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戦闘力ゼロで追放された俺、 最強じゃないのに周囲が勝手に従い始める  作者: 山奥たける


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第17話 誰も悪くなかった

 帝国軍・中央評価局。


 非常鐘は鳴らなかった。

 混乱も、怒号もない。


 ただ、数字だけが――

 静かに、限界を越えていた。


「……世界安定指数、臨界値を下回りました」


 評価官の声は、震えていない。


 震えないように、訓練されている。


「再計算を」


「三度行いました」


「別モデルで」


「同じ結果です」


 沈黙。


 誰も、机を叩かない。

 誰も、責任者を探さない。


 評価制度は、感情を排除するための装置だ。


 だから――

 壊れるときも、静かだ。


「……制度停止プロトコルを」


 白髪の将官が、低く言った。


 その言葉に、全員が顔を上げた。


「一時停止、ですか?」


「いいや」


 彼は、首を振る。


「縮退運用だ」


 評価制度は、帝国の心臓だ。

 止めれば、国家が止まる。


 だから選ぶのは、

 機能の切り捨て。


「世界安定指数算出を停止。

 前線評価の即時性を破棄。

 数値更新を――」


 言葉が、少しだけ詰まる。


「……現場裁量に委ねる」


 それは、

 帝国が最も恐れていた判断だった。


 ***


 同時刻。


 帝国全域に、通達が流れる。


【臨時措置】

世界安定指数の算出停止

各地の評価は、

当面、現場指揮官および自治判断を優先する


 その一文で、

 世界が、わずかに呼吸を取り戻した。


 ***


 前線。


「……命令が、来ない?」


 帝国兵が、空を見上げる。


「来ない。

 判断は、俺たちだ」


 誰も、すぐには動かなかった。


 だが、次の瞬間。


「じゃあ……今日は、補給を優先しよう」


「町に、迷惑をかけるな」


「無理は、しない」


 誰かが言い、

 誰かが頷く。


 戦争は、終わっていない。

 だが――

 暴走は止まった。


 ***


 魔王軍領。


「帝国が、評価を下ろした」


 ドレイクが、短く言う。


「完全停止ではない。

 だが……」


「十分です」


 アルトは、焚き火の前で答えた。


 胸の奥が、静かだった。


 喜びでも、勝利でもない。


 ただ――

 終わった、という感覚。


「俺は……」


 アルトは、言葉を探した。


「何もしていません」


 ドレイクは、否定しなかった。


「だが、

 お前がいなければ、

 制度は止まらなかった」


 それは、責任の押し付けではない。


 事実だ。


 ***


 夜。


 イリス・フェルディナは、

 窓のない部屋で、一人立っていた。


「……止めた、のね」


 制度を。


 それは、敗北ではない。

 だが、勝利でもない。


「誰も、悪くなかった」


 彼女は、そう呟く。


 制度は、必要だった。

 人々は、正しかった。


 それでも――

 限界を越えた。


「……だから、止めた」


 それだけの話だ。


 イリスは、机に手を置いた。


 追放者の顔が、思い浮かぶ。


 彼は、壊さなかった。

 戦わなかった。


 ただ、

 壊れる地点を、示した。


「……あなたの勝ちよ」


 声は、誰にも届かない。


 だが、同時に。


「いいえ」


 イリスは、自分で否定した。


「これは、

 あなたの“役割”の始まり」


 ***


 焚き火の前。


 アルトは、空を見上げていた。


 雲が、ゆっくり流れている。


 戦闘力ゼロ。

 追放者。


 それは、変わらない。


 だが。


「……受け皿を、作らないと」


 今度は、逃げ場ではない。


 制度が止まった“隙間”に、

 人が落ちないための場所。


 ドレイクが、静かに言う。


「次は、

 お前が選ばれる番だ」


 アルトは、苦く笑った。


「選ばれたく、ないんですけどね」


 それでも。


 世界は、もう彼を見逃さない。


 評価なき場所で、

 評価に縛られた世界を受け止める存在。


 それが、

 戦闘力ゼロの追放者の――


 次の役割だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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