表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘力ゼロで追放された俺、 最強じゃないのに周囲が勝手に従い始める  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/35

第31話 残された場所

 アルトが谷を離れてから、五日が経った。


 大きな混乱は、起きていない。

 暴動も、争いもない。


 それが、かえって不安だった。


 ***


「……今日の分、どうする?」


 焚き火の前で、誰かがラグに声をかける。


 ラグは、一瞬だけ考える。


「……昨日と同じでいい」


 それは、命令ではない。


 だが。


 判断だった。


 周囲は、何も言わずに動く。


 誰も「決めろ」とは言っていない。

 だが、決まることを期待している。


 ***


 ラグは、その視線に気づいていた。


 気づいていて、

 逃げられないことも分かっていた。


「……俺は、アルトじゃない」


 小さく呟く。


 だが、その言葉は届かない。


 ***


 昼。


 水路の点検で、問題が見つかる。


「このままだと、

 三日後には使えなくなる」


「どうする?」


 視線が、また集まる。


 ラグは、歯を噛みしめる。


「……応急で、こっちを塞ぐ」


「恒久対応は?」


 即答できない。


 アルトなら、

 「決めない」という選択肢を出した。


 だが今。


 誰かが決めなければ、

 水は止まる。


「……後で、話し合おう」


 それが、精一杯だった。


 ***


 夕方。


 焚き火の数は、変わらない。


 だが、距離が微妙に開いている。


 相談する人。

 距離を取る人。


 誰も不満を口にしない。


 不満が、評価されないからだ。


 ***


 夜。


 ラグは、一人で薪を割っていた。


 必要以上に、力が入る。


「……向いてないな」


 自嘲気味に呟く。


 アルトは、

 判断しなかった。


 だから、

 判断の責任が浮かび上がらなかった。


 ラグが判断すると、

 それはすぐ「正解」か「不正解」になる。


 それが、怖い。


 ***


「……無理しなくていい」


 声をかけたのは、

 以前からいた年配の男だった。


「誰も、

 お前にアルトを求めてない」


 ラグは、苦く笑う。


「……求めてないなら、

 見ないでくれ」


 その言葉は、

 怒りではなく、疲労だった。


 ***


 その夜。


 小さなミスが起きた。


 食料の配分が、少し偏った。


 誰かが気づき、

 誰かが気づかないふりをする。


 大事にはならない。


 だが。


 積もる。


 ***


 ラグは、焚き火を見つめながら考える。


 この場所は、

 「誰も決めない」ことで守られていた。


 だが今。


 決めない人間がいない。


「……アルトは、

 これを分かってて出たのか」


 答えは、ない。


 ***


 翌朝。


 谷は、まだある。


 崩れてはいない。


 だが。


 ここはもう、

 同じ場所ではない。


 アルトがいた頃のように、

 “選び続ける場所”ではなく。


 **「選ばされ始めた場所」**になっている。


 ラグは、その変化を理解していた。


 だからこそ。


「……このままじゃ、

 ダメだな」


 誰に聞かせるでもなく、呟く。


 谷は残った。


 思想も、残っている。


 だが。


 人が変われば、

 形は変わる。


 それを、

 誰よりも強く感じているのが、

 ラグ自身だった。


 火は、まだ灯っている。


 だが。


 誰が薪を足すのかを、

 皆が見ている。


 それが、

 この場所の新しい歪みだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ