第九話
side―三人称―
レンガで出来たの通路の床・天井・左右の壁には無数の虫型の魔物がひしめいていた
通路は真っ暗で、魔物の瞳だけが怪しく光っている
そんな通路がある建物は遥か昔からある迷宮で、魔物が足の踏み場も無いくらい生息して居る為、いまだにクリアされていないのだ
そんな迷宮の通路を高速で移動する者がいた
その者は火竜・水竜のガントレット、土竜のレギンス、風竜の鎧、光竜のネックレスに身を包み、黒竜の刀を背負ったカムイの光の人格レイだった
レイは自分の1メートル先に光球を創り出して、辺りを照らしながら狭い通路を飛んで進んだ
因みにレイが使用している魔法は風魔法の『飛行』と光魔法の『ライト』と火魔法の『フレイムシールド』である
フレイムシールドは上から落ちてくる魔物に対して、身体を円状に包むように炎を張っている
例外を除いて、魔法は同時に使えないのだが、レイは三つの魔法を同時に使っていた
しかも1時間以上高速で移動しながらだ
そんなレイの表情は辛そうでは無く、涼しい表情だ
「アリトリアさんは何を考えているんでしょうか?何が『飛行が出来るお前ならクリア出来るだろ』って」
愚痴りながらもどんどん奥に進んでいくレイであった
角を曲がった瞬間、大型(通路ギリギリの大きさ)の芋虫型の魔物が現れた
「くっ!」
レイは身体をひねりながら、魔物の上部の隅をすり抜けた
「危なかったですね」
レイは今すり抜けた魔物を見送って、前向いた
「これは・・・」|||
今まで涼しい顔だったレイが始めて崩れた
今までは飛行出来る空間があったが、レイの目の前には飛行すら出来ないほど埋め尽くされていた
「やるしかないですね」
レイは右手を前に突き出した
「倒すのではなく、退かせれば大丈夫でしょう・・・アクア・ガレイン」
レイの右手から大量の水が発生して、激流となって魔物を一掃した
「此処から先は難しそうですね」
レイはさらにスピードを上げて先に進んだ
因みに今は地下8階であった
時間を遡り6時間前
side―カムイ―
模擬戦から二年が過ぎて今は八歳になった
いつもは修行の為、アリトリアさんの家に住み込みだったが、今日は孤児院に帰ってきていた
師匠であるアリトリアさんから休養を一週間もらったので、孤児院に帰ったら新しく入った子供達が居たので自己紹介をした後遊んでいたら・・・
「カムイはいるか?」
ガロンさんに呼ばれた
何だろうか?
久々の休みなのだから、ゆっくりしたいんだけど
「どうしたんですか?」
「久しぶりだな、だいぶ強くなったんだって?」
ガロンさんは乱暴に頭を撫でてきた
本当の父親のような錯覚を感じる
その為、子供達からは『父さん』『父』などと呼ばれている
「用件は何ですか?」
「相変わらず憎たらしいな。陛下から伝言だ。今かr「嫌です」・・・陛下の申し出を断る奴はお前だけだよ」
陛下が呼び出す時って面倒な事ばかりなんだもん
普通の用件でも面倒事に巻き込まれるんだよねorz
軍隊に入れられたり、第一王女に拉致られたりだ
そういえば、一年前に俺が魔力武器化で創り出した鎌に興味があったらしく陛下に呼ばれて報告した(鎌は実用化されて騎士の武器になった)
その時に第一王女のカーラが学園国に行く時に拉致られそうになったな
【学園国バルセル、バルセルには各国の王子・王女や貴族などが通う学園の為の国である。王子・王女は護衛の為に数人なら連れて行く事が出来る。護衛も生徒として在籍する。国王は存在しないで生徒会長がバルセルの最高責任者になる。12~18歳までの6年間通い、3年間は一般教科を習い、残りの3年間は専門職を習う。戦闘を専門にする教科や、武器職人の教科、教師になる為の教科など様々である。生徒自身が希望すれば、学園国内でバイトする事も出来る。学園国は他国から干渉されない代わりに、自営する事を許可されている】
カーラは俺を護衛として連れて行こうとした
「今日は陛下からカムイに渡す物があるらしいから行け」
「わかりました」
溜め息を吐きながら、出かける準備をする為に部屋に戻った
「・・・逃げ出しやすいように、動きやすい服で良いか?」
着替えて訓練がてら、走って城まで向かった
「汗が凄いね」
「はぁ・・・ふぅ・・・孤児院から走ってきたからな」
荒い息を整えてから陛下に答えた
「昔に渡した短剣と同じ物で、ドラゴンから作った魔法具を渡したくてね」
陛下がそう言った瞬間、ドラゴンで造った防具が運び込まれてきた
ガントレットは手の甲にドラゴンの頭で、肘の部分にはドラゴンの爪が三つ外向きで加工されていた
レギンスはズッシリとした感じで、大砲などの土台を連想させられた
鎧はドラゴンの胸をそのまま使ったみたいで、背中には短い羽が生えていた
ネックレスは爪四本と真ん中に白い宝石があった
黒い刀は刃渡り140センチくらいかな?
柄の部分は、指を守るようになっていた
「大きいな」
「魔法でサイズを変えられるから大丈夫だよ」
そういえばそうだったな
「着てみれば?」
「そうだね」
着替えてみたけどやっぱりデカい
なので、魔法でサイズを変えてから陛下の所に戻った
「うん♪似合ってるね」
「どうも・・・コノ羽は飛べるの?」
背中にある羽を指差しながら聞いてみた
「無理だね。飾りだよ」
「そっか」
「飛行魔法なんて無いから、飛ぶなんて無理だよ。飛ぶとしたら騎獣に乗らなきゃ」
ドラゴンやグリフォンか・・・
何となく風魔法を展開する
軽く俺から風が吹き出した
その時若干身体が軽くなった感じがした
「もしかしたら・・・」
「どうしたんだい?」
心配そうに陛下が言ってきた
「ちょっとね・・・ふっ!」
さっきよりも魔力を高めて発動した
フワッ
俺の身体が宙に浮いた
「まさか飛行魔法!」
陛下が勢い良く立ち上がった
「ふぅ。練習すれば、もっと出来るかも」
「やっぱりカムイ君は凄いね」
「練習したいので、行っても良いか?」
「その前に質問!飛行魔法は誰にでも出来そう?」
「改良するばね。今の俺もこの鎧が無ければ出来ないだろうし」
「そっか・・・風竜の鎧を着れば誰でも?」
「無理かな?・・・風竜の鎧と相性が良ければあるいわ」
「ふむ・・・飛行魔法の改良を頼んで良いかな?」
「了解」
俺は部屋を出ながら、手を振り答えた
訓練所に移動して、飛行魔法の練習を三時間くらいしていたら、アリトリアさんが来た
「本当に飛行魔法が出来たんだな」
「どうしたんですか?」
だいぶ馴れたので、ゆっくりとアリトリアさんの前に降り立った
始めは強弱が難しく、かなり苦戦した
「飛行が出来るお前に、とっておきの迷宮があるんだ・・・行け」
命令形!
「あそこはカムイより、レイの方が良いだろう・・・まぁ、頑張ってこい」
俺に迷宮の場所だけ告げてアリトリアさんは、また何処かに行ってしまった
レイ大丈夫?
『どうでしょうね。一応飛行魔法の練習をしたいので変わってください』
了解!
レイと変わって1時間くらい練習してから迷宮に向かった
side―レイ―
今迷宮の入り口に居ます
入り口から中を見れば、無数の赤い光・・・気味が悪いですね
『本当に大丈夫?』
カムイ君が心配してくれています
一応何かありかもしれないので、起きててください
『んっ!わかった』
シンもですよ?
『ったく!しょうがねぇな!』
なんだかんだシンは身内には優しいんですよね
『変な事考えてねぇだろうな?』
何でもないですよ♪
『答えになってねぇ!』
『シンもそこまでにして・・・もう行くんでしょ?』
そうですね・・・あと少しで3時間くらいで夕方になるでしょうし。夕飯までには帰りたいですからね
私は飛行魔法を展開して、迷宮の中に突っ込んだ
「いきなり真っ暗ですね・・・ライト」
1メートル先に光球を作り出して先に進みます
「魔物も多いですね・・・フレイムシールド」
これで大丈夫でしょう
往復三時間で行ってみましょうか!
早速見つけた階段に飛び込んでいった