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目覚め

1.目覚め


 真夜中に目が覚めたと思った。枕元の目覚まし時計を見ると7時。外は暗い。梅雨も明けようとしているこの時期、いつもならカーテンの隙間から陽の光が差し込んでいるはずなのだが。



 時計の故障だろうか。ただ、真夜中にしては十分に睡眠時間をとれた気がする。手を伸ばして携帯を持ってくる。7:02。



――― ん?



 時計の故障ではなさそうだ。ゆっくりと身を起こしカーテンの隙間を広げると、朝陽が射し込む――ことはなかった。窓の外には何も見えない。街灯や隣の家の明かりはなく、窓は黒一色に塗りつぶされている。



 ……どうやらまだ目が慣れていないらしい。



 一息ついてから再びカーテンを開ける。再びの黒一色。



――― そうか、停電



 降り続いた雨で、家の近くの送電線か変電所か何かがやられたのだろう。最近のニュースは降雨量がどうとか、道路が冠水したとか、土砂崩れが起きたとかばかりだった。



 いや、違う。まだ寝起きの頭は正常に働いてはいないようだが、停電の可能性はない。そもそもどんなに曇っていても窓から何も見えないほど暗いことはない。ないはずだ。朝7時ならなおさらだ。それになにより、部屋の電灯の豆電球が点いているので停電のはずがない。



 暗い部屋で目が覚め、明るいのに慣れてない、と起き抜けの頭では考えたのだが、前提も結論も違う。部屋は豆電球のおかげで真っ暗ではないし、慣れていなければむしろ目が眩むはずだ。



 どちらにしろ見えないことには変わりなく、今のこの状況に説明をつけられないことは分かった。もう一度布団に潜ってしまうこともできるが、まず間違いなく夢ではないだろうという感覚がする。それでも夢という可能性を否定できないので頬を抓ってみる。



 痛い。



 とりあえずお約束みたいに抓ってみたが、あまり強くは抓らなかった。少しとはいえ意外と痛かった。これで目が覚めないってことは夢でないということでいいだろう。起きたばかりにしては妙に頭もすっきりとしていて夢という感じは最初からほとんどしていない。やはり窓が黒板みたいになっているのは現実みたいだ。



 すぐに思い浮かぶのは、ペンキやフィルムで物理的に塗りつぶされている可能性か。でも、昨日寝る前にカーテンを閉めたときには街灯が見えたはずなので、俺が寝ている間に誰かが外から窓を塞いだ、と。



――― うん、現実的じゃないな



 いきなり家が土砂に埋まったりしたらこうなるのだろうか。違うだろう。家の周りには崩れるような土砂なんてなかったはずだ。となると、俺が寝ている間にトラックが大挙してやってきて土砂を積み上げた、と。こうなるともはやただの妄想でしかない。外一面に土砂なんてあったら窓ガラスなんてひとたまりもない。それにここは2階だ。



 ……寝起きの頭では限界のようだ。この状態でいろいろ考えても仕方あるまい。窓を開けるのは怖いので、まずは顔でも洗ってこようと布団から這い出す。



――― そういや寝るときには豆電球消して寝たよな?



 やっぱ誰かが部屋に侵入したんじゃないか?と思いながら部屋のドアを開けると、





 そこには廊下はなくて、正面は、岩?みたいのに塞がれていて、





 左を見ると、暗くて向こうが見えなくて、壁が岩でゴツゴツしてて、





 右を見ると、やっぱり向こうの見えない通路が伸びていて、ゴツゴツした岩の壁が続いていた。





――― は?

お読みいただきありがとうございます。

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