表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘力ゼロで追放された俺、 最強じゃないのに周囲が勝手に従い始める  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/35

第23話 整えてあげましょう

 谷に、見慣れない服装の一団が現れたのは、昼過ぎのことだった。


 軍服ではない。

 だが、完全な民間とも違う。


 揃った外套。

 整えられた荷馬車。

 そして、迷いのない足取り。


「……自治官ですね」


 ドレイクが、低く言った。


「ええ」


 アルトも、すぐに分かった。


 帝国直属ではない。

 だが、帝国の“隙間”を埋めるために動く人間たち。


 評価制度が後退した今、

 最も勢いを持ち始めた存在だ。


 ***


「はじめまして」


 一団の先頭にいた男が、柔らかく頭を下げた。


「私は、地方自治連合の調整官、

 ミルド・ラゼンと申します」


 声は穏やかで、敵意はない。


「この谷に、

 非登録者の集団があると聞きまして」


 アルトは、頷いた。


「はい。

 ただ集まっているだけです」


「素晴らしいですね」


 即答だった。


「評価制度の縮退以降、

 多くの場所で混乱が起きています」


 彼は、周囲を見渡す。


「ですが、ここは比較的、

 落ち着いている」


 それは、事実だった。


 だからこそ――

 この人間は来た。


「そこで」


 ミルドは、笑顔を崩さずに言う。


「我々がお手伝いできれば、と」


 空気が、わずかに張り詰めた。


 ***


「手伝う、とは?」


 アルトが、慎重に尋ねる。


「簡単なことです」


 ミルドは、指を折る。


「最低限の登録」

「食料配分の基準」

「作業の当番制」


 どれも、聞き慣れた言葉だ。


「罰則は、ありません」


 彼は、すぐに付け加えた。


「ですが、基準がなければ、

 弱い人が先に潰れます」


 正論だった。


「今は、まだ回っています。

 ですが――」


 視線が、アルトに向く。


「人が増えれば、必ず破綻します」


 アルトは、黙って聞いていた。


 否定できない。

 実際、第22話で引いた線も、応急処置だ。


「我々は、

 あなた方を管理したいわけではありません」


 ミルドは、ゆっくりと言う。


「守りたいのです」


 その言葉に、

 何人かが安心した顔を見せる。


 だが。


 ドレイクは、腕を組んだまま言った。


「守るために、縛るんだろう」


 ミルドは、即答する。


「はい。

 最低限は」


 それを、悪だと思っていない。


 だから、厄介だ。


 ***


「少し、時間をください」


 アルトは、そう答えた。


 即断はしない。

 それが、彼のやり方だ。


「もちろん」


 ミルドは、穏やかに頷いた。


「我々は、

 急ぎません」


 ――急がない。

 それができる側の余裕だ。


 ***


 夜。


 焚き火の前で、アルトは考えていた。


「……正しいことを、言われました」


「だから、悩んでいる」


 ドレイクは、短く言う。


「彼らの案は、

 この谷を“長持ち”させる」


「はい」


 アルトは、頷く。


「でも――」


 言葉が、止まる。


「受け皿じゃなくなる」


 ドレイクが、続きを言った。


 アルトは、静かに息を吐いた。


「ここが、

 “登録すれば守られる場所”になった瞬間」


 評価制度が、

 形を変えて戻ってくる。


 ***


 同じ夜。


 谷の外。


 ミルドは、部下と小声で話していた。


「……どう思います?」


「危うい場所です」


「ええ」


 彼は、空を見上げる。


「だからこそ、

 放置できない」


 善意だ。

 間違いなく。


「整えなければ、

 ここは壊れます」


 それも、事実だ。


 だが。


 整えた瞬間、

 ここでなくなる。


 それを、ミルドはまだ知らない。


 ***


 焚き火の前。


 アルトは、ぽつりと呟いた。


「……次は、

 断らないといけないかもしれません」


 ドレイクは、何も言わなかった。


 断るということは、

 “守らない選択”でもある。


 谷は、まだ持っている。


 だが。


 外からの善意は、

 ゆっくりと、扉を叩いていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ