失敗。少しやったいたずらの話。そんな話で腹をよじらせて、時々誰かをいじったりして笑っていく。こんなに幸せなことはなかった。だって、無機質に流れる時間の中でこんなにいい体験をできるのは、楽しいし、うれしい。

「コーヒーがなくなったな。おれ、淹れてくるよ。」

「だったら、お菓子のおかわり!」

「もうねえよ。」

 そんな冗談をメダーと交わすと急いで淹れてくる。食堂に僕たちだけになるとコーヒー

のいい香りが文字通り広がった。その向こうでみんなが話している姿を見るとこんな時間が一生続けばいいのにと思う。

「みんな子供みたいに。」

しかし、すこしこの宇宙探査の精神思い出してしまった。


人類は幸福のために生きてきた。それは正統的なかつ原始的なものであった。だが、我々はその歴史の中で何回地球をこわしてきたことだろうか。人類は次なる幸福のためにこの旅を続ける。


 今考えるとこの十数年で人間は幸福になっていったのだろうか?科学によって生かされて自然と切り離されたこの環境で幸福を振りまく人は友人を持つをひとか、一部の貴族だけだ。それ以外は皆機械のような生活をしている。

「どうしたの!早く!」

 そうメダーが僕をせかす。

「今いく。」

「でも聞きました?もうすぐ着くらしいよ。」

「着くってあのanother earthのこと?」

「そうです。もうすぐこういう生活から解放されるんです。」

「でも、そうするといまの農業を手放すことになるんじゃないの?」

「それでもこの目的にあっているんだったらそうしなくちゃいけないんじゃないの?」

「お偉いがたはこの到着を経済発展としか思っていないよ。」

「でも、経済って十数年で共産主義になっていったんじゃないの。」

「システム上はね。」

 リバーが自分の知識を出し始めた。

「共産主義は計画的経済を生み出して安定が保たれる。この安定こそがこの生活においてもっとも大切なこと。だってここでの反逆罪は致命的になってゆくでも、そういう経済はしまった空間では使えても、広い大地ではそういうことができないんだよ。反逆をしても生きていけるからな。」

「でも、貴族体制を敷くならその共産主義体制を維持していたほうがいいんじゃないの?」

 メダーは幼心に言う。

「そうでもないんだよ。そもそも、その貴族体制ってできたと思う?」

「どうしてって…なんで?」

「富の独占だよ。」

「富?」

「そう。要するに財産だよ。財産を所有することによって食べ物を独占する。そもそも独占なんて意味ないんだよ。歴史がそう言っているんだからね。」

 考えてみればそうだった。世界史を見るとフランス革命を起こした原因だってこの貴族的政治家たちのせいだ。自由主義の始まりは科学の発展も含まれている。

「そう考えると妥当かもしれないな。」

「そうだろ。だから、えらいさんも、そこで産業革命を起こそうとしているんだよ。」

「…でも、それってまた歴史を繰り返すんじゃないですか?」

 そういうと誰も反論ができなくなっていた。

「え?どうしたんですか?」

「いや、正直だなって。」

「どうしてですか?」

「みんなわかっていることを正直に言っていることがすごいなって。」

 リバーは子供の正直さに感心していた。知識だけではそういうことを感じることはできない。子供の知恵は僕ら以上に優れていた。

「アタムは賢いな。」

「どうしたんですか?急にほめだして。」

「僕にとっては賢いの!」

「賢いって科学者にいうことですよ。」

「アタムは本当にかわいいんだから!」

 メタ―はアタムを抱きしめた。ほほえましい風景だ。どうしてもこういうことが楽しいと思えると自分は人間でいてよかったと思う。

「ファー。」

「なに、一」

「人間って捨てたものじゃないな。」

 僕はほう杖をついて言った。

「気持ち悪いわよ。」

「どうして。貴族よりは上等じゃない。」

「ふふふ。でも、貴族って私たちの身を守ってくれるんじゃないの?」

「コーヒー一杯を飲むことがこんなに難しいのに。」

「わたし、コーヒーよりも紅茶のほうが好き。」

「悪かったよ。でも、うれしいよ。そういうことを言ってくれ。今度は牛乳を仕入れてくるよ。」

 僕は一気にコーヒーを流し込んだ。ほかのやつらはじゃれ始めている。僕はまた鞄に手を入れた。

「あなたの鞄って四次元ポケット?」

「遊び道具だったらいっぱいあるよ。トランプから花札まで。

「どうしてそんなに持っているの?」

「僕の父さんがこういう娯楽がすきだから。自然とそこから話すことができているから。」

「言葉がおどろおどろになっているわよ。」

「興奮してるんだよ」

「変態っぽく聞こえるわ」

 僕はそのあとトランプでみんな遊んだ。酒を飲めるようになってもこれはやるつもりだ。大富豪から始まり、ポーカーやブラックジャック。賭け事は禁止されているが、娯楽品をかけるだけであって金銭の賭け事はやっていない。たいていは船内で拾ったものの争奪戦だ。時間はゆったりとすぎたり、早く過ぎたりと緩急の差が激しく僕らの夜の騒ぎは続いた。

 終わったのが時計で1時くらいだった。周りが暗い宇宙だから今何時かは分からない。しかし、窓の外では天の川が流れていてそこに今にも飛び込めそうなくらい近かった。静まり返る廊下は時間など忘れさせてくれる。

 僕は本を取り出した。歴史書だ。中国の中央宣伝部がどのように南京大虐殺のことを世界に示したかが書かれている。読んでみれば異常なまでの情報統制によっての世論の操作だ。世論は総じて信用のある情報を疑うことはなく、その愚修政治にのっとった近代化した議会では民の声を最優先とする精神のもとで決定づけている。しかも、その情報の提供者の中には日本人もいた。戦争をすることはいけない。と唱えた人がプロパガンダに使われ、それが何十年とつ続く問題に突き当たらせるともしれないで…

 そういうことを考えていると僕は無性に今のいびつな情報統制下でいる自分の経緯が嫌になっていくと同時にこのあいまいさを受け入れなければいけないとすらも思えてきた。

 アナウンスが急に僕の耳に届いた。

「船員諸君。聞いてくれ。間もなく我々の新天地another earth に到着する。これより我々は第二次フロンティアに入る。君らはこれより船員権に代わって市民権を得ることになる。また経済が始まるが、我々は次こそは持続可能な経済を積まなくてはならない。君らはよくここまで船団を動かしてくれた。感謝する。」

 この演説を聞いて僕はほっとした。僕ら、船団小児だった僕らの時代が来たのだと。その瞬間船団から歓喜の声が湧き上がった。

 僕は急いで食堂に向かった。行くとリバーがいた。

「おい、聞いたか。もうすぐ着くんだってさ、。地球に!」

「長かったな。」

「そうさ。お前も技術者なら喜べ。これからは

技術者の時代が来るんだぞ。」

「わかっているよ。」

「…なあ、相談なんだけどさ。」

「なんだよ。」

「もし、地球に無事に降り立ったらさ。一緒に会社を興さないか?」

「…わからないよ、まだ。」

「なあ、俺たちで産業革命をまた起こせるんだ。大人たちが味わったことのない革命を!」

「そうして歴史を繰り返してしまうのか?」

「そうじゃない!今度こそ歴史の教訓を力に変えて人類が一生続くようなものにしてゆくんだよ。」

「一生か…。まあ、考えておくさ。」

「よろしく頼むよ。」

 それから次々に仲間が集まってきた。こういう楽観主義が次の時代の風だとするならばこの風によって子供たちに食べ物を、技術を、未来を与えなければならないと僕自身憂鬱になってしまう。

「船団諸君、もうすぐ到着する。衝撃の準備を始めてくれ。」

 僕らはマニュアル通りに着陸態勢に入った。着陸は一度きりでそれぞれの船はほぼ同じところに着陸する。着陸を失敗しても助け出せるようにだ。僕とリバーは出口の最前列に入り込めた。機体は揺れて、まだ小さい子供たちは泣きじゃくった。仕方ないと大人たちは子供を慰めた。

 窓を見ると一面に緑が広がり、広大な森林が広がる。リバーも窓に身を乗り出す。その風景を見て僕もリバーも涙を流した。

「着陸します。ご注意を」

 がごが、っががががが。

 船は爆発せずに着陸した。ほかの船団では着陸に失敗して炎上しているところもあった。僕らはすぐに出口に向かって降り立った。

 降りたとき、僕は風景に懐かしくなった。一面に草木が生えていて、今に走り出した気持ちにさせてくれる。無性に涙が流れてくる。あたりの消火作業をしなければいけないことなど忘れさせてくれた。

「おい(はじめ)!早く消火作業を!」

 リバーの声ではっとした。遠方を見ると同時に着地した船が燃えていた。立っている炎を見たのは初めてだった。立っている日が生き物のように動いている。その動きが自分のことを飲み込もうとしていた。

「おい、早く。」

「お前怖くないのか?」

「何がだ。早くしないとみんな死んじまうぞ。」

「どうしてそんなに冷静なんだ。」

 その瞬間リバーが殴り掛かってきた。

「今はそんなことを考えるな!人命を考えろ!」

 その言葉を聞くと僕は呆然とした足の音が大きくなっていくことを感じられた。怒号と大地を走る音が僕の耳に走った。

「分かったら、先に行っているからな。」

 重い足が動き出した。

みんなと協調をはめる。

そして、自然の音などはしない。炎の音は大きくなっていった。中からの叫び声は自分の生命などを食い殺そうとしていた。

「水だ!水をもってこい!」

「もう貴重物じゃないんだ!どんどんもってこい!」

「だから、水で火を消すんだよ!」

 知識だけで覚えたマニュアルは何人の人が死んだかわからない。自分もその一人と考えると、何とも間抜けに思える。

「どうして消えない。」

「ここは地球と比べて酸素と水素の割合が違うんだ。」

「どういうことだ。」

「はるかに燃えやすいんだ。」

 数時間すると消火の効果が出てきた。次第に死体の山が見えてきた。無策による死骸。僕らは自らの本質が温室育ちだということにも改めて気づかされた。

「今回で100人は死んだ。」

 リバーは怪訝そうに話しかけてきた。

「そうらしいな。」

 僕は何とも言えない気持ちにさせられた。

「えらいさんたちはこんなことなどお構いなしに土地利用の話し合いが始まったらしい。」

「もう、市民運動が始まるんじゃないのか?」

「そうでもないよ。今はね。そういうのはみんなが土地を持ち始めてからだよ。」

「産業革命どころではなくなったな。」

「想定していたとはいえね。ここで死人が出てくるとどうして旅をしていたのかわからないな。」

「僕らはそうして命をすすってきたのかもしれないな。」

「気持ち悪いこと言うなよ。」

  僕自身もうわけがわからなくなっていた。初めて見る地上の感覚を味わうことなく、消火作業をしていると風の匂いも、そこから運ばれる緑の匂いも感じることなく降り立つとまた地球同じ歴史を繰り返してしまうような気がした。

「大変だったね。一、リバー」

 ファーが疲れた顔で話しかけてきた。隣に体育座りで悲しい顔をしていた。

「ああ。そうだな。ほかのやつらは。」

「アタムもメダーも地球でしかできないことをするってはしゃいでいたわ。」

「なんだよ、それ。」

 リバーはそれを聞くと少し笑顔が見えてくる。

「なんだか楽しそうだな。」

「あの子たちはまだ16歳よ。」

「もっと小さい子供が働いていた地球よりはまだましさ。」

「あの子たちはまだ子供の本能を持っているのよ。柔軟なの。」

「十八の俺たちはそれほど柔軟じゃないんだな。」

「老いたんだな。俺たち。」

「私たちが時代を作れってお偉いさんたちはいってたわね。」

「切り開くどころか、また歴史を繰り返しそうな気がする。」

「そうだな。僕たちってそれほど賢くはない。」

「だったら私たちはその子供たちのために生きていかなくちゃいけなくなったわね。」

 かさ。

「ん?」

 ファーが茂みのほうを向いた。

「なんだろ?」

 近づくと犬みたいな生物が近づいてきた。

 ファーはポケットに入れていた非常食を与えた。

「ほら。ほら。」

 手を近づけると犬はそれをたべた。

「みんな、来て来て!」

 そういうと僕たちはファーのもとに向かった。ファーはその犬を手なずけていた。

「かわいいでしょ。」

「ああ。そうだな。でも、食料がないことの時に大丈夫なのか?」

「まあ、いいんじゃないの。地球で生きていくとき羊飼いみたいに獰猛な生物から守ってくれるかもしれないし。」

「そうよ。」

「なに!それ!」

 メダーが目を輝かせて来た。アタムもつられてくる。本当に楽しそうにして。

「犬みたいなのよ。」

「へー。あ、そうだ。」

 メダーはポケットからボールを取り出した。

「いくよ!」

 メダーは力いっぱい投げた。犬もそれを追った。宇宙ではそんなことバーチャルの上でしかできてなかった。

「故郷に帰ったんだな。」

 僕はふとそんなことをつぶやいた。遠くに行った犬も生き生きと走っていった。僕らは宇宙で患った病気が治っていくように感じられた。大地があり、草があり、生物がいて。元地球人でもこうやって楽しく生きていいのだと。

「何泣いているんですか?」

「いや、なんかね。」

「ふふ。」

「僕たちって本当にここで生きていいのかもしれないって思えてきたんだよ。」

「なんですか、それ。」

「いやさ、さっきの火災といい、お偉いさんの話し合いといいさ。自分たちは生存本能を持った機械なんじゃないのかなって思っちゃんたんだよ。」

「おまえ、そんなことを考えていたのかよ。」

「本当さ。でも、ファーとメダーが遊んでいる姿を見ていいるとね。なんか涙が出てきたんだよ。」

「一生分の涙じゃないといいがね。」

「なんです?」

「決まってだろ。この先も苦悩の連続だってこと。」

「それでもな、僕は生きていこうって決めたんだよ。農業政策とよくわからないけどさ。負の歴史を繰り返さなければいいんだろ。」

「やめましょう。そんなこと。あそびましょうよ。」

 アタムはファーとメダーのもとに走り出した。後ろのほうでは大人たちがやな視線を送る。こどもだからだ。子供はのんきで現状をわかりきっていない。僕らだって死んだことは分かっている。しかし、誰かが死んだ実感など僕らには皆無だった。

 後ろからすぐにアナウンスが入る。

「諸君。我々船団連合の決定はまずこの周辺を調査。その後、農業地と住宅に土地を分けて開墾する。ここでは子供も払いてもらうからそのつもりで。」

 僕らはすぐに遊ぶのをやめた。なついたあの動物は何かを感じ取ったように僕らから離れていった。メダーは悲しい顔をしていたが、そんなことを考える暇もなく分けられてた部隊によってこの周辺を調査することになった。

 僕が担当する地区は周辺の森約一キロ圏内だった。ひとまずといったようなもので一緒になった知り合いはメダーだけだった。メダーはいまだに浮かない顔をしていた。

「気にするな。」

「でも、わんこうがいなくなってさ…」

「ここに住んでいるんだったらまた会えるさ。」

「そうかな…」

「そうさ。また食料を与えればいい。」

 よーし、出発だー

その合図とともに僕らは歩き出した。

入ると図鑑で見たような森林が広がっていた。ただ地面がでこぼこしていた歩きにくかった。船内ではないことだ。その地面が体力を2倍速く奪ってゆく。

「疲れたよ。」

 メダーは早くもばててしまった。しかし、部隊長からそういうたびに怒号が放たれる。僕は時折肩を貸しつつ歩いた。僕も感動を味わう前にこの体の悲鳴で潰されそうになっている。

「一。」

「なんだ。」

「また遊びたいよ。」

「帰ったら遊んでやるから。」

「違くて。私、一日中遊んでみたいの。」

「今はそんなことを言っている場合が。」

「でもさ、私だってさ。まだ子供なんだよ。」

「今は子供を言い訳につかわないでよ。」

「ん。」

「…悪かったよ。でもな、今は住むところとか、手ベルものとかを確保しなくちゃいけないんだよ。わかってくれ。」

「それでもさ…。疲れちゃったよ。ん?」

 メダーは立ち止った。

「おい、メダーなにやってるんだよ。」

「匂いがする。」

「え?ああ、土の匂いがするな。」

「違うよ。何かを焼いている匂いだよ!」

 僕は直感した。火事が起こっているかもしれない。

「部隊長!何か匂いませんか?」

「は?何をだ?」

「何か焼けたような匂いです!」

 メダーは走り出した。

「メダー!」

「わたし、見てくる!」

「めだー!部隊長!みんなに知らせてください。ここで火事が起こるかもしれません。」

「まて、あいつは俺が!」

「あんたはあいつの名前も知らないのかよ!」

 僕はメダーを追った。しかし、メダーは水を与えた魚のように元気に走っていった。僕は力いっぱい止めようと走るが追いつかない。

「メダー!死ぬぞ!」

「死なないよ。だってこれ山火事じゃないもの。」

「は?」

「人がいるかもしれないの。」

「待て。ここは地球じゃないんだぞ。」

「いるの!」

 僕にはわからなかった。こんな辺境の地で誰かがいるって感じられるかが。しかし、近づけば近づくほど、匂いが強くなっている。しかも、森が焼けた匂いじゃない。料理をしたときに出る匂いだ。

「もしかて、おまえ、腹でも減ってるのか?」

「減ってるよ。だから、食料分けてもらおうって思っているの。そうすれば一だってファーだってリバーだってアダムだっておなか一杯になれるじゃない。」

 その瞬間。メダーは足を止めた。僕はメダーの手をつかんで

「さあ、帰るんだ。」といった。

「ねえ、見て。」

メダーは匂いのする方向に指をさした。

「あそこから煙が上がっているよ。」

僕は目を凝らしてみた。そこには、一本レンガの煙突が見えた。

「そんな、バカな…」

「あれって誰かがいるんだよね?」

「そうだけど…」

 僕は携帯していた銃を右手に持った。

「危ないよ一。」

「もしかしたら僕らに襲いかかったりしたりしてな…」

「見てもないくせに!」

「でも、そうだったら僕ら殺されるかもしれないんだぞ。」

「わたし、言ってくる!」

 メダーはまた走り出した。僕は銃をしまってメダーを負った。

 煙突の近くまで行くと、一つの集落がった。煙突の下はまるで教会のようになっていて、その周りで人らしいものが食事をしていた。

「ねえ、見てよ。食事だよ。」

「待て。相手はなんだかわからないんだぞ。」

「お。」

 メダーは子供たちが球を転がして遊んでいた。

「楽しそう。私行ってくる。」

 僕はメダーを掴もうとしたけど素早く逃げられる。そして、僕は彼らの好奇な目にさらされた。

 僕は焦って銃を抜こうとするが、抜けない。僕の生存本能が恐怖をあおってくる。

「よ。は!」

 メダーは球遊びをしていた子供たちと一緒に遊んでいた。

「おい、メダー。」

「一!こいつら悪い奴らじゃないぞ。」

「だったらどうするんだよ。」

「ご飯分けてもらえそうだよ。」

 周りを見てみると、その人は僕に木の皿を出してくれていた。皿の中にはミルクと野菜を混ぜたスープがあった。

「ん。んん。」

 教会にいた人は僕に笑顔でスープを差し出してくれていた。

 僕は恐る恐る飲んだ。今で味わったことのないおいしいスープだった。メダーももらって

「これすごいくおいしい!」

 と笑顔で言った。

教会の人も満面の笑みで僕らに語りかけた。

「トラッパービージュア?」

 僕は言葉がわからず焦ってしまった。どうしてこの人は僕らを恐れないのか?どうして僕らを警戒しないのか?そのことを考えると怖くて仕方がないかった。

 メダーは自分の手を胸に当てて、僕らが来た方向に指をさして

「わたしたち。あそこから、きた」

 といった。教会の人も何かを納得したようだった。そして木のさらに指をさして

「ヴィー、ビューッド、バー?」

「うん!」

 メダーは満面の笑みで返した。

「メダー、言葉分かるのか?」

「わからないよ。でも、わかる。」

「なんだよそれ。」

「ジェスチャーでわからなかった?さっきのはおいしかったかだよ。」

 ぼくには理解ができなかった。どうしてこんなことがメダーにはわかるのかが。

 メダーはまた遊びに行ってしまった。僕は一人ぼっちでこの状況を乗り越えなくてはいけなかった。

「あの。」

 さっきの人が僕のほうを向いた。

「さっきは、ありがとう。」

 僕はお辞儀をして返した。

「バジュヴュジュー?」

「えーっと。」

 僕はポケットを探り始めた。

僕はポケットから非常食を出して

「これ、お返し。」

 僕は手で非常食をちぎって食べた。安全を証明するためにだ。

 すると、その人はその非常食を手にとって食べてくれた。

「バギュー。」

 笑顔で返してくれた。周りの大人の人たちも僕のほうへ寄ってきて何やら話しかけてくれた。言葉が通じないとわかるとジェスチャーで話し始めた。その間必死にジェスチャーで話を進めた。僕はとてもくだらない話を彼らにいっぱいした。僕らがあの宇宙船でどんなへまをやらかしたか。どんないたずらをして楽しんだかを。すると彼らも僕につられた笑い始めた。

「ワハハハ。」

「ガハハハ。」

 笑い方はどこの星でも変わらないようだ。メダーのほうを見ると今までにない楽しそうな表情を出していた。僕らはあの宇宙船で相当精神的にも病んでいるのだと気づいた。

とにかく歴史って面倒だと感じました。手始めにあった世界史の教科書を読んでみるとやっていることって僕らがやっていることと似ているなって思いました。(たぶん、当然のことだと思うけど…)。

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