表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘力ゼロで追放された俺、 最強じゃないのに周囲が勝手に従い始める  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/42

第38話 それは俺の思想じゃない

 集められた場所は、豪華でも厳重でもなかった。


 ただ、逃げ道のない部屋だった。


 ***


 帝国の使者。

 魔王軍の代表。

 完全自由圏を名乗る者。


 立場も服装も違う三人が、

 同じ言葉を口にする。


「あなたの思想が、

 現場で誤用された」


「どう修正すべきか、

 指針を示してほしい」


「責任を取るつもりは?」


 問いは、穏やかだ。


 だが、

 すでに結論は用意されている。


 アルトが答えれば、

 アルトの思想になる。


 ***


 アルトは、しばらく沈黙した。


 怒りは、ない。

 恐怖も、ない。


 あるのは、

 予想していた結果だけだ。


「……一つ、

 確認させてください」


 ゆっくりと口を開く。


「あなた方は、

 あの部隊が死んだ理由を

 “自由”だと思っていますか」


 帝国の使者が答える。


「選択の結果です」


 魔王軍の代表も頷く。


「志願した戦いだ」


 完全自由圏の者は、肩をすくめる。


「評価しない以上、

 誰も責められない」


 誰も、嘘をついていない。


 だからこそ。


 ***


「……違います」


 アルトの声は、低かった。


 だが、はっきりしている。


「それは、

 選ばせなかった結果です」


 部屋の空気が、変わる。


「命令がないことと、

 判断がないことは、

 同じじゃない」


 視線を、一人ずつ見ていく。


「責任を取らない自由は、

 自由じゃない」


 帝国の使者が、眉をひそめる。


「では、

 あなたならどうした」


 その問いを、

 ずっと待っていた。


 ***


「……何もしません」


 一瞬、誰も理解できなかった。


「決まりを作らない」


「制度にしない」


「軍にも、

 国にも使わない」


 魔王軍の代表が、声を荒げる。


「それでは、

 何も守れない!」


 アルトは、静かに首を振る。


「最初から、

 守る思想じゃない」


 沈黙。


 それは、

 思想の否定ではない。


 所有の否定だ。


 ***


「……逃げるのか」


 誰かが言った。


 アルトは、否定しない。


「はい」


 即答だった。


「俺は、

 責任を取れない場所に

 立ってしまった」


 だから。


「これ以上、

 名前を使わせません」


 それが、

 彼にできる唯一の責任だった。


 ***


 帝国の使者が、冷たく言う。


「では我々は、

 我々のやり方で続ける」


「そうしてください」


 アルトは、頷く。


 止めない。

 導かない。


 拒否するだけだ。


 ***


 部屋を出ると、

 外は驚くほど静かだった。


「……これで、

 敵に回しましたね」


 ドレイクが言う。


「いいえ」


 アルトは、歩きながら答える。


「誰の味方にもならなかっただけです」


 それが、

 一番嫌われる立場だ。


 ***


 その日から。


 アルトの名は、

 公式文書から消え始めた。


 思想は残る。


 だが、

 追及する者はいなくなった。


 それでいい。


 火は、

 誰のものでもない方がいい。


 誰かが、

 勝手に使って燃やすくらいなら。


 アルトは、振り返らない。


 もう、

 説明する義務はない。


 これが、

 彼の最後の言葉だった。


「それは、俺の思想じゃない」

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ