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箱の中

作者: 虎子

私はココで、今日も空を見ている。

 今日も、狭い空は青く晴れていた。

暑い季節も、寒い季節も頭上を通り過ぎ、今は春がやってきた。


桜の花びらが一枚、ひらひらと風に乗ってやってくる。

「あら、こんな所で何をしているの」

花びらが私を見てクスリと笑う。青い空に、薄紅色は良く映える。

「ここで空を見上げているんだ」

私がそう言うと花びらは私を馬鹿にしたように笑って、何も言わずに飛んでいった。


鴬が、また恋人にフラれてやってくる。

「また今日も駄目だった、どうして僕は彼女が出来ないんだろう」

「君の声は綺麗なのにね」


耳に心地よい鴬の囀りで、私はいつも眠気に誘われる。




桜がちり、鴬のつがいが見つかった頃。

空の雲が高くなり始め、私は今日もぼうと雲を眺めていた。



ふいに人の話声が聞こえ、私の箱がガサリと揺れる。



「おい、こんな山奥にビニールシートがあるぞ」

「どうせ、不法投棄のゴミだろう」


ちりんちりん、と熊避けの鈴の値が辺りに響く。

登山客だろうか。

人間の声なんて、半年ぶりに聞いた。


私は心無しか緊張し、二人の声に耳を澄ます。



「ゴミにしちゃ、何か様子が違うくないか?、わざわざこんな山奥に一つだけなんて・・・」


私のすぐ傍まで足音が来て、箱を何度か確認するように蹴られた。

「あ、」


ビニールシートがガサリと落ちた。

不意に視界が広くなり、視界の中に若い男性が飛び込んでくる。


「うわっ、し、死体ッ」

「・・・え?だからゴミなんか触んなって・・・」


もう一人の男性が荒い足音を立てて私を覗きにやってきた。


「まっじかよっ」


次の日、多くの人に私は囲まれ、私はこの山を降りた。






 次のニュースです、昨日未明

Y山の中腹部で、登山に来た大学生から死体を発見したと通報があり、署員が駆けつけた所、Y山西口から登山道8キロ地点で死後半年から一年程経ったとされる白骨死体が発見されました。

遺体の損傷が激しく、詳細の判別はできませんが骨格から成人と断定されました。

ダンボールに入れられ、箱の上部にビニールシートをかけられた状態で発見され、発見場所付近に遺留物が多々散乱している状態から、死体遺棄をした可能性があるとみて、死体遺棄容疑で捜査をしています。

もし殺されるなら、瞬殺して欲しい。

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