夫たちが、今日も離してくれない。
1人を取り合って結局イチャイチャする話が読みたくて書き始めたはずなのに、おかしいなぁ…。たぶん、わたし疲れてたんだと思います。
女が男の半分以下しか生まれないために、血を途絶えさせないためにも、ほとんどの国が女系家系であり、貴族も当主は女性である。
そして、一妻多夫が推奨されている。
男性が有り余っているからというだけの理由だ。
最近では、平民の間でもそのような形になりつつあるという。
使用人も私の身の回りの世話をする侍女一名以外、男性。
これだけ男に囲まれて、花よ蝶よと育てられ、大切にされてきた女性たちは、なんというかとても気が強い。
男を付き従わせてこそ一人前のような空気があって、私はそれがとても苦手だ。
あんまり肌に合わないものだから、当主としてするべき仕事だけして、いつもは屋敷に引きこもっている。
そんな私に複数の夫などできるのかと、母上は心配していたが。
実際の我が家も、もれなく私1人に対して夫が3人いる。
これでも少ない方なのだけれど、どうにも私にはこれが限界のようで…。
「今日は僕の番だったでしょう!?」
「湯浴みを代わってやったんだから、寝室も交代だろ!」
「それは仕事が終わらなかったから、仕方なく…!」
「妻の世話をほっぽり投げた奴に、権利なんかあるわけないだろう?」
「……俺が一緒に寝るでもいいぞ」
「「お前は昨日一緒に寝てただろっ!!」」
今日は誰が寝室を共にするかで揉めているらしい…。
はあ、私、先に寝てもいいかしら。
どれだけ夫を侍らせて、どれだけ夫に愛されるかを競争したがる女性がよくいるけど、……全然お断りよねぇ。
私はもっとゆっくり静かに過ごしたい。
いざ求めん、安眠の世界!
というわけなので。
「ふあぁ…、じゃあ決まったら勝手に入ってきてね。私、先に寝てるから」
さっさと寝室に引っ込もうかと思ったら、寝巻きをグイッと引っ張られた。
「……行かないでぇ」
一番年下の夫、リアンが緑色の目をうるうるさせながら上目遣いでこっちを見ていた。
ちなみに、こういう庇護欲をそそる男性がよくモテる。
「ええぇ、なんで泣きそうになっているの?」
「僕と一緒に寝るの、嫌…?」
「ん〜?もう眠たいから、早く寝室に行きたいだけよ?」
「僕と一緒が嫌なんだ…!」
「なんでそうなったの……」
思わず顔を顰めると、リアンはもっと悲しそうな顔をしてギュッと抱きついてきた。
「うう、ごめんなさいエルン。嫌いにならないでぇ」
「なってないなってない」
「ったく、エルンをあんまり困らすなよな」
そう言って、私と一番歳の近い夫のグウォールが、私の背を支えるようにそっと回ってきた。
一番ガタイがいいのもあって、体重をかけてもびくともしない。
ちゃっかりリアンを剥がそうとして、私を挟んで睨み合いが始まった、勘弁してほしいぃ……。
「……エルン、眠たそう。ベッド、行く?」
一番年上の夫のイッケルが私の横に来て、躊躇いがちにそっと手を伸ばして、頭を撫でた。
一番背も低いから、どこか子どもっぽく見える。
「うん、そうしたいんだけど……」
「だってぇ!今日はエルンと一緒に寝るの僕だったのに、グウォールが!」
「湯浴みを代わっただろ!?」
「だからって順番は変わらないでしょ!?」
夫たちのルールで、毎日順番に私と寝室を一緒にするのが平等であり平和的解決なんだそう。
今まさに揉めているのは、なんなのかしらねぇ……。ははは。
こうやって、夫が妻を取り合う話はよく聞くが、何で皆さん自慢げに話せるんだろう…?
私からしたら、争いばっかりで疲れるなって感想なんだけど。
あ、これ口にしたら最後、リアンが泣いて、グウォールが悲痛に叫んで、イッケルが大人しくガッカリするわ。
迂闊に愚痴も零せないわね……。
全員と政略結婚だというのに、こんなに構われるとは正直予想外だった。
もっと淡白な夫婦関係を想像していたんだけどなぁ。
夫たちは、みんな元気というか、張り合いをやめないというか。
「じゃあ、みんなで同じベッドに入ったらいいじゃない」
私は堪えきれずに、ふあ…とあくびを一つすると、全員が固まった。
「み、みんな」
「一緒に」
「……同じベッド」
「ん、あれだけ広いベッドなら4人でも大丈夫でしょう?」
あー、いけないわ、本当に眠い。
あんまり、頭が回っていない気がするわ…。
眠い目を擦りながら、なんとかこの場を収めようとした。
「そうじゃないなら、私、今日は一人で寝るから…」
「い、いい!エルンがいいなら、それがいいっ!」
「そうしよう!ほら、エルン、運ぶから掴まって」
「……早くいこう、エルン」
「ん?うん、そうね」
私の声を合図に、さっきまでが嘘みたいに3人して足早に寝室へと向かった。
代表してグウォールが軽々と私を抱き抱えて。
そのまま、寝室のベッドの真ん中に下ろされると、一気に3人分の視線が注がれた。
「エルン、本当にいいんだよね…?」
「あんまり加減できなかったら、ごめん」
「……エルン、好き」
3人から熱のこもった言葉が降ってきたので、私はコクリと頷いた。
「うん、おやすみなさい」
私はそう言い残して、3秒で寝た。
眠さの限界だった。
「エ、エルン…?」
「えっ、寝ちゃったの…!?」
「……寝息が聞こえる」
「「「……………………………………………………」」」
3人の夫が顔を見合わせて、乾いた笑いを漏らしていたなど、眠っている私が知るわけもなく。
「お預けくらったあぁぁぁ〜〜〜!!!」
「お前らがさっさと譲らないからっ!」
「……もういい、隣で寝る」
「おいこら、何ちゃっかり隣に行こうとしてんだ。場所決めするぞ」
それから何で勝負して、何で決着がついたのか。
翌朝起きると左腕にリアン、右腕にイッケル、頭の上にグウォールがいて、グウォールの頬には涙の跡があるのだった。
私の夫たち、元気ねえ〜。
了
お読みくださりありがとうございました!!
233日目。




