表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘力ゼロで追放された俺、 最強じゃないのに周囲が勝手に従い始める  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/38

第36話 翻訳された自由

 同じ言葉が、

 同じ意味で使われていない。


 それが、アルトの最初の違和感だった。


 ***


 帝国領の街では、

 「選択の自由」が制度になっていた。


「登録は任意です」


 役人は、いつもそう言う。


 だが続けて、こう付け足す。


「登録者には、

 治療・食糧・移動の優先権があります」


 声は穏やか。

 強制ではない。


 だが、列は自然と一方に伸びる。


 登録しない者も、確かにいる。

 だが彼らは、街の端へ案内される。


 支援のない区域。

 仲裁のない区域。


 選んだのは、自分――

 という形で。


「……上手いですね」


 アルトが言う。


「否定されない自由ほど、

 逃げ場のないものはない」


 ドレイクは、短く笑った。


 ***


 別の場所。


 魔王軍の前線では、

 「自由参加部隊」が編成されていた。


「階級はない」


「命令もない」


「評価も、ない」


 掲げられた言葉は、

 谷の噂とよく似ている。


 だが、戦場に出れば分かる。


 活躍した者の名は、

 自然と呼ばれる。


 危険な役目は、

 いつも同じ者が引き受ける。


 誰も命じていない。

 だが、空気が選ばせる。


「……評価がない代わりに、

 消耗がある」


 アルトは、目を伏せた。


 これは、自由の軍ではない。


 自由を使い切る軍だ。


 ***


 さらに南。


 完全自由圏と呼ばれる地域では、

 看板だけが立っていた。


ここでは、

いかなる命令も、

いかなる評価も、

行われない。


 言葉は、徹底している。


 だが、街は荒れていた。


 働く者もいる。

 何もしない者もいる。


 誰も、咎めない。


 その結果、

 弱い者から消えていく。


 誰の責任でもなく。


「……これは」


 アルトは、最後まで言わなかった。


 名前をつけた瞬間、

 正当化してしまうからだ。


 ***


 夜。


 三つの場所を回った後、

 アルトは焚き火の前に座った。


「全部、

 “自由”って言ってます」


 ドレイクが言う。


「だが、

 全部違う」


 アルトは、静かに頷く。


 谷の自由は、

 制度でも、武器でも、放棄でもなかった。


 ただ、

 選び続ける覚悟だった。


 だが今。


 覚悟は、どこにも翻訳されていない。


 ***


「……止めるべきでしょうか」


 ドレイクが、珍しく尋ねる。


 アルトは、しばらく考えた。


「止められません」


 即答だった。


「言葉は、

 一度広がったら、

 誰のものでもない」


 それは、諦めではない。


 事実だ。


「だから」


 火を見つめる。


「どこかで、

 壊れます」


 ドレイクは、何も言わない。


 否定できないからだ。


 ***


 遠くで、

 角笛の音が聞こえた。


 戦でも、儀式でもない。


 ただの、合図。


 誰かが選び、

 誰かが選ばなかった音。


 アルトは、立ち上がる。


「……次は、

 失敗の話になります」


 成功例は、もう意味を持たない。


 翻訳された自由は、

 必ず、

 誰かを殺す。


 それを見届けるのが、

 彼の役目ではない。


 だが、

 目を逸らす理由も、

 もうなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ